『アイラブアインシュタイン』をつらつら考える。

 トーマス@マイティーが愉快だ。

 1幕のマイティーは反則だと思う(笑)。
 なにが反則って、いちばんひどいのは作者だけどな。脚本めちゃくちゃ、トーマスという役に整合性ナシ。
 でも、そのめちゃくちゃな役を、マイティー自身楽しそうに盛り上げている。
 めちゃくちゃな役でも、割り切って持ち上げられるのかな。それとも気づいてないピュアボーイなのかしら。
 どんなひどい作品でも役でも、ジェンヌは文句言わずに演じるしかない。ならば、毒入りでもなんでも皿まで喰らう覚悟と突き抜けた開き直りを持つのが、スターの資質だと思う。
 また、どんなひどい作品でも役でも、まーったく気づかずに「先生様の書かれる作品はすべて神作品です!」と信じるピュアハートの持ち主であることも、スターの資質だと思うし。本気で感動しているからこそ演じられる、という。
 ただ、わたしは前者の方が好みだな。
 マイティーが作品と役のめちゃくちゃさを理解してなお、それをものともせずに暴れてくれているのなら、あたしゃ彼に惚れ込むわ(笑)。

 それくらい、トーマスが愉快だ。
 ぶっちゃけ、変態的だ。(全力で褒め言葉)

 目玉はずして恍惚と歌われた日にゃあ、客席で悶えたわ。笑いこらえるの必死で!
 いい! このマイティーいい!!
 オベ様@ともちんが大好物だったわたしですわ、このテの変態はOKです、ストライクゾーンです。

 トーマスという役がナニ考えてんのか、トーマスというより作者がナニ考えてんのか、アホなわたしには理解不能ですが、んなこたぁーどうでもいい。
 わたしはただ、マイティーがエンジン全開でぶっ飛ばしている様を楽しんだ。わくわくした。

 役者が役に出会うことって、幸福なことなんだな。
 どの時代にどの役とめぐり会うか、てのは、ほんと運命なんだなと。

 たとえばマイティーは、わずか研3で別箱3番手役に抜擢された。
 2番手主演のドラマシティ公演。3番手も4番手も出演していた……のに、組4番手で7学年も上級生を差し置いて、その公演での3番手役。ちなみに、同期の柚カレーはモブ役で出演していた。
 ものすごい抜擢だ。今なら、ベニー主演公演で、ことちゃんもかいちゃんも出演しているのに、かいちゃんが脇役で、100期の無名の男の子が3番手やってる感じ?
 そうやって、いい役を与えられたけれど……当時のマイティーはあまりいい仕事は出来てなかった。
 いい役を得ても、本人がその役に相応しいだけの力量を持ってなければ、持てあますだけだ。

 その役者の「そのとき」に相応しい役は、その都度チガウのだろう。
 いつもいい役が当たることが「幸運」なのではなく、「そのときに必要な役」とめぐり会うことが、「幸運」なんだ。

 出会うべきときに、出会うべき役にめぐり会う。
 ソレは役者にとって幸福なことで……観客にとっても、しあわせなことだと思う。

 その昔、キムくんがルキーニをやっているのを見たとき、感動したんだよなあ。
 その「正しきめぐり会い」に。
 役者としてもっとも伸びる次期に、これだけやり甲斐のある役に出会い……若者が芝居を役を空気感を、どんどん吸収して成長しまくっているのが、見るたび伝わってきたの。
 歌唱力や滑舌がどんどん上がって行き、表現力も広がっていった。えええ、もともとうまかったけど、さらにうまくなるんだ?!って、びびったなあ。
 伸びる次期にこれだけの役をやれる、吸収出来る、ってなんてしあわせなことなんだろう。舞台上のキムくんがすっげーしあわせそうで、充実感に細胞がびくんびくん脈打ってるのが伝わってきて、見ているだけでこっちも高揚した。
 しあわせってのは、伝染するからなあ。

 それを思い出したんだ。
 楽しそうに舞台上で「生きて」いる役者って、その楽しさが伝わるもんなあ。
 ただ楽しいだけでなく、その楽しさが、充実感が血肉となって、むくむく成長している、レベルアップしている感じ……が、伝わってくる。

 今のマイティーに、この役が必要だった。

 正しきめぐり会い、だ。
 舞台での居方が整理されてなかった下級生の頃じゃなくて、鈍くささを滲ませながら新公主演した去年でもなくて。
 美貌に目覚めたバウ2番手をすでに経験していて、新公主演経験後に脇として支える新公も経験して、役替わりで大劇場本公演で大役も務めて。
 そんな「今」だからこそ、この変態(笑)役を、ここまで振り切って演じられるんだな。

 見ていて楽しい。
 風が吹いている人は、見ていて楽しい。
 マイティーに風が吹いているよね。
 劇団が起こしているのかもしれないけど、まず、マイティー自身がぶんぶん風起こしてるよね。
 上昇気流に乗って、どんどん飛んで行っちゃえよ!


 2幕の尻つぼみ感がひどくて、いろいろ残念ではあったけど。
 それは脚本のせいであって、マイティーのせいじゃない。むしろマイティーは、脚本的に突然はしごを外されて、パワーを持てあましている感じだ。
 1幕のパワーのまま、走らせちゃえば良かったのに。

 変な役だけどね、トーマス。トーマスだけでなく、作品自体がどうしようもないわけなんだけど。
 そんなことを吹き飛ばす勢いで、トーマスが愉快。

 マイティーが美しい。

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