悪徳医者が札束を突っ込むのが、内ポケットじゃない!!

 花組全国ツアー『長い春の果てに』で、いちばん驚いたところは、そこです(笑)。

 ここ2回の花組全ツは東はじまりで寂しいです。なかなか大阪に来てくれないんだもの。
 わたしは千秋楽より初日に行きたい人。

 ようやく観に行けたのが、千秋楽の前日です。梅芸が千秋楽公演なのね。

 えー、『長い春の果てに』は好きじゃありません、もちろん。
 わたしの苦手な石田作品、しかも、イシダせんせの嫌なところがぎゅーっと濃縮された作品です。
 いい意味でも悪い意味でも「イシダ」って感じの作品で、いいところもあるんだけど、わたしがもともとイシダせんせ全般苦手なので、最初から1回だけの観劇予定。

 石田作品は1回観るのがいい、1回だけだと楽しいの。2回以上観ると、嫌なところばかり目について、精神衛生上よろしくない。
 それがわかっているので、自衛する。

 で、それが正解。

 1回だけだと、楽しかった。

 らんとむのメガネ+白衣プレイや、ウサギちゃんたちをネタとして楽しみ、挫折専科悪役の壮くんをなつかしくいただき、だいもんの活躍ぶりに胸を熱くする。
 出演者を好きなので、彼らの姿を愛でるだけで、1時間半過ぎてしまう。

 あー、楽しかった。かわいかった。


 しかし。
 やっぱこれって、アテ書きだったんだなあ。
 初演はキャラのハマり具合だけで突っ走っていた。再演はそこが欠ける分、作品に力がなくなってるよなあ。


 と思うわたしは、「1回観るのがいい」と理解しつつも初演を複数回観てしまってたんですなー。
 当時ご贔屓がこの作品に出演していたもので、仕方なく(笑)。

 えー、当時のご贔屓は、正義の新聞記者役をやっていました。
 昔はゴシップ記者、それが改心して今は正義の新聞記者。暴け不正!と熱血。

 悪徳医者をストーカーし、彼の罪を本人に言いつのり、「記事にしてやるもんね、ペンは剣よりも強し!」とやるもんだから、悪徳医者はびっくりして「記事にしないでくれ、金なら払う!」と札びらを切る。

 ええ、この札びらを切る、ところが。

 体格のいい悪徳医者は、小柄で華奢な新聞記者をがしっと抱き寄せ、いきなり服の中に手を入れ、ジャケットの内ポケットに金を入れようとしたのですよ。

 ……大劇場初日に観たときは、びっくりしましたよー。

 スーツ姿の男が、スーツ姿の男を抱き寄せ、服の中をまさぐるわけですから。抱かれた男はすげー抵抗するし。

 ナニを見せられているんだ……。目が点……。

 初日はまた、なかなかお金が入らなくてねー。
 抱き寄せたままじたばたする時間が長かった。

 それが、回を重ねるごとに出演者がどんどん慣れてきて、抱き寄せなくてもすっと内ポケットに札束を入れられるようになっちゃったの(笑)。
 初日とその周辺だけだったのね、あの愉快な光景は。

 しかし、初日はすごかったから。
 目に焼き付いたから。
 『スターの小部屋』のカメラにも、しっかり捉えられていたから。
 『スターの小部屋』の『長春』初日映像、該当部分を音を消して再生すると、立派なホモドラマの一場面……(笑)。

 いやあ、大ウケしたよなあ。

 それがあるもんだから、今回の再演『長春』。

 キャストが発表になったときに、期待したわけですよ。

 えりたんが、キキくんを抱き寄せ、服の中に手を突っ込むわけですね!!

 で、病魔に冒されたえりたんを、キキくんが愛で支えるわけですね。がりんくんと三角関係になるわけですね。

 わはは。なかなか楽しそうだー。


 ……内ポケットちがうやん。

 クロード@えりたんは、ジャン@キキくんの胸ポケットに、紙幣を突っ込んでました。

 いやむしろ、何故内ポケットだったんだ、初演。
 変だよなー。
 なんで内ポケットにお金を入れようなんて、思いついたんだ、イシダ。
 相手の服、はだけさせなきゃならんわけやん。
 無理があるやん。

 再演の演出変更により、初演が変だったってことが、よーっくわかりました。

 でも、変でありがとうごちそうさま、でした。初演(笑)。

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