案ずるより産むが易し。
父が退院しました。
迎えはわたしひとり。
……荷物が多すぎるんだよっ。わたしひとりじゃ持てないっつーの。
手続きしたりなんだりで走り回り、かなりへとへと。
いや、わたしも悪いんだよ。いつも小汚ねー格好で見舞いに行っているから、最後の日ぐらいまともな格好をしようと、ちょっとオサレしてみたりなんかしてたからさ。ひどい靴擦れでね……まさかあんなに働かされるとは思わなくてな。
父は元気で、杖なしで歩き回る。……おーい、大丈夫かー?
どうやら、わたしの自由は守れそうです。父は自分の家で暮らす模様。てゆーか、退院したその日から仕事してます。働いてます。……いいのか?
その夜、父が早々に就寝したあと、母とふたりで溜息をつきました。
大変だったね、このひとつき。
がんばったね、このひとつき。
母のことを偉大だと思う。よくも乗り切ったもんだ。
笑えたのはうちの猫。
父が会いたがるので、わたしは猫を連れて親の家に行った。
しかし、薄情なうちの猫は、父のことをすっかり忘れていた。
父に抱かせてやろうとしたのに、
「あんたダレ?! なにするのっ、触らないでよ?!」
と、抵抗。わたしにしがみついてはなれない。父は傷ついた模様。
ところが、父が私の家にきたとき。
猫はいそいそと階下に行き、
「エサくれー、水くれー」
と、父を呼びつけた。
どうやら猫の頭の中には、父単体の記憶はなく、「エサをくれるおっさん」としてだけ認識されているらしい。
エサとセットで記憶。
したがって、自分のエサ場以外の場所では「知らない人」。
父は不自由な足で階段を降り(階段を自力で降りられない、というふれこみだったんだが……)、猫にいそいそとエサをやっていた。
あわれなり、父よ。
父が退院しました。
迎えはわたしひとり。
……荷物が多すぎるんだよっ。わたしひとりじゃ持てないっつーの。
手続きしたりなんだりで走り回り、かなりへとへと。
いや、わたしも悪いんだよ。いつも小汚ねー格好で見舞いに行っているから、最後の日ぐらいまともな格好をしようと、ちょっとオサレしてみたりなんかしてたからさ。ひどい靴擦れでね……まさかあんなに働かされるとは思わなくてな。
父は元気で、杖なしで歩き回る。……おーい、大丈夫かー?
どうやら、わたしの自由は守れそうです。父は自分の家で暮らす模様。てゆーか、退院したその日から仕事してます。働いてます。……いいのか?
その夜、父が早々に就寝したあと、母とふたりで溜息をつきました。
大変だったね、このひとつき。
がんばったね、このひとつき。
母のことを偉大だと思う。よくも乗り切ったもんだ。
笑えたのはうちの猫。
父が会いたがるので、わたしは猫を連れて親の家に行った。
しかし、薄情なうちの猫は、父のことをすっかり忘れていた。
父に抱かせてやろうとしたのに、
「あんたダレ?! なにするのっ、触らないでよ?!」
と、抵抗。わたしにしがみついてはなれない。父は傷ついた模様。
ところが、父が私の家にきたとき。
猫はいそいそと階下に行き、
「エサくれー、水くれー」
と、父を呼びつけた。
どうやら猫の頭の中には、父単体の記憶はなく、「エサをくれるおっさん」としてだけ認識されているらしい。
エサとセットで記憶。
したがって、自分のエサ場以外の場所では「知らない人」。
父は不自由な足で階段を降り(階段を自力で降りられない、というふれこみだったんだが……)、猫にいそいそとエサをやっていた。
あわれなり、父よ。