『近松・恋の道行』覚え書き。

 プログラムの左開きが嫌すぎる。

 バウホールのプログラムは、基本右開きです。
 中身が横書きだろうと、右開き。

 おかしな話だけど、そうなっている。

 理事長や演出家の挨拶、あらすじなどが横書きでも、肝心の「Cast」欄が縦書きの場合が多々あるため、そこを中心に考えているのかなと思う。

 また、わたしたちは日本人であり、和書は基本右開きであるため、たとえ横書きの内容でも右開きであることに、違和感は少ない。

 だからこそ、逆は、気持ち悪い。

 右開きの中身が横書きでも「違和感」で済むが、左開きの中身に縦書きがあると、「気持ち悪い」。
 しかも『近松・恋の道行』は、日本物だ。
 今までどんな洋物演目でも右開きで通してきたのに、何故日本物を左開きにするんだ。
 古典の教科書が左開きになっているような、気持ち悪さ。

 実際、ページを開けると出演者写真と主な配役が縦書きで、どう目を運べばいいのか混乱する。

 「Cast」ページが横書きなので、そこだけ見れば左開きでもいいのかもしれないが、そもそもなんで和物を横書きにするんだって話だ。

 洋物だって縦書きにしているのに、なんで「近松」を横書きにして、左開きにするんだ。
 プログラムを作った人のセンスと常識を疑う。


 言い尽くされたことだろうが、浄瑠璃人形@柚カレーくんが、美しい。
 彼の美貌が、なによりの説得力。
 作品のファンタジー感を底上げし、高クオリティを決定づけている。

 彼の唯一のアルバイト、「大店の若旦那」っつーのはアレですか、顔の見えない人? 大勢わらわらいる場面だから点呼できてないんだが、ぱっと見、あれなのかなと。
 だとしたらすごいなー。景子たんの作為っぷりがもお。

 相方の人形役の女の子が、あまりかわいくないのが残念。お化粧がこれから、の子なのかな。

 フィナーレの登場の仕方に驚いた。
 女の子の方はそうでもないが、柚カレーはみわっちに次ぐ扱いですか……。いやその、役割的にそうなんだけど。
 役割がどうあれ、番手や学年を優先するのがヅカのフィナーレ順なので。


 悪役あきらがかっけー。

 とてもわかりやすく悪役で、これに騙される嘉平次@みわっちってどんなん?と思えるが(笑)。

 アルバイトの番付売りにしろ、真ん中でどーん!と歌うのが様になってきたなあ。
 あきらは「遅れてきた路線」なので、今まで露出がなかった分、成長が楽しみだ。

 長作は記号めいた悪役。「嘉平次の純粋バカなところがムカつく」という意味の台詞があるにはあるが、ほんとのとこ掘り下げなくてイイ役だと思う。
 長作を「人間」として掘り下げると、話がややこしくなる。彼は脇役なので、これ以上のキャラ立ちは「物語」に不要。
 そういう意味も含めて、あきらの長作は過不足なくいい仕事しているなと。
 群衆にまぎれることなく「悪」でいるしね。

 幕が下りるときの長作がすげーかっけーので、「『近松・恋の道行』1回しか見られないんだけど、ここは見ておけ!ってポイントは?」と聞かれた折はもれなくオススメしてました。ラストのあきら、上手側にいるから見て!と(笑)。


 『近松・恋の道行』のアンドレ清吉@みつるはまた、安心のクオリティ。

 オスカルを毒殺しかけて我に返るアンドレだよね。
 いやあ、いい男です。

 忠義者、武士としての清吉ばかりが表に出ていて、「世慣れた商人」としての清吉が薄かったのが残念。
 彼の登場は世慣れた色男風だったのに、そっから先は「不器用な男ですから」的な面ばかり強調。
 対外的には飄々とした社交的な男で、だけどほんとは忠義一途な侍なんだよってギャップが、もっとあってもステキだったろうなと。

 しかし、みつるは、ピカイチのベッドシーン役者だねえ。

 『舞姫』『銀ちゃんの恋』『フィフティ・フィフティ』と、彼に主要キャラをやらせるときは、もれなくベッド(布団)シーンがついてくる……(笑)。

 ベッドで語らせたい男なんだな。
 や、気持ちはわかる、みつる!みつる!みつる! 腕を振り上げてみつるコールしたくなる。

 小弁@べーちゃんとの質感が合っていたのがまた、ポイント高し。

 ……べーちゃんはお化粧がんばってほしいけど……って、女の子たちは大概そんな感じだったか。
 日本物は難しいよなあ。


 ふみかとらいらいは、えらい勢いでいろんな役をしていたような。
 彼らクラスのスターがモブとして活躍するとは思ってなくて、出てくるたびに混乱した。
 ひと目でさっきの役と別人なのはわかるが、ひとめで彼らだとわかる押し出しの強さがあるもんで、モブには向かない……。

 ふみかの赤穂浪士生き残り、とか、らいらいの「悪ではない、これが世間」という感じの女郎屋の主人とか、いぶし銀の魅力。
 いい舞台人だほんと。

 あとらいらいは、気合いの入ったナマ足見せに、「これぞ夕霧らい!」を感じた初日(笑)。
 ならず者役で走ってはけるときにねえ、そりゃあもおステキに裾を捲り上げててねえ。太もも全開ですよ、さすがですよ。

 はっちさんは専科さんなんだー、とか、まりんの副組長ぶりが違和感なくそつなく挨拶うめえ!とか、さあやのリアルで肉のある芝居っぷりとか、すっかり大人のレアくんとか、子役専科のななくらパネェとか、きららちゃんきれい、いい役、花奈ちゃんがわりと目に入るとか、最近神房くん気になるんだがとか。


 日本物はいろいろ大変だけど、この世界観は好き。タカラヅカならではの貴重なジャンル。大切にしていって欲しい。
 きれいで濃くて楽しかったっす、『近松・恋の道行』。

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