『井上芳雄 シングス ディズニー ~ ドリーム・ゴーズ・オン!』へ行ってきました。

 場所は大阪フェスティバルホール。
 昔堂島で働いていたので、このへんなつかしい……お店とかずいぶん変わっちゃったけど。阪急梅田から地下街てくてく、昔の通勤路。ドーチカ突き当りから地上へ出て。
 まさか堂島ホテルがなくなるとは思わなかったよなああ、職場の仲間たちと中華よく食べに行ったよな、とか、年寄りの感慨は絶えない。
 そしてやっぱりなつかしいフェスティバルホール。
 わたしは地下のリサイタルホール専門だったけど、建物自体はしょっちゅう来てました、若いころ。

 このホールで、だいもんが歌うんだ……。
 そう思う不思議さ。
 このホールで、だいもんの歌を聴けるんだ。
 そう思う喜び。

 や、ちょー端っこ席なんだけどね、会場に入れただけでもうれしい。自力では取れなかったので、譲ってくれた友人に感謝。

 さて、コンサートの感想を記す前に、ぐたぐた考えたことを書いておく。


 現役男役の外部出演が滅多にないのは、当然のことだ。

 と、今回改めて思った。

 だいもんが、外部出演する。
 劇団からの発表は、
外部出演について『井上芳雄 シングス ディズニー ~ ドリーム・ゴーズ・オン!』
2015/12/18
※雪組の望海 風斗が外部出演することが決定しました。

 ……だけなんすよ。
 それ以上の情報ナシ。

 外部出演って……ナニするの?

 歌うことはわかる。ディズニーコンサートのゲストなんだから、ディズニー歌うんでしょうよ。それはわかる。

 問題は、もっと根本的なこと。

 ……どっちで?

 えー、男役って、実は女性です。

 わたしは男役の三人称を「彼」、呼び方も「男」「男の子」で統一しておりますが、それはタカラヅカを夢の世界、タカラジェンヌをフェアリーと想定しての「ごっこ遊び」のようなもんです。
 フィクションをフィクションだとわかったうえで、楽しんでいる。ババ抜きでもオセロでも、ルールを守らないと遊べないでしょ? 男役は男、夢を楽しむためにルール必要。

 ゲームを楽しむためのルールとして、ツールとして割り切っているけれど、ほんとのとこ、男役は、女性です。

 タカラヅカ以外の世界では、だいもんだってふつーに女の子です。

 女の子として出演するの?

 わたしが今までに観た現役タカラジェンヌの外部出演はふたつだけ、しいちゃんとすずみん。
 しいちゃんは外部のふつーの舞台、ふつーのお芝居に出演だった。「女優」として。少年っぽい女の子の役。タカラヅカの男役、ということに配慮した役だったけど、ぶっちゃけOGでいいような仕事。
 すずみんはもっと謎。琵琶奏者のコンサートに出演し、琵琶の演奏で踊ってた。こちらはあくまでもタカラヅカの男役として。……でも、そもそもなんで琵琶演奏で踊る必要があるのかは不明。演出も、ただふたつを並べただけで融合なんてまったくさせてなかった。(ちなみにこの謎コンサートの演出家はミキティ)

 「タカラヅカ男役」という設定は、外部で使うには難しすぎる。

 しいちゃんのときに思った。
 外部で「女優として」男性俳優と共演すると、「タカラヅカマジック」が消える。
 男役、という架空のキャラが消えて、生身の女性が出てしまう。タカラヅカの舞台で女役をするのとはわけが違う。本物の男性と絡むと、「男役」は通用しないんだ。
 それは、男役が本物の男性に劣る、という意味じゃない。
 色鉛筆で描かれた線が、ペンキの線の横だと見えなくなる、みたいなもんで、「違う道具なんだ」というだけのこと、「色鉛筆がペンキに劣る」わけじゃない。画用紙にペンキは使わないし、壁を塗るのに色鉛筆は使わない。
 しいちゃんの少年っぽい少女役はすっげーかっこよくて、男性俳優にも負けずにガシガシ踊ってアクションしてて惚れ直した。いい役で、いい公演だった。観られて良かった。それは本当。
 だけどやっぱり、「タカラヅカの男役」は現役時に「女優」として外部舞台に立つのは微妙だと思った。

 長い年月をかけて、「タカラジェンヌ」という架空の存在を創り上げるのに、その渦中に「生身の女性」姿を見せるのは得策ではない。
 ……からこそ、現役タカラジェンヌは外部で女優仕事をさせないのだ。
 もしもそれが「商売として益がある」なら、劇団はやってるでしょ、ジェンヌの貸し出し。ばんばんと。
 『TAKE FIVE』みたいなお祭り出演じゃなく、ガチに女優として東宝ミュージカルでもテレビドラマでも出して、俳優とラブシーンさせたり、OGと変わらない仕事させてるんじゃない? スミレコードもなんもない役を。

 女性としての外部出演は、タカラヅカの男役にはマイナス。
 かといって、「男性の俳優」として、本物の男性と共演できるはずもない。本物の男性は、あんな特殊なメイクしてません。
 OGは「男性役」で本物の男性と同じ舞台に立っているけれど、何作かそういう舞台も観に行ったけど、それはOGだからできることだ。タカラヅカまんまじゃなく、別の形を作り出して、別の舞台を作っているんだもの。

 のんきに「だいもん外部出演うれしい」と思ったけど、よくよく考えれば、こりゃ難しいことだなと。

 ということで、ぐだぐだ語りは続く。

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