『Bow Singing Workshop~月~』観劇。

 歌バウもついにラスト。
 相変わらずキャストも知らないまま客席へ。

 わたしの集中力と記憶力が5組目ってことで力尽きたのか、いちばん個々のキャストへの印象が薄い。
 ひとりずつ挙げて「この人のこの歌はこうだった」「ここでこう思った」などが薄いのだわ。

 代わりに、特定の人に関してだけ、やたら強い印象を持っている。

 あちくん。暁くん。結愛かれんちゃん。
 この3人。


 まず、あちくん。
 なんつっても、あちくん。
 月歌バウ=あちくん、ってくらい、すべてを彼が持っていった。

 大ウケした。

 いやすまん、観劇中に声を出したとかじゃないんだが、内心悶絶した。

 オープニングの全員コーラス~自己紹介~一発目ソング……という歌バウ全組共通プログラムで、その「本編」1曲目があちくんだった。
 何故あちくん……、と、開演前、プログラムを見て思った。
 だって、1曲目ですよ、空気変えなきゃいけないんだよ?

 素人の発表会と同じよーな、テーマもナニもなくただひとりずつ脈絡ない曲を順番に歌う、という構成のコンサートで、MCのあとの散漫なホール内の空気を、「コンサート仕様」に変えるって大仕事。
 必要なのは「歌唱力」と「スター力」。コンサートなので、歌がヘタだと話にならない。でも、ただ歌ウマならいいってわけでもない。直立不動で「音程の正しい歌」を聴かされても盛り下がるだけ。
 スター力、と書いたけれど、歌バウの「スター枠」は1幕ラストと決まっているので、1曲目にそこまで求められない、ならば、「玄人感」と言い換えよう。
 どんだけ歌ウマでも、「素人です、舞台立つのはじめてです、おどおど」てな人が出てきたら、コンサートは崩壊する。
 また、謎の舞台度胸があって「スポットライトあびるの好きー、楽しいー!」てな人でも、「男装しただけのオンナノコ」だと台無し。
 ちゃんと男役として成立していて、舞台に飲まれずに存在出来て、歌ウマであること。別格職人さんでもかまわないから、これだけの要因を満たしている人。
 それが、この「ただの発表会」的な構成のコンサートの「最初のひとり」に求められること。

 宙組はカズキソラ。歌ウマ・新公主演
 星組はしどりゅー。歌える・新公主演
 雪組はすわっち。歌える・新公2番手
 花組はつかさ。歌える・新公2番手

 カズキソラほどの実力派を惜しげもなく投入しているのは宙組だけだけど、他の組も「歌で破綻しない、スター的役割の経験のある子」を持って来ている。
 最初の1曲はそんだけ大事だってことだ。

 だから、目を疑う。
 ……あちくん?

 えーと、一応彼もスペック的には「新公2番手」ではあるのか。しかし、問題は。
 ……歌。

 彼、歌えたっけ?
 『1789』新公のときは、歌もイケるとか思っちゃったんだけど、その後イケる歌を聴いたおぼえがない……『NOBUNAGA<信長>』はえーらいこっちゃ、だったし。
 スカステの歌番組にも出てたけど、「あすくんではなくレオ様が出てたもんなあ」てな過去の歌番組を思い出してぬるいキモチになったし。

 でも、実はそこそこ歌えるのかなー。でなきゃ、この位置には置かないよなー。

 と、思ってたらですよ。

 彼は、踊りに来てました。

 歌バウなのに。
 しかも歌バウ先頭バッターなのに。1曲目なのに。

 潔いまでに、歌、捨ててた!(笑)

 1曲目なのに、ヘタな歌聴かされてるのに、それが気にならないくらい、他がすごかった。

 顔芸ひどい。歌えない代わりに、顔で歌ってる。
 芝居ひどい。歌えない代わりに、芝居しまくってる。
 そしてなにより、歌関係なく、踊りまくってる。

 歌バウで、こんなに踊る人はじめて見た……。

 みんな歌いながらちょろっと振りがついてます、程度なのに。
 あちくんひとり、くるくる踊りまくってた。

 ちょっと待て演出家、歌えない子に先陣切らせる代わりに、ダンスの指導したの? 歌よりダンスメインの場面にして誤魔化そうとした??

 なんじゃこりゃあ?? と、頭の中クエスチョンマークだらけ。


 幕間、ネットで「振付はあちくん自身」というのを拾い読みして、心震えた。

 あのアホみたいなバランス崩壊演出、本人かよ!!(笑)

 5組通して、あんだけ不自然に踊っているのは彼だけなので、それが事実なんだろうなと思う。
 だって、その振付ってのが、「どこかで見た」満載の、「かっこいい振り」がこれでもかと詰め込まれてるの。曲の濃度や必要値と無関係に。
 自分がかっこいいと思ってる振りを、全部詰め込みやがったな……(笑)。

 やたら芝居がかってたのも、本人が自分の意志でやってたからか。やらされてるんじゃなくて、やりたくてやってるからこその熱量か。

 本人振付とか知らなくても「なんだこれ?? ナニ見せられてんだ?」と疑問に思うくらいには、ぶっ飛ばしてた。

 それが、ステキ過ぎる。

 バカだこいつ……と、盛大に草生やしつつ、やだもー好きー! と思った。
 そういうバカは好きだ。
 や、言葉悪くて申し訳ない。
 わたしはこういう「若気の至り」が大好きだ。年寄りなので、驕る若者にきゅーんとなるんだ。自分にはもうないものだから。

 だいもんの「天海さんもそんなことある?」と同じ、本人は大真面目、おかしいとは思ってないとこがいいの。
 悪いと思ってりゃハナからしてないよね、「いい!」と思ってるからやってるんだよね、その盛りすぎの振付とか顔芸とか。歌はボロボロなのに芝居とダンスで乗り切ろうと……乗り切れる、と思ってやっているところとか。
 愛しいなあ。


 歌バウだから評価を歌に限定すると、ぶっちゃけあちくん、2番目にヘタだったと思う。

 だけどだけど、わたしの月歌バウの記憶は、あちくんに持って行かれている。

 ひとから「月歌バウどうだった?」と聞かれたら。

 あちくんが面白かった。

 と答える。
 歌バウなのに。感想が「面白い」って(笑)。

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