アタマ悪い意見、言っていいですか。
 や、アンタはいつもアタマ悪いことしか言ってないだろう!というツッコミはナシで。

 終幕時のラインナップが、欲しい。

 『心中・恋の大和路』は、作品の世界観を大切にしているので、終幕時のラインナップはナシ。
 忠兵衛@えりたんと梅川@あゆっちが、雪山で美しく息絶えたところで、緞帳が下りる。
 鳴り止まない拍手に、幕は一度上がる。
 舞台には、えりたんとあゆっちのみが立っている。ふたりはなにも喋らず、ラストシーン再現のように、ふたりで客席に背を向け、支え合うように儚く去って行く……そこでまた、幕。
 通常はこれで終わり。客電が点き、アナウンスが流れ、観客は席を立つ。

 たしかに、物語の読後感っちゅーか、大泣きした気分を妨げることはない終わり方だ。
 これはこれで正しいのだろう。

 でもさー、わたしはヅカヲタだからさー。
 どんな悲劇のあとも、「ソレはそれ」「それはひとまず、置いておいて」と、華麗なフィナーレをやっちゃうタカラヅカが好きだ(笑)。
 主人公たちの死に大泣きしたのに、突然天使がわらわら現れて足を上げて踊っちゃう、「びっくりして涙が引っ込んだ」てな水の差され方をするのが、タカラヅカの醍醐味。
 いきなり明るい楽しいフィナーレで涙も引っ込んで、だけど主人公とヒロインが、満面の笑顔で幸せそうなデュエットダンスをはじめると、やっぱりさっきまでの感情につながって、「良かったねええ、天国で幸せになったんだねええ」と大泣きする。
 それがタカラヅカだと思うんだ。

 『心中・恋の大和路』のあとに、ナニもロケットガールズに足上げしろとは言わないよ。男たちに河内音頭踊らせろとか言うわけじゃない。
 ふつーに、出演者たちが音楽に乗って登場し、センターで一礼、みんなが見守る中、あゆっちが登場、最後にえりたんが登場、一列になって全員で主題歌を歌う。
 カーテンコールではえりたんが一言挨拶、日替わりできっとなにかしら愉快なことを言ってくれるよね、わくわく。んでお決まりの「またのお越しをお待ちしております」でまた幕。
 そーゆーふつーの別箱公演の、終幕の図。

 幕が下りるとき、やたらサービスしてくる朝風くんとか、期待のザッキーとか、いちゃつくえりあゆとか、目線合わせてなんか笑ってるえりまつとか。
 そーゆーのを眺めるのも料金のウチというか、別箱公演を観る楽しみのひとつというか。

 作品を大切にする気持ちは、もちろんある。
 『心中・恋の大和路』には、「タカラヅカのお約束」なんか不要!という気持ちはもちろんある。
 これでいいのだ、というのも、わかる。

 そのうえでの、ないものねだり。

 ふつーの出演者勢揃い挨拶、してくれてもいいじゃんよー。


 実は初日、すっげー大泣きして、感動して、アタマがつんがつんいってて、もう大変!な精神状態だったんだけど。
 それでも、終幕の演出には、突っ込んだ。

 最初は良かったんだ。
 ひとことも発せず、寄り添い合って去って行く忠兵衛と梅川の姿に、ずきんときた。またさらに泣けた。

 しかし。

 拍手は、鳴り止まない。
 また、幕が上がった。
 今度こそラインナップして、えりたんの挨拶があるのかと思ったら、やっぱりそこにいるのは忠兵衛と梅川だけで。

 ふたりはまた、さっきと同じように、背を向けてよたよたと去って行った。
 幕。

 それでも、拍手は鳴り止まない。
 通常のタカラヅカ的にも、出演者ラインナップがあると思っている人たちもいるだろう、その人たちは、ラインナップがあるまで「お約束」として拍手するだろうし。

 幕が上がる。
 そこにいるのは、やっぱり忠兵衛と梅川だけ。
 ふたりはまたよたよたと歩き去る。

 ……1回なら感動でも、3回やったら、コントになる。

 どうしよう。
 こまったなこれ。

 客席にも、微妙な空気が広がる。
 感動した! だから拍手する。……通常なら幕が上がるたび盛り上がるはずなんだけど……感動の拍手ゆえに幕が上がっても、その、盛り上がりとは別ベクトルのパフォーマンスを繰り返されるだけで。

 幕は4回上がったんだっけか。
 なんとも微妙な、気まずいものが広がった。
 感動を伝える拍手ゆえに、感動が別のモノになってしまう、とまどい。

 背中向けて去って行く演出、せめてあれだけでもやめればよかったのに。
 ふたりで寄り添うように立ち、一礼する。そこで幕、でいいじゃん。
 なのに毎回ご丁寧に、ドラマチックな主題曲に乗せてよたよた去って行くパフォーマンスをするから、客席にとまどいが広がる。

 初日、感動の涙に暮れながら、終幕の演出には突っ込んだ。

 カーテンコールしにくい演出だな、と。

 えーとこれ、これから毎日やるの?
 退団発表済みのトップコンビの公演で、しかもちょー盛り上がるラスト、カテコの拍手も毎回熱いモノになるだろう、それが予想つくだけに、危惧した。
 毎回この、幽霊みたいなふたりのよたよた歩きを何度も何度も、パフォーマンスするの?
 それは、ちょっと……。

 微妙な空気は、ちゃんとスタッフ側にも伝わったのか、それからはどんなに拍手が盛り上がっても、カテコはナシ、物語が終わったあと幕が開くのは1回だけ、と決まっていた。
 拍手を打ち切るように、問答無用で客電を付け、終演アナウンスで「もう二度と幕は開かないよ!!」と駄目押しする。強制的に、感動シャットダウン。

 ぶった切り感、すごい……。

 いつまでも拍手されても困るんだろうけど、「さあ帰れ!」ってやられるのも、水ぶっかけられる感触あるわー。

 拍手しても幕は開かない、今回はこーゆーもん、とわかったリピート客が多くなると、幕が下りるなりぴたりと拍手も止み、「さあ帰るぞ」とか「出待ち行かなきゃ!」と切り替える人たちが空気をぱきっと一掃。
 初見で大泣きしている人たちとの空気間の違いも、きっとすごかったことと思う(笑)。

 カテコを繰り返したり、キャストのお手振りや笑顔を期待するタカラヅカには、なかなか難易度の高い演出なのだわ、今回の終幕時は。

 あの「どうしよう」という空気のあった初日のカテコを思えば、ふつーに終幕時のラインナップやってもよかったんじゃん?と思う。

 ヅカファンは「号泣!!」のあとの「フィナーレ」に耐性あるから、ふつーに一礼ぐらいしても作品世界が壊れるとこまでいかなかったと思う。

 てことで、ドラマシティ公演千秋楽。
 またカーテンコールが繰り返され、えりたんとあゆっちがあのパフォーマンスを繰り返し続けるのか、やる方も見せられる方も大変だなー、と思っていたら。

 終演時、ふつーにラインナップがあった。

 なにも言わないのは同じだけど。
 それでも出演者全員が並び、顔を見せてくれた。

 幕が開いて、キャストが揃っているとわかったときの、観客の盛り上がり方ってば。

 やっぱ、心が大きく動いたとき、それを受け止める演出が必要だと思うよー。
 観客の盛り上がりを押さえ込む終幕は、他のカンパニーならともかく、タカラヅカではちょっと残念。

 えりあゆがこれからも何作も主演公演があるなら、ひとつぐらいはこんな公演があってもいいけど、最後の別箱公演だとわかってコレってのは、寂しいな。
 感動した! 良かった! ってたくさん拍手して、盛り上がりたいよ。伝えたいよ。

 作品を大切にするなら、ほんとうに作品だけを見るなら、「タカラヅカのお約束」もカテコも不要なんだろうけど。
 わたしはアタマ悪いヲタだから、作品だけでは満足できず、そこにヅカならではのお楽しみが欲しいのよ。

 『心中・恋の大和路』の終わり方はあれで良い、あれだから良い。
 そう思っているのも、確かなんだけどね。
 わがままよね。

日記内を検索