花組中日『ベルサイユのばら―フェルゼンとマリー・アントワネット編―』の新要素、ド・ブロイ元帥@みつる。彼が活躍する場面は、明らかにおかしい。
 役者に含みはない。あのよくわかんない役が成り立っているのは、みつるの演技力あってのものだと思う。
 だがしかし。

 植爺の改悪が、酷すぎる。

 という話の、前日欄からの続き。


 2幕の「王妃救出作戦」を話す場面。
 ベルナールとアランでもひどかったのに、アランの役割を、ド・ブロイ元帥という貴族のおえらいさんにした。

 革命派のひとり、一介の新聞記者でしかないベルナール@がりんが、何故そんな大貴族と知り合いになったのか。
 貴族がギロチンにかけられている時代に、ド・ブロイ元帥がどうやってのうのうと豪華衣装を身にまとい、パリの下町にいるのか。

 そんなことは、どうでもいい。
 おかしいけれど、植爺のことだから追求する気にもならない。
 描かれていないところでなにかしらあって、ベルナールとド・ブロイ元帥はお友だちになったんでしょう、と思うことはできる。
 描かれていないことは、知りようがないから。

 問題は、描かれていること、だ。
 実際に台詞として喋られていることが、キモチ悪すぎて、耐えられない。

 前述の通り、もともと不要な場面だ。
 物語に必要だからあるのではなく、タカラヅカ人事のために必要な場面。

 第一段階・「王妃救出」を考えるベルナールと、「王妃は死ぬべき」と語るロザリー、という内容。
 第二段階・人事事情によって、アラン役を追加。ベルナールの台詞と役割をふたつに分け、アランも出す。
 第三段階・人事事情によって、アラン役を別キャラに変更、ド・ブロイ元帥を出す。

 もともといらん場面なのに、それをさらに改悪して、まだその上改悪したのが今回。
 ちょ……、どこまで行くの?

 第二段階は、ただ冗長になっただけだった。ベルナールとロザリーの掛け合いだけで済む内容を、アランも交えて3人でやるから、水増し率がひどいことになっていた。
 そして今回、第三段階を迎えるにあたり、意味のない説明台詞の洪水に、「可哀想話」が加わった!!

 すごい。
 思いもしない論述が繰り広げられ、わたしののーみそは真っ白になった。

 え、えっと、ナニが起こってるのコレ?
 ナニがしたくてえんえん喋っているの?

「革命は失敗だった。この上王妃様まで処刑させてはフランスの恥だ。だから王妃様を救出する。フェルゼン伯爵が手伝ってくれる」
 こうベルナールが語ることまでは、ぎりぎり受け入れられる。この場面自体不要だけど、ベルナールならこう考えることは、あるかもしれない。
 許せないのは、ひとことで済む話を、えんえんどーでもいい説明台詞をベルナールとアランが入れ替わり立ち替わり垂れ流すこと。ロザリーを説得するために。
 わたしは無用な説明台詞と会話の重複が大嫌い。「それさっき聞いた!」「要点だけ言え」とイライラする。(自分の文章の重複は棚上げする・笑)
 会話が水増しされた分、短く要点解説出来ないベルナールはアホさが増したし、ロザリーも物わかりの悪さや頑固さが増しているわけですな。
 不快値が上がっているところに、ロザリーが「私は反対です。王妃様はフランス王妃として誇り高く死ぬべきなんです」と言い出す。
 ロザリーはそんなこと言わない!! キモチ悪い!!

 ……だったわけですよ、今までは。説得理由がアホ過ぎる(前日欄参照)とはいえ、一応、救出作戦の話をしていた。

 それが、今回は。

 ド・ブロイ元帥紹介になっている。

「ド・ブロイ元帥が、何故?」
「王妃様に責任はない、悪いのは我々貴族だ。だからフェルゼンの力を借りて王妃様をお助けする」
「ド・ブロイ元帥はフェルゼン様を糺弾していたはず。なのに何故?」
「他にしようがないためだ」

 あのー。
 ド・ブロイ元帥の情報はいらんです。ここで必要なことは、「王妃救出作戦とはなんぞや? 勝算はあるのか?」です。

 もちろん、ここにいるはずのない人の説明は最低限欲しいけれど、要点はそこじゃない。
 「王妃救出作戦」をたくらんでいるベルナールに、ロザリー@かのちゃんが「私に隠し事をしているでしょう、すべて話して」と言うから、計画を話しているんです。
 「何故なにをどうする計画」なのか話しましょうよ。

 なのに、ベルナールの説得会話のクライマックスは。

「大貴族で超権力者だったド・ブロイ元帥が、平民のオレに頭を下げて頼んでおられるんだ!! これだけ説明すれば、キミだって賛成してくれるだろう?!」

 すみません、ここでわたしのなかで、なにかがキレました(笑)。

 偉い人が、頭を下げて頼んでいるから。

 ベルナールが王妃を救出する理由が、それ?
 具体的にどう救出するのかではなく、ド・ブロイ元帥がプライドを捨てて「平民ごとき」「フェルゼンごとき」の力を借りる……それがどれだけつらいことかを、えんえん語る。

 君、帰っていいよ。
 つらいんだろ? 嫌なんだろ? だったらしなくていいよ。
 たしかに、大貴族の元帥様が、平民に頭を下げるのはつらいことだろうさ。だから、なに? 「こんなに屈辱に耐えているんだ!」から、言うことを聞けと?

 そしてベルナールの、人格破壊の凄まじさ。
 ここにいるのは、革命の闘士ベルナールじゃない。

 このベルナールはきっと、革命前の贅沢三昧の王妃様が、「ベルナール、あなただけが頼みです、お願いします」と頭を下げたら貴族側に寝返る人だわ。
「だってあんなに偉い人が、オレに頭を下げたんだぜ?」と。

 さすが、「アンドレが可哀想だ」という台詞を衛兵隊士に吐かせた植爺だわ。
 目の見えないアンドレを、衛兵隊の仲間たちがパリへ連れて行くのは、アンドレが「可哀想」だからですよ。
 オスカルが革命に身を投じるのは「弱い平民たちを守るため」ですよ。

 植爺が誰かのために行動する理由って「可哀想だから」なんだなあ。
 上から目線で、憐憫ゆえに動く。しかも、押しつけがましく。
 そうすることで、自分の優越感を満足させる。

 ド・ブロイ元帥の「こんなに屈辱的な状況を押して決意した」とえんえんえんえん語るのは、衛兵隊のみんなの前でアンドレが這いつくばって哀願する、あの行為ですわ。
 そしてベルナールが言うわけです、「ド・ブロイ元帥が可哀想だ、協力してやろうよ」。

 ド・ブロイ元帥が可哀想であることと、王妃救出作戦は、なんの関係もない。
 なのに、作戦参加の理由としてド・ブロイ元帥の苦労譚を語り、「これだけ説明すれば、キミも賛成してくれるだろう!」とドヤ顔するベルナールに、絶望しました。

 それに対するロザリーの返答は「王妃は死ぬべきだから反対」だし。

 キモチ悪すぎて、無理。

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