『私立探偵ケイレブ・ハント』の登場人物たちってみんな、かわいいよね。
 言いたいことは山ほどあるが、キャラクタたちは好きよ。マサツカせんせの描く人たちは、みんなどこかリアルっちゅーか、現実という名の泥臭さがあって憎めない。

 ジムという役は、だいもんには役不足だと思う。なにしろ、いてもいなくてもいい役だ。
 そんな役なのに、しっかり血肉を感じさせる辺り、マサツカのキャラクタだなと思う。

 コーヒー好きで、出ないコーヒーメーカー相手に「んん?」ってやっていたりするわりに、たぶんこの人コーヒーの味とかあんましわかってなさそう、って感じとか。
 細かいところにこだわって整理したがるくせに、整理さえつけばそれで納得、その意味はあまり考えないとことか。
 理論派とか頭脳派とか、そっち系を目指しているというか、自分のことそう思っていそうなのに、実はけっこう感覚派で思いつきで動いちゃって論理的でないこととか。
 人の名前をおぼえるのが苦手なとことか。

 挙げていくと、いちいち、かわいい(笑)。

 そして、こんなタイプのおじさんが、よりによっておバカタイプの金髪美人とつきあっていることとか。

 いやあ、レイラ@のぞみちゃんがかわいすぎる。
 のぞみちゃんってほんと、破壊力のある大根役者。声を発するだけで空気を壊す力がある。うわ、ひとりだけ素人がいる!てな。
 だが、そこがいい(笑)。
 大根過ぎておつむの足りない女の子っぽくなっているのが、またかわいいんだ。

 そりゃあ、ジムみたいな四角四面なおじさん(顔のカタチじゃないよ)からすれば、かわいくてたまらんだろうよ……。惚れるわ、デレデレになるわ……。

 レイラはおバカだけど、そこに計算だとか毒だとかがない。
 ほんとに見たままの子なんだ。
 ジムの帰りを待ってアパートの前で寝ちゃったことも、変だとも苦だとも思ってない。恋人に会いたくて待ち続けて、眠ってしまうくらい待たされても、なんとも思わない。
「会えたからいいよ」って素で言っちゃう女の子。
 ……いい子だ……。
 ジムがごはん食べてきた、と聞いてはじめて不機嫌になるのもかわいい。待ちぼうけは平気なくせに、ごはんは別なんだ。
 ……かわいいいい……。

 撃たれたジムとケイレブ@ちぎくん、ホレイショー@翔くんが事件について話し出して、ひとり完全蚊帳の外で、びーびー泣いてライアン@ひとこに怒鳴られてまた泣いて、のくだりが神。かわいすぎて苦しい。

 あー、ジムとレイラ、大好きだ。


 ジムは、ケイレブとは別の星の住人だと思う。

 物語において、登場人物の「比重」って「主人公との気持ちの重さ」のことだと思う。
 たとえ出番が極少でも、主人公が特別に思っている人は、比重の高いキャラクタ。

 ジムを「いらない役」だと思うのは、主人公ケイレブが、ジムのことを、なんとも思ってないから。
 同僚だけど、共同経営者だけど、ただ、それだけ。
 個人的に特別な好意も興味も持ってない。事務所のみんなと同じ。横並び一列。

 初見では「このままのはずがない、どこかで親友っぽいエピソードが入るはずだ」と期待をかけ……裏切られた(笑)。
 ジムが撃たれた、とケイレブは病院へ駆けつけるけれど、レイラに責められて鼻白むけれど、それは相手がジムだからではなく、この世のすべての人間に対し同じようにするよねケイレブ誠実だから、って感じ。

 そして、その病院のレイラとふたりっきりの場面で、ジムがハリーワールドの人間ではないってわかるんだ。

 車椅子に乗ってレイラに押してもらいながら、どこか呆然としたジムの、「撃たれたのはじめてなんだ」という台詞。

 ああ、そうか。ここか。
 ジムは「あの戦争」を知らないんだ。

 マサツカ作品に必ずってほど出て来る「あの戦争」。主人公は「あの戦争」で従軍し、心に深い傷を負っている。
 つか、そうでなきゃ主人公にはなれないし、主要人物になれない。

 「あの戦争」を知らないジムは、マサツカと……もとい、ケイレブと、分かち合うことが出来ないんだ。共通言語を持たない、別の星の人間なんだ。

 ケイレブが特別視するのは、「あの戦争」の戦友ナイジェル@がおり。
 戦争経験者かどうかはわからないけれど、今現在命を懸けて生きている刑事ホレイショー。

 ジムとカズノはそこでふるい落とされているのか。
 ジムはぼんぼんっぽいし、うまいこと召集を免れたクチかな。もしくは最前線に行く前に戦争が終わっちゃった的な。
 ケイレブとジムより若そうなカズノは、年齢的な問題で前の大戦は知らなさそう。

 だから、ジムとカズノは「いなくてもいい」キャラクタなんだ。
 ハリーワールドとして、筋が通っている。

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