現れちゃったんだよ、アルセーヌ・ルパン

 つーことで、『A/L−怪盗ルパンの青春−』の話の続き。

 ヴィクトワール・ル・ブラン@まいらちゃんの書く小説の中のキャラクタ、架空の人物アルセーヌ・ルパン。
 ソレが、小説の中と同じように予告状を出してきたんだ。

「『怪盗紳士』の発売再開し、作者を釈放しろ。でないと娘のアニエスをもらう」

 スーピーズ伯爵家宛に。
 発禁騒動を指示したのはフェチ男レオン@ともちだけど、表向きはスーピーズ伯爵家が仕切ったことになっていたので。気の毒な伯爵家。

 『怪盗紳士』の主人公ルパンに恋していた妄想娘アニエス@ウメは大喜び。
 彼女ははじめからルパンにさらわれる気満々だったので、自ら望んで護衛を突破、現れたルパン@タニと共に逃避行。

 このルパンは、もちろんニセモノ。
 架空の人物が現れるわけない。
 彼の本名はラウル。『怪盗紳士』の作者の関係者だ。
 言いがかりで逮捕された身内を助けるために、一芝居うっただけのこと。

 そう。

 公式のあらすじに、

モーリス・ルブラン著「怪盗紳士」をもとに、文学界が生んだヒーローの一人、アルセーヌ・ルパンの生い立ちから怪盗へと至るまでを描いた冒険活劇。明るく躍動感に溢れ、クラシックな雰囲気が漂うミュージカル作品。

 と書いてある、この作品。

 「アルセーヌ・ルパンの生い立ちから怪盗へと至るまで」とは、ずばり、首飾りフェチ男が、妄想娘の気を引くために引き起こしたゴタゴタのことなんですねっ!!

 レオンが首飾りフェチでさえなければ、怪盗ルパンは誕生しなかったの!!

 たとえアニエスが現実と妄想の区別のつかないイタイ娘だったとしても、レオンが「架空のヒーローが恋敵だ、それなら本をなくして作者を逮捕してしまえ!」とわけのわからない行動に出なければ、ルパンは生まれなかったの。

 すげえよ、このオチ!!

 少年ラウルが「王妃の首飾り」を盗んだ真犯人だとかゆー話は、ぶっちゃけどーでもいい。

 首飾りが「スーピーズ伯爵家にある」という前提のみで話が進んでいるんだもの。
 首飾りはほんとはニセモノなんだけど、レオンがソレを知らない(疑っていたはずなのに)から、意味がないの。
 首飾りが本物でも、話は同じ展開だもの。
 レオンは、首飾りを手に入れるために本を発禁にし、作者を逮捕する。そして、ラウルはルパン・コスプレをする=ルパン誕生。

 すべては、おかしなフェチ男が巻き起こしたんだ。

 レオンが「女の子の気を引くために」、その女の子が好きな「小説を抹殺」するとゆー、めちゃくちゃな行動に出なければ、ルパンは誕生しなかった。

 ラウルは平和に大学生をやって、それで終わり。アニエスともスーピーズ伯爵家とも無関係で一生を終えただろう。

 あのー。

 どう考えても、おかしいから。

 レオンの行動。

 『エリザベート』のトートに恋していた娘が、
「トート様がいつかきっと迎えに来てくれる。トート様は寿美礼様バージョンよ! あの美声で迫られたいわ♪ 現実の男と結婚なんか絶対しない!」
 と言い続けているからって、現実の男に目を向けさせるために、ミヒャエル・クンツェだのシルヴェスター・リーヴァイを逮捕させるか? 春野寿美礼を逮捕させるか?
 んなこと、考えないだろ? まともな思考回路があったら。

 悪役が、信じられないくらいバカでないと、この物語は存在しなかった。

 つまり、物語をでっちあげるために、うまく描けなかった部分を全部「悪役がバカ」ということにして、逃げた。

 と、ゆーことですねっ。

 レオンが全部バカだからなのよ。なーんにも問題ナシ、だってレオンがバカで変態だからなの。
 変? 辻褄が合わない? そんなことないって、広い世の中、そんなわけのわからないことを考えたり、したりする人もいるって。
 いないなんて誰にも断言できないでしょ? 世界中の人の考えがわかるの? 世界中の人の行動がわかるの?
 レオンはたまたま、そーゆーわけわからない人だったの。
 ま、そーゆーことで。

 ……ふふ、ふ。
 デジャヴですわ。
 リチャード教授@『MIND TRAVELLER』も、そんな人でしたわね……。
 テオ、アンジェラ、フィリップの3バカトリオ@『MIND TRAVELLER』も、そんな人たちでしたわね……。
 人としてあり得ないくらいバカでわけわかんないけど、「そーゆー人だったんだ」つーことで、物語のゆがみ全部押しつけられた人たちがいたわよね……。

 簡単でいいよなー。
 辻褄が合わないこと全部、「バカで変態だからだ」で悪役のせいにしてしまえるんだから。
 バカな悪役が信じられないくらいバカなことをするから、それで物語がはじまるんだ。
 簡単でいいよなー。

 つーことで。

 アルセーヌ・ルパン誕生のヒミツは、フェチ男。……すばらしいFAだ、サイトーくん。

 ルパンはなんちゃってルパンで、怪盗でもなんでもないの。
 べつに美学があって盗みを繰り返すわけでもなんでもない。
 最後ラウルは旅立つけれど、「怪盗になるため」でもないよな。必要がないし。
 ヴィクトワールはこれからも『怪盗紳士』を執筆するんだろーし、あくまでも「ルパン」は架空の人物だよね。

 ねえねえ、どのへんが「怪盗ルパンの青春」なの?

 大学生のラウルはたしかに青春まっただ中だったけれど、ルパンとはまったく関係なかったし。
 レオンがいなければ、ルパンになることもなかったし。

 やーもー、めちゃくちゃすぎて、すげーなぁ(笑)。

 
 でもね。
 『MIND TRAVELLER』と同じ、物語がどれだけぶっ壊れていても、贔屓が出ていれば楽しい作品だと思うよ。

 罪なく愉快なバカコメディだもん。

 役割は壊れていても、キャラクタの造形は魅力的だから。

 タニちゃんのコスプレは麗しいし、ウメちゃんの「おてんぱ天使」はアニメの萌えキャラそのまんまだし、ホームズ@ほっくんは「みっちゃん」キャラまんまでかわいいし、銭形警部@はっちゃんは最後に男臭い男役で人生真っ当だし、探偵と警部の相方たちも、ラウルの相方のちぎ太も、またしてもちぎ太とカップル(笑)のたっちんも謎の黒塗りをのぞけば出番やたらとアリだし、ラヴシーンありますのラウル父@いりすも、やりすぎマッド・サイエンティスト@すっしーも、とにかくみんなオイシイから! すべてのツケを押しつけられた悪役@ともちも、外側だけは見栄えしまくりだから!!
 宙組ファンならたのしく見られるよ。

 キャストにろくに出番も見せ場もない、後味の悪いつまんない作品より、ずーっとマシだ。
 ぶっ壊れていてくだらなくても、かわいくて愉快な後味のいい作品の方が。

 『MIND TRAVELLER』がそうであったように。

 大丈夫。たのしい作品だよ。


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