わたしはびんぼー性である。
 実際にびんぼーなのだが、それ以上にびんぼー性なのだ。

 喫茶店ではつい、ケーキセットを頼んでしまう。飲み物だけでこの値段出すなら、ケーキ付きでこの値段出す方がお得っぽい。
 や、それおかしいだろ、びんぼーなんだから積極的に食べたいわけでもないケーキ付きにして、飲み物単体より高いお金出すのおかしいだろ?
 という、これがびんぼー性のなせるワザ。こんなことやってるからますますお金が貯まらない。

 東宝に新公を観るために遠征する、場合も、新公だけのために遠征がしにくいのだ。
 花組『オーシャンズ11』のときは、たしかに新公も観たかったのだけど、時間とお金を使って東京まで行く、と考えたとき、本公演のだいもんの銀橋ソロを聴きたい、という思いが加わって、決行できた。
 花組『エリザベート』のときも、本公演も是非観たい、だってムラではそんなに回数観られなかったし、という気持ちもあった。
 新公だけじゃなく、本公演も観たい。そう思える公演でこそ、わたしの重い腰が上がる。
 びんぼー性なので、一兎のためには走れないのだ。二兎ないと!

 かなとくんを見届けるために東宝新公へ行こう。
 そう思うと同時に、本公演の『星逢一夜』が観たい、と強く思った。

 ムラでの『星逢一夜』の印象が、とても変動的だったので。
 初日と中日、終盤はそれぞれ別モノだった。どんどん作品が変わっていった。
 主に、源太@だいもんのアクセル踏みっぷりがすごかった。彼が源太役を整理し切れていないのか、観るたびに違っていて、目が離せなかった。
 ムラは万遍なく7回観たんだっけ? ダブルするのではなく、1日1回ずつ、日を変えて。その都度劇場まで足を運んで。ご贔屓のいない公演でこの回数は自分的にかなり多い。
 千秋楽まで観たけれど、「落ち着いていない」印象だった。
 まだ、過渡期である。この作品は最終形を迎えていない。そう思えた。

 最終形態を観られるのは東宝でなんだな。
 そう思うゆえに、東京の人がうらやましかった。この作品を最後まで追えないことが残念でならなかった。

 ムラのように万遍なく観ることはかなわないけれど、東宝の中日である新公日程に遠征して、「東宝での『星逢一夜』」を観よう。
 それは実にわくわくする、楽しみなことだった。

 遠征日を指折り数えながら、わたしは財布の中身と相談しつつ、東宝楽チケットを探していた。
 中日を観たらきっと、千秋楽も観たくなる。だってムラがそうだったもの。あとになって楽チケット探しはじめて、大変だったわ……だから東宝楽は、早めに探しはじめましょう。新公遠征したあとから探すんじゃ遅いわ。

 そう思っていたのに。

 実際に、東宝『星逢一夜』を観て。

 なんか、すとんと納得した。

 肩の荷が下りた? 憑きものが落ちた?

 千秋楽を観たくなるに違いない……そう思い込んでいたナニかが、すとんと消えた。

 もう観なくていいや。

 そう思った。

 や、チケットが手に入って、なんの苦労もなく観られるというなら観ただろうけれど。
 チケットないのに苦労して無理してなんとか、どうにかこうにか手に入れて、スケジュール調整して時間作って無理に遠征して。
 そこまでして観る必要を、感じなくなった。

 なんか、納得したんだ。
 ああそうなのか、と。
 こう落ち着いたのか、と。

 それならもう、観なくていいや。
 コレが答えなら、答えがもうこの段階で出ているなら、千秋楽である必要はないや。

 ということで、木曜日の本公演観て新公観て、久々にどりーず東組のみなさんとごはんして、金曜日の1回公演を観て、帰阪したのでした。

 憑きものが落ちたから、もう心悩まされることはない。
 ない、けど……。

 なんか、つまんないなあ。
 拍子抜けしたというか。

 東宝『星逢一夜』を実際に観るまでは、すっげー盛り上がってたのに、わたし的に。
 無理してでも東宝楽行くか、と計算するほどに。

 『星逢一夜』公演はまだ続いているのに、千秋楽はまだなのに、わたしのなかで先に終わってしまった。
 それがなんか、残念。
 もっとわくわくしていたかった、かな。

 飲み物だけでいいのにケーキまで頼んで、食べきれないケーキをいつまでもちびちびと食べ続けて、「苦手なくせに、なんでケーキまで頼んだの?」と友人に突っ込まれた(実話)、そんな感じ?

 観るのは新公だけにして、本公演はムラでのわくわくだけを胸に抱いていた方が、よかったんじゃあ?
 まったくこのびんぼー性ときたら。

 あ、ケーキは大好きなんですよ? 好きだから注文している。ただ、あまりたくさん食べられない・甘いモノを食べるのは人より時間が掛かる、ために、「好きじゃない」と思われがちである、というだけで。

 東宝『星逢一夜』も、よかったのよ? 相変わらず名作ですとも。キャストも熱演ですとも。
 ただ。
 わたしが期待したモノとは、違っていた、というだけで。

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