最近ほんとわたし、ボケたわ……。
 チケットだぶらせない、ちゃんと気をつけるとあれほど肝に銘じたのに、また同じことをやってしまったニャ……。

 『For the people -リンカーン 自由を求めた男-』初日と、音楽学校文化祭をダブらせた。

 や、『リンカーン』初日は、意図的に取るの。トドファンですから、彼の初日は観たい。挨拶だって聞きたい。こちらは、取る意志さえあれば、取れる。900席のうちの多くは市場に出回るのだから。
 でも文化祭はね、「手に入らない」のが基本。500席のうち、関係者以外に発売されるのは、ほんのわずか。だからこちらは、日時を選ぶ余裕はない。初日とか千秋楽とか、ABどちらのバージョンがいいとか。んなこたぁ、どーでもいい。手に入った公演を観る。

 手に入った文化祭チケットが、『リンカーン』初日と丸かぶりだった。
 がーん。

 『リンカーン』は初日以外ならいつでも観に行ける。定価以下チケットもいっぱいネットには出てる。
 でも文化祭は、この日しか観られない。手に入らない。

 となると、文化祭取るじゃん……。

 『リンカーン』初日、行きたかったなー。
 トドファンだし、あきらもカレーも仙名さんも大好きなのになー。
 ううう、ぬかったわ……。


 初日じゃないならいつ行ってもいいや、と、値段と座席で選んでの余裕観劇。レート低いの大歓迎っす、びんぼー人じゃけん。


 でもって、初『リンカーン』……えーと、轟悠主演『For the people -リンカーン 自由を求めた男-』。
 ストーリー解説不要、タイトルの1行ですべて説明可(笑)。
 いつもの原田くんの「有名人の伝記、出来事羅列箇条書き作品」です。

 毎度、なんで原田くんは演出家になったのかなあ、って疑問だった。
 ほんとにやりたくてやってるのかな? って疑問な作風だから。

 でも、この『リンカーン』を観て、ひょっとして?と、新しい可能性を考えた。
 彼は、「物語を作りたい」「創作をしたい」のではなくて、「技術を試したい」人なのではないかな、って。

 小説でもマンガでも、作家(プロでも自称でも)って基本、「物語りたい」人がなるじゃないですか。
 自分でキャラ作って、自分で話を作りたい。こんな台詞言わせて、こんな必殺技で、こんなものすごい秘密があって……。
 書けもしない壮大な物語空想して、年表作ったり、キャラクタ設定表作ったり、相関図作ったりして。え、やらない? わたし若い頃やってたわ、数学のノートの裏から「わたしのかんがえたさいこうのふぁんたじーしょうせつ」の「設定」だけ書いてたりしたわ。実際に書くことはなくても(笑)。
 んで、わたしみたいに空想だけで終わらせるんじゃなくて、ちゃんとマンガなり小説なりに出来た人が、プロになるわけよね。
 コミックスのおまけページに、作者自身が鼻息荒く「裏話」とか「キャラクタ設定資料集」とか披露してたり、キャラがストーリーを離れてゆるい掛け合いをするだけのおまけマンガが載っていたり……ああ、この作者はほんと、「物語りたい」んだな、ってわかる。そういう人だからこそ、「物語る職業」についているんだなって。
 そしてわたしは、そういう「物語る人」の物語が読みたい。
 「これが書きたいんだあああっ」という強い渇望でもって書いているクリエイターが好き。

 てな思い込みがあったから。
 演出家もすべてそうなのかなって、思ってた。
 でもそうすると、原田せんせの作風ってよくわかんない。
 「伝記マンガ」をそのまま舞台にしたような作品作り続けて、楽しいのかなあ? 別に主人公の有名人のことも、彼の人生も、特別好きじゃないよね? 舞台化するに当たって調べはしただろうけど、それだけの愛情と興味しかないよね?
 なにがやりたくて演出家やってるんだろう? なにか言いたいこと、伝えたいことはないのかなあ?
 「物語りたいこと」はないのかなあ?

 ……ないのかもしれない。

 物語りたくて演出家やってるんじゃなくて、「演出する」こと自体がやりたいことなのかも。

 平面で描かれた絵を、見えない部分も補って3D化すること自体が楽しい、みたいな。
 白黒のマンガ原作を、フルカラーで音も動きもあるアニメ作品にすることが楽しい、みたいな。
 原作マンガについての思い入れも理解もないけど、この1ページを、描かれている情報をそのままアニメ化するという、技術に凝ることが楽しい、みたいな。

 クリエイターではなく、職人?
 自分では生み出さないけど、すでに「ある」ものを別の形に置き換える「技術」を誇る人?

 それなら、わかるわー。
 そういうことが楽しいってのも、ある。
 物語るだけが創作物のすべてじゃない。や、わたしは物語る人が好きだけど、それだけじゃないことは知ってる。

 原田くんは、「リンカーン」という有名人を使って、「タカラヅカのミュージカル」を作る、演出する、という「技術」を試したかった、楽しみたかった。
 だから、「まんが偉人伝」をどこまで感動的にタカラヅカの舞台に置き換えることが出来るか、をとことん試した。

 テーマは「演出」であって、「物語」ではない。
 感動的な演出、美しい画面、涙を誘う台詞。それだけあればいい。

 ついこの間さんざん通った『アル・カポネ』もそうだった。出来事が羅列されているだけで、物語はなかった。
 だけど、場面や画面は盛り上がったり、美しかったりする。台詞だけ取り出してみたら、いいことを言っていたりもする。
 物語がナイのに、何故盛り上がるのか。かえって不思議だった。……や、演者の力技だってのも大きいけど。

 それが今回、なんかふっと思ったんだ。
 物語なんか関係ないんだ、って。
 重要なのは演出なんだって。

 『リンカーン』の演出、すごくない?

 装置や照明、音楽の力も含めて。
 なんかすごい。

 内容が過剰書きなのに、感動大作っぽく持って行く。
 それって、演出すごいわ。
 や、もちろん演者の力が大きいにしろ。

 原田くん、どんどん演出力上がってるんだ。すごいわ。
 物語れない人だから、好みではないのだけど、この演出力には感動した。
 なんかええもん観たー、って気分にさせてくれる!


 ところで最後の場面、舞台に星条旗が出来上がるのね。すごいね。
 や、わたしの席からは見えなくて、観劇後に友だちに教えてもらった。DCは舞台が低いから、前からだと舞台を見上げるカタチになって、階段状のセットの「上」は見えないのよー。
 高くなっている後方センターとだと、きれいに見えたんだろうな。
 それは惜しいことをした。

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