ショータイム!@TUXEDO JAZZ
2007年3月20日 タカラヅカ 軽やかに駆け抜ける彼女はたぶん、なにも考えていない。
彼女は彼女として「在る」だけ。
でも彼女は「糸」としての役目を持つ。
いくつかの世界を縫い合わせる、赤い糸。
赤いストライプのスカートをひるがえして、ときにはハンドルを持って。
小さくて甘い、無邪気な毒@いちか。
いちかの甘さと軽さとは対照的に、街の語り部@シビさんが大人の香りで物語のはじまりを告げる。
窓から、ひとりの男@オサが現れた。
なにかを期待する、高揚感と共に。
たぶんこれは、特別な時間。
「ショータイム!」
スター然とした男@まとぶが太鼓の音と共に現れ、しあわせな、光にあふれた世界が広がる。
オサは、雨の中ひとりの少女@あやねと出会った。
雨が涙に見える、なつかしい少女。
男と少女は手を取り合い、愛をたしかめ合う。
少女と出会った男は目を線にして笑い、光の中で歌う。
幸福な時間。
夢のような時間。
だが、すべては幻か。
オサはまた、暗い世界に立っている。
彼が生きる現実は、光とはほど遠い。
その現実の中で、オサはひとりの少女@ののすみと出会う。
雨が涙に見える、なつかしい少女。
この少女がリアルならば、やはりあやねは幻なのだろうか。
それでもオサは、あやねを思い切ることが出来ない。
あやねとの出会いは、現実のモノなのか?
闇社会で生きていたオサは、ののすみを見かけてしまったので、もう元の社会へ戻れなくなる。
今までの彼なら、愛人@としことつきあいつつも、組織のボスの娘@ゆまの手を取り、いくらでも他人と自分を汚し、生きていくことが出来たのに。
組織と彼の抱える現実……その合間合間に、ののすみの姿が見える。オサが見ているのはののすみではない……彼女を通して愛する少女・あやねを見る。
闇に生きる彼が見る、光。
手の届かない幻。
ゆまの手を振り切って走り去るオサの前途にあるのは、破滅。
それまで組織のひとりとして、ふつーの「人間」のふりをしてオサの現実に混ざっていたまとぶが、突然「人でないもの」として歌い出す。
なにもかもわかっていたかのように。
そう、彼はオープニングでオサと彩音の「ショータイム」を告げていた男だ。
彼が「この物語」を操っている……?
破滅したはずのオサは、再び幻の中にいた。
それまでの闇社会の服から、「着替える」ためにこの世とあの世の境にある「店」にいる。
オサを導くのは、愛する少女の顔をした、別人。
そしてもうひとり、最初の幻場面から、オサのあとを追うように、あるいはもうひとりのオサであるように、幻にも現実にも混ざっていた男@まっつが、ここでもオサの代弁を努める。
数々の服、さまざまな世界。
オサが選んだのは、タキシード。
最初の夢の中で着ていたように。
オサにその服を選ばせたのは、まとぶ。彼が操るままに、オサと彼の世界は動く。
幻と現実、あやねとオサの世界の間を自在に縫う赤い糸の少女@いちかが現れる。
いちかと踊るオサ、そして彼の代弁者でもある傍観者@まっつが、ここでもまた彼の心情を歌う。
求めたように、あるいは誘導されたように、オサはいつか見た幻にたどりつく。
少女あやねのいる世界。
キラキラと輝く夢の世界。
「ショータイム!」
スター然とした男@まとぶが、あたりまえにオサとあやねの元で踊る。
アリスのティーパーティ、全員集合。
語り部@シビさんも、赤い糸@いちかも、傍観者兼オサの相似形@まっつも、誘惑者@としこも、人間代表@壮も、一緒になってキラキラ歌い踊る。
夢の終わりは、物語の最初と同じ。
サックス吹き@はっち、警官@大伴、ジャンパーの男@まりんら、物語の最初の顔ぶれが行き交い、語り部@シビさんが再び物語を牽引していく。
死んだはずのオサは、前回とは正反対の白いスーツに身を包んで現れる。
「回転扉」をくぐって、「着替えた」から、リセットされたのか。今彼が生きる現実は、前回の現実とは別なのか。
オサを取り巻く仲間たちも、ダークスーツではなく、白スーツ。
生きる焦燥感、閉塞感が男たちを追いつめる。
現実のはずの舞台に、「ヒトでないモノ」たちが跋扈する。
赤いスーツの男@まとぶと、赤いベストの男たち、そして誘惑する美女たち。赤い糸のはずのいちかも、ここに混ざっている。
いつもいつも、「ヒト」のふりをしてオサの前に現れた男、まとぶ。
だがついに彼は、本性でオサの前に現れた。
追いつめられ、追い立てられる。
逃げ場などないのに、行くあてなど見えないのに、ただただ「ここではない」と急き立てられる。
幻のショータイムに明るい歌声を響かせていた金色の歌姫たちが、狂気のスキャットを歌い継ぐ。
そして。
光が射す。
闇を照らす、清浄な光。
天から、救いの少女が舞い降りる。
絶望するオサの前に、あやねが現れる。
まるで操られるように、惹きつけられるように、オサとあやねはシンクロする。
同じ踊り、同じ動き。
魂の相似形、だからこんなにもなつかしい?
「♪もしも昨日の朝 あなたと出会ってたなら ちがう明日への扉開けたでしょう」
過去形の未来が哀しく美しく響く中、オサはほんのわずかな間、あやねと触れあう。
それを遮るモノが、まとぶ。
彼はなんなのか。
物語はいつも、彼と共にあった。
あやねは消え、彼女によく似た別の女……いや、似ても似つかぬ毒を持った女@みわっちに代わった。
赤いシャツの男@まぁくんが暴力的な狂気を歌い、赤ベストの男たち、誘惑者たちが踊り狂う。
語り部@シビさんも現れ、すべての物語がここに集約される。
いつか見た幸福な夢と同じ顔ぶれ。キラキラ光にあふれていた、あのときと同じ世界。
だけど今。
仲間だった白スーツの男たちも同じ色に染め上げられ、狂気は渦となってうねりをあげる。
これは現実? それとも幻?
オサはあやねの姿を追って走る。
だけど彼女はまとぶの腕の中。最初から全部仕組まれていたことなのか。
オサは奈落へ落ちていく。
「ショータイム!」
告げるのは、いつもまとぶ。
物語は、彼の手のひらの上。
まとぶが手に入れたかったのは。
この物語のほんとうの目的は。
役目を終えたあやねは、ふつーの女の子の顔に戻り、同じ世界で生きる男の子たちの元へ帰る。
オサの相似形@まっつが、陽気にあやねを口説きに現れる。いつもいつも彼は、オサの心情を歌うために出てくるから。……結局振られるけどね。似ていたとしても、実際彼はオサにはぜんぜん届かない、別のモノだから。
赤い糸の少女@いちかが陽気に世界を縫っていく。
でたらめな縫い目。
でも、美しいの。
美しいの。
語り部が歌う。いつか愛する人と出会う日のことを。
☆
てな筋立てだと思っているので、まとぶ氏の薄さ、弱さに肩を落としております。
なろうと思えば、主役になれるのに!! と。
そして、そんな筋立てをまるっと無視してオサ様はたのしそーに暴走しているし。
公演がはじまった当初は、オサ様ちゃんと翻弄されていたのよ。カオス場面で苦悩していたのよ。
なのにちょっと目を離した隙に(笑)、誰よりも狂気を愉しんでいる。
ほんとにこの人は……。溜息。(でもスキ。ダイスキ)
勝手に解釈してたのしんでいるだけなので、コレが答えだなんて思っていません。
てゆーかわたし自身、これからだってずっと変わっていくと思う、どう感じるか、どう解釈するか。
登場人物が多すぎて、とても整理しきれないし、書ききれない。
壮くんは相変わらず「人間」らしくてツボだし、みわっちは両極端な役割だし、さお太さんもナニ気に謎だし、まぁくんとマメが気になって仕方ないし、ストーリーとは別に、ふみかが目について目についてしょーがないし(ナマふみかの「眉毛」にハマって以来、舞台でも「眉毛」を探してしまうの……ふみかLOVE)。
楽しみは尽きない、『TUXEDO JAZZ』。
うわぁああん、もうムラで観られないなんて〜〜!!
彼女は彼女として「在る」だけ。
でも彼女は「糸」としての役目を持つ。
いくつかの世界を縫い合わせる、赤い糸。
赤いストライプのスカートをひるがえして、ときにはハンドルを持って。
小さくて甘い、無邪気な毒@いちか。
いちかの甘さと軽さとは対照的に、街の語り部@シビさんが大人の香りで物語のはじまりを告げる。
窓から、ひとりの男@オサが現れた。
なにかを期待する、高揚感と共に。
たぶんこれは、特別な時間。
「ショータイム!」
スター然とした男@まとぶが太鼓の音と共に現れ、しあわせな、光にあふれた世界が広がる。
オサは、雨の中ひとりの少女@あやねと出会った。
雨が涙に見える、なつかしい少女。
男と少女は手を取り合い、愛をたしかめ合う。
少女と出会った男は目を線にして笑い、光の中で歌う。
幸福な時間。
夢のような時間。
だが、すべては幻か。
オサはまた、暗い世界に立っている。
彼が生きる現実は、光とはほど遠い。
その現実の中で、オサはひとりの少女@ののすみと出会う。
雨が涙に見える、なつかしい少女。
この少女がリアルならば、やはりあやねは幻なのだろうか。
それでもオサは、あやねを思い切ることが出来ない。
あやねとの出会いは、現実のモノなのか?
闇社会で生きていたオサは、ののすみを見かけてしまったので、もう元の社会へ戻れなくなる。
今までの彼なら、愛人@としことつきあいつつも、組織のボスの娘@ゆまの手を取り、いくらでも他人と自分を汚し、生きていくことが出来たのに。
組織と彼の抱える現実……その合間合間に、ののすみの姿が見える。オサが見ているのはののすみではない……彼女を通して愛する少女・あやねを見る。
闇に生きる彼が見る、光。
手の届かない幻。
ゆまの手を振り切って走り去るオサの前途にあるのは、破滅。
それまで組織のひとりとして、ふつーの「人間」のふりをしてオサの現実に混ざっていたまとぶが、突然「人でないもの」として歌い出す。
なにもかもわかっていたかのように。
そう、彼はオープニングでオサと彩音の「ショータイム」を告げていた男だ。
彼が「この物語」を操っている……?
破滅したはずのオサは、再び幻の中にいた。
それまでの闇社会の服から、「着替える」ためにこの世とあの世の境にある「店」にいる。
オサを導くのは、愛する少女の顔をした、別人。
そしてもうひとり、最初の幻場面から、オサのあとを追うように、あるいはもうひとりのオサであるように、幻にも現実にも混ざっていた男@まっつが、ここでもオサの代弁を努める。
数々の服、さまざまな世界。
オサが選んだのは、タキシード。
最初の夢の中で着ていたように。
オサにその服を選ばせたのは、まとぶ。彼が操るままに、オサと彼の世界は動く。
幻と現実、あやねとオサの世界の間を自在に縫う赤い糸の少女@いちかが現れる。
いちかと踊るオサ、そして彼の代弁者でもある傍観者@まっつが、ここでもまた彼の心情を歌う。
求めたように、あるいは誘導されたように、オサはいつか見た幻にたどりつく。
少女あやねのいる世界。
キラキラと輝く夢の世界。
「ショータイム!」
スター然とした男@まとぶが、あたりまえにオサとあやねの元で踊る。
アリスのティーパーティ、全員集合。
語り部@シビさんも、赤い糸@いちかも、傍観者兼オサの相似形@まっつも、誘惑者@としこも、人間代表@壮も、一緒になってキラキラ歌い踊る。
夢の終わりは、物語の最初と同じ。
サックス吹き@はっち、警官@大伴、ジャンパーの男@まりんら、物語の最初の顔ぶれが行き交い、語り部@シビさんが再び物語を牽引していく。
死んだはずのオサは、前回とは正反対の白いスーツに身を包んで現れる。
「回転扉」をくぐって、「着替えた」から、リセットされたのか。今彼が生きる現実は、前回の現実とは別なのか。
オサを取り巻く仲間たちも、ダークスーツではなく、白スーツ。
生きる焦燥感、閉塞感が男たちを追いつめる。
現実のはずの舞台に、「ヒトでないモノ」たちが跋扈する。
赤いスーツの男@まとぶと、赤いベストの男たち、そして誘惑する美女たち。赤い糸のはずのいちかも、ここに混ざっている。
いつもいつも、「ヒト」のふりをしてオサの前に現れた男、まとぶ。
だがついに彼は、本性でオサの前に現れた。
追いつめられ、追い立てられる。
逃げ場などないのに、行くあてなど見えないのに、ただただ「ここではない」と急き立てられる。
幻のショータイムに明るい歌声を響かせていた金色の歌姫たちが、狂気のスキャットを歌い継ぐ。
そして。
光が射す。
闇を照らす、清浄な光。
天から、救いの少女が舞い降りる。
絶望するオサの前に、あやねが現れる。
まるで操られるように、惹きつけられるように、オサとあやねはシンクロする。
同じ踊り、同じ動き。
魂の相似形、だからこんなにもなつかしい?
「♪もしも昨日の朝 あなたと出会ってたなら ちがう明日への扉開けたでしょう」
過去形の未来が哀しく美しく響く中、オサはほんのわずかな間、あやねと触れあう。
それを遮るモノが、まとぶ。
彼はなんなのか。
物語はいつも、彼と共にあった。
あやねは消え、彼女によく似た別の女……いや、似ても似つかぬ毒を持った女@みわっちに代わった。
赤いシャツの男@まぁくんが暴力的な狂気を歌い、赤ベストの男たち、誘惑者たちが踊り狂う。
語り部@シビさんも現れ、すべての物語がここに集約される。
いつか見た幸福な夢と同じ顔ぶれ。キラキラ光にあふれていた、あのときと同じ世界。
だけど今。
仲間だった白スーツの男たちも同じ色に染め上げられ、狂気は渦となってうねりをあげる。
これは現実? それとも幻?
オサはあやねの姿を追って走る。
だけど彼女はまとぶの腕の中。最初から全部仕組まれていたことなのか。
オサは奈落へ落ちていく。
「ショータイム!」
告げるのは、いつもまとぶ。
物語は、彼の手のひらの上。
まとぶが手に入れたかったのは。
この物語のほんとうの目的は。
役目を終えたあやねは、ふつーの女の子の顔に戻り、同じ世界で生きる男の子たちの元へ帰る。
オサの相似形@まっつが、陽気にあやねを口説きに現れる。いつもいつも彼は、オサの心情を歌うために出てくるから。……結局振られるけどね。似ていたとしても、実際彼はオサにはぜんぜん届かない、別のモノだから。
赤い糸の少女@いちかが陽気に世界を縫っていく。
でたらめな縫い目。
でも、美しいの。
美しいの。
語り部が歌う。いつか愛する人と出会う日のことを。
☆
てな筋立てだと思っているので、まとぶ氏の薄さ、弱さに肩を落としております。
なろうと思えば、主役になれるのに!! と。
そして、そんな筋立てをまるっと無視してオサ様はたのしそーに暴走しているし。
公演がはじまった当初は、オサ様ちゃんと翻弄されていたのよ。カオス場面で苦悩していたのよ。
なのにちょっと目を離した隙に(笑)、誰よりも狂気を愉しんでいる。
ほんとにこの人は……。溜息。(でもスキ。ダイスキ)
勝手に解釈してたのしんでいるだけなので、コレが答えだなんて思っていません。
てゆーかわたし自身、これからだってずっと変わっていくと思う、どう感じるか、どう解釈するか。
登場人物が多すぎて、とても整理しきれないし、書ききれない。
壮くんは相変わらず「人間」らしくてツボだし、みわっちは両極端な役割だし、さお太さんもナニ気に謎だし、まぁくんとマメが気になって仕方ないし、ストーリーとは別に、ふみかが目について目についてしょーがないし(ナマふみかの「眉毛」にハマって以来、舞台でも「眉毛」を探してしまうの……ふみかLOVE)。
楽しみは尽きない、『TUXEDO JAZZ』。
うわぁああん、もうムラで観られないなんて〜〜!!