新人公演『華やかなりし日々』で、もっとも感動したのは、ニック@モンチだった。

 本役の役作りに疑問しかなかったところへ、納得の出来るニック像を見せつけてくれた。

 ニックが、かっこいい。

 ニックって二枚目役だったんだ! うれしい驚き。
 演じ方次第で、アタマの悪い幼稚な男、ではなく、ずるがしこい世慣れた男になるんだ。

 ニックは兄貴分のロナウド@愛ちゃんに依存していない。
 兄貴と慕っているし、拾われた恩も感じているが、自分とは別の人間であることを理解している。
 野心もあり、周囲のことも見ている。
 ニック自身が、それなりにワルである。
 自分ひとりでも生きていけるけれど、ロナウドを気に入っているから、今は一緒にいる。

 自立した、ふつーの男なんですよ。
 あー、とりたててどう、じゃないけど、依存してない、ってだけで、心震えました(笑)。わたし、大の男が他人に依存してるの苦手なんだと思う。その依存心の闇を描くことがテーマなら楽しいけど、「美談」にしていると気持ち悪さが勝つ。

 モンチは見た目子どもっぽいけど、中身が「男」であることに、格好良さが上がっていた。
 幼い外見をしながら、実はめっちゃ「男」であるって、ときめきポイントですよ、実社会でも。
 端々に「ワル」っぽさもあって、将来有望な感じ。

 ニックがふつーにワルで自立した男だと、ロナウドが、非道に見えないのですよ。

 ニックが見るからに少年で子どもっぽい外見をしているので、ふつーなら「こんな子どもを見捨てて自分だけ逃げるなんて!」とロナウドの非道さが上がるはずだが。
 ニックがちゃんと「男」なので無問題。

 アーサー@りんきらに連れられ、ロナウドのところへ連行されたときのニックが、ふてくされたような、しぶとい強さを滲ませているので、ああこりゃこのまま放っておいても大丈夫だな、自分で逃げるなりするなと思える。
 本役さんの「捨てられた子犬」みたいな、可哀想な姿をしていない。

 仲間であっても、依存した関係じゃない。
 ナニかあれば捨ててよし、それで互いに恨んだりしない。またどこかで、手を組んで仕事をするかもしれない。
 それが、大人の関係。

 銀橋の歌がまた、良くてなあ。
 ちゃんと色悪としての歌だった。あ、それなりのことをして世間を渡ってきた男なんだ、とわかる格好良さ。

 銀橋ソロのあとの拍手の大きさは、この新公のなかでもっとも大きく熱かったと思う。
 観客も素直だ。

 わたしはモンチくんのマジックで書いたような顔が苦手だったんだ。特にスカフェ時代……。
 素顔よりは舞台顔の方が苦手感マシだったんだが、やっぱり舞台でも太マジックで一本書きしたみたいな感じでさあ。どこにいても目に付くし。
 でも、学年が上がって大分落ち着いてきたなあ。わたしが慣れたのかな、苦手意識は年々薄れてきている。
 苦手な人って、どっかを境に一気に好きになったりするので、それを期待している。(目に入らない、記憶に残らない、は苦手以下の存在ってことだし)

 モンチって二枚目なんだ!と遅ればせながらも発見したことだし、これからも注目してみる。


 もう何度目の主演かな、ロナウド@愛ちゃんは……うーん? 新しい発見は特にない。
 ものすごーくうまくなったとか、新しい役作りとかは感じず。
 相変わらず、大変そうだなあ、とあちこちで思った。
 素敵なスタイルをしているので、それが生きるようにもっともっと素敵になってくれるといいな。

 つか、愛ちゃんってちょっと癖のある役の方が華やぐ人なんじゃないかな。顔立ちが正統派の美形さんなんで、つい正統派の役をさせたくなっちゃうんだろうけど。
 新公主演だと白い人、正統派ヒーローになっちゃうから分が悪いっていうか。

 ロナウドは詐欺師ってことで、真っ白な役じゃないんだけど、くせ者感を出すのはまだ難しく、素直さが前面に出て、ただ白い王子さまっぽくなっているというか。


 主役にくせ者感がなく、「ふつーに主人公」って感じになっているなら、それを追い詰める2番手役が黒くなっているのかと思いきや。

 アーサー@りんきらは……ふつー?
 なんかとても、常識人でした。
 地に足着いたふつーの人。
 小僧っ子、という感じもないため、余計にふつーの刑事に見えた。
 りんきら比ではやせたのかなあ? ふつーにりんきらであり、りんきらの良さはあまり出ていなかったような。
 立ち上がりが遅かった? よくなりそう、と思った頃には終了してしまったような。
 もっと歌えるよね?

 なんかあちこち、もと星トップのまりこさんに見えた……顔とか雰囲気が。『二人だけが悪』あたりの。


 主役もライバル役もふつーになってしまい、どこに視点を置く……というか、引っかかりを持てばいいのか、ちょっと困った。

 そう、そしてさらに悪役のキング@りくくんまでもが、ふつーの人に!!

 本公演のキングって、デフォルメされたキャラっていうか、リアリティは横に置いておいて、愉快な人になってるよね。
 その分派手で、「こんなギャングいるわけないじゃん」だとしても、愉快だからいっか!という。

 それが、新公ではふつーの人だった。
 お笑い度、お遊び度が下がり、リアル度をアップ。
 いや、確かにお笑い要素も入れてあるんだけど、役の方向性はリアル向き。舞台のウソの範囲でだけお笑い要素。
 まだありそうな範囲で、ぎりぎり緩く作ってある。

 ロナウドもアーサーもふつーの人で、キングもふつーか……。
 なかなかに、引っかかりのない舞台だなあ。

 その分リアルだけど……エンタメとしてハッタリ度がダダ下がりなので、地味で起伏がなくて、脚本つまんない分さらに大変のよーな気も……。

 いっそキング役は往年のタツノコアニメの悪役レベルにはっちゃけちゃってもよかったのかも。
 作品のメリハリって点では。

 ただしわたしはヅカファンなので、お笑いのためのお笑いよりは、地味でも「カッコイイ」マフィア姿を見れたので、それはそれで楽しかったっす。

 りくくんは加速度付けてかっこよくなってる気がする。←顔が好みなのでそう思うだけかもしれない(笑)。

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