雪組全国ツアー『哀しみのコルドバ』初日観劇。
 ……は、ともかく。

 まず、吐き出しておく。

 『哀しみのコルドバ』って番手落とし、路線外通告ツールかよ?! うっきーー!!

 2回連続だと、「そういうこと」かと思うよねー。

 主人公エリオ。花形闘牛士。ヒーロー。
 2番手役ロメロ。実業家、ヒロインのパトロン。渋い大人の男。
 3番手役ビセント。闘牛士。色男。
 4番手役フェリーペ。ロメロの甥。王子様系。

 男役で主要な役は、以上。
 4番手までオイシイ、てのがこの作品の売り。3番手と4番手はおいしさが遜色ないというか、ジェンヌの持ち味で振り分けてもいいかもなというくらいの比重。
 娘役もヒロイン+準ヒロインとふたつも大きな役があり、再演が決まると「あの役は誰かしら」とわくわく想像して盛り上がれる、そういう意味でも楽しい作品。

 アルバロ?
 ああ、ストーリーに関係ない、いてもいなくてもかまわない、「闘牛士グループ」でひとまとめにされているキャラがいましたね。
 番手外の役ですよ、闘牛士全部で何人いたっけ。『ベルばら』で言う「衛兵隊」みたいなもんで、人数減ってても客は気づかない。

 2009年の花組再演時、トップから3番手以外5番手まで4人ぞろっと出演していました。番手付き4人、主要な役もちょうど4つ、なのに、5番手が番手役からはずされ、「アルバロ? 誰? 前に再演観たけどそんな役知らない」と言われるような役を振られましたの。
 そして、4つめの役であるフェリーペは、劇団が「出来れば上げたい」と思っている下級生がやりましたのよ。

 下克上は人事の花、組替えも退団もないのに、組内番手が変わる……! というのは、ヅカファンがわきたつ、いわば祭りのひとつです。

 ……という前例アリで。

 今回の雪組でも、まったく同じことするってどうよ。

 ええ。またしても、アルバロ。
 「誰それ?」な脇役。
 4番手役フェリーペを劇団推し下級生に振って、4番手は脇のアルバロですか!!
 もう番手扱いする気ないっすよ、別格ですよってか。

 あーー……。

 下克上の必要性はわかっちゃいるけど、以前の贔屓の役を、こうも完璧に「路線外しの役」「自覚を促すための処置」みたいに踏襲されると、複雑だわ。

 あの頃の花組は、まとぶんがトップになって1年……しかし、3番手のえりたんはかれこれ6年(!)とか3番手やってて、みわっちは3年くらい4番手やってて、まっつも3年くらい5番手やってたんだっけ。
 トップの座に5年間君臨したオサ様が卒業して2番手のまとぶんがトップに繰り上がっても、2番手にゆーひくんが降ってきたため、3番手以下は誰ひとり番手が上がらなかったの。トップが変わったのに路線の番手塩漬けって組の勢いが落ちるわよねえ……ゆーひくんが栄転したのちも、停滞感はぬぐえず、まとぶさん時代はずーっと集客に苦労した記憶。
 5番手3年て、その微妙な番手でその長さ、ありえねー……。
 将来的にトップになると確定している人だけを「路線スター」とするわけじゃない。本公演の最後のパレードで真ん中を歌いながら階段降りする人は「路線」で、「それ以外」と区別される。単なるシステムの話。まっつがトップになるなんて誰も思ってなかったろうけど、それでもまっつは「路線」側にいる人だった。
 当時のまっつは「いつ路線から完全にはずれるか」「退団するか」が注目点だったなあ。
 本公演では体裁だけ5番手だったけど、別箱ではすぱっと脇宣告。
 演目がでたときは「番手的にまっつはフェリーペかな」「タイプ的に、みわっちフェリーペでまっつがビセントかも」とか言われていたりもしたけど、フタを開けてみたらアルバロだもんねえ。
 「まっつがついに路線から落ちた」と騒がれましたわね。


 翔くんはこの前の大劇場公演で、咲ちゃんと立ち位置が変わった。
 それまでは翔くん・咲ちゃんという学年順の並び方だったのが、逆転して咲ちゃん・翔くんになった。

 もともと咲ちゃんは鳴り物入りスターで、入団前からトップスターになることが決まっているひとりだ。
 歴代唯一の単独音校ポスターとか、歴代屈指の新公主演回数だとか、わかりやすく「特別です、他の人と混同しないでください」と線を引いている。
 そんな咲ちゃん相手に、翔くんが脇から路線争いに食い込んできたこと自体画期的、本来ならあり得ない事態。まあつまり、そんだけ咲ちゃんが伸び悩んでいたってことなんだけど。

 だから、たぶんほとんどの人が最初からわかってる。
 彩彩コンビの劇団重要順位は、咲>>>翔だと。翔くんが上にいたとしてもそれは暫定処置、いずれは咲ちゃんが来ると。

 わかっているからって、実際に順番が入れ替わると衝撃はあるもので。
 『星逢一夜』『La Esmeralda』初日は震撼したなあ。

 まったくの脇だったのに、『オネーギン』『ロミジュリ』と翔くんがキラキラと頭角を現してきて。
 すっかり足踏みしてくすんでいた、ついでにぷくぷく太っていた、咲ちゃんを席巻したんだよねえ。アレは見ていてわくわくした。
 スター誕生は、みんな大好きだよね。
 「特別ですから」と真ん中に居続けてる成長のわかりにくい劇団推しスターの横に、雑草育ちの知る人ぞ知る美形がどーんと並んだんだよ? ドラマですよ、祭りですよ!
 スター誕生。咲ちゃんと並んでバウ主演、『仮面の男』では本公演でも美貌の輝く重要な役、そして初新公主演。

 瞬く間に、スターダムを駆け上るカタルシス。

 ……それを知っているだけに、あんだけ華やかにスター誕生しただけに、咲ちゃんの下へ落とされてしまったことは切ない。
 翔くん、あまりにも実力面で成長しなかったからねえ……。最初からうまくはなかったけれど、場を与えられれば伸びるかと期待したのに、悪声も音痴も芝居下手も、変わらなかった……。
 一方咲ちゃんは、やたら時間掛かったけれど、確かに前進しているし、『GOLD SPARK!』あたり太ましさMAXでえらいことになってたけど、ちゃんと痩せてきれいになってきているし。

 咲ちゃんが特別な人でなにがあっても路線スターなのは、わかっているからいい。
 それはそれとして、翔くんもちゃんと扱って欲しい。
 みんな並んでゴールできる世界じゃナイから、順位付けは仕方ない。それは受け入れた上で、夢を見られなくなるような冷たい仕打ちはやめて。
 願うのはそういうこと。

 なのに。
 直前の公演で、3番手から4番手へ落とされて、次の公演で、4番手すら落とされるの?!

 それひどくね?! 夢を売る劇団にしてほしくないやり方っすよ?!

 しかも、まっつが番手外扱いされた、アルバロで。
 またしても、4番手外し。
 やーめーてー。
 アルバロって、そーゆー「残酷人事役」とレッテル付くじゃん! つか、もう付いてるか。

 あー、ぶつぶつ。
 あー、ぐちぐち。
 雪組全国ツアー『哀しみのコルドバ』初日観劇。

 『哀しみのコルドバ』を観るのは3回目。観劇回数ではなくて、その興行自体を観る回数。
 再演の安寿ミラ版と、再々演の真飛聖版を観てきて、今回の早霧せいな版が、3回目。

 記憶が強いのは、まとぶん版。
 なんやかんや言いつつ、通いましたから。

 花形闘牛士エリオ@ちぎは、初恋の相手エバ@みゆと再会した。恋の真っ只中で大人の力で別れされられたふたりだ、大人になって再会し、燃え上がらないはずがナイ。
 でもエリオにはアンフェリータ@あんりという婚約者がいるし、エバにもロメロ@だいもんというパトロンがいた。四角関係大変!!
 エバをめぐってエリオとロメロが決闘だ!! 引き金が引かれるまさにそのとき、エリオとエバの母たちが叫ぶ。「お前たちは実の兄妹だ」と。……まさかの兄妹オチ!!(白目)
 そうだよね、昭和ってこういう時代だったよね。嘆きのエリオは、エバにはナニも知らせず、最期の闘牛に向かう……てな。

 なんつーか、まとぶん版とは印象が違った。

 同じ話のはずだが……あれ? 記憶にあるモノと違う……この作品、こんなに薄かったっけ?

 なんか、さらっと流れていく。いろんなことが。
 熱血かつ苦悩キャラ得意のちぎくんだし芝居巧者のみゆちゃんだし、この「実は兄妹だったのだーー! ががーん!!」なんつー昭和ノリの悲劇を、さぞや華麗に盛り上げてくれるだろうと期待していたの。
 でもなんか、昭和らしさは感じられず、わりと淡々と過ぎていく感じ。
 あれえ?

 といっても、ちぎくんが悪いという気もしない、問題ないと思う……てことは、だ。
 わたしの記憶にあるモノの方が、独特だったんじゃないか?

 そうか、まとぶんは、クドかったんだな……。

 ギトギトにクドかったんだわ……。
 このクラシカルな悲劇を、これでもかと大歌舞伎に、昭和万歳に演じてたんだな……。

 まとぶさん、劇団推しスターの宿命、植爺-谷ラインで英才教育受けちゃったクチだもんな……。しかも当時の星組って、植爺の専属組ってイメージだったし。
 そんな際立ったお育ちのスター様は、典型的星芝居……大仰でクドくてギトギトですよ、平成入団でも芸風は昭和ですよ。

 彩音ちゃんは、今でいうならキサキちゃんタイプ。かわいくて目を引くけれど、抜擢デビュー当時は喋るとびっくり棒読み大根芝居、ダンスは出来るけど歌は大変、という震撼レベルだったわ……。でも路線スターとして集中教育を受けるうちに、お芝居は改善された……が、決してうまいわけじゃない、こなせる役が増えたとか粗が目立たなくなったとかそんなあたり……なんだけどきれいだからいいや、てな。
 そんな彩音ちゃんだからもちろん、技量的には期待薄く、美貌と雰囲気優先、独自の芝居をするスキルのない彼女は、ただひたすらまとぶに付いて行った、まとぶの色を映した(染まるだけの技量はない)。
 結果、ひとりすごい熱量でぶっちぎるまとぶに、彩音ちゃんは足を引っ張ることなく邪魔することなく、追従できたんだな。この作品に限らず、まとあや時代ずっと。

 そして出来上がる、クドくアツい独特のねばっこい舞台。まとぶ時代の花組の特徴。
 そして、花組育ちで典型的花男のみわっちが、まとぶんのこの熱量と粘度の高い芸風と親和性が高かった。
 まとぶん+みわっち、って、混ぜるな危険、だよなあ……。このふたりが組むと、昭和度半端ナイっちゅーか、手が付けられないよなー(笑)。みわっちも植爺-谷の申し子だしな。

 泣き芝居をさせるとウザいくらい。てのが、古き良きタカラヅカファンや高齢演出家のニーズに合ったんだろうな。
 そして、現代のヅカファンのニーズには合致していなかった。……人気なかったよ、まとぶん。

 でもって、この濃ゆい人たちの間で、割を食っていたのがゆーひくん。
 薄い体温低い芝居が売りの彼は、すげー勢いで空回るまとぶん相手に一歩も二歩も下がって芝居をしていた印象。や、ヘタに近づくとぶつかるしねえ……。
 まとぶとゆーひは相性良くなかったよな……劇団もわかってて、すぐに離しちゃったけど。

 微妙だったな……遠い目。


 それを思えば、ちぎみゆの薄い芝居は、別に薄いんじゃなくて、これでちょうどいいんだろうな。
 わたしがギトギトに慣れてしまっていただけで。

 薄く現代的になった『哀しみのコルドバ』は……なんだろ、悲劇っぷりも薄くなった気がする。

 ウザくて大嫌いだった両ママ役とか占い師とか、「お前らもっとふつうに喋れっ!!」と出て来るたびイライラしたもんだけど、今回はそんなこともなく、むしろ「え、これだけ?」と拍子抜け。
 苛つかなかった分、心にやさしい……はずが、なんだろう、物足りない(笑)。
 引っかかりがなく、ただ流れていってしまう。

 あれ? こんなもん?

 どちらがいいも悪いもない。わたし別に、前回の花全ツ自体はそれほど好きでもなかったし。「このラストシーンは盆が回ってこそだよなー。盆のない全ツでやってもなー。でももう本公演でやっていい芝居じゃないしな古すぎる」と俯瞰していたクチだし。
 古くて嫌いな部分が多く、観ていて苛々する。が、好きな部分も多い。トータルして好きな作品かな。再演が決まるとわくわくするから、やっぱ好きなんだと思う。

 ただ、苛々しても花全ツは「好き」と思える部分が多く、「大して苛つかないけど好きな部分も薄かった」のが、今回の雪全ツかな。
 むー。どっちもどっちね、それ……。

 ちぎくんの熱血持ち味ゆえに、まとぶと同じタイプを期待していたけれど、こうして見るとかなり違うんだなあ、ということが発見できて、それがいちばんの収穫かもしれない。
 雪組全ツ『哀しみのコルドバ』でわたし的に興味深かったのは、ロメロ@だいもん。
 もともと好きな役だし、前回の花全ツでこの役をやっていたゆーひくんを好きだったこともあり、「好きな人が演じた好きな役を、好きな人が演じる」という、素敵にややこしい状況です(笑)。
 そりゃ注目するよね!

 オープニングのマタドール衣装での登場は、ゆーひさんが目に焼き付いているために、「お、おぅ……」となった……スタイル差がすげえ……。ゆーひくんはほんと、素晴らしいスタイルの持ち主じゃった……。
 そして、ゆーひさんではまったく気にならなかった歌が、だいもんだと気になりまくった。

 ロメロって、こんなに歌少ないのかよ?!

 ゆーひくんのときは、カケラも気にしてなかった……わたし、彼の歌を待ち望んだことがなくてな。「早く歌わないかなー、次のソロはどこだろ、まだかなまだかな」なんて、ゆーひくんを観て思ったことがなかったのよ。
 だから、実際にだいもんのロメロを観て、「え、なんで歌ないの? 2番手は登場したらまず歌うよな? 幕開いてけっこう経つけどなんで2番手に歌がないの? おかしくね?」と、ストレスたまりまくり!
 そうか……ロメロってそうだった……この役、ぜんぜん歌わないんだ……てゆーか、2番手としてあって当然の「心情独白ソング」がないんだ……作りとしてはただの脇役なんだ……。

 ちぎみゆだいもんが、がっつり組んで絡んで回していくのが現在の雪組。
 だもんで、「トップ至上主義」「2番手も脇のひとり」「むしろ娘役の方が比重高いんじゃ?」という、古い柴田作品はスター構成が合ってない……。
 だいもんが役不足だ~~、つまらんつまらん~~。

 花全ツのときは、とにかく主役のエリオ@まとぶんが濃くてね。ぎとぎとでね。主役と対になるビセント@みわっちもぎとぎとでね。
 ひとり大人のロメロ@ゆーひさんは薄くて芸風も違っていて、歌も得意でない人だから、第三者的で一歩も二歩も下がっていたとしてもあんまし違和感なかった。歌わなくても喋らなくても、美麗スタイルで目を楽しませてくれる人だったし。

 でも今回、主役エリオは薄いし。ビセント@咲ちゃんも存在軽いし。
 現代的に薄く軽い平坦な物語になってるのよ。
 そこに、だいもんは安定して濃いのよ。
 ちょ……ロメロさん、世界観チガウ……(笑)。あなたたぶん、まとぶんエリオと対峙できるキャラだわ……同じ星の人だわ……。
 まとぶん時代に新公をやっただいもんは、まとぶんの芸風を強く受け継いでいる。濃くてクドくて。
 この昭和な悲劇に、いちばん世界観合ってる……ああ、失われた昭和はこんなに近くにあったのね……でも出番少ない……。

 それがほんとに残念で。

 ロメロの輪郭が濃いもんだから、やたら目が行ったわ。
 わたしがだいもんスキーだから、てのは確かにあるだろーけど、この作品は真ん中あってこその作りで、花全ツで真ん中に泣かせてもらったため今回も自然と真ん中に感情移入するつもりで注視していた……のも確かよ、それでも「出番ねーな」「見せ場ねーな」なロメロさんが画面に出て来ると「あ、濃い……」と視界に入った。

 ロメロさん自体は、渋い大人の男で、わきまえたおじさま。
 ヒゲのダンディを演じる、というのは二枚目男役ファンなら一度は見てみたい萌えな役。
 でも、ロメロって一歩間違うと本専科のおじさまがやりそうな、枯れた脇役っぽいんだよなあ。
 あのゆーひさんが超スタイルで演じてなお「辛抱役」でおいしさが薄かったのよ。
 だいもんだとどうなるかしら……。新公でゆーひさんの役(2番手)を演じて、うまいけど本専科さんの役みたい……となった、あのだいもんですから。
 や、渋いヒゲのおじさま役、ってだけでわたしは「見てみたい、ワクテカ」だけどね。それとは別に、「大丈夫か?」てな気持ちもある。

 輪郭は濃いけど、やっぱし本専科風味かニャ……? いつものうるさい芸風も押さえられてるし。
 歌封じられてるしなー。コスプレは分が悪いよなー、ゆーひくんの役じゃなあ……。
 と、若干、というか、かなり物足りなく思っていたけれど。

 エリオ@ちぎくんとエバ@みゆちゃんの密会に踏み込んできたところからぬるりと沸き立つね。だいもんの持ち味、人間臭さ。
 そして、色気。

 ただの二枚目の人間出来たおっさんやってる分には感じなかったのに、嫉妬した瞬間から、色気が立ちのぼる。
 キターーッ!って感じー。これでこそだいもん!的な。

 ロメロの人間臭さがいい。
 スタイリッシュではないけれど、それがだいもんの持ち味。
 ゆえに今回、改めて思ったな。だいもんの色気ってファンタジー感とか美しさから来るモノではなく、むしろ逆、現実感とか醜さから発せられるんだ。
 これは、たまらんなあ。


 ロメロの人間臭さに萌えたゆえ、アタマが二次創作スイッチ入っちゃって、物語だのやりとりだーのがどどーっと脳内上演されました。いやはや楽しい。
 ロメロ×アントンで。(えっ、アントン?!)
 雪全ツ『哀しみのコルドバ』あれこれ。

 アルバロ@翔くんの使い方に、心からアタマを抱えました。
 あちゃー……。

 えー、アルバロは脇役です。その昔、花全ツのときにご贔屓が演じていたために、いろいろ人物考察したり自分なりに楽しんではおりましたが、「いてもいなくても関係ない、モブに毛の生えたよーな役」であることは確かです。
 番手付きスターにやらせる役じゃありません。番手付きスターがこの役をやらされる場合、「格下げ」「路線外し」という意図があります。
 だけど、露骨にそんなことをしたら、ファンから反発を喰らいます。そしてその反発、反感が、劇団が「上げたい」と切望する下級生スターに向けられる恐れがあります。それじゃ意味ナイ、下級生スターに人気を出させたいからいい役をさせるのに、いい役をさせたから反感を持たれるなんて本末転倒。
 だからその下級生に抜かれることになる番手スターにも、「配慮」が必要。どんだけ作品中で役付きを落としても、最後の階段降りだけは番手相応の位置にするとか。
 タカラヅカはそうやって「配慮」しつつ、落としたい人を落とし、上げたい人を上げてきた。(配慮するのがあたりまえ、だからそんな配慮さえしない月組がこわい、てなもんで)

 この公演では4番手のはずのまっつが、4番手役をもらえずに、脇のアルバロ役になった。
 露骨な格下げ、路線外し。
 ここまでわかりやすく意志を示しながらも、劇団はいちおー「配慮」をする。
 名前のあるモブ、だけじゃまずいってもんで、1曲歌わせることにした。もともとは誰の役だっけ? アルバロ役が歌うことになってない、導入部分のソロを、まっつに変更した。
 ほーら、ソロがあるからまっつさんはまだスターですよ、4番手役はずされたからって自棄にならないでね、という体裁。

 まっつは「歌手」として認識されていたから、歌の見せ場は確かに「配慮」になる。
 まっつに似合うタイプのきれいな衣装を着せてもらって、冒頭から朗々と美声を披露する……てのは、ファンにもありがたいし、純粋に作品を観に来た観客にもありがたいことだろう。物語解説、ナレーションも兼ねた役割だから。まっつの声質と滑舌はナレーション向き。

 だから導入部分のソロは、「4番手役をはずされた、まっつへの配慮」であってだね。
 アルバロ=導入部分のソロじゃない。

 同じように4番手役をはずされ、アルバロ役になった翔くん。
 まっつと同じように「格下げ」「路線外し」されたのだから、「配慮」されなくてはならない。

 その場合の「配慮」とは、ソロ歌披露じゃないはず。

 翔くんがもっとも魅力的に見えるモノで、見せ場を与える。
 「配慮」ってのは、そういうもんだろ。
 まっつに「歌」だったように。
 翔くんには……ええっと、今ちょっと思いつかないけど、とりあえず歌じゃないはず。
 てゆーか、翔くんのいちばんの弱点は歌じゃないすか? 彼がもう少し歌えていたら、彼の路線人生違ってたんじゃないの? 「音痴歓迎」だった劇団が、「歌唱力必須」に移行している現在。

 なのに、なんの考えもなく、導入部分のソロを翔くんに歌わせる劇団に、アタマを抱えた。
 なんも考えてねえ……。
 翔くんのことも、そして、観客のことも。

 『哀しみのコルドバ』は古い作品ゆえに、歌が少ないのよ。オープニングで次々スターが歌い継ぐ、てな作品じゃないのよ。
 ろくに歌のない長いオープニングが終わって、ようやくがっつりソロ来ましたー、しかもナレーション兼ねた情報量多い、一気に観客を牽引しなきゃいけない歌ですよー、……が、翔くん、というのは……観客としても、きついっす……。

 翔くんがんばってたけど。
 目がきらきらして、強い強い力を感じた。
 いろんなものを、跳ね返す気合い。
 歌だって翔くん比でよくなってた。

 しかし。

 役割に担う歌唱力も声質も、彼は持っていない……。

 歌は別の人に任せて、翔くんのダンスソロとか、ダメだったのか。
 それなら彼の美貌を存分に活かせて、観客の耳にも目にもやさしく、ストーリーにも入って行きやすい。

 中村Aになんの期待もしてないけどさー。
 ほんっとなんにも考えてないんだなー。

 サラリーマンだからそれで十分と思ってるのかもしれないけど、作品にも生徒にも観客にも、もっと愛を持ってほしいよ。
 雪全ツ『哀しみのコルドバ』あれこれ。

 フェリーペ@ひとこの「しれっ」と感がすごいな……。
 抜擢大役のはずが、ハードル高く見えない。
 軍服似合う。さわやか。かっこいい。

 どんな役もしれっとやっちゃってるように見えるのが、ひとこの強みであり、弱みであるのかもしれない。
 なんにせよ興味深いキャラクタだ。


 ビセント@咲ちゃんは、最近きれいになってきた……ので、この役も期待していたのだけど……きれいはきれいだけど……なんか薄い……軽い……。
 印象に残らないというか、引っかかりが少ない。
 どうしたんだろう、外見以外でこれだけ苦戦する咲ちゃんはめずらしいような。


 アンフェリータ@あんりちゃんてば、歌うまくなったね!!
 もー、ソレに尽きる。
 配役知ったとき、なによりソレだったもの。え、あんりちゃんの歌唱力でひまわりの歌?!って。
 物語の空気も展開もぶった切って、唐突にバランス悪いアンフェリータのソロ歌場面があるのだわ、この作品。構成的におかしい場面だからこそ、歌唱力必須。物語歪めてまで聴かせる価値のある歌声でなきゃダメなのよ? それを、あんり……?

 音痴耐性の高いわたしですら耳を疑うほどの、壮絶歌唱を披露したのが、中日『Shining Rhythm!』のあんりちゃん。
 ここまで歌えない子に、何故歌わせる……しかも激しく踊りながら。
 と、演出サイドへ怒りを感じたもんだったわ。

 あまりに強烈な記憶。
 たぶん、ヅカヲタである限り忘れることはナイっつーレベル(笑)。(ちなみに、このときの雪組中日公演では、もうひとつ同じレベルの壮絶歌唱をちぎくんが披露していて、ダブルで忘れられない)

 そんなあんりちゃんが、破綻なく大ナンバーを歌っていて、もうそれだけで感動した。
 すげえや……。こんなに歌えるようになるもんなんやね……。てゆーかもっと早くこれくらい歌えていたら、あんりちゃんのジェンヌ人生も違っていたろうに……。ほろほろ。

 路線娘役という縛りをなくしてからの方が、あんりちゃんはより豊かに彩りを身に付けていっている気がする。
 あー、かわいいなあ。かわいいは正義。


 メリッサ@せしこはまた、こんな役かあ。
 こんな、というのは下げる意味でのこんなではなくて、同カテゴリという意味な。
 最近彼女、同じようなタイプの役しかやってないような。
 美貌の上級生娘役となると、求められる役割が決まってしまう……というのはわかるけど。
 もともと引き出し少ない人なんだし、それでもっていちばん彼女の得意分野を活かせる役だとわかっちゃいるが、またか、と。

 続けて見ているから「またか」なのであって、各地の「はじめてタカラヅカを観る」人には、わかりやすくていいんだろう。
 きれいだもの。
 小娘のかわいさではなく、大人の女性の美しさ。まぎれもなく才能、そして努力で磨いたもの。


 こちらもまたかと思っちゃった、セバスチャン伯爵@大ちゃん。
 またかというほどやってはいなと思うけど、印象的に、このテの立ち位置のキャラをよくやっているなと。
 大ちゃんはビジュアルで初心者の目を奪うことの出来る人。短い出番で印象残す役はほんとにハマる。

 しかしせしこ、ゼイタクやなー。
 大ちゃんという旦那がいつつ、咲ちゃんと浮気かあ。
 うらやましい(笑)。


 アントン@きんぐのかっこいいこと。あー、ビジュアル好み~~。
 が。
 弱いなー。
 ほんと弱いなー。
 もっと強い印象を刻めないものかなあ。元花形マタドールなんでしょう? 信奉者も多いんでしょう?
 そんな華と歴史のある人に見えないっすよ……。
 だから好みとも言える(笑)。

 あの枯れっぷりがねー。
 弱さと薄さがねー。

 好き(笑)。
 雪全ツ『哀しみのコルドバ』にて。

 わたしはアントン@きんぐの言葉を聞きながら、別のことを考えていた。

 仲間たちから裏切りを責められるエリオ@ちぎくん。
 それに対し、アントンは穏やかに語る。

「エリオは確かにお前たちの道標になる男だった。
だけどエリオにずっとそうしていろと言うのは無理な話だし、
エリオだって道から外れて歩く権利もある」


 〇〇〇はわたしの道標になる男だった。
 ずっとずっと、彼に夢を見ていた。

 だけど〇〇〇にずっとそうしていろと言うのは無理な話だし、
 彼が生身の人間である以上、偶像を求め続けるのは無理がある。

 〇〇〇だって道から外れて歩く権利もある。
 いやしかし、はずれっぷりがものすごくてトラウマなんですけど、それもまあわたしの勝手なわけで、どんだけひどい辞め方をしても、それは彼の選んだことだ。ひどいことをするのだって、彼の権利だ。

「自分の弱さをエリオにぶつけてはいけない」

 自分の弱さを〇〇〇にぶつけてはいけない。

 わたしは弱い。
 わたしは弱い。
 わたしは弱い。

 ああちくしょー、わたしは弱い。


 きんぐのアントンはよわよわで、ちっとも元花形マタドールにも、闘牛界の親方にもそれなりの年齢の男にも見えないんだけど。いつものへなちょこ感漂う若くてハンサムなにーちゃんなんだけど。
 そのよわっちい色男が訥々と語る真理に、わたしは胸を突かれてべそついた。

 きんぐの声を、何度も何度も反芻した。
 〇〇〇だって道から外れて歩く権利もある。
 自分の弱さを〇〇〇にぶつけてはいけない。

 きんぐの声。きんぐの言葉。
 や、アントンの言葉だし、わたしのポンコツ海馬では一言一句正確におぼえることは出来ないので、大意のみだけど。(ブログに書くのに間違えまくってたらなんだから、手持ちの花全ツ『哀しみのコルドバ』から該当部分を再生して書き写したけど)

 何故か「きんぐの言葉」としてわたしの脳はインプットする。きんぐ好きだから。好きな人からの言葉と思いたい。
 都合のいいようにしか働かない、わたしののーみそ。

 自分の弱さを〇〇〇にぶつけてはいけない。

 日常のなかでふと、繰り返す。
 わたしがつらいのは、わたしに原因がある。〇〇〇のせいじゃないさ。
 〇〇〇を好きなのは、自己責任なんだから。
 つらいうちは、まだ好きだってことだし。
 それはそれでいいか。
 〇〇〇の舞台は、ほんとうに素敵だったからなあ。

 自分の弱さを〇〇〇にぶつけてはいけない。




 強くなりたい。
 雪組全国ツアー『La Esmeralda』初日。

 ナニにウケたかって、「ラ」が最初からある!!

 いやでも、小さい。「ラ」小さいっ。
 なんなの(笑)。

 ついこの間まで大劇場で、えんえん何度も観ていたショー。
 それをそのまま全ツに持って行くのは役替わり公演としての楽しさがあるよなー。
 もっとも今回上から4人そのままだから、役替わりが楽しいのは組ファンのみかなー。メイン以外の個別認識がどこまで出来ているか、で楽しさが変わってきそう。

 ところでこの公演でも客席参加があると聞いて、盛大に肩を落としたんですが。
 なんだ、ぜんぜんなかったわ。なんか舞台から言ってたかもしんないけど、ぜんぜん伝わってないし周りもなにもしてないし、ぐたぐたなだけだった。
 ほんと、なくていいから、客席参加……。
 こんだけどの公演もどの公演も、続け様にやられるとつらいわ。


 しかし、客席降り・客席登場多すぎ(笑)。

 銀橋ソロをそのまま客席降りにするとか、演出家短絡過ぎやろ。やだ楽しい。←

 いやあ、きんぐが単独で客席降りした日にゃあ、腰抜かしますわー。
 いきなりじゃん?
 どこの大スター様?!
 やだー、すごーい、うれしー!!(ただのきんぐスキー)

 大勢ばーっと降りて、という総力戦の客席降りもいいけどさー、この「とっておきのスター単独客席降り・登場」っての、特別感があっていいな。
 大抵単独で出来るのはトップスターのみでしょ。で、トップ様だから「銀橋部分のみ」だけじゃなく、「1場面まるまる」で、長い。
 それじゃチガウのよ、ダメなのよ。
 銀橋相当だから、所詮短い。そして、勢いがある。単独スターを勢いのまま「特別」に堪能できるって、印象の残り方が違うと思うの。
 タカラヅカをよく知らない人にこそ、「複数のスターがいる」「特別な演出」という刷り込みは重要じゃないかい?
 「切って切ってもトップスター」という金太郎飴状態じゃ、そのトップスターにハマらなかった人はタカラヅカ自体にもハマらなくなるじゃん。せっかくたくさんの出演者がいて、それぞれ魅力が違うんだから、アピールしないテはない!

 きんぐどうですか? ハンサムでしょ? 恥ずかしいでしょ? 観ていて「きゃ~~っ!!」となるくすぐったさがあるでしょ?
 え、お好みでナイ?
 んじゃ翔くんどうですか? 美形でしょ? キラキラしてるでしょ? なんかぐいぐい来るでしょ? 放っておけないでしょ?
 もう一声?
 んじゃとびきり濃いヤツを、だいもんどーだ!! 上着をばっさばっさ、恥ずかしさ半端ナイ、響く美声とでかい口、濃ゆい濃ゆい、やだなにタカラヅカってこわい、タカラヅカってナニゴト?!感を堪能できるスターですよっと!

 そして真打ち、トップスターのちぎくん! 美形でしょ、こんなイキモノが現実に生息してるとかあり得ないでしょ、感動でしょ?!

 そう、タカラヅカってマーベラスであるべき、リボン付きのプレゼントボックス、中身は宝石? それともびっくり箱? どちらもアリな世界観。

 ……わたし初日は2階席だったんで客席降りの恩恵はまったく受けてないんだけど、そんなことは置いておいて、「銀橋ソロをそのまま客席場面にしました」演出にウケた。
 あちこち悲鳴上がってるし(特にだいもん!!)、楽しそうでいいかと。


 あと感じたのはなんつってもだいもんの桁違い感。

 だいもんひとり、格が違う……。

 格上、格下、と言いたいわけではなくて。
 ほんとうにもう、カブトムシとチョウチョがチガウみたいな感じで、ただもう「チガウ」としか……!

 彼が歌い出すと、波動砲発射状態になるのな。それまでの細かい攻撃なんか虚空に霧散する。

 だいもんひとりが突出していて、他の人と違いすぎる。もう少し歌ウマがいればこんなことにはならないんだろうけど、今はオールフラットな場所に、とつぜんだいもん柱が地中からぬーん!と盛り上がって来て、天高くそびえてる感じ。いやソレ、バランス悪い。
 あまりにだいもん無双で、ちょっと疑問。

 芝居で歌ってないからなー。ショーでようやく歌うことが出来て、パワー全開。
 いいんだけど、や、わたしはだいもん好きだから、彼が楽しそうに暴れているのを観るのは好きなんだけど、いびつだなあ、と思った。
 かといって、セーブするのもなんかチガウ気がするし。だいもんが100パーセントでもいい、それで壊れない作品を、構成を、演出家が作ればいいんだ。全ツだから、構成のゆるさが明らかになってしまい、いびつさが露骨になっちゃうのなー。

 だいもんがあまりにだいもんで、彼が歌い出したとき、笑えてきちゃったよ……。
 格違い過ぎ、どっかーんと吹き飛ばし過ぎ。いっそ面白い。

 全ツ『ラ』面白い。
 雪組全国ツアー『La Esmeralda』で、どーしても、どーしても、言いたいこと。

 天月翼、かわいすぎっ!!

 事前情報ナイまま観ているわけです。
 どこで誰が出る、どう変更がある、ナニも知らない。
 それでなーんも考えずに眺めていて……パリの場面ですよ、だいもんさんがなんか色気全開に花男ぶりを披露していて、あんりちゃんが変な髪型でかわい子ちゃんやってる、あの場面。

 大劇場版では、エマさんがあんりちゃんに振り回されたりして絡んでいる。
 そのエマさん役が、翼くんだった!

 エマさんがなんの役なのか知らない。あんりお嬢様の執事かなんかかと思って観ていた。(注・正解は舞台となるクラブのドアボーイです)
 エマさんはにわにわとともに、かわいくもダンディなおじさまだった。
 年配役。年長役。大人の役。
 踊り狂う若者たちの中ひとめでわかる「あ、あそこにおっさんがいる」、あざやかな色に対する補色、みつまめの豆的な存在。

 へー、翼くんエマさんの役なんだ。
 衣装と登場が同じだからわかる。
 新公でナガさんの役とかにわにわの役とかやっていた翼くんだ、エマさんの役でもなんの疑問もない。
 おっさん役かー。
 と、そのまま受け止めた。

 が。

 おっさん役じゃなかったっ。若い男の子の役だ!

 同じ役なのに、役作りがまったくチガウ。
 コミカルでキュートに、あんりちゃんに振り回される……のも同じだけど、キャラクタがチガウ。

 翼くんは、若者だ。

 翼くんの、いちばん翼くんっぽいキャラ?
 にこにこヘタレ。小物全開。←

 うっわ、若いー、かわいいー。
 そう思って眺めていたんだけど。

 このキャラ、ひどくない?
 若いのはわかった、かわいいのはわかった。

 しかし、あの振付ナニ?

 両手でハート作ってかわいこぶってるよ?
 ハートきゅんきゅん♪ って踊ってるよお?!

 ちょ……っ。

 え、えまさんはあんな振りなかったよね? おじさんがあんなキュン死ポーズ取ってないよね?

 かっ……かわいいっ。

 あのヘタレわんこが、目を線にしたままふにゃふにゃ笑顔で踊ってる。
 ハートきゅんきゅんかわいこぶってる。

 ナニあれナニあれ。
 かわいこぶってる。すっごいかわいい。狙いすぎ。かわいい。

 翼くん、あーた自分のこと「かわいい」と思ってるだろ?

 思ってなきゃ出来ないよな? そんなクソ狙いすぎポーズ。
 かわいいと思ってるんだ、思ってるんだ、思ってるんだ。

 くそーっ、かわいいっ!! ムカつくーー!!(笑)

 …………すみません。
 逆ギレしました。
 翼くんがかわいすぎて。

 油断してたわ……単品で遊んでいい役になったら、とことんかわいこぶりやがる……。振付が元からだとしても、あのかわいぶりときたら……はあはあはあ。

 んで、翼くんてばカゲソロはあるわで、なんかひそかに活躍してる?
 や、ひそかすぎて、たぶんもともと翼くん好きな人にしかわかんないレベルだけど!!(笑)

 ドアボーイ役の翼くんで、グッズ作りたいわ……。画像ないですか、どっか……。あのハートのポーズ取ってるやつがいいっす。まっつ以来作ったことない、ダイカットチャーム作りたい気分だわ……。

 翼くんスキーに拍車の掛かった公演でした。
 はー。
 堪能。
 わたしの「美」を計る単位、「ケロに似ている」。

 わたしのかつてのご贔屓、ケロちゃんを彷彿とさせる、という意味です。物理的に顔が似ているということではなく、もっと数値化できない部分での相似。
 や、わたしとしては物理的に似ていると思ったのだけど、他人に話しても理解を得られなかったので、どうやらチガウらしいと判断。
 わたしの「好みである」ということ、わたしが「美しいと思う」場合、わたしの脳はソレを「ケロに似ている」と判断するらしい。

 好みのモノすべてをそう思うわけでもないので、どこで「ケロセンサー」が発動するのかは、依然謎のままだ。
 だが時折思うんだ、「ケロに似ている」。
 唐突に。

 雪組バウホール公演『銀二貫』千秋楽にて。

 わたしは思った。

 あ、ケロに似ている。

 松吉@かなとくんを見て。

 初日のかなとくんはよくやっているけれど、作品の力に乗っているだけでまだ作品をモノにしているとは思えず、かっこいいと言えない松吉という役をそのまんま、かっこよく見えにくいまま演じていた。
 だから油断していたよ。
 千秋楽にはもっとうまくなっているだろう、よく演じるようになっているだろう、というのは想定内だったけれど。

 ケロに似ている、とか、そんなの考えたことない。
 てゆーかしばらく忘れてた、この単位。最後に思ったのはいつ、誰に対してだ?
 まっつラブになっちゃってから、そしてまっつロスが深刻な今、まっつに似た人・まっつを彷彿とさせる人ばかりに気が行っちゃってるからねえ。ケロセンサーのことなんかマジ忘れてたわ。(ちなみに、まっつのことも「ケロに似ている」と思ってました、まっつにハマった当初)
 マイティーは物理的にケロに似ているから、やたらと「ケロに似ている」「ケロを思い出す」とゆーてますが、それとは別だからねー。

 ほんとに、考えたこともなかった。想像だにしない、そもそも忘れていた。
 なのに思った。
 ケロに似ている。

 どきん、とした。
 あ、ケロに似ている。

 そして、どきどきした。
 どきどきしまくった。

 ケロに似ている。
 ケロに似て……ああつまり、かっこいい。

 かっこよくないのに。
 松吉なんて役。ぜんぜんかっこよくない、「タカラヅカ」の美しさじゃないのに。

 なのに、かっこいい。

 てゆーかなんでもう千秋楽なの?!

 初日の松吉には満足できなかった。わたしは。
 作品に乗せられて存在しているだけに見えた。かっこよくない役だけど、それでもかっこよく見せてしまうのがスターの仕事、かなとくんは脚本にある通りの松吉をやっているだけで、ふつーの劇団ならそれでいいんだけど、「タカラヅカ」では足りない、脚本がどうであれ、それを超えた「かっこよさ」を出さなきゃいけないのよ、それが出来てないわ、到達していないわと思った。
 そして千秋楽。
 まだ、足りない。
 初日に比べれば良くなっているけれど、まだ作品を乗りこなしてない。その証拠にかっこよくな……あ、あれ? か、……かっこ、いい……。あ、あれ?

 まだいける。
 まだ先がある。
 これが最高峰、到達点だと思わない。まだ中間、まだ過渡期、ただの通過点でしょう?
 なのにもう千秋楽? もう終わり?
 待ってくれ、まだ足りない。

 月城かなとは、まだ先がある。

 そう思った。
 器用じゃないんだろう、スロースターターなんだろう。それじゃダメなのかもしんない、舞台人には瞬発力必須、走り出した瞬間トップスピードに乗る人が強い、それはわかってる。
 だけど待ってくれ、かなとくんはまだ変化している最中だ。
 ケロに似ている、どきっとするほどかっこよくなっている……わたし好みのナニかを醸し出している……しかし、まだ作品に負けている、勝ってない……待って、待ってくれ。
 わたしは見たい。
 月城かなとの行く先を、見てみたい。

 どきどきしながら、そう思いました。

 まだ足りない、まだ、まだ……そう「未だ」……完成形ではナイ、未来と可能性を感じさせることが、かなとくんの魅力なのかもしれない。

 もっと見たい。
 わたしは、かなとくんをもっと見ていたいよ。
 主演公演を観てなお、飢餓感がある。強い欲を持つ。
 これを長所……魅力とするならば、まったくもっておそろしい魅力だ(笑)。
「『銀二貫』観たの? どうだった? チケットなくて観られなかったー」
 てなことを言われた場合、わたしはすっぱり答えます。

「みつるとエマさんのラブストーリーだったよ。ラブラブだったよ、濃かったよ」

 真実かつ真理を端的に答えたつもりなのに、これ言うと大抵の人に「はあ?」ってすっげー怪訝な顔される……えー?

 雪バウ『銀二貫』、チケットのなさは異常です、なんであんなにチケットないの? せっかくいい公演だったのに、一般人が観られないのはもったいない。
 日本物だしれいこ主演だし、チケ難になる要素はあまりないと思うのに……。や、れいこに人気ないという意味ではなくて、相対的な意味でね。
 バウなんてファンアイテムだから、ファンが思い存分通えればそれでよし、なんですがね。
 出演者のファンはちゃんと観たいだけ観られたのかな。

 わたしはご贔屓を持たぬゆるいヅカ全般のヲタなので、観たいだけ観ることが出来ず、とっても残念っす。もっと観たかったー。


 でもって、『銀二貫』。

 出演者が発表になったとき、和助がエマさんだと信じて疑わなかった。なんせ、演目発表時に汝鳥伶サマで想像したくらいの、老人役だもの。
 ドラマでは津川雅彦っすよ。70代のおじーちゃん俳優さんっすよ。
 和助@エマさんは鉄板として、みつるはなんの役だろう? つかそもそもこの話の2番手って? 主要役、というなら和助の他に番頭の善次郎とか、真帆屋の嘉平とかあるけど……年配役ばっかなんだよなあ。
 梅吉の比重を上げて、2番手役にするのかな、それがみつるかな……くらいの予想。

 まさか、和助@みつる、善次郎@エマさんとは……!

 作品中、いちばんの老人がみつるで、エマさんの方が年下役とか……! 誰が思うのよ?

 主人公は子ども、主要役は老人……そもそもこの話をヅカでやること自体間違ってるよなー。ぶつぶつ。
 いい作品だし、ちゃんと「タカラヅカ」だったけど、『銀二貫』が成功したからって谷おじいちゃんの趣味で老人が活躍する話ばかり買い付けてこられたら困るわ……と、勝手にガクブル(笑)。

 みつるが老人役ということに、驚いた。
 みつるは専科とはいえ、『風と共に去りぬ』でアシュレをやったり、『星影の人』で土方をやったりする、「スター専科」だ。2番手格で特出するスター。
 スター専科さんはふつー、老人役はしない。組の2~3番手が老人役をしないのと同じで。反対に、本専科のおじさまたちは、アシュレや土方はしないし、ショーや一本モノのフィナーレで一場面もらって歌い踊りもしない。
 「スター専科」という言葉が公にあるのかどうかわかんないけど、みつるたち「各組で番手付近にいた、新人公演主演・バウ主演経験ありの男役スター」たちは、専科であって本専科ではない使われ方をしている。以前の新専科に近い扱い。
 だから、いくら重要な役だからといって、みつるが和助を演じるのはおかしいんだ。

 だが。

 『銀二貫』が「タカラヅカ」として成り立っているのは、みつるが和助を演じているからだ。

 主人公・松吉@かなとくんの次に大きな役の和助を本当に老人にしてしまったら……それこそ汝鳥サマが演じていたら。
 かなとくんは子役で、丁稚。ヒロインのくらっちもおかっぱの幼女。これでもかという薄ら寒い「子ども喋り」をさせられている。
 そして、重要な役を汝鳥サマやエマさんという、年配俳優で渋く銀色に固められてしまったら……コレ、「タカラヅカ」でやる必要ナイよね? ふつーに子どもを使って、老人使って、外部でやれよ。てなもんよね?
 「タカラヅカ」には、子どもも老人もいないんだよ。若い女性しかいないんだよ。子どもも老人も演じるけど、子どもや老人を演じるために若い女性ばかりで劇団やってるわけじゃないんだよ。

 ガチの老人役を、若く美しいみつるが演じてしまう。
 彼が若いことも美しいことも、見ればわかる。髪に白いモノをまぜて、年配ぽい喋り方をしていたとしても、本当の意味での「老人」の演技はしていない。本当に老人役なら、顔に皺や染みを書き込むなりするし、芝居も変わっている。
 そうでないのだから、若く美しい、だが老人役、という矛盾自体が、ここでは「必要」とされているんだ。

 それこそが、「タカラヅカ」だ。

 男役が女性であることなんて、ひとめでわかる。なのに舞台の上では「男」だと脳内変換される。
 タカラヅカというファンタジー界に足を踏み入れた者ならば、自動変換される。
 それと同じ、「タカラヅカ」の方程式と同じ理屈で、みつるは老人を演じているんだ。

 華形ひかるは、とてつもなく「タカラヅカ」である。

 『銀二貫』が「タカラヅカ」として存在するためには、みつる和助が必要だった。
 若く美しく、そして老人であれる「スター」が。


 いやもおほんとに、みつるがいい仕事していて。
 スター路線歩んできた人なのに、ついに下級生バウの助演をするようになって。しかも、老人役て……。と、複雑な立場ではあるけれど。
 よくぞ、これほどのスターになってくれた、と感動する。

 ファンタジー感を持ったまま、どんな役でも演じられるなら、無敵の助演俳優になれるよ……!


 善次郎@エマさんがいい役者で、いい仕事をしているのは、言うまでもなく。
 この善次郎さんは、和助の女房役。十代の頃から何十年と連れ添った仲。
 そしてエマさんの特徴っつーかね、おっさん演じてても役によってはちょい女が入るというか、オネエっぽくなるのなー。
 善次郎さんは女房役だからか、役割に引きずられてか、あちこち女っぽくてな(笑)。畳にのの字描いてそうなキャラに見えた。

 和助が男前で男らしいじーさんなので余計、善次郎が容姿いまいちの世話女房で愚痴吐き体質、かつ旦那にべた惚れのかわいいおっさんに見えた。
 や、ラブラブ。
 一見かかあ天下で旦那が尻に敷かれているように見えて、ほんとのとこ亭主関白で双方相手を尊敬してべた惚れしている、てのが素敵。理想的な夫婦。(男同士だけどな)
 旦那が男前で、女房がブスなのがいいんだよー。そこが萌えポイントなのよー。や、エマさん自身の容姿のことではなく、役の上でのことな。

 あの男前な旦那が、ブス女房にずけずけ言われてたじたじになってて、でもほんと惚れてるし尊敬してる感謝してる、それがいいのよー。

 和助さんほんとにかっこいいし、かわいいし、素敵だし。
 善次郎さんはほんとかわいいし、泣かせるし。

 エマさんと同等に芝居するみつるが素敵でなあ。惚れ直すわーー。

 だから『銀二貫』といえば、みつるとエマさん。
 何十年連れ添った者ならではの、プロポーズまであって見事だわ……完璧だわ。
 濃いわ……。

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