月組『ロミオとジュリエット』、ロミオ@まさおに大泣きしまくりました。
 あー、消耗するったら。

 てことで、あくまでもわたし目線のロミオ語り、続き。


 ロミオは、変われたのかもしれない。
 このまま、はじめての恋が、心を開いたはじめての出来事が、「世界」に受け入れられたのなら。

 しかし、「世界」は彼が思っているようなものじゃなかった。
 仲間たちは、彼を責める。「裏切りだ」と。

 ……とーぜんじゃん。
 「親友」「仲間」そんな美しい言葉を使って誤魔化して、ほんとうのところ線を引いて心を閉ざしていたのは、ロミオ自身じゃん。
 真の「友だち」なら、数で囲んで責め立てたり、ヒステリックな反応はしないよ。
 その程度の関係しか築いてこなかった、自業自得だよ。

 「君たちにはわからない」……叩きつけるのは、拒絶の言葉。

 「僕はまだ君たちを愛している」……ベンヴォーリオ@マギー、マーキューシオ@みやるりに訴える言葉の、白々しさ。
 マーキューシオにめいっぱい感情移入しました、どのクチがソレを言うか!!って。ふざんけんなよ、裏切り者は自分の喉を刺せ。

 ロミオの心が、閉じていく。
 ジュリエット@ちゃぴを愛することで、愛の力を信じることで、開きかけていた扉が、閉じていく。
 会話を放棄して逃げ出す姿の悲しさ。

 残されるベンマーもつらい。
 あいつ、マジ言葉通じねえ。

 「友だち」に斬りつけられ、一方的に「僕、被害者」と思いこんだロミオ。
 赤青乱闘の最中に駆けつけ、「誰が誰を愛してもいい!」「誰もが自由に生きる権利がある!」……えーと、君が言ってるの、自分のことだけだよね? 「誰」ってのは、三人称ではなく、一人称。「僕」でしかない。

 「先生にはっきり意見するAくんって、なんか粋がっているっていうか、いい気になっててイタイって、みんな思うんじなゃいかな。注意した方がいいよ、Aくんのために言ってるんだ」……って場合、思ってるのは「みんな」じゃなくて「お前」だろーが、っていう。
 ロミオの言う「誰」って、そういうことだよね?

 僕がジュリエットを愛してもいい、僕は自由に生きる権利がある。

 ……このガキ、うざい(笑)。
 そりゃヒーロー・ティボルト@みりおもキレるわ。

 狭い世界で閉じてしまった子どもだから、マーキューシオが殺されたあとは、そりゃキレて復讐。
 なんつー説得力。

 ロレンス神父@エマさんに泣きつく様も、まさに「子ども」で。
 エマさんとの、年齢差も見た目からばっちりあるしね。神父の抱擁力パネェし。

 ところで、ロミオの運命の恋人、ジュリエットは弾丸娘、引き金引いたが最後、まっしぐらに飛んでいく。
 暴走上等!という、これまたロミオにふさわしい女の子。
 世界の閉じたロミオ相手に、あうんの呼吸でついていく。
 幼くまっすぐ、ナニも見えない。
 いや、このふたりいいです、マジで。

 マントヴァの町をひとりさまようロミオの、心の壊れっぷり。
 「ジュリエットなしでは生きていけない。追放は死刑と同じ」が説得力。
 だって彼にとって「世界」はジュリエットなんだもの。誰も愛してない、信じてない。愛せなかった、信じられなかった。
 そんな不自由な彼が、彼女だけを愛した。

 ジュリエットの死を伝えられたロミオは、あの瞬間、死んでいた。
 「世界」が死んだ、失われた。
 それは彼自身の死、喪失。


 全編にわたって、ロミオが、切なすぎて。

 彼は、間違ってる。
 ひとことで言っちゃうと、ただの中2病。
 だけどそれは、大人であるわたしが、幼い彼を振り返って言っていることで、過ぎた季節だからこそ、わかることで。
 今現在、その中にいる彼自身の痛みは、彼自身を滅ぼすほどのもので。

 通り過ぎてきた思春期の痛みや絶望、葛藤や欲望が赤裸々で、切なくて悲しくて、愛しくて、ならない。

 このロミオ、愛しい。
 バカだけど、ガキだけど、ほんとうに愛しい。

 このカンチガイしたガキに、教えてやりたい。
 ひとりで勝手に絶望して、世界を閉ざして閉じこもってる、このバカを、扉の鍵こじあけて引きずり出して、見せてやりたい。

 人間が、愛するに値することを。

 勝手に絶望してんな、閉ざすな、知らないだけのくせに。
 あんたが絶望という名の拒絶で閉め出した、いろんなもののすばらしさ、美しさを、教えてやりたい。

 人間のやさしさとか、親の愛とか、友情の意味とか。
 教えたい。

 知るべきだよ、ロミオ。

 この子が、あんなところに行ってしまう前に、救いたかった。
 愛の力を信じると、きらきらした瞳で歌ったあのときのように、きっときっと、あったはずなんだ、そんな未来が。

 それが叶わなかった。
 悲しくてならない。

 そして、そんなロミオが愛しい。

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