『アイラブアインシュタイン』が変だー! タスケテクレー! という話の続き。


 悪役チームのおかしさを書いてきましたが。

 同じレベルで、主人公のアルバート@あきらもひどい。

 アンドロイドに感情はあるか。愛を理解出来るか。
 というテーマだから、テーマ自体崩壊しているこの作品では、主人公アルバートも避けて通れないのよ……おかしすぎるのよ……。

 アルバートの前に現れた、謎のアンドロイド、エルザ@みれいちゃん。
 亡き妻ミレーヴァ@べーちゃんに瓜ふたつだというこのアンドロイドは、他の「言われたことしか出来ない」アンドロイドたちと違い、自分の感情で行動しているように見える。
 そして彼女はアルバートに、「感情を教えて欲しい」と言う。「愛を理解したい」と。

 アルバートとエルザはデートをしたりして、心が近づいていく。
 ふたりは盛り上がり、良いムードになって、そして。
 エルザは突然ショートしてしまう。
 感情回路が高まりに耐えられなくなったらしい。

 えーと。
 メーターぶっちぎったためにショートした、ってことは、感情がある、ってことよね?
 そのメーターを動かしたエネルギーはなに? 感情よね? そして、現段階では100までしかメモリがなく、感情が高ぶり100を超えてしまった。ショートした。
 「愛」はメモリ100なんてもんじゃないぜ、200は必要だぜ! なんたって「愛」だからな!
 というなら、単に容量の問題だよね。200まで昂ぶることができるように、改良すれば良い。や、100とか200とかはただの例ですよ。

 エルザがショートした、というのは、物理的な出来事だ。
 現実に故障したのだから、原因がある。感情論じゃない、洗濯機が故障するには原因がある。
 耐えられない負荷が生じた……その負荷ってナニ、これまで存在するモノではそんなもんは生じてない。「感情」というモノが生じたために、そしてそれが大きすぎたために、故障したんだ。

 なのにアルバートは、エルザに向かって突然、「君に愛を理解するのは無理だった」と言い出す。
 ちょっと待て科学者。
 おかしいだろう。
 ショートした、ということ自体がアンドロイド科学の大きな進歩ですがな。

 アルバートが突然キレる意味がわからなくて、マジにぽかーんとした。
 キレ方がまた、感情的だし。失敗を分析してその先につなげる意欲ナシで、脊髄反射みたいな完全否定。子どもか。
 や、もともとアルバートが「子どものような、気まぐれで感情的な天才科学者」「気に入らないことがあるとキレる、人格に問題のある人物」として描かれているならそれでいいけど、「クールでかっこいい大人の男」として描かれてきただけに、突然の人格崩壊にはびびった。

 や、「彼は科学者である前に、ひとりの男なのです」という意味で、「妻と瓜ふたつの存在」へ複雑な思いを抱いていた、それゆえにあんなキレ方をしたのです、ってか。
 繊細論で齟齬を覆い隠すやり方。「なんで彼はそんなことをしたの?」「繊細 だからです」「どうして彼女はあんなことを言ったの?」「人間の心は複雑なんです」……整合性に欠けるときは、なんでもかんでも「繊細だから」「人間だから」と言っておけばOK、だって無の証明は出来ないからね! というやつを発動? 魔法の言葉「軍事利用」と同じく。

 ともかく。
 ここで「感情が高ぶってショートするなんて素晴らしいよ!」と肯定してしまうと、このあとのストーリーにつながらない。
 ストーリー展開の都合で、「ここで拒否」という手順を踏んでいるようにしか見えない。
 アルバートは科学者でありながら、論理的な思考がまったく出来ない。彼にあるのは破綻した感情論のみ。

 『相続人の肖像』と似ている。何故そこで主人公がそんな支離滅裂な言動を取るのか理解不能、いや、理解は出来ないが、理由はわかっている、作者の都合だ、そうしないと話が進まないから、主人公の人格を壊しても、わけのわからないことをさせる。


 とまあ、1幕ですでに相当おかしかったんだけど。
 1幕終わりに、大きな爆弾が来る。

 アルバートは人間ではなかった!!
 本物のアルバートはすでに死に、今ここにいるアルバートは、トーマス@マイティーが作ったアンドロイドだった!!

 えええっ!!

 この「引き」自体はいい。整合性はともかく、フィクションにはこれくらいの盛り上げ必要。

 アルバートがアンドロイドだったとしたらおかしいことが1幕にはいろいろあったけど、それは1幕ラストのどんでん返しを効果的に盛り上げるためだとしたら、その程度の齟齬はOKだと思う。
 や、ほんとうならそこまで計算し尽くしてほしいけど、大筋さえ誠実なら、些末な部分の嘘はかまわないと思うの。完璧に正してモノより、面白いモノが見たいから。

 だから、それはいいのよ。
 でも、この「アルバート=アンドロイド」設定には、どうしても看過出来ない問題があった。

 せっかく1幕ラストでこんだけ盛り上げたのに。
 この盛り上げ自体は、多少の構成上の粗を吹っ飛ばす、よいエンタメぶりなのに。

 ってことで、new谷せんせを見習ってここで「引き」を作ります。
 翌日欄へ続く!!

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