彼女はファム・ファタール。@舞音-MANON-
2015年11月15日 タカラヅカ 景子せんせの娼婦萌え作品、第何弾……『舞音-MANON-』。
景子せんせは今までにも、「ヒロインが娼婦の作品」を書いてきている。
思いつくだけで、『堕天使の涙』『HOLLYWOOD LOVER』『My dear New Orleans』『近松・恋の道行』……。
娼婦好きだよねー。
や、萌えネタのひとつに「娼婦モノ」ってのはあるから、それ自体は別に不思議じゃナイ。
わたしは腐女子ゆえ、「同人の定番ネタというモノは、普遍の萌えネタである」という認識の仕方をしている。
「記憶喪失モノ」「中身が入れ替わっちゃうモノ」「監禁モノ」「(元作品が異世界や別時代作品である場合の)現代学園モノ」とか、「お約束」として存在するパロディネタ。整合性はさておき、そのシチュエーションに萌えるためにある、だから無理矢理でも「お約束ネタ」にはめ込んで遊ぶ。
その定番メニューにあるもん、「娼婦モノ」。大抵受キャラが娼婦になってるのなー。切ない恋物語なのなー。
同人といわず、過去の文学作品にも多く描かれているのだから、普遍的ニーズのあるテーマなんでしょう。
ただ、現代日本で、娼婦ヒロイン物は共感を呼びにくい。
二次創作でアリなのは、すでに「愛されている作品とキャラ」があって、そのキャラを使って別の物語を、別腹で楽しんでいるから、そのときだけの「娼婦設定」は楽しめる、ってこと。
パロディではない新規作品で、しかも90分という短い時間で、現代女性が好意を持ちにくい「娼婦」という存在を使って、客席の女性を魅了しなくてはならない……って、大変な作業っすよ。
しかも、主人公の男は、娼婦に惚れて身を持ち崩す、どんどんみじめにみっともなくなる、という、これまた現代女性が魅力を感じにくい造形。
女のために地位や身分を捨てる、てのは女性視点では魅力になる要因ではあるけれど、それは相手の女性が、観客の尊敬や共感を得ている場合に限られるからねえ。
やたらめったら難しい要素を積み上げて、それでも客席を味方に付けて感動のフィニッシュへどうなだれ込むのか、景子タンのお手並み拝見!! ……な、わけだが。
えーっと。
共感、得られてました?
タイトルロールであり、物語の中心となるヒロイン、舞音@ちゃぴ。
彼女が主人公シャルル@まさおに愛される以上に、まず、観客に愛されないと、この物語は成立しない。
ちゃぴにファム・ファタールをやらせる、男を狂わせる高級娼婦役をやらせる、という段階で、期待したんだ。
ちゃぴは美女というよりはかわいい系、女王様というより村娘、女豹というより子犬、妖艶な大人の女というより健康的な少女。
この持ち味のちゃぴを使って、ファム・ファタール物をやるというなら、ちゃぴの魅力を最大限に使った新しいファム・ファタールを観られるのだと、期待した。
よくある魔性の女ではなく、女性が観て納得できる魅力を持ったキャラクタなのだと。
だがしかし。
登場した舞音は、よくある魔性の女だった。
他のジャンルでも、タカラヅカの舞台でも、飽きるほど観た、「ふつーのファム・ファタール」だった。
「ファム・ファタール」と言われて、まず最初に想像する類いの、テンプレートみたいなやつ。
まず美貌で男のハートを射貫き、小悪魔的なわがままを言って翻弄し、蝶のように男たちの間を飛び回る。他の男に触れさせたくない、自分だけのモノにしたいと、男たちは目の色を変える……。
あー、うん、「ふつー」のファム・ファタールだねー。
や、ふつうでもいいんだけどさ……造形がふつうなら、ビジュアルもふつうにしてくれないと、混乱する……。
つまり、ふつーに、わかりやすく、美貌の女。
セックスアピールがあり、男たちが恋愛対象として見るだろう肉体。
ちゃぴ舞音は残念ながらそのー、わかりやすい美貌でもないし、色気もない。スレンダーで筋肉質で、抱き心地も悪そう。
男性を瞬時に虜にする魅力が、伝わらない。
そして、「特別な女性が登場した」という演出もない。
ふつーに小さなステージに女性ダンサーが複数登場する、というだけ。そのステージのセンターを務めているのが舞音である、ということだけが「特別」らしい。
あとは「もっとも人気のある踊り子である」という説明台詞があるのみ。
舞台の上に作られた「店」の中の「ステージ」よ。めっちゃ小さいの。そこのセンターの踊り子さんに、シャルルは一目惚れする。
え、ファム・ファタールとの出会い演出これだけ?? マジすか。
いや、踊り出したときは店の中の小さなステージでも、シャルルと目が合うなり、ステージも店も他の人たちも消えて、広大な舞台に舞音とシャルルふたりきりになる……くらい、演出でどーんとカマしてくれよお。
シャルルにはこれくらいの衝撃だった、彼女以外ナニも見えなくなった、的な。
前述の通り、ちゃぴの持ち味は美貌や妖艶さではなく、清潔で健康的な愛らしさだ。
異性に肉感的な意味で好まれるタイプではなく、同性に共感を受け好ましく思われるタイプ。
なのに、ちゃぴの持ち味無視の「テンプレ美女」演出……。
せっかくファンの多い(=女性に好まれる)ちゃぴを、彼女の魅力無視の、女性から共感を得にくい美女演出で使うとか、ありえねー。
『舞音-MANON-』を観て、「悪い景子タンがてんこ盛りだーー!!」と思った。
はい、景子せんせの欠点のひとつ。
アテ書きしない。
景子作品って基本アテ書きしないのよね。まず「作品」が先にある。
景子タンの描く人たちはみんな美しいから、タカラヅカスターなら誰でも演じられる造形、ゆえに番手順に当てはめるだけで、ハマることが多いってだけで、「このスターにこの役を!」という作り方はしない。(そりゃ、例外もあるけどね)
景子タンの悪い癖。
キャストの持ち味無視、自分の作品イメージの方が大事。
「ちゃぴでファム・ファタールを描く」なら、いくらでも夢が広がるってもんなのに……。
ちゃぴの魅力を全開にした、ちゃぴならではのファム・ファタール。
でも、景子タンは。
「ファム・ファタールを、ちゃぴに演じさせた」、なのね。
景子せんせは今までにも、「ヒロインが娼婦の作品」を書いてきている。
思いつくだけで、『堕天使の涙』『HOLLYWOOD LOVER』『My dear New Orleans』『近松・恋の道行』……。
娼婦好きだよねー。
や、萌えネタのひとつに「娼婦モノ」ってのはあるから、それ自体は別に不思議じゃナイ。
わたしは腐女子ゆえ、「同人の定番ネタというモノは、普遍の萌えネタである」という認識の仕方をしている。
「記憶喪失モノ」「中身が入れ替わっちゃうモノ」「監禁モノ」「(元作品が異世界や別時代作品である場合の)現代学園モノ」とか、「お約束」として存在するパロディネタ。整合性はさておき、そのシチュエーションに萌えるためにある、だから無理矢理でも「お約束ネタ」にはめ込んで遊ぶ。
その定番メニューにあるもん、「娼婦モノ」。大抵受キャラが娼婦になってるのなー。切ない恋物語なのなー。
同人といわず、過去の文学作品にも多く描かれているのだから、普遍的ニーズのあるテーマなんでしょう。
ただ、現代日本で、娼婦ヒロイン物は共感を呼びにくい。
二次創作でアリなのは、すでに「愛されている作品とキャラ」があって、そのキャラを使って別の物語を、別腹で楽しんでいるから、そのときだけの「娼婦設定」は楽しめる、ってこと。
パロディではない新規作品で、しかも90分という短い時間で、現代女性が好意を持ちにくい「娼婦」という存在を使って、客席の女性を魅了しなくてはならない……って、大変な作業っすよ。
しかも、主人公の男は、娼婦に惚れて身を持ち崩す、どんどんみじめにみっともなくなる、という、これまた現代女性が魅力を感じにくい造形。
女のために地位や身分を捨てる、てのは女性視点では魅力になる要因ではあるけれど、それは相手の女性が、観客の尊敬や共感を得ている場合に限られるからねえ。
やたらめったら難しい要素を積み上げて、それでも客席を味方に付けて感動のフィニッシュへどうなだれ込むのか、景子タンのお手並み拝見!! ……な、わけだが。
えーっと。
共感、得られてました?
タイトルロールであり、物語の中心となるヒロイン、舞音@ちゃぴ。
彼女が主人公シャルル@まさおに愛される以上に、まず、観客に愛されないと、この物語は成立しない。
ちゃぴにファム・ファタールをやらせる、男を狂わせる高級娼婦役をやらせる、という段階で、期待したんだ。
ちゃぴは美女というよりはかわいい系、女王様というより村娘、女豹というより子犬、妖艶な大人の女というより健康的な少女。
この持ち味のちゃぴを使って、ファム・ファタール物をやるというなら、ちゃぴの魅力を最大限に使った新しいファム・ファタールを観られるのだと、期待した。
よくある魔性の女ではなく、女性が観て納得できる魅力を持ったキャラクタなのだと。
だがしかし。
登場した舞音は、よくある魔性の女だった。
他のジャンルでも、タカラヅカの舞台でも、飽きるほど観た、「ふつーのファム・ファタール」だった。
「ファム・ファタール」と言われて、まず最初に想像する類いの、テンプレートみたいなやつ。
まず美貌で男のハートを射貫き、小悪魔的なわがままを言って翻弄し、蝶のように男たちの間を飛び回る。他の男に触れさせたくない、自分だけのモノにしたいと、男たちは目の色を変える……。
あー、うん、「ふつー」のファム・ファタールだねー。
や、ふつうでもいいんだけどさ……造形がふつうなら、ビジュアルもふつうにしてくれないと、混乱する……。
つまり、ふつーに、わかりやすく、美貌の女。
セックスアピールがあり、男たちが恋愛対象として見るだろう肉体。
ちゃぴ舞音は残念ながらそのー、わかりやすい美貌でもないし、色気もない。スレンダーで筋肉質で、抱き心地も悪そう。
男性を瞬時に虜にする魅力が、伝わらない。
そして、「特別な女性が登場した」という演出もない。
ふつーに小さなステージに女性ダンサーが複数登場する、というだけ。そのステージのセンターを務めているのが舞音である、ということだけが「特別」らしい。
あとは「もっとも人気のある踊り子である」という説明台詞があるのみ。
舞台の上に作られた「店」の中の「ステージ」よ。めっちゃ小さいの。そこのセンターの踊り子さんに、シャルルは一目惚れする。
え、ファム・ファタールとの出会い演出これだけ?? マジすか。
いや、踊り出したときは店の中の小さなステージでも、シャルルと目が合うなり、ステージも店も他の人たちも消えて、広大な舞台に舞音とシャルルふたりきりになる……くらい、演出でどーんとカマしてくれよお。
シャルルにはこれくらいの衝撃だった、彼女以外ナニも見えなくなった、的な。
前述の通り、ちゃぴの持ち味は美貌や妖艶さではなく、清潔で健康的な愛らしさだ。
異性に肉感的な意味で好まれるタイプではなく、同性に共感を受け好ましく思われるタイプ。
なのに、ちゃぴの持ち味無視の「テンプレ美女」演出……。
せっかくファンの多い(=女性に好まれる)ちゃぴを、彼女の魅力無視の、女性から共感を得にくい美女演出で使うとか、ありえねー。
『舞音-MANON-』を観て、「悪い景子タンがてんこ盛りだーー!!」と思った。
はい、景子せんせの欠点のひとつ。
アテ書きしない。
景子作品って基本アテ書きしないのよね。まず「作品」が先にある。
景子タンの描く人たちはみんな美しいから、タカラヅカスターなら誰でも演じられる造形、ゆえに番手順に当てはめるだけで、ハマることが多いってだけで、「このスターにこの役を!」という作り方はしない。(そりゃ、例外もあるけどね)
景子タンの悪い癖。
キャストの持ち味無視、自分の作品イメージの方が大事。
「ちゃぴでファム・ファタールを描く」なら、いくらでも夢が広がるってもんなのに……。
ちゃぴの魅力を全開にした、ちゃぴならではのファム・ファタール。
でも、景子タンは。
「ファム・ファタールを、ちゃぴに演じさせた」、なのね。