最近のタカラヅカは、集合日より前に「主な配役」が出る。

 ……これって、いつからだろう。
 以前は、配役が出るのは集合日だった。「主な配役」発表なんてない。
 役のある人全員の名前がぞろっと発表された。クレジットは学年順だから、誰が2番手なのか、誰がヒロインなのか、幕が開かないとわからなかったり。

 でも今は、演目発表時に発表されてる主役だけでなく、改めてヒロインや2番手くらいまで発表される。

 『アイラブアインシュタイン』もまた、前もって「主な配役」が発表されていた。

 通常娘役はひとり……ヒロインのみしか発表にならないのに、ふたりの名前があった。べーちゃんとみれいちゃん。
 作品解説を見ても、主人公を愛するふたりの女性……亡くなった妻と謎のアンドロイド……ダブルヒロインということだろう。

 解説からすると、アンドロイドのエルザ@みれいちゃんの方が比重が高いように読める。
 だが、クレジットされている順番は、べーちゃんが主役の次。
 この書き方だと、亡き妻ミレーヴァ@べーちゃんこそが真のヒロイン、と読める。ふつうのフィクションなら。

 ただここはタカラヅカだから。
 学年順重視ゆえ、主役以外の表記順なんて関係ない。

 ヅカファンでなかった子どもの頃、純粋に不思議だった。駅で電車を待つ間にぼーっと眺めるタカラヅカポスター、写真付きで大きく載っている人の名前が、出演者一覧ではいちばん上じゃない、半端な位置にあることに。
 テレビでは、主役がいちばん最初に名前が出るのに、どうしてタカラヅカはそうじゃないんだろう、って。

 今はヅカファンだから、「キャストのクレジット順は、役の大小に無関係」だと知っている。
 主役の次に表記されているべーちゃんが、ヒロインかどうか、見てみるまでわからない、ってことも。

 実際、この物語のヒロインはエルザ@みれいちゃんだった。
 初見時は、その事実に軽く驚いた。

 や、べーちゃんが今や別格スターであり、路線スターでないことはわかっている。片やみれいちゃんは、今まさに新公ヒロインを重ねている路線スターだ。
 路線でいられる学年を過ぎた上級生スターと、今が旬の若手スターがダブルで使われる場合、劇団が推したいのは下級生の方だ。
 みれいちゃんがヒロインであることは、なんの不思議もないし、たぶんそうなんだろうなあ、と予想はしていた。

 驚いたのは、そのヒロインぶりがあからさますぎること。

 だって、どっから見てもダブルヒロインじゃない、エルザ単独ヒロインじゃん、ミレーヴァは「女性の役でヒロインの次に大きな役」というだけで、「準ヒロイン」という呼び方も違和感があるような役。
 キャスト表ではミレーヴァが上で、ミレーヴァとエルザは「ダブルヒロインです」とおためごかししている以上、もう少し「ミレーヴァだってヒロインですよ」と取り繕う内容になっているかと思ったの。
 2幕で不要な回想シーンが長々続くのがその「ミレーヴァだってヒロインですよ」の取り繕いなのかもしれないけど。出番があれば言い訳になると思ってるなら、まさにそれ植爺~谷ラインの思考回路。「物語の比重」と「出番や台詞の行数、衣装の豪華さ」はイコールじゃない、ということを理解していない巨匠様たち。

 主人公の心がミレーヴァにないし、あるのだとすれば描かれなくてはならない場面をスルーしていることから、ミレーヴァの比重は高くない。ヒロインでは、ぜんぜんない……。

 だったら変な誤魔化しなんかしなければいいのに……。

 香盤上だけヒロインで、実際は主要な脇役のひとりである。初日を観るまで「ご贔屓がヒロイン!」と思っていて、観劇してはじめて「ヒロインじゃない……っ!!」と現実を知る。
 最初から「下級生がヒロインをやる公演に、脇で出る」とわかっているのと、ガチなファンならどっちがつらいのかなあ?

 なんてことを、ずーーっと微妙路線のスターのファンをしていた身としては、考えてしまうんだ。
 うーむ、わたしは、最初からわかってる方がいいかなあ。
 下級生より番手下だったけど、それはそれで受け入れて、そこにあるものだけで楽しんでいたしな。
「3番手だから銀橋ソロあるよねっ」とか思ってて、香盤上だけ3番手(プログラムも2番手に次いで堂々1ページ写真掲載)で、実質5~6番手扱いしかされなかった現実を突きつけられたときの方が、つらかったもの。

 や、番手を落とされるのは、どうあがいたってショックだし、つらいけど。
 それでも、前もって知らされてそのときは落ち込んでも、初日までに気持ちを切り替えて楽しみにすることはできる。
 わくわく楽しみにしていて幕が上がってから現実を突きつけられて凹む場合、その公演期間内に立ち直れるかどうか不明。

 ミレーヴァのべーちゃんは魅力的で、まさにべーちゃんらしい魅力の生きる役だと思って観ていたけれど。
 それとは別に、古傷が疼くというか。
 関係ないところで遠い目をしてしまう公演でもあった。


 そういうところも含めて、タカラヅカは複雑で、面白いのだろう。ファンをヒートアップさせたり、飽きさせなかったりするんだろう。

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