『A/L−怪盗ルパンの青春−』初日を観て。

 『A/L−怪盗ルパンの青春−』と『MIND TRAVELLER』、どっちが駄作か?

 という設問を自らに課してみた。

 終演後、ドリーさんと話しているときに、つい、『MIND TRAVELLER』を例に出してしまったので。

「それで、『A/L』っておもしろいの?」
「ファンなら通えるんじゃない? 『MIND TRAVELLER』に通った人間がいるんだから」

 Q1 サイトーくん新作『A/L』ってどんな話?
 A1 イケコ新作『MIND TRAVELLER』くらい、おバカな話。

 Q2 『A/L』と『MIND TRAVELLER』って、どんな風におバカなの?
 A2 両方とも、マッド・サイエンティストが出てきます。それで、察してください。

 Q3 ……それで、どっちの方がマシ?
 A3 『A/L』は最初からコメディと謳った上で、おバカなネタを使って、おバカな話を明るく罪なく展開。マッド・サイエンティストもはじめからギャグキャラ。
    『MIND TRAVELLER』はアレ、作者もキャストもドシリアスのつもりで作っているので、おバカだとは誰も思っていないところがサムい……。

 Q4 『A/L−怪盗ルパンの青春−』と『MIND TRAVELLER』、どっちが駄作か?

 A4 どっちもどっち。

 そしてここはタカラヅカだ。
 質問を変えよう。

 『A/L−怪盗ルパンの青春−』と『MIND TRAVELLER』、どっちがリピートに値する?

 結論。

 贔屓が出演している方が、リピートできる作品。

 わたしはまっつファンなので、『MIND TRAVELLER』に通った。
 記憶喪失で殺人事件でサスペンスで、電気椅子出てきてビリビリで、海馬の帝王で世界征服で、こんなに阿呆丸出しの話なのに、作者がシリアスの「いい話」のつもりで書いていることがさらにもの悲しさを加速させた、おバカな駄作。
 それでも、最低限後味は悪くないし、主役はかっこいいし若手にも見せ場があるし、役はバカだけどまっつはオイシイしで、通うことはできた。

 それと同じだと思う。

 『A/L』はたしかに、『MIND TRAVELLER』と張るぐらい、アレな作品だ。
 話はめちゃくちゃ。
 ツッコミだらけ。
 だけど、キャストにそれぞれ見せ場があるし、薄っぺらかろーとどーしよーと、後味は悪くないし。
 たか花時代には考えられないくらい、主役以外に役があるから、「贔屓がオイシイ役」になっている確率が高い。

 それなら、通えるレベルだよ、『A/L』。

 『MIND TRAVELLER』に通ったわたしが言うんだから大丈夫。『A/L』だって、贔屓が出演していればリピートできるよ!
 もしもまっつが『A/L』に出ていたら、どんなに「DC高い!」と泣きゴト言いながらでも、わたしは通ったことでしょう(笑)。

 
 さて。
 『A/L』の物語だが。

 ……コレはすべて、おかしなフェチ男が巻き起こしたんだ。

 なんのフェチかって?

 首飾りフェチ。

 よくわかんないけど、そーゆー性癖の男がいるんだ。
 若くてハンサムで大貴族で、商売が巧くて大金持ちで、頭が良くて趣味で大学の講師をやっていたりする、スーパーマン。その名もルイ・アントワーヌ・レオン@ともち。
 ここまでなにもかも持ち合わせているのに、彼は、首飾りフェチなのだ。

 首飾りにハァハァするんだ。
 首飾りがないと生きていけないらしいんだ。

 つーことで彼は、スーピーズ伯爵家の家宝「王妃の首飾り」を欲していた。
 スーピーズ伯爵家は事業に失敗したとかで落ちぶれており、経済援助してくれる人を募集中だった。
 そこでフェチ男レオンは、「娘婿になってあげよう。そうすれば家宝の首飾りは私のモノですね?」と、女当主に詰め寄った。

 なにも結婚しなくても、破産寸前の伯爵家から宝石を取り上げることぐらい、できそーなもんだが。
 レオン様の方が、身分も富も名誉もあるっつーに、なんで婿養子なんだろう?
 「伯爵家の家宝」とか言ってるけど、そんなの嘘っぱち。わずか10数年前に女当主が手に入れただけのモノなんだよ、「王妃の首飾り」。
 もともとソレはスーピーズ伯爵の親戚、ローアン枢機卿@いりすの持ち物だったんだから。
 代々守り継がれてきた家宝ならともかく、たかが10数年の歴史しかない家宝、婿養子にならなくても手に入れられるだろうに。
 フェチだから、他のすべてを捨ててもいいと思ったんだろーか。

 だがこの「王妃の首飾り」は、なんとニセモノだった!
 10年前だかに、何者かに盗まれ、女当主はイミテーションを作って身につけていたんだな。
 なんだレオン騙されているのか?! と思いきや、彼はどーやらそのことに気づいている模様。……「疑う」というレベルであったとしても、まずその疑いを晴らしてから結婚しないか? 一生の問題だぞ?
 フェチだから、他のすべてを捨ててもいいと思ったんだろーか。

 イミテーションかもしれないっつーに、レオンは首飾りを手に入れるために、何故か伯爵家の娘アニエス@ウメと結婚しようとした。
 ところがアニエスは夢と現実の区別が付かない妄想娘。
「あたしは『怪盗紳士』の主人公、アルセーヌ・ルパンと結婚するのよ! 現実の男なんか嫌よ!」
 女の子だから、まだマシなのか? 同じコトを男が言うと大変だぞ?……「ボ、ボクはPCゲームの中の、ナナコちゃんと結婚するんだ。げ、現実の女なんか嫌いだ。ナナコちゃんは現実の女みたいにひどいことを言ってボクを傷つけたりしないんだ。いつかナナコちゃんがボクを迎えに来るんだ。そそそしてボクたちはしあわせになるんだ」……えーと。

 フェチ男VS妄想娘。
 「あんたなんか大嫌い」と言われたレオンは、妄想娘の「心の恋人」ルパンを奪おうとした。
「『怪盗紳士』さえなくなれば、彼女の心は私に向かうはずだ」
 金も権力も有り余っているレオン、『怪盗紳士』を発売禁止、作者を「泥棒をヒーローとして描く、秩序良俗に反する犯罪者」として逮捕させた。

 ……本を発売禁止、って……。作者を逮捕って……。

 アホですか?

 そんなことをして、アニエスに愛されると本気で思ったのか?
 もちろん、アニエスは大激怒。

 いやそもそも、そんなことをする権力があるなら、破産寸前の伯爵家から、首飾りだけ取り上げろよ……。

 これで「実は、レオンはアニエスを愛していたのだ。だから彼女を手に入れたかったのだ」というオチがつくなら救われるんだが。
 わたしもそー思って、そうすがりつきたい思いで、見ていたんだが。
 リチャード@まっつが「海馬に乗った征服者〜♪」と歌い出したときに、すべての思いが崩れ落ちたように、結局レオンにも裏切られるのさ。
 レオンはアニエスを愛してなんかいないの。ほんとーに、欲しかったのは首飾りだけなの。そう本人が言うの、クライマックスで。
 ただの首飾りフェチかよ……っ!!
 ただの海馬ヲタクかよ……っ!!と、愕然とした記憶再び。
 いやその、いっそ笑えていいっちゃーいいんだが。

 まあソレは置いておいて、レオンが『怪盗紳士』発売禁止、作者逮捕! とか、ろくでもないことをやるから。
 ほんとに無意味で馬鹿げていて、発売中止まではともかく、作者逮捕ってなんだそりゃ、ありえないだろ、と顎を落とさせるよーなひどい展開を、無理矢理するから。

 やぶ蛇が現れた。

 架空の人物、アルセーヌ・ルパンが本当に現れたんだ。

 続く〜〜。


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