『心中・恋の大和路』感想あれこれ。

 かもん太夫@せしこは、せしこ個人の美貌への期待値が高すぎたのが敗因かな。
 知っての通り、雪組のせしるさんといえば美貌の人。フランス人形みたいな美しさで、なんでそのビジュアルで出てくる言葉がコテコテの関西弁なの、とギャップで萌え死ねる系の美形スター。
 だがしかし。
 娘役スキルは、とても低い。

 素のせしこがとんでもなく美形なことと、舞台で花魁様として美しいかは、別の話。
 日本モノ化粧はせしこのガイジンさん的美しい顔をのっぺりと覆ってしまう。立ち居振る舞いの優雅さは一朝一夕でどうにかなることではなく、積み上げられ磨き抜かれる技術だ、元男役のせしこが簡単に拾得できる技じゃない。

 そして、やっぱ声が残念だなあ。
 大分マシになってきたとはいえ、男役として無理に低音を出し続けたためなのか、娘役になった今も「娘役声」が出ない。
 舞台ってのは素の顔立ちがあんまり見えない分、声がきれいだと美女度が上がる。
 せしこは「ヒロイン声」からほど遠いからなあ。あんなに美人なのに、喋るとびっくりする。……それでも『BJ』の頃に比べれば、また改善されたんだけどな……。

 せしこの美貌と芝居心をよく知っているだけに、それが活かされないかもん太夫役に、肩を落とした。

 杏奈様は、ほんっとーにきれいだったなああ。
 昔は二度見するくらい芝居ドヘタなルーシーちゃんだったのに、美貌と娘役芸を磨き抜いて、最後は誰もがひれ伏すような美貌の花魁役で、観客の涙を搾り取る舞台人ぶりで、堂々と卒業していったなああ。
 本来のかもん太夫って、夕霧姐さん@『JIN-仁-』並の美貌が必要な役よね……。

 衣装が重いのはわかる、大変なのはわかる……でもあまりに、太夫らしからぬ不器用な衣装さばきで、手に汗握った。
 いいの、これ? 大丈夫? と。

 とまあ、そーゆー技術面はともかく。

 かもん太夫、いい役だなあ。
 与平@かなとくんに対する受け答えなんか、その最たるもの。
 さすがは色町界のトップスター。ファンの心を裏切らず、きっちり受け止めた上で、ファンタジーとしての自分の存在を完結させ、しあわせを掴んで去って行く。
 トップってのは舞台技術や容色だけじゃなく、人生に対する器の大きさも必要なんだ。それも含め、ファンを魅了するんだ。

 コウちゃん主演版では、当時の副組長がやってたんだよねえ……どんだけ渋い役なんだ。


 遊郭槌屋の人々で、うまさに舌を巻くのは女将@るりるり。この人もホタテと同じ、つい先月まで新人公演に出てた若手なんですが。
 女将ってコウちゃん版では専科さんがやってたんですよ。超ベテランがやる役ですよ。
 違和感なく、女将。ベテラン。

 八右衛門@まっつが、忠兵衛@えりたんの持って来た金は盗まれた物だったと絡み酒ついでに打ち明ける。それを聞く女将の顔が、秀逸。
 驚くでもなく怖がるでもなく、複雑な顔。どう立ち回るのが得策か考える老練な古狸の顔ですよ。受け答えひとつとっても、損得を考え、言質を取られないよう気をつけているのがわかる。
 その一筋縄ではいかなさが、それをきっちり感じさせてくれるところが、すごい。
 そんだけこわい人なのに、華々しく旅立っていくかもんや梅川@あゆっちに対する愛情も本物らしいのが、また。
 複雑怪奇な「遊郭の闇」のひとつ。そう思える存在感が気持ちいい。


 今回注目したのが、遣手・おたつ@このみちゃん。
 うまいわー。
 わたし、『インフィニティ』『BJ』組以外の下級生にうとくて、ほぼノーマークだったんだけど、うまいしきれいな子だなあ。そか、全ツ、博多とことごとくまっつと同じ公演に出てないんだ。そりゃわかんないわ……本公演ではまだモブの学年だし、まっつの出てない別箱公演は大体1回しか観ないし。
 地味できれいな横顔が好みです(笑)。
 研7になったばかりで、こんなに仕上がってるんだね。


 しじみ売りで美声披露、おっ、と思わせたまからくんは、幇間役。
 しじみ売りは顔が見えないので、ここでようやくお顔のチェックをしたわけだが……。まるいね。
 なるほど下級生だわ……。
 そして、声が女の子のまま。
 芝居感は悪くないんだろうけど、顔も声も女の子過ぎてとまどう。
 が、幇間だから浮いてていいのか、とも思う。なんだろ、女の子まんまの声だからやたらきんきん通る感じとか、中国の宦官みたいないびつさがあって、これはこれかと思う。
 まだ研3になったばかり、今後に注目したい。


 遊女のふたり、鳴渡瀬@さらさ、千代歳@ももひなはタイプの違う美女ふたり、いるだけで華やか。
 こういう役できっちりきれいなのがうれしい。
 個人的に、茜ちゃん とピノコ、このふたりをはべらすまっつにニヤニヤする(笑)。


 みんなうまくてきれいで、雪組すげえよ、『心中・恋の大和路』すげえよ、と思って。

 ……いちばん芝居がアレなのって……妙閑@五峰ねーさん……?

 ご隠居妙閑さんの存在には、とまどいまくる。
 観ていて、心の着地点がわからなくて。
 ふつーのおばあさんなのか、それとも笑わせたいのか。50両のくだりなんかはお笑い場面だとわかるからいいんだけど、最初の登場場面がわからなくて。
 ふつうのおばあさん役だとしたらへたすぎて、笑いを取るためにやっているのだとしても中途半端で。
 忠兵衛の罪を知ったときの芝居も、よくわからない。笑わせたいのかな?
 『風共』のピティパット的なスパイスなんだろうとは思うが……半端過ぎてとまどう。なにがしたいんだろう、と思う。

 研3のまからくんが浮いているのは仕方ないと思うし、この役にはこういう浮き方が必要だとも思う。
 しかし、研29の特別出演している専科さんが浮いているのは……なんなんだろう。この役には浮きっぷりが必要だと思って見ても、やっぱりよくわかんない。どう消化していいのか混乱する。

日記内を検索