植爺は、「物語」に必要なモノと不要なモノの区別がつかないのだと思う。

 待ちに待った植田紳爾巨匠の最新作、『外伝 ベルサイユのばら-ジェローデル編-』初日観劇。
 2006年の『ベルサイユのばら-オスカル編-』で腹がよじれるほど笑った身としては、どれだけ笑わせてくれるのか、ある意味たのしみにしておりました。

 『ベルサイユのばら』史上、初の主要4キャラ以外を主役に据えたスピンオフ。
 原作ではほとんど出番のないジェローデルを主役に、ほとんどどころか「いたっけ、そんな人」レベルのソフィアをヒロインにしての物語。
 原作者・池田理代子氏の名前が前面に出ているとはいえ、脚本・演出が植爺である以上、へっぽこなのは自明の理、たのしみなのはどれだけ笑えるかでありますよ、わたし的に。

 えーと。
 『ベルサイユのばら-オスカル編-』ほどは、笑えませんでした。

 まあ、あそこまですごい作品は、さすがの植爺もそうそう作れないんだな、と安堵しました。

 『ジェローデル編』は、ふつーに笑えました。
 大爆笑ではなく、苦笑、失笑を含め、ぷはっが少々、あとはくすくすレベルかなー。

 いちばん笑えたのが、フェルゼン様の2回目の登場です。
 いや、フェルゼン様は悪くないのよ。でも、笑いツボ直撃で、声殺すのに気を遣った(笑)。

 
 さて。
 物語はいきなりナポレオン暗殺未遂事件からはじまる。
 えええ。フランス革命から15年以上経ってんですか? プログラム買ってないから詳しい年号はわかんないけども。
 ナポレオン暗殺を企て、果たせなかったジェローデル@水と、修道女ソフィア@となみは再会する。
 ふたりは再び会う約束をしていたらしい。
 ……えーっと、このときこの人たち、いくつかなあ。ジェロ様は50歳くらい?(遠い目)

 時代は遡って、フランス革命前夜。
 衛兵隊に転属したオスカル@キムの婚約が決まった、とジャルジェ将軍@萬ケイ様が貴婦人方にご報告、貴婦人・令嬢たちは阿鼻叫喚。しかも相手はあのジェローデル! 美しいけど冷たくて変わり者の、あのジェローデル?! ……怒濤の説明台詞。ジェローデルがどんな人で、ついでにソフィアという女性と仲が良いということを、何故か令嬢たちがえんえん語る。
 決まった、と報告しているくせに、実はまだなんにも決まっていない。肝心のオスカルは承服していないのだ。
 って、ちょっと待て、オスカルってどんな人? 令嬢たちの怒濤の説明台詞の中にどの程度説明があったかな。
 とにかくよーやく登場したオスカルは、フリルのブラウスを着た女の子だった。その姿からは、「男として育てられた」ことは窺い知れない。そもそも彼女を「男として育てた」のはジャルジェパパだ。そのパパが「結婚して早く子どもを産め」と言っているのでややこしい。このへんの説明はないので、オスカルがどーゆー人なのかは謎。
 なんで「男として生きる」ことになっているのかわからないのに、そのことにしがみつこうとするフリルな女の子オスカルと、「女のシアワセに背を向けないで」と口説くジェローデル。
 そして、「ジェローデルはオスカルの婚約者」と先に貴婦人方に発表していたにも関わらず、そのあとでオスカルの婿選び舞踏会が開催される。ジャルジェパパにもコケにされ、実際その舞踏会でオスカル自身にもコケにされ続けるジェローデル@いちおー主役。

 さてここで、場面をぶった切ってフェルゼン様@ゆみこが登場する。軍服にスターブーツが美しい、キラキラの王子様ぶりだ。
 それまでの物語も空気も関係なく1曲朗々と歌い上げ、現れたジェローデル相手に怒濤の説明台詞。オスカルがフェルゼンに片想いしていること、でも自分はアントワネットと不倫真っ直中、相手のために不倫を精算して故郷に帰ることなど、えんえんえんえん語り続ける。
 貴婦人方の話題に出てきたソフィアはフェルゼンの妹。ジェローデルとは仲良しさんで、互いを「ジェローデルさん」「ソフィアさん」と呼び合うほどの関係。……ちなみに「ジェローデル」は名字です。

 忘れそうだけど、今は革命前夜。
 三部会のために集まった平民議員は、会議場に立てこもって抗議行動に出た。
 武力を持って彼らを掃討しろという命令を、衛兵隊隊長オスカルは拒否。ここでよーやくオスカルがどーゆー人なのかわかる。代わって命令を遂行するのが近衛隊隊長のジェローデル。
 ロベスピエール@ひろみ、他の平民議員たちを武器で脅すジェローデル&近衛兵たちの前に、オスカルが割って入った。その身を楯にして平民議員を守るオスカルに、ジェローデルは部下たちが止めるのも聞かず、退却を決める。
 上官命令に背くということは、エリートまっしぐらだったジェローデルの人生が終わるということ。いやその前に、「婚約した」→「婿選び舞踏会開催」の時点で、まちがいなく社交界では笑われモノだったと思うけどな。
「私の人生は終わった」……てなことを言うのは、軍人として、エリート貴族としては正しい。
 が。
「ついでに恋も終わった」……てなことを続けて言われてしまうと、ただの変な人になるんですが、ジェローデルさん。

 そして、ひたすら革命物語。闘うロベスピエールとその仲間たち。
 まさかの真波そらダンスソロとかあって、いろんな意味で唖然。いや、そらくんがひとりセンターでくるくる踊り出した瞬間に、「あ、こいつ撃たれる」とわかるけれど。そしてもちろん、その通りなんだけど。(コントにあらず。シリアスですってば)
 ひたすら革命物語。暗く、重く、深刻に。

 で。
 場面をぶった切ってフェルゼン様@ゆみこが登場する。金糸銀糸なロング丈宮廷服が美しい、キラキラの王子様ぶりだ。
 それまでの物語も空気も関係なく1曲朗々と歌い上げ、現れたソフィア、ジェローデル相手に怒濤の説明台詞。

 2回目ですから。
 最初の登場の場違いぶりに笑いツボを押されたあとだったので。
 ギャグは繰り返されると破壊力が増します。

 それまでの空気を一気に壊す空気読め!な場違いキャラクタとゆーギャグを、2度連続キメてくれたもんで、笑い声を噛み殺すのに必死だったぞ。
 無意味な歌と不自然な説明台詞の洪水も笑いに拍車を掛ける。
 なにより、歌が、マジでうまい。
 『エリザベート』のときよりなにより、ゆみこ、すげーうまい……と、シンプルに感動しました。……こんなときに、こんな役で。
 歌がとんでもなくうまいことがまたさらに、異次元感を盛り上げる。浮くんだわ……ステキに、プカプカと。

 フェルゼンがなんで突然空気をぶった切って現れるか。
 理由はひとつ、ソフィアを登場させるため。フェルゼン様の存在価値は、ソレだけなんです。
 前座のフェルゼン様が消えたあと、ジェローデルとソフィアが語り合うの。
 ジェロとソフィアは気が合うし、偏見と差別で孤立している中、やさしかったのはアナタだけ、という植爺お得意のシチュエーションで惹かれ合っていたそうですよ。
 ジェロとソフィアが「ヌーベル・エロイーズ」を語るあたりなんか、原作への冒涜っぷりに眩暈がしますが、まあそれはさておいて、とにかく心を通じ合わせ、「また会いましょう」と約束をするのですよ。

 ……それだけ、です。
 それだけで、話は10年単位で飛びます。

 冒頭のナポレオン時代に、テロリスト・ジェローデルと修道女ソフィアとして再会、になるわけです。
 えええ。
 で、もともと手負いだったジェロがソフィアの腕の中で死んで、幕。

 うあああ。(アタマを抱える)

 誰か植爺に、「物語」はどーやって作るモノか、教えてやって下さい。

 変な人しか出てこないのは植爺作品のデフォルトだけど、やっぱなんとかしてほしーと思うのは人の常、歪んだモノは正したいと思うのが人間の性(笑)。
 
 
 つーことで、翌日欄に続く。


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