花組中日『ベルサイユのばら―フェルゼンとマリー・アントワネット編―』、キャスト感想。

 フェルゼン@みりおくんは、トップスターとしての責務を見事に果たしている。
 もともとうまい人だけど、真ん中に立つことでより腰が据わったというか、方向性がぴしっと一点を向いていて、気持ちいい。
 でもってわたし、みりおくんの歌声好きだなあ。

 1幕ラスト、フェルゼンが客席降りするんだけど、客席から起こったどよめきがまた……(笑)。大劇場でペガちゃんが飛ぶのと同じ! みりおくんひとりでペガちゃん並みに客席沸かせるのか!! と、感心した。


 アントワネット@蘭ちゃんは、正直1幕はどうなることかと思った。
 ボートの場面の薄ら寒さというか、ええっと、キミらぜんぜん愛し合ってないよね? お互いを観ずに芝居してるよね?!
 でも2幕、ルイ16世@さおたさんとの芝居は良かったし、牢獄場面も盛り上がった。

 他の人と組んでいるときの方がイイ感じに見えたんだけどな、蘭ちゃん……。
 あんましみりおくんと合ってない? たまたま、わたしにそう見えただけ?


 アンドレ@だいもん。
 アンドレというか、プロローグの貴族の気合い入りまくった笑顔が、すごかった。
 ちょっとないくらい、「本気!!!!」に作った笑顔で……だだだだいもんすげえなおい、とびびった(笑)。

 アンドレは違和感なくアンドレというか、クドくてねばこくて大芝居で、そして歌声はもちろん耳福で、おお、きっちり仕事してるわー、こりゃ2幕が楽しみだなあと思った。
 オスカル@キキくんがあまりにデカ過ぎて画面破壊系である分、「今宵一夜」がどうなるのか、ワクテカして……幕間に、ないとわかり、驚愕した。
 そ、そうか……ないのか、「今宵一夜」……。そんな扱いなのか……それであのすっげー気合い入ったプロローグなのか……。ほろり。

 でもって橋の上、撃たれときの痛そう感がハンパなかった。

 い、今までわたし、考えたことなかったよ……そ、そうだよな、痛いよな……。
 何発被弾するのかどこを撃たれたのかとか、髪の乱れとか動きとか、そんなことを気にしていて、「撃たれると痛い」ってことを、失念していた。や、だってアンドレ13~4発撃たれるよね? いちいち痛がってられないというか、衝撃の方が強いんだろうなとか。
 だいもんさん、最初の方本気で痛そうで、観ててびびった……そこをリアルにするのかキミ……で、撃たれすぎるともう痛みがないみたいで、ただ衝撃に吹っ飛んでる……って、そのリアリティやめて、観てて痛いから!!(悲鳴)
 ほんと素晴らしいっすよ、アンドレ様……。どんな扱いでも超絶全力疾走。

 あー、でも、アンドレのカツラはもう少し、なんとかした方がいいんじゃないかと思ったっすよ、望海さん……。


 ド・ブロイ元帥@みつるは……、うわーん、わたし、みつるなのにきちんと咀嚼出来なかった。みつるだからきっとなにかしらわたしを「おおっ」と思わせてくれると期待して注目していて、……よくわかんないまま、終わった。
 脚本がひどすぎて、アタマがついていなかったの……。きっとリピートすればわかるんだと思う。


 ジェローデル@ふじPはイイ感じにファンタスティック。胡散臭さがいい。ジェローデルってまっとうな貴公子力に加え、ちょい癖がある方がいいんだよね。


 ベルナール@がりんは、とりあえずビジュアルが好みだ(笑)。
 ずっと女の子っぽい持ち味だったがりんくんは、大人になって「女の子」から「少女マンガの男の子」になったなと。
 少女マンガにしかいそうにない甘さが、クドい花男たちの間で可憐に見える。
 でももう少し役割に相応しい、太い声が出ればなあ。


 ロザリー@かのちゃんは、なんつっても声がなぁ。娘役は声が重要。歌がヘタでもドレスの着こなしがヘタでも、「ヒロイン声」で喋ることが出来れば、ヒロインとして説得力があったりする……んだが、かのちゃんはせっかく歌える人なのに、声で損してると思う。


 花組って植爺に当たってない組なんだなあ、と今さら思った。
 最後に当たったのが2008年と翌09年の『外伝』? でもってその前は90周年の『天使の季節』まで遡っちゃうの?
 てゆーか、10年間で、植爺一本モノが皆無?!
 『天使の季節』は30分の短編、『外伝』は片方全ツだし、どちらにしろ90分でショーと2本立てだ。
 なんつー幸運な組……。
 自分の贔屓が花組にいるときは、気づいてなかった。なにしろ『天使の季節』で新公、『外伝』2本とも出演と、被害を真正面から被ってたからさ。
 そっかあ、植爺芝居当たってないんだ……。

 というのは、植爺芝居の出来てなさぶりに、目を見張ったんだわ。
 前を向いて一列に並んで声を張り上げる、あれ。独特で時代錯誤で大仰で、わたしはキライなんだけどねー。
 キライだけど、すでに「植爺芝居」として確立されているので、仕方ない。確立したモノが、足りていない・出来ていないと、「あれ?」と思う。
 『ベルばら』は植爺の脚本もひどいけど、それを差し引いたところで、すべてにおいて古くさい。それを「これはこれ」と納得させるには、その古くさい植爺芝居を……「植田歌舞伎」と呼ばれるモノを、モブの下級生まで体得して一丸となって世界構成しなければならないんだ。
 それが出来ていない分、観ていてけっこうつまづいた。あれ? あれ? と。

 大変なことになっているなと思うのは、大抵オスカル@キキくんの場面。
 えーとあれ、キキくんだよね? オスカルじゃなくて、キキくん。
 『Mr. Swing!』の女役のときも思ったけど、キキくんはキキくんなんだなあ。カツラをつけて、ドレスを着たキキくん。女役でも、男役の女装でもない。
 キキくんが技術的にいろいろ大変な人だということはわかっているけれど、今回は画面的にも大変なことになっているし、他の人たちも植爺芝居に手こずってるしで、助けてくれる人がいない。力技で支えてくれたかもしんないだいもんは出番ないし、みつるも絡まないし。

 あと不思議に思ったのは、オスカル場面の巻き状態。
 オスカル側の場面のテンポが、身に染みついた『フェルゼン編』よりずっと速いの。すっげー駆け足っていうか、「時間ないから端折るよ!」って感じで。あくまでおまけですから、本気で描く気ないです、って感じで。
 真ん中の人の技術のなさに加え、演出的にも重きを置いてない様子がわかるってのはほんとにつらいわ……。

 キキくんがオスカルでなければならないというなら、こんな「オスカルをやりました」という実績のためだけですてな扱いしないで、本気でやりやがれ。
 彼が真ん中として成り立つ脚本と演出をひっさげて、見た目も実力面もカバー出来る態勢を作り、おためごかしや言い訳なしでやればいい。
 ジェンヌさんたちはみんな、いつだって一途に与えられた役割を務めているのに、なんでこんなことをしちゃうんだろう、植爺って。

日記内を検索