94期はもう、研7なのか。
 新人公演『一夢庵風流記 前田慶次』にて、新公の長として挨拶するあすくんを観て、改めて知った。

 実はそれがかなりショックだった、時の流れについて行けない年寄りがここに。

 雪組はずっと観ているとはいえ、わたし的に「よっしゃ、ホームは再び雪組だ!」と腰を据えたときに「若手」として台頭し出した子たちへの印象は、とても強い。
 2011年1月、役の少ない『ロミオとジュリエット』だからこそ、学年関係なくみんな横並びの「モンタギューの男」「キャピュレットの男」。その中で「あの子誰?」と人の口に上がることことが、本モノの華や美貌ってもんだろう。
 わたしの周囲で耳にしたのは、いろんな人に「あの子誰?」と聞かれたのは、モンタギューでは翔くんとあすくん、キャピュレットではレオくんだ。「かっこいい・きれい・かわいい」など、容姿を誉める言葉と共に、「名前わかるなら教えて」と言われた。
 94期のあすレオは、当時研3。舞台を踏んでまだ丸3年に満たないひよっこなのに、舞台姿の美しさで「あれ誰?」と人の口に上がる子たちだった。

 それからふたりは、新公その他で活躍しはじめる。雪組ならではの、小柄で美しい男の子たち。
 あすくんはその技術の高さ、歌って良し、演じて良し、踊って良しの総合力の高さを、与えられた役で存分に示す。
 芸風は十分濃いのに、まとまりの良さゆえか、地味なのは確か。でも、それも訓練次第の部分はあるから、「スター」として真ん中で使い続ければ、技術に後押しされた「舞台強さ」がさらに武器になったかもしれない。
 なのに悲しい劇団推しのなさ。もっと使えば威力を発揮出来る子なのに、わざとかってくらい、目立たないところに配置される印象。きれいでうまいから、人の口に上がり続けるんだけどねえ。
 レオくんはバリバリ抜擢され、華やかな扱いを受けたと思う。が、いかんせん実力が……。レオくんは総合力ではなく、美貌とダンスに突出しているから、芝居と歌を重視する組では分が悪い。
 とはいえ、抜擢されたときが実力が伴っていなかっただけで、今はそれなりになってきている。うまいわけじゃないけれど、男役度の高さ、あのビジュアルとエロさ(重要)をこのまま埋もれさせるのは惜しい。

 なんとかならないのかなあ。あすレオをもっと観たいなあ。新公主演できないかなあ。
 ……そんな淡い夢を抱きながら現在に至り、新公の長として挨拶するあすくんを見て、後ろ頭をはたかれた気になる。

 もう研7?! まだまだ下級生、そのうち新公主演しないかなあ、って思ってたけど、もう最後の年なの?!

 うっわー……。

 という、年寄りゆえの昔話スタートで恐縮です。
 つまりだ。

 あすくん、うますぎる。

 庄司又左衛門、本役はがおり。

 ひとりだけ、レベルがチガウ。
 声、滑舌、動き、芝居、存在感。上級生が混ざって出ているみたい。

 もともとうまいことは知ってるけど、それにしてもほんとにうまいな!!
 と、感心していて。

 反対に、不安になった。

 なんでこんなにうまくなってるんだろう……それこそ、専科さんみたいに。

 『JIN-仁-』新公で悪役をやったときとか、黒くてエロくて大変!だった。
 だから今回、似た役である雪丸じゃなくて、堅実な又左衛門で良かったなと思ったんだ。別の役柄を見てみたかったから。
 でも……ここまで堅実というか、現役感のない枯れたおじさんに作らなくても……。
 本役のがおりがそうだから、ってのはもちろんあるだろうけど、あすくんはあすくんだもの、エロさのにじむ現役色男でもいいはず。
 なのに、あすくんが常備していたはずのエロさが沈んで、うまさだけが見えるようになっている……。
 あすくんって芸風に跳ねっ返りさというか、やんちゃさがあるのも魅力なんだけどなー。大人の男を演じてなお、その奥にあるおさまりきらない意欲というか。なにかやりたくて、うずうず弾けている感じというか。
 でもそれが今回あまり感じられないというか、ひたすら堅実に思えた。

 首をひねっていたところに、新公の長として挨拶、ですよ。

 ああ、そういうことなのか! と。

 もう長の期で、しかも組内首席で、新公チームの組長ポジなわけだ。それでやっている役が専科さんっぽい又左衛門で……。
 こんだけ重なったらそりゃ、現役感薄れるわ。
 スターであることよりも、管理職っぽい雰囲気が先に立つわ。

 たぶん、とても真面目で、誠実な人なんだろう、あすくん。
 自分がどうこうよりも、「求められている、自分の役割」を自覚し、それを果たす人なんだろう。
 それゆえに、雪組新公チームはがっつりまとまり、こんな風にいい新公になっているんだろう。いやもちろん、あすくんひとりの手柄だと言っているわけじゃないが。

 脇に回って下級生たちを支える気概ばっちりのあすくんは大変頼もしく、素敵なんだけど。

 さみしい、なあ。
 わたしはもっと、「スター!!」なあすくんが見たいなああ。

 組ファンには歌ウマとして知られているけれど、なにしろ劇団推しのナイ人だから、たまに歌で抜擢されるたびに「あの子誰、すごい歌うまい!!」と驚かれる……毎回驚かれるくらい、ふだん使われてないんだよ……よよよ。
 もっともっと、あすくんを使ってくれればいいのに。きれいで歌える、芝居もダンスもできる、男役としての完成度も高い……足りないのは身長とキラキラ度のみ。……ううう、なんか書いててどんどん胸が痛くなる……わたしこういうタイプ好きなんですよほんと。わたしが好きなタイプだから、劇団愛が薄いのかしら。

 つくづく、なんでまっつって2回も新公主演できたのかしらね。まっつが2回やってるくらいなんだから、あすくんが1回主演しても良さそうなもんだニャ。(勝手な理屈)

 このまま枯れたタイプにならず、やんちゃで好戦的なキャラでいて欲しいなあ。
 ショーでバリバリにキザってたり、肉食全開で釣りに掛かってるのを見ると安心する。レオ様とふたりして、どんどん純情な客席女子を釣りまくり食いまくってくださいまし!


 で、その相方のレオ様は、雪丸。本役はまっつ。

 雷鳴とスモークと共にせり上がって来たときの、キターーッ!感が、たまりません(笑)。

 雪丸役がどうというよりも、まっつコスプレに見えるのは、やっぱ顔や雰囲気がまっつに似てるからなんだよなああ。
 『BJ』でシルエットだけだと、まっつに見間違えそうになったもの。横顔とかすげー似てる。

 こういう外連味が必要な役が決まる美貌とエロさを持つ若手男役は、貴重ですよ!

 ……うまくはないんだけど、それでも喋り出したらびっくりする、ほどヘタではなくなった……よね?
 レオくんは顔が大好きなので、点数甘いんです。ぶっちゃけよくわかりません、あの顔のせいで底上げされまくってて、実力を客観視できない(笑)。
 うまくないのわかってて、それでも新公主演して欲しいと思うもの。や、レオくんぐらいいろいろ苦手があっても主演してる人、全組通して山ほどいるじゃないですか! そんなら、美貌とダンス力と男役度は高いんだから、レオくんも十分資格アリじゃん! と思ってしまうのですわ。


 あすレオがもう研7か……。
 時が過ぎるのは早い……。

 『ロミジュリ』も『インフィニティ』も、遠いなあ。
 新人公演『一夢庵風流記 前田慶次』、主要キャラの感想。


 2度目の新公主演、慶次@かなとくんは、大柄な美形なので派手な衣装も立ち回りもとても似合う。
 芝居はえりたんコピー。

 なんだけど、えりたんは「えりたん」という特殊生物なので、芝居だけ真似てもえりたんにはなれない。
 花組時代、Pちゃんが新公やってたときの感覚デジャヴ。へたじゃない、問題なくコピーしてる……けど、なんつーか……「ふつーの人」だ。陽気なはちゃめちゃさ・憎めなさがないっつーか、小さくまとまっているというか。

 かなとくんの慶次は豪傑だけど生真面目で、「正しい英雄」に見えた。
 「前田慶次」でない他の武将ならその方がいいな。でも慶次は傾奇者だからなー。「生真面目さ」が見えるとなんかチガウ気がする。

 そしてこれはわたしの問題、かなとくんという人がよくわかってないので、終始落ち着かなかった。
 お茶会行くなりするべきなんだろうか。なんか間違ったイメージでキャラ造形してる気がして、落ち着かない。や、わたしのなかでね。
 んーと、わたしには彼がとても瞳うるうるした、いたいけな小動物に見えるんですよ、身体大きいけど(笑)。
 なにやっても胸がキュンキュンするので、よくわかんないんです。
 まあこのまま彼が路線スターとして定着してくれれば露出も増え、自然とキャラもわかってくることだろう。や、わたしのなかで。


 まつ@有沙瞳ちゃん。初ヒロインおめでとー。
 98期、研3。
 『心中・恋の大和路』でアカペラソロをもらっていた女の子。雪担のなかでも、ノーマークに近い扱いだった子よね? 98期娘役と言えば、で今まで人の口に上がるのは星南のぞみちゃんだったもんね。
 『心中』のソロで一気にみんな「あれ誰?!」になり、顔と名前をおぼえられたはず。わたしも含めて。

 つっても、『心中』のソロ1曲と、あとは子役としてにこにこ踊っているくらいしか記憶にない女の子。
 芝居はどうなのか、台詞声がどうなのかはわからない。その98期一のかわいこちゃん・のぞみちゃんはにこにこ踊っている分にはいいけど、棒読み台詞の芝居難さんなわけだし。
 はたして瞳ちゃんは……。

 よっしゃあ、芝居できる、声きれい!

 心の中でガッツポーズ。

 最近の劇団は、実力にも考慮して新人の人選をしはじめているのかもしれない。特に歌唱力の必要性に気づいてくれたのかな、って気がしてうれしい。
 月組の海乃さん、星組の城妃さんと、97期以下の歌える女の子たちが新公ヒロをしている現状、次世代はかわいこちゃん+歌唱力の時代か? と、わくわくする。

 まったく無名からの抜擢で、「強い」ヒロインを演じきる研3、ということで、舞台度胸を感じた。
 役者を育てるのはなんつっても舞台、『心中』東西公演でソロを披露し続けたのはいい経験だったんだろうなと思う。


 助右衛門@ひとこくんは、そろそろ見慣れてきた感があって、新公主演はまだしてないのに、すでに「いつもの」感がしている……・
 久々に雪新公を観るという友人に、「この2番手役はどういう子? 新人?」と聞かれたとき「えーと? 学年的には下だけど、なにしろ抜擢されてから長いから、新公ベテラン的な?」てな説明になり、そう言葉にしたことで「そっか、ひとこってすでに見慣れてる感あるんだ」と自覚した。

 ひとこくんの課題は芝居力かなーと思う。きれいだし歌えるし、本公演ショーで活躍しているので押し出しは徐々に身についてきている。
 でも芝居は本公演でも別箱でも、今のところあまり経験は積ませてもらってないので、新公抜擢連続でのみ鍛えている印象?
 助右衛門は辛抱役なので、いろいろ大変そう。学年的にはよくやっているんだと思うけれど、なにしろ『JIN-仁-』から毎公演目立つ役をやっているため、観る側のハードルが上がってる。
 今まではわりと勢いで演じる役をやってきた人なので、抑えた役になると芝居の軽さが気になった。

 『ベルばら』で毎公演幕開きからソロを歌う、という経験をしていても、今回の銀橋ソロではひとこくんの緊張が伝わってきて手に汗握った……そっか、すげえプレッシャー感じつつがんばってるんだねえ……。てゆーか、それってつまり、普段緊張があまり見えない子なんだなと、そっちに感心する。
 どんだけ抜擢されても、わりとしれっと受け止めているように見えるんだなー。そこが彼の魅力かも。
 緊張ばりばりでも、本役さんよりもメロディラインに納得できました(笑)。


 重太夫@真地くん……(笑)。
 本公演からして彼、大暴れしてるよねえ……や、本公演でも傾奇者役だからさー。傾奇者のザッキー・真地・叶の3人が濃ゆいのなんのって……。

 えー、真地くんはわたしにとって、期待の「若手長身美形」枠でした。最初に見たときは、そうだったの。小柄なキムくんを見下ろすように話していたあの美形将校、いい感じぢゃね? と思ったところからスタートだったの。わたしが雪組に戻って来て最初の全ツ。大阪出身者紹介で、すっげー元気よく、花道の端っこで手を上げていた姿をおぼえてる。
 そして、同期のいぶきくんとふたり、小柄美形の多い雪組での「若手長身美形」コンビとして愛でていたはずが……。
 真地くん……三枚目として、花開いてる。
 『ドン・カルロス』『Shining Rhythm!』の頃がなつかしい……あのころのキミは……(笑)。

 過去はともかく、イイ感じに目立ってきた真地くん。てゆーかわたし、彼の歌を、はじめて聴きました。ふつーに歌えてる? キャラソングなので、よくわからない……(笑)。三枚目キャラのまま歌うからさー。

 舞台に立つこと、演じることが楽しそう。本人が舞台大好きなのが伝わってくる。今のところはそれだけでいいのかな。
 今わたしがいちばん気になっているのは、ビジュアルの方向性だ。
 真地くん……お化粧だんだん微妙になってないか? 三太役がまずかったっつーか、あっこから戻って来てないような……。眉の描き方はそれでいいのか?
 重太夫はとことん三枚目にしていい役だからってことで、見た目からお笑い系にしてきたらどうしよう、と危惧していただけに、「あら、ちゃんときれいじゃない」と思ったのに。終演後に友人たちが言ったことは、「重太夫役の子、お化粧どうしたの? あれでいいの?」……最近の真地くん比ではきれいでも、ふつーに見れば微妙な化粧だったのか……!
 もっときれいになれるだろうに、つか、以前はきれいだったんだから、戻って欲しい……。まだお笑い脇役に徹するには若いんだからさー、可能性狭めないで欲しいな。
 でも本人は、このまま三の線希望なんだろうか。


 に、しても。

 歌にストレスがない新公って、すばらしい。

 や、新公でなくても、そうあるに越したことないんだけどさー。本公演はスター力で乗り切れるけど、新公はそうじゃない。だからこそ、せめて歌唱力はあってほしい。
 主演のふたりも2番手も、他主要役もみんな歌える、ってすげえ。
 (……レオ様は、歌少なかったからセーフかなー、「歌」というより「台詞の延長」だったし!笑)
 わたしは最近の谷先生演出作品は、あまり好きじゃない。最近の、と括るのは、昔はけっこー好きだったからだ。彼の男性的ロマンチシズムは、こっ恥ずかしくて、なかなかに好みだった。
 この役に萌えている、こんな男(と書いて、ヒーローと読む)に萌えている、というのが、よくわかった。自分の萌えに忠実に「オレはコレが好きなんどわあぁぁ!!」という鼻息荒い姿勢が見えた。ストーリーは破綻、最後は皆殺し、という定番だけど、作者が書きたくて書いているのが伝わって、それはそれで気持ちよかった。創作者が熱意を持って、「コレを書きたい!!」と書いた作品の熱って、わたしはけっこう好き。
 でも、最近の谷作品に感じるのは、好きで書いている、ことよりも、「仕事・役割優先」。嫌々やっているという意味じゃない、目的意識を持って仕事をしている、という印象。
 その目的ってのが「生徒の育成」。
 演出家ではなく、教師目線。

 『ホフマン物語』で感じたのは、作品うんぬんよりも、主役のみりおくんの魅力開花よりも、「ねねちゃんの突貫工事」だった。この公演自体が、ねねちゃんをヒロインとして急速に仕上げて星組に送り出す、という意図があったんじゃないかと思った。
 『THE MERRY WIDOW』で感じたのは、作品うんぬんよりも、主役のみっちゃんの魅力開花よりも、「みゆちゃんの突貫工事」だった。公演自体が、みゆちゃんをヒロインとして以下同文。
 『CODE HERO』でも以下同文。こちらは、まぁくんのことも鍛える意図が伝わった。

 作品としてはともかく、生徒を鍛えるという意味で、谷作品は機能しているのかもしれない。(除『ベルばら』)
 観客は谷作品というだけで敬遠するので、客入りというか興行成績的にはふるわなくなるが、長い目で見ると必要ってことなのかなと。


 とまあ、雪組新人公演『一夢庵風流記 前田慶次』の話でなんで谷作品語りからはじまるかというと、新公で活躍している生徒の多くが、直前に谷演出『心中・恋の大和路』で活躍した子たちだからだ。
 谷先生、次世代の雪組スターたちをかなり鍛えてくれたのかなあ、と思う。別箱公演では異例の代役稽古があったとも聞くし。
 すでにスター候補として知られているにしろ、芝居でこれだけ大きな役が付くのははじめてのかなとくん、たぶんそれまでは無名だった真地くん、芝居の達者さを見せつけたさらちゃん、存在感と実力を披露したあすくん……。
 突然のアカペラソロ(舞台にたったひとり!)で「あの子誰?!」と客席をざわつかせた瞳ちゃん。

 そして、「あの子誰?!」と誰もが注目した、しじみ売りのまからくん。

 二郎三郎@まからくん、98期、まだ研3。
 研3で、ヒロさんの役。狂言回しで歌あり芝居ありの難役。

 声が女の子のままなのは残念だけど、とりあえず聞きやすく、よく通る。
 外殻が出来ているから、女の子声というよりも「声の高い人」として収まる感じ。男の人でもいるよねー、この手の高い声の人、的な。

 まからくんは調子に乗る人ではなく、計算出来る人ってイメージなんだが、どうなんだろう。
 「前に出る」あざとさ(悪い意味じゃないぞ)を持っているんだけど、調子に乗ってだとか雰囲気に流されてするんじゃなく、一歩立ち止まって、「やっていいよな、やるぜ!」と踏み切り板に飛び込んでジャンプする印象。
 その「一歩立ち止まる」感じが、もどかしいような、たのもしいような。
 理性があるゆえに大きくなりきれないか、それとも客観性ゆえに場をわきまえ飛躍するか……様子見です。

 歌えて芝居が出来る若手は貴重。どうかどうかすこやかに育ってくれますように。
 あとは頬が削げて、声が男役になってくれるといいなあ。


 ところで95期ってもう研6なのね……ぴんときてなかったよ……もうそんなに大きくなっていたのか。

 という、95期の専科俳優一直線のお二方。
 おーじくんと翼くん。

 メルシー伯爵やって老人やって、そして今回秀吉で。や、おーじくんは多才な人なので、二枚目役もやってきてるけどさ。
 専科さんの役がハマりすぎてて頼もしい。
 でもわたし、彼の歌をちゃんと聴くのはじめてかも。
 おーじくんというと「なんでもできる」というイメージがあるので、「あ、歌うんだ。あ、はじめて聴くかも」と思うだけで、だからといってどうということはなく。
 歌えて当然、みたいな。

 プロバンス伯爵やってヒロイン父やって、そして今回利家の翼くんは、一貫して専科さん系ばっかだよなあ。
 二郎三郎、秀吉、利家という、専科さん(にわにわは組子だけど)枠の3役。
 翼くんが利家、というのは、実はちょっとしょぼんだった。

 というのはひとえに、歌を聴かせろ!ということです、はい。
 本公演で歌わせてもらえないんだから、新公くらい歌わせてくれ、声を聞かせてくれ、一観客としての願い。

 歌がないのは残念だけど、利家は出番が増えて、さらにおいしい役になってたから、ま、いっか。
 うまいんだけど貫禄がないのは課題?(笑) や、利家に貫禄があり過ぎてもチガウだろうけど、翼くんはどの役を演じても線の細さがあるので。専科さん枠でいくのなら、骨太さは必要よねと。
 ……ガチに二枚目を演じるのも見てみたいんですが……。


 専科枠全員、歌えるっての、すごいよねー。


 願人坊主@諏訪さきくん、歌比丘尼@みゆちゃん、ふつーにうまい……っていうか、みゆちゃん? そりゃ新公出てるか、すっかり失念してた。
 つか諏訪くんって顔目立つよね……ナニがどうじゃないけど、この子知ってる感がする……。

 北条氏規@イリヤくんは安定のうまさ、彼も落ち着きどころを見つけたのかなあ。
 主馬@橘くんもがっつり堅実。
 わたしはよくこのふたりを混同しがちっす……顔が濃い方がイリヤくん、と思って見てはいるんだが。

 重三郎@和城くんが、じわじわといい。なんだろう、彼に感じる小動物的なツボは……。本公演のお小姓とか、ちょこまかしてカワイイからなー。

 直江兼続@叶くんは期待通り、いいなあこの骨太感! 研4ぢゃないよねキミ!


 今回の男子たちのなかで、個人的にすっげーツボだったのが、黒田官兵衛@水沙瑠流!!
 うまいへたはわかんない、とにかく、美形だった。
 官兵衛って美形枠なのか! なにはさておきそこなのか! と、なんかウケる。
 新人公演『一夢庵風流記 前田慶次』あれこれ。

 ナニ気に驚いたのが、新公に、るりるりがいない。ということ。

 るりるりって何期だっけ? なんかいつも新公で彼女を見て「うまい、下級生ぢゃないっ」と思うのが常だったので、今回もまた探してしまった。
 そっか……下級生ばなれした彼女、ついにもう下級生じゃなくなったのか……。

 銃を構えるねね@あだちゅうにびっくりしつつ(笑)、秀吉ファミリーズの強さはすごいなと思う。
 ママがありちゃん、妻があだちゅうっすよ……秀吉がおーじくんでなかったら絶対負けてると思う(笑)。つか、この面子に負けないおーじがすごいとも言う。

 加賀@さらちゃんはきっちりうまいと思う。本役さんはやり過ぎている気がしてなあ……これくらいで止めてくれるのがいい。

 加奈@ゆきのちゃんは、「あ、娘役さんだ!」。
 すみません、本役さんはやっぱ「昔男だった女の人」という認識がどこかにあって。それゆえの強さや大人っぽさ、エロさ(笑)があると思うんだけど、ゆきのちゃんはそんなややこしい前置きなく、シンプルにあるがまま「娘役さんだ!」。
 ふつーに娘役さんだから、彼女を誘惑するレオ様が悪辣!で、素敵です。←

 しげ@あんりちゃんは、ちゃきちゃきカワイイ。こういう役も合うとは思う。
 思うけど……なかなか難しい役者さんだなと思った。
 ちゃきちゃきした役はかわいいけれど、「姉」には見えない。少女っぽいけれど言動は大人ぶっている……ロリ顔だけど大人、ってアニメならお約束だけど……うーむ?
 タカラジェンヌとしては問題なくきれいでかわいくて華のある娘役スターさんなんだけど、芝居に出る役者さんとして考えると、役を選ぶというか、役幅の狭さが気になった。
 一時期の安達祐実みたいというか。今の安達祐実は大人の女性として確立したけれど、子どもにしか見えない顔と実際の年齢とのギャップで一時期迷走してたよね……研7の娘役って、「大人の女」を演じられる学年ゆえに、あんりちゃんはこれからどうなるのかなと。

 捨丸@のぞみちゃんは、最初の「兄様!」のひとことからすでに「うわっ、棒読み」とびっくりさせてくれて、ブレがないです。
 声だけって難しいから仕方ない。てことで、声だけでちゃんとドラマを感じさせるみゆちゃんのうまさを再確認した。
 実際の芝居は、危惧したよりずっとよかった。あちこち棒読み調だし、芝居苦手なんだろうなあ、とわかるけれど、毎回ちゃんと進歩してる。
 せっかくの美少女だ、うまくなってくれることを心から望む。


 そういやうきちゃんが傀儡の女をやっていて、美しかったです。話す声もきれい。
 うきちゃんってなんでこんなに役つかないのかなあ……きれいなのになあ。


 新公演出も、大野くん。
 …………なんで『エドワード8世』は大野くん自身じゃなかったんだろう。

 かなとくんがえりたんコピーに見えたので、本公演と新公とでずいぶん違った『夢の浮橋』とは違うんだな、どうしてだろう? と思った。
 まあ、路線街道ぶっちぎりのみりおさまと、遅れて路線に躍り出たかなとくんではキャリアが違いすぎて、別モノを用意するよりえりたんのコピーをさせた方がいい、という気はする。
 そして結果的に、かなとくんの慶次は、えりたんの慶次とは別モノだった。台詞回しや表情など、とても細かくコピーしているのに、別モノになる不思議。
 だからこそ役者って、芝居って面白いんだなと思った。

 新公は全体的におちゃらけ度が上がっているというか、ギャグ演出が多かった。
 人数が少ないこともあるけれど、そうやってぶっちゃけちゃった方が場が持つんだろうな。
 特にお笑いを一手に引き受けていたのが利家@翼くんのやうな……。「助右衛門、すけえもぉ~ん!」はアレ絶対、「どらえも~~ん!」だよね?(笑)

 あちこち立ち入りが左右入れ替わっていたり、はける袖が違ったり細かい変更があったんだが、おぼえてない……。本公演をえんえんリピートしているため、いろんなところで「あれ?」と思ったんだか、このポンコツ海馬と来たら……。
 家康@まからくんの「陣触れをいたす!」で流れるアニメーションが、新公ではやたら長かったのは何故だ。同じ旗が何度も何度も通っていって、「昔のロボットアニメかよ!!」と突っ込んだ……いやその、昔のロボットアニメのモブの人たちはみんな同じ人でね……。

 ラストの台詞変更は粋だった。
 慶次を中心に全員集合で夢のように盛り上がる、桜吹雪の中の美しいラストシーン。
 退団するえりたんのためにある、「散らば花のごとく。楽しゅうござるのう」が、「間もなく満開じゃ、楽しみでござるのう」だっけかに(語尾は少しチガウかも?)変更。
 卒業するスターのための決め台詞ではなく、未来ある若手たちのためのエール。

 ただわたしは反射的に、「桜、思い切り散ってますがな!!」と突っ込んじゃったけどなー。
 や、ほんとに散ってるんだって、そういう演出になってるんだって。
 演出変えずに台詞だけ変更したもんだから、桜散る中で「間もなく満開」と言う、奇天烈なことに……。
 や、んなツッコミ野暮だけどさー。桜吹雪も止めて台詞変更するくらいの気概が欲しかった気はする(笑)。
 反射的なツッコミは、大阪人のサガよねー。
 思いつくままに、『一夢庵風流記 前田慶次』キャスト感想。
 書いたのが初日開けて1週間目くらいなので、今とちょい変わっている部分はあるけど、まあいいや。


 重政@ホタテが面白い。
 ただの腰巾着じゃなくて、優秀な苦労人っぽいところがツボ。

 最初の慶次@えりたんの屋敷で松風の鳴き声を聞き、「松風を置いては逃げまい。厩を見張れ!」と命令する回転の良さ。
 そうやって幕越しに慶次を責める様子が、半ば利家@にわにわへのパフォーマンスっぽいのもいい。努力は見えないところでしても意味がない、「出来る部下」「殿の命令に一途」アピールは本人の前でやらなきゃね!
 そうやって利家のために慶次を責めながらも「殿の甥御様と言えども」だけへつらい口調になる。……全方向にいい顔するんだよ……なんつー優秀な男(笑)。

 聚楽第で深草一家対応をしているところもまた、苦労人ぽくていいなー。慶次の連れだから追い返すことも出来ず、かといって歓迎しているわけでもなく。
 騒ぐ深草一家をハラハラとたしなめる、振り回されてる感じが素敵。

 花街出来たよ! と遊女たちにしなだれかかられて、鼻の下をのばしている様もかわいい。

 優秀なんだろうけど、いまいち報われてないっぽい感じがたまらなくかわいい。つか、好みだ。
 ほんっといい役者だな、ホタテマン。


 偸組メンバーズって実は、リーダーの主馬@翔くんよりおいしいのかもしれない、と思う。
 個としての活躍はなくても、芝居場面だけでなくショーパートにも多数出演できるから、単純に出番が多い。
 板の上にいる時間が長ければ、個のキャラクタを確立することもできるだろう。本編に関係ないから、ストーリーだけ主役だけを追う観客の目には「ただのモブ」でも、彼らを贔屓にする人からすれば、それぞれの性格や人生が見えるのかも。通し役であり、それぞれ名前がある、というのは大きいなあ。
 てゆーか主馬ってほんとにリーダー?

 組のリーダーって、加賀@ヒメじゃないの?(笑)
 慶次暗殺の実行者が加賀と国@さらさと捨丸@みゆ。顔がばれている主馬が手を下せないにしろ、その腹心らしい笹丸@まなはると鷹丸@レオじゃないんだ……彼らも顔ばれしてるかもしれないから?
 ともあれ、退却の指示を出すのがまなはるとヒメ……つか、どう見てもあれはヒメが仕切ってるっしょ……。

 ヒメのヤンデレぶりがこわいんですが、みゆちゃんのお兄さん……本来の捨丸さんはどんな人で、組ではどんなポジションだったのかしらねえ。あのヒメと結婚しようって男は、いったいどんな男だろう……。
 それとも、捨丸が死んだせいで、加賀様はあんな風に壊れちゃったのかな?
 ……たんにヒメがやり過ぎてるだけって気もする。(日が経つにつれ、加賀様の病みっぷりがひどくなってる・笑)

 偸組だけをガン見することが出来ていないため、キャラの個別認識か出来てないんだけど、まなはる氏は熱血キャラで、レオ様はクールキャラという、見た目通りの差別化で合ってる?
 とりあえずまなはるがアツいことだけはわかる。瞬間的に「カッ」としてるよね。
 そして、「カッ」と目を見開いたまま死んでるのがこわい……。や、その手前に美しい死体が横たわるので、どうしても一緒の視界に入ってきて……(笑)。←ストーリー関係なく死体を見ている

 誰と誰が兄弟で誰と誰が夫婦・恋人とか、語る場を設けて欲しいなー。タカラヅカニュース内のコーナーでいいから。花組の2回目の『ファントム』のときの、従者たちのコーナーみたいに。
 もしくは花組『オーシャンズ11』のときのベネディクトチームのコーナーみたいに。……そして最後はボス登場まで、ぜひ。

 ところで鷹丸@レオ様の最後の台詞は「雪丸様」よね? マイク入ってないから聞こえないけど! 彼が最後に求めたのは雪丸@まっつよね?
 レオくんのこーゆーとこ好きだわっ!!(大野くん意図と思ってないあたり……・笑)


 傾奇者たちが濃ゆい……。
 ザッキー・真地・叶ってナニゴト。

 ザッキーはちゃんと役名も台詞もある傾奇者だから、濃くてもいいんだけど、名前すらない傾奇者の真地くんと叶くん。
 キミら、顔がうるさい(笑)。
 これでもかとうるさい。
 好きやわー。


 ザッキーのモミアゲに乾杯。

 傾奇者・小鳥逸平のときだけぢゃないの、ラストの武将までも!
 男役としての心意気、しかと受け取ったっ。
 踊っているときの歌舞伎役者的な表情や見栄の切り方に、ザッキーならではのこだわりを感じるよー。


 朝風くんが、いい人をやっている。

 もう一度言う。
 朝風くんが、いい人をやっている。

 悪役じゃないの?!!
 善人で、しかもいじめられちゃって、くくくと耐える人の役なの?!
 朝風くんなのに?!

 その上、いじめる相手がきんぐ??
 や、秀吉@はっちさんならともかく、官兵衛@きんぐよ?
 きんぐごときが朝風くんをいぢめるなんて……なんのプレイ?(プレイ言うな)

 きんぐも朝風くんもかっこいいなあ。美しいなあ。


 そーいやきんぐさんは何故眼帯?
 みんな疑問を口にする。「どうして黒田官兵衛が片目なの?」
 わたしが知らないだけで、そういう説もあるのかな? と史学科で城郭研究なんぞやっていた弟に聞いてみたが、ぽかーんとされた。「そんな説は知らない」と。
「山本勘助とまざってんじゃないの?」……んー、他の人ならともかく、大野くんはそーゆーことなさそうだけどなー。

 まあわたし的には、眼帯きんぐがかっこいいから、無問題。

 片目で足の不自由なきんぐっていいよね。萌えるよね。
 聚楽第の場面では、あんな身体なのに、慶次の不穏な空気を察して身がまえるのよ。いつでも秀吉のところへ飛びだして行けるように。
 たまらんですね。素敵ですね。

 他にもまして文語体喋りなのがまたいいよね。存じ上げそうらわず、とか、現代語で言うなら「ですます調キャラ」ってことよね!(笑)
 わたしにとってえりたんは、無属性の人なんだなあ。

 無属性。
 えーと、その、腐女子的に。
 受でも攻でもない。そーゆー対象にならない。
 ある意味聖域?

 『一夢庵風流記 前田慶次』を観てしみじみと、えりたんとちぎくんって、芝居が合わないなあ、と思う。

 というか、えりたんが特殊なんだと思う。

 誰とも交じり合わない、独特の色と光、そして質感。
 だからこそ彼はファンタジーであり、タカラヅカのトップスターに相応しい人だと思う。

(今の雪組内でえりたんといちばん芸風が合うのって、ある意味ともみんじゃないかとも思う……。それが正しい作用かどうかは置いておいて)

 ともかく。

 慶次@えりたんと助右衛門@ちぎくんの関係、って、すごく萌えだと思うのね。腐女子的に。
 てゆーか、ちぎくんの片想いぶりがすごい。
 ちぎくんはああいう演技似合うね。得意だね。
 でも、相手が悪い。
 相手がえりたんだと……から回る。

 クライマックスで助右衛門が慶次に「お前が好きだ」と言うから、腐女子的においしいとか、そんなことじゃない。
 むしろ、言わない方が萌えだ。言っちゃダメだろ、と思う。
 だから問題はそこじゃない。

 慶次ってさ、徹頭徹尾、一貫して助右衛門に「ひどい」よね?

 助さんがいちいち「慶次ラブ」って言動に表しても、慶次は一切応えない。てゆーか、全スルーする。

 いちいち。ひとつひとつ。ご丁寧に。

 ここまでやったらわかるだろ? オレはお前の気持ちには応えられないんだよ、てゆーか困ってんだよ、迷惑なんだよ、な、わかれよ?

 でも助さんはまーーったく、へこたれない。

 鈍感なの? バカなの? わかっててそれでもやってるの? え、それってすでに嫌がらせの域?

 という、ふたりの関係。
 「だって私たちは、莫逆の友」(奥村助右衛門・談)


 まず、最初の場面。
 助さんは慶次に「しばらくふたりで飲みに行っていない」と言う。慶次は「厄介者(慶次)がご家老様(助右衛門)を誘うのはなにかと面倒だ」と答える。
 はい、1回目、断りましたー。
 助さんはまったく意に介さず、「面倒でも誘え」と言う。それに対し慶次は、スルー。返事をしない。
 はい、2回目、断りましたー。
 ふつー、1回誘って断られ、重ねて誘ってスルーされたら、わかるよな? 空気読むよな?
 慶次は話を変えて、助さんに笛を吹いてくれと言う。この話の流れでコレって……。
 「これ以上絡まれると面倒だから、喋らせたくない」ってことだよな?
 ちょ、慶次ひどい!! これって3回目の拒絶だよね?
 なのに助さん快諾、それどころか「お前の茶は美味いなあ」……ダメだこの人、まったく堪えてない!! てゆーかこの状況で料理の腕(お茶だけど)誉めるとか、女の子口説くときの常套手段をしれっと使ってますよ!!
 で、それに対して慶次、2度目のスルー入りましたーー!!
 返事しないの。「キミ料理うまいね。一生キミの手料理が食べたいなあ」てな男に、笑顔だけ返して、答えない。黙って部屋を出て行く。

 な、なんなのことのふたり!!
 このやりとり、というか、攻防戦?!

 そして、利家@にわにわと一悶着、慶次は金沢を出ることになる。
 ここでまた、駆け引きスタート。
 旅立つと言う慶次に、「私まで共に行きたくなる」と助さん。
 えーと、これって「貴方と駆け落ちしたい」って意味よね?
 もちろん慶次、華麗にスルー!!


 物語最初の場面からすでに、ふたりの駆け引きのものすごさに、息も絶え絶えでしたよあたしゃ(笑)。
 てか、慶次ひどい。
 ここまでいちいち、否定して回らなくてもいいだろう?

 キライなの? 助さんのこと、そんなにキライなの?!!

 いや、嫌いではないんだろうが、線引きがはっきりしている。
 ここまではいい、でもこっから先は、入ってくんな。

 つまり。
 友だちならいいけど、それ以上は勘弁な。ホモとかオレ、マジ無理だから!
 って……、……慶次……。

 万事この調子だもんなあ。
 くだんの「私はお前が好きだ!」にしても、慶次、華麗にスルー!!

 絶対、答えない。
 是非も可否も、絶対口にしない。むしろ、聞かなかったことにする。
 助右衛門の言葉自体、「なかったこと」にする。

 徹底してるわ……。

 ここまで無視され続けて、まったくへこたれない助さんもまた、すごすぎる。


 ああほんとーに、ほんっとーにわたしは、口惜しい。
 これでこれで、慶次が、えりたんでなかったら!!
 他の役者さんならきっと、萌え狂っていたと思うの!
 こんなオイシイ設定ナイよ?! 最高の萌えシチュエーションよ?!
 またちぎくんは、この空回りラブが板に付いてる。つか、めっちゃ得意! 不幸で報われなくて、ひとりじれじれ蒸れているのが、最高に似合う! よっ、このM属性!! 硬質で潔癖そうなのに、漏れる色気、誘い受の極意。
 しかし。

 相手が、えりたん……。

 えりたんは、チガウの……。
 薔薇とか耽美とかとは、別の次元にいる人なの……。

 健康に鞭を持って爆笑してるのが似合う人なの。丸首白シャツ着て青空の下で素振りしているのが似合う人なの。

 や、他の人にとってどうかは知りませんが、わたしにとって。
 ダークで救いのない美しい世界を、ぴかー、とか、ぺかー、とかいう光で照らし、そこでうずくまって泣いていたわたしを、救い出してくれる人なの!!

 らんとむが戻って来てからどーんと大人になり、まとぶ時代の弟キャラ、トゥスン@『愛と死のアラビア』やデイヴィッド@『麗しのサブリナ』とは別の人になっちゃったけれど、それでもえりたんはえりたんなの。
 他の誰ともチガウ、特別な光を持った人。

 ちぎくんのBLオーラとは相容れないっ!!


 慶次はえりたんでなきゃあり得ないと思っているけれど、対助右衛門だけは、えりたんはチガウと思う……。
 いや、えりたんを中心に考えるなら、ちぎくんの助さんが「チガウ」ってことになるのか? 大野くんはどう思ってあんな脚本演出にしてるんだ?

 考えてみれば、えりちぎががっつり芝居で組むの観るの、はじめてか。
 プレお披露目の『若き日の唄は忘れじ』はまだそこまで思わなかったし、逸平役はちぎくんに合ってなくて、ちぎくんが大変そうだった。(ともみんにぴったり合う役は、ちぎくんのカラーじゃないよな)
 『ベルばら』はカウント外だし、『Shall we ダンス?』はちぎくんが女役で、しかも恋愛モノでもない。
 えりたんの相手役って、ずーーっとともみんだった印象……。そして、ともみんが合うってことは、ちぎくんはチガウということ……。(対照的な同期)

 なんか、最後の最後で、「あー……そっかぁ」って感じだ。
 ちぎくんはいっそ、えりたんの敵役をやる方が映えたんじゃないかな。

 まあともかく、わたしは腐女子なので、このキャスティングは残念であり、また、愉快でもある……。

 えりたんのえりたんらしさ、ちぎくんのちぎくんらしさが、これでもか!!と際立って見えるから(笑)。
 『My Dream TAKARAZUKA』の、まっつの胸キュンポイント。

 最後の大階段、エトワールとして真ん中に立つ、その瞬間。

 小さっ!!

 小さな羽を背負ったまっつの、身体の小ささに、びっくりする。

 まっつが小柄だということは、知っている。
 専科・管理職を除いた現役男役で、最低身長だ。
 でかければそれだけで有利であるこの世界で、この小さな小さな人が、闘ってきた。
 努力と実力で、ひとつひとつの障害をねじ伏せてきた。

 小さいことはひと目でわかるけれど、芝居中、あるいはダンス中は、ここまで小さくは見えない。
 確固たる技術ゆえに、存在感ゆえに、身体の大きさを不問にしている。

 だけどこうして、なにもせずにただ大階段の真ん中に出てきたとき。
 大きな劇場の大きな階段の真ん中に立ったとき。

 その「小ささ」が、そのまま出る。
 むき出しになる。

 小さっ。

 こんなに、小さいんだ。
 それこそ、娘役並みに。

 こんなに小さい。
 それが、胸キュン。

 まっつが、愛しくて、たまらなくなる。


 階段の真ん中に立つまっつは、「チガウ」と思うのね。
 タカラヅカのトップスターになる人ではないと思うの。こうやって真ん中に立って「小さっ」と思う人は、トップになってはいけないと思うの。
 それが「タカラヅカ」だと思う。
 そうでなくてはいけないと思う。

 まっつのような人がトップスターになってはいけない、それが「タカラヅカ」というところだと思うの。

 わたしが愛する「タカラヅカ」は。
 どんだけ巧くても、どんだけ美しくても、どんだけ人気があっても。
 まっつは、チガウと思う。
 チガウからこそ、「タカラヅカ」は美しく、特別なところなんだと思う。
 「トップスター」というのは、特別なモノなのだと思う。
 そうでなくてはならないと思う。

 それとは別に。

 まっつが真ん中に立つ姿を、乞うていた。

 贔屓がトップスターになることを求めていたかというと、少しチガウ。正直それは、考えてなかった。
 結果としてそんなことがあればいいけれど、長年のヅカヲタ意識が邪魔して、そっちはあんまし考えられなかった。
 ただ、まっつが舞台で活躍してくれることだけを求めた。それは芝居で主要な役をやることだったり、素敵なダンス場面に出ることだったり、単純に出番が多いことだったりした。

 トップスター向きではない。それこそが、まっつの魅力だと思っている。

 番手にこだわったのは、それが得られるのが今のタカラヅカでは番手スターのみだからであって、まっつがまっつらしい活躍をしてくれるなら、どんなカタチでも良かった。
 ……んだけど、まっつがトップになってくれてもうれしかったし、「チガウよな」と言いながらもよろこんだろう。それがファンってもん。

 まっつがトップになったら、「それはタカラヅカ的におかしい」と思うくせに、そうなればうれしいと思う。
 トップにならない人は、いつまでも番手スターにいるモノではない。組が停滞してしまう。それもわかる。正しいと思っている。でも、それが理解出来ていてなお、まっつに今の番手でいて欲しかった。

 矛盾していた。

 わたしが愛した世界は、わたしの愛する人を認めない。
 だけどわたしの愛する人は、その世界にしか存在しない。
 キミなしでは生きていけない。でも、キミとは生きられない。……そんな感じ?

 矛盾したまま、ただ、まっつを眺めていたかった。
 彼を「世界でいちばん美しい」と思い、彼が創り上げるモノを観るのが、好きだった。人生のよろこびだった。


 その矛盾が、むき出しで突きつけられるのが、最後のエトワール。

 小さっ。

 これが、まっつの現実。
 ファンでもわかる、大階段の真ん中に相応しくない小ささ。
 それでも。

 それでも、彼を美しいと想う。

 この小ささごと。
 いや、小さいからこそ。

 胸を張って言える。
 このぽつんとしたちっちゃな身体で、ここまでやってきた「男役・未涼亜希」が、愛しいのだと。
 誇らしいのだと。


 胸キュンポイント。
 大きな劇場の、とてつもない大階段の真ん中に立つ、小さな男役の姿。

 この美しい人と出会えた。
 この人を好きでいられた。

 そのよろこびを世界に叫びたくなる。
 そんな一瞬。

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