さて、『一夢庵風流記 前田慶次』ですが。

 今回なんか、『ドン・カルロス』を思い出す……ちぎくんを見ていると。

 主人公の親友役で、辛抱役。親友なのに、主人公を裏切ることになる……が、結果的に問題なし、許される。
 銀橋での苦悩のソロ……よりによって歌いにくそうなメロディで客席が手に汗握る……とかな。

 助右衛門@ちぎくんは別に慶次@えりたんを裏切ってはいないんだけど、本人は「ナニも出来なかった。友として相応しいのか」と悩んでるわけで。ナニもしなかった=消極的な裏切り、だと助さん本人は気に病んでいる。

 んで、苦悩の曲ってのはどうしても歌いにくいメロディになっちゃうのかしらね。ちぎくんにはもっとわかりやすい、ばーんとした曲の方がいいんだろうに、やたらめったら難しそうな曲になっちゃってね……いい曲なんだけど……。
 見せ場であるはずの銀橋ソロが、歌う方も聴く方も大変、というこの共通点はどうなの(笑)。

 聚楽第が異端審問とかぶる。
 真ん中に引き出されている主人公、それをひな壇から見守るちぎくん。
 主人公が大変なことになっているぞ、とちぎくんの顔色が変わり、どーするどーするよオレ!!と悩み、いざ打って出ん!!と腰を浮かしたところで、見せ場を、他人に取られる。

 張りつめていた分、拍子抜けして坐り直す……。

 いやあ……たまりません。大好きです。

 『ドン・カルロス』のときもね、ポーザ侯爵@ちぎにはキュンキュンきまくりでした。
 カルロス@キムが裁かれるのは自分のせいだ、そう思い詰めて思い詰めて、でも本当のことを話せば自分が死刑になる、このまま黙って親友を見殺しにするか……悩んで悩んでついに、真実を告げようと決意した途端。
 話は別の方向へ転がり出し、ポーザ侯爵用なし。いい面の皮。

 聚楽第でも、慶次がおどけて動物の真似をしているのを微苦笑しつつ見守っていたけれど、ちょっと待て、これやばいんじゃね? 慶次、秀吉殺すつもりじゃね? と気がついて。
 止めようとしたところで、直江兼次@大ちゃんに見せ場を奪われる。

 見せ場になるべきところが、寸前でかっさらわれるところが……デジャヴ。ツボ。

 もしも聚楽第で、慶次を止めに入るのが助右衛門なら、ふたりのやりとり、駆け引きは見応えのあるモノになったろう。
 兼次はこの時点で赤の他人なので、裏の感情がない。しかし助右衛門なら、慶次の気持ちや互いの関係性、表立っての立場など、いろんなものが絡んでとても複雑な「演技対決」が見られたはずだ。
 助右衛門の見せ場になったはずだ。

 でも、そんなわくわくする展開は、さくっとカット。次行こう、次!

 慶次の心持ちを、助さんはろくに理解してなかったっぽいよ?
 そのあとの慶次と兼次の話を聞いているとき、いちいち新鮮な反応してるもの。
 まあ、理解してたらそもそも、慶次を野放しにしてはいないな。慶次とまつ@あゆっちの話を聞いていたんだから、真に「前田慶次」を理解しているなら、もっと危惧したはずだ……まつとの約束を守るために、慶次がどうするのかを。
 まつはそのあと、「瞳の色を探ることもしなかった」と自分の考えなしな頼みを悔いていたけれど、助右衛門はソレもなし。
 慶次親子が行方不明の間にまつが政略結婚させられたことをいつまでもぐちぐち悔やんでいる場合か。自分の責任ではないことを「私の責任」とこだわり続けるって、ある意味ずるいよね。人に話せば「や、キミのせいちゃうんやん、そんなん!」と言ってもらえることがわかりきったことをいつまでも悩むのって、「オレっていい人」的?
 そんなどーでもいいことにこだわり続け、目の前で起こっていることはスルー。慶次の秀吉暗殺については、まつの政略結婚よりはるかに「助右衛門の責任」は重いと思うよ?
 自分が悪くないことで悩み、悪いことは気にせずスルー。
 おいおい助さん、キミも天然だな。

 聚楽第で慶次を止めるのは、助右衛門にして欲しかったなあ、大野せんせ。
 兼次を出したいのはわかるけど、このままじゃ助さんがポーザ侯爵以上に残念な人になってしまう。


 『一夢庵風流記 前田慶次』が『ドン・カルロス』とかぶるのは、もうひとつ。
 主人公と敵対していた雪丸@まっつが、最後にしれ~~っと、加奈@せしこの肩を抱いて高いところで微笑んでいること。

 お前だ、お前が元凶だっつーの! ナニをしれ~~っと嫁といちゃついてんだっ!!

 フェリペ二世@まっつがイサベル王妃@あゆみちゃんと寄り添って「いい夫婦」っぽくカルロスを見送る、あのラストシーンが、思い出されるの。
 
 あんだけ掻き回しておいて、悪いことしておいて、最後ソレかよっ?!(笑)

 いやあ、大好きだったなあ、『ドン・カルロス』。
 毎回大泣きして観てた。

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