なんやかんやで、『るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-』6回目です。
 今日は下手前方席! 生徒さんに目線もらうぜ!と、下心満々で行きました(笑)。

 いちばんかまってくれたのが叶くん!!
 何度も目線くれて、音がしそうなウインクくれた!!
 うっきゃ~~!!

 心臓どきどき、おばちゃん、若返ったわー。ありがとう叶くん。
 近く(というか、ほぼ真下・笑)で観る叶くんの美しいこと……目が大きくてこぼれそうだ。
 聞こえてくるナマ声が艶っぽくてな……。
 ありがとう、叶くん。

 それから、うきちゃんにウインクもらった!
 狙い撃ちされた。うわーうわーうわー。
 うきちゃんは見つめていると必ずウインクくれるよね、あざーっす。

 うきちゃんのあの美貌、色っぽさ、そしてキュートさ……。
 持ち味は出過ぎず奥ゆかしいのに、サービス精神旺盛だよね。はー、天にも昇る心地ですわ。
 ありがとう、うきちゃん。


 前方たけのこ席は、嫌う人も多いけど、わたしは大好物です。その昔、梅田プレイガイドでチケット売ってた頃から、坐れるものなら坐りたい席。
 全体を観たいときは、後方席に坐るから、前方席のときは、そこからしか見えない視界を楽しみたい。

 ……しかし、噂の客席降りは一瞬だったわ。
 キョロキョロしているうちに終わってしまった(笑)。


 そうそう、立見も1回したんだけど、立見オイシイね!

 とにかくこの公演盛況で、立見もすごい人数。
 3列ぐらいになってたりするけど、リピーターのわたしはわりとゆるくのんきに観劇していたわけだ。
 それほど舞台にかじりついているわけでもなく、注目ポイントはしっかりオペラグラス使って、それ以外は全体眺めて。

 んで、物語に集中していると、客席降りがあることなんか忘れているわけよ。
 2幕後半になって、舞台の上に主役格以外全員集合、そっからどたばたと銀橋へ出て来て……うわー、降りて来たーー!!

 あの、画面が近づいてくる感覚すごい。

 テレビを見ているような感じで、すごく他人事に眺めていたの。
 なのに、不意にテレビの中の人が、こっちへ向かってやって来るのよ。テレビの中から、飛びだしてくるのよ。
 そんな「ありえねー!」感覚。

 しかもしかも、走ってくるのは蒼紫@れいことお庭番衆よ?

「うわーーっ!!」って声出た。

 マジで。
 意識してのことじゃない。
 人間、驚嘆したらマジに声出るんだ。

 わたしだけじゃない。
 立見ゾーンの狂乱っぷり、すごいよ?

 蒼紫たちが走ってくるの観て、空気動いたもん。
 アイドル観て動揺する・悲鳴上げる女の子たちみたいに。

 悲鳴と歓声上がった。
 どよどよどよ……って、空気動いて、大雨みたいな拍手がぶわーーっと波状に盛り上がった。

 実際蒼紫たちが来るのは21列目通路までなんだけど。
 立見ゾーンまで来ないんだけど。
 そんなの関係なく、立見客大興奮。
 や、22列目から後ろの客席も、きっと同じように興奮して声出してるんだと思う。わたしがいたのが立見ゾーンだから、そこのことしかわかんないだけで。

 アレは声上がるわ……。

 そして、あのれいこたちが走ってきた瞬間の、感動。
 ちょっと忘れられそうにない。
 舞台作品というより、イベント、アトラクションとしての感動で、飛び道具扱いかもしんないけど。
 感動した……!
 舞台って、ナマのライブパフォーマンスって面白い。
 マンガやテレビしか知らない、たまたま『るろ剣』のタイトルに惹かれてやって来た人に、伝わったと思う。
 体験する、という感動。

 21列目通路で、蒼紫とお庭番衆がキメポーズするんだけど、これがもお、かっこよくて……。1

 なんかねー、涙出たよ。

 かっこいい。
 すごい。

 そんなだけのことで、胸がどきどきして、泣けてくる。
 感動って、いろんな種類があるよね。
 『星逢一夜』みたいな繊細な物語を観て涙するのも感動のひとつのカタチだし、テーマパークのアトラクションみたいなわくわくどきどきも、まちがいなく感動のひとつ。
 どちらも味わえる、タカラヅカってすごい。

 いろんな視界があって、いろんな味わい方があって。
 楽しいなあ、『るろ剣』。楽しいなあ、タカラヅカ。

 『星逢一夜』がチケット足りなくて、でも途中からでは人気でチケット手に入らなくて、「観たいのに観られない」という事態になったため、今回すっげがんばってチケ取りして。
 初日を観て、「こんなにチケット取らなければよかった……」って肩を落としたんだけど。
 んなたぁーなかったっ!

 雪組楽しい。
 ぜんぜん通える!
 『るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-』は、所詮、よくあるイケコの「イケコオリジナル」ってヤツである。

 主人公には仲間がわちゃわちゃいて、エコでNPOで、敵は表向きいい人ぶって登場して主人公口説いて、おかしな機械とかツールを使って世界征服を企んでるの。
 主人公が赤面台詞でヒロインを口説くのと、悪役が爆笑必須のおかしな野望ソングを歌うとこまでセットよね。

 と、書きながら、脳裏にあるのは『MIND TRAVELLER』と『アデュー・マルセイユ』ですがナニか?(笑)

 以前の花組はほんとイケコ率高くて……イケコの「オリジナル」率が高くてねー……泣けてくるわ。
 そして雪組2番手のだいもん氏は、花組のびっくりイケコ作品に出まくってきた人でねー。
 彼は入団以後の花組イケコ芝居作品はコンプリートしてるよね。
 でもって、微妙なポジションの彼が、通常より必ずいい扱いになるのがイケコ作品……イケコ、だいもんお気に入りだよね……その甲斐あってか、世界征服を歌う悪役を、すでに2回もやっている。
 だいもんというとベネディクト@『オーシャンズ11』が有名だけど、この役の元キャラ……イケコの原点らしい『蒼いくちづけ』で同じ役をやってるもんよ。
 だからだいもん、今回で同じ役やるの、3回目だね(笑)。
 …………イケコめ。

 イケコのいつもの作品なのに、今回はいつもにも増してつまらなくなっている。
 イケコオリジナルって、駄作だけどとりあえず派手! だから、需要はある作風だと思うのに。
 その派手さが甘い。薄い。

 原作モノであり、マンガのキャラクタに気を遣った結果である、ということが原因の一部……というか、遠因だとは思っている。
 だが、いちばんの理由は別だ。

 イケコオリジナルの醍醐味、トンデモの象徴。

 「世界征服を歌う悪役」が、ふたつのキャラに分かれたこと。

 加納惣三郎と武田観柳。
 「悪役」がふたりになってしまったため、すべてがボケてしまった。

 イケコオリジナルの構図はシンプルだ。主人公がいて、悪役がいる。悪役は全方向に悪くて、主人公だけが個人的に憎しみを向けているわけではない。子ども向けヒーロー番組と同じ。とにかく、悪役は悪い奴なので、天誅を与えるのだ。
 主人公には恋人や仲間がいて、悪役にも悪の組織やら幹部たちがいる。グループごとにわいわいやって、最後は主人公と悪役の一騎打ち。
 正義が勝って大団円。

 単純な軸なのに、それでも盛り上がるのは、道具立てが派手だから。
 悪役はなにかしらおかしなツールを使って変人ぶり、ぶっとびぶりをアピール。
 海馬の帝王もそうだし、『薔薇の封印』の装置もそうだよね。観ているモノがぽかーんとなるような、とびきりアホアホなことをおっぱじめる。
 他のナニを忘れても、公演に出てきたイタ過ぎるツールだのワードだけでは、いつまでも忘れられなくなったりする。
 悪役がアホであればあるほど、作品が派手になるんだ。観客が「ぽかーん……」になればなるほど、ドラマチックが加速するんだ。

 なのに、『るろ剣』では、このシンプルな物語で、悪役がふたりになっている。

 つまり、悪役のトンデモ度が下がっている。

 イケコのいつもの悪役ならば、観柳ひとりで十分だ。
 彼に世界征服ソングを歌わせて、とびきりアホアホに、とびきりトンデモなく、派手なことを歌い踊らせばいい。

 そうなのよ。
 はっきり言ってしまうと、加納惣三郎いらない。ってことなのよ。

 いらないキャラが、「2番手です」って出て来て尺を取るから、話はより破綻するし面白くないし地味になっているのよ。

 なんでこんなことになっているんだろう。
 観柳が悪役では、何故いけなかったのか。

 タカラヅカには恋愛要素が必要だから、ヒロインの薫を口説かせるためにオリキャラが必要だった。
 ここまではわかる。
 原作キャラに、原作にない恋愛はさせてはならない。

 だから制作発表時にイケコが語っていたことまでは、疑問なく受け止められる。

 だがしかし。

 実際に出来上がったモノを見てみると。

 加納惣三郎、恋愛してない。

 別に彼、薫に恋してない。
 たしかに薫を誘拐したり口説いたりしてるけど……別に、薫本人を愛しているわけでは、まったくないよね。
 脳内で無理矢理別の女と重ねているだけで(しかも、キツネ顔美女にたぬきかわいこちゃんを重ねるとか、あり得なさすぎ)、恋愛とは別事情。

 えーと、これぐらいなら、観柳でもよくね?
 薫誘拐して、ゲス笑いしてりゃいいじゃん。ゲス野郎だから、ガキに興味ナイ言いながら、薫にちょっとエロい絡み方すれば、それでコトは済むじゃん。

 観柳@だいもんで、悪役にして。
 ガトガト言ったり、阿片アヘンとやらしく歌ったり、いくらでもいつものイケコ悪役としてキャラ立ち出来る。

 そりゃ美形キャラにはならないけど……ジェンヌがやる以上美形なのは当然だし、「さすがタカラヅカ、観柳すら美形だわ」で済むのに。実際翔くんがめっちゃ美形観柳やってるし。
 だいもんも絶対とことんゲスに観柳作ってみせると思うわ。つか、やりすぎなくらい、やっちゃうと思うわ。そこまでやったらアナタ、二枚目男役スターとしての根幹が危うくなるわよ?!と外野がびびるくらい、やると思うわ(笑)。

 なんで観柳はダメだったんだろう……。
 そして、なんでわざわざ加納惣三郎なんていらんキャラをでっちあげてまで、いつものイケコ作品を壊してまで、観柳を悪役の座に着けなかったんだろう。
 加納惣三郎を出すなら、マジで「前髪の惣三郎」@司馬遼太郎やればよかったのに。日本人の多くは加納惣三郎と聞けば司馬遼思い出すよね? ヅカヲタだって『誠の群像』を思い出すし。
 ただ名前を借りてきただけのへんな人、なんて、作る意味あるのか……?

 だいもんに、美形役をさせたかった。
 ……それ以外の答えを思いつかないんだけど、小池せんせ、どうなの?(笑)
 『るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-』の構成の悪さは、どうにかならんもんか。

 1幕はストーリーほとんどナシ。やっていることは、原作キャラの登場人物紹介。1幕後半ですべてのキャラが顔合わせして、さあ、物語がはじまるぞ……と、やったかと思うと。
 2幕全部使って、数時間の話。
 ぽかーん。
 プチ・ガルニエに来ました、どたばたして、その日のうちに終了しました。
 えーと、夕食に招かれて(6時くらい?)、薫@みゆちゃんが「そろそろ帰る」と言うくらいだからまだ深夜にもなってないあたりで話の真ん中へん(8時くらい?)、そっからさらに経ったとして数時間? 加納@だいもんの最期がキリよく真夜中(12時?)として、せいぜい6時間くらいのこと?
 ラストは無理矢理朝になってそうだから、がんばって一晩? 加納の最期は明け方?

 作中で時間経過があればいい作品だと言うつもりはまったくないが、1幕ののんべんだらり展開と違いすぎて。
 いろいろストーリーが進んだ上で、いろんな計画が立てられた上での敵の本拠地での大決戦!なら、ひとつの場面だけで2幕まるまる使うのもアリかもしんないけど。
 それまでなーんにもなくて、プチ・ガルニエへ行って、そこからすべてはじめて、たまたま偶然で、なりゆきで、ラストまで、って。
 杜撰過ぎるわー。

 悪役を観柳@翔くんと加納とふたりにしたために、話の軸がズレてしまっているのがいちばんの問題。
 拝金主義の観柳と差別化するために、加納には「維新を起こす」という、別の理由付けが必要になった。
 だが、加納の言う「維新」がなんなのかは、語られない。
 元新選組隊士だが、新選組時代にあったのはただの権力欲、思想も理想もナニもないゲス男。明治になって実業家として成功し、金と権力を得た……それ以上のビジョンがあるように見えない。現政府を批判するが、ナニをしたいのか、どうしたいのかは言及ナシ。
 それだけでも十分「はあ? ナニ言ってんのこの人?」なのに。
 その「維新」を起こす方法まで、意味不明。
 「蜘蛛の巣」という強力な阿片を使うといっても。
 どう使うの?
 清のアヘン戦争は例にならないよね? 別次元過ぎる。
 単に「幕末」「アヘン戦争」「清の敗北」→「アヘンこわい」というイメージしか扱っていない気がする。
 強力な麻薬を手に入れただけで国盗りが出来るなら、世のお金持ちやヤクザ組織は誰でも国家転覆出来る、ということになる。
 加納にあるのは「蜘蛛の巣」という二十包のアヘンとお金のみで、他には組織も仲間もナニひとつない。国家転覆を狙うなら最低限の組織は必要なのでは?
 セバスチャン@がおりや、館の使用人は、組織ではないでしょう……比留間組以下の手下にすぎない……。

 まだすべてがこれから、剣心@ちぎくんを口説いたように、今から仲間を集めて悪の組織を結成するのかな。気の長い話だなー。
 だとしても、左之助@大ちゃんたちが自由に歩き回れるくらい、警備ゆるゆるの秘密基地はどうなの。左之助たちは一般人だからノーマークだったとしても、斎藤@咲ちゃんは警官だし元新選組だし、加納なら警戒すべき相手だと思うのに、それもスルーだし。

 たとえすべてがこれからなのだとしても、本当に維新を計画しているなら、もっと緊張感を持っているはず。
 それすらないため、加納の語る野望はますます薄っぺらく、意味不明になっている。


 悪役の加納の方も、まだなんの準備もしていない、ゆるゆる状態。
 それに対する、正義の主人公、剣心たちもまた、なんの気合いも準備もない。
 剣心たちがプチ・ガルニエに来たのは「偶然」。そこで恵@せしこが観柳や加納を見つけ、「蜘蛛の巣」試作品は加納の手にあると推察。やばい薬だから取り返そうと館の中を探る。という、行き当たりばったりの「なりゆき」任せの行動。
 そこで「偶然」加納が政府高官たちを「蜘蛛の巣」漬けにしようとしていることを知り、加納の手下たちと闘うことになった。
 ……って、ナニもかも「偶然」と「なりゆき」。
 偶然、なりゆき、たまたま、で、野望潰える加納さん可哀想(笑)。

 悪事の「計画」をしようかなと考えている、だけでまだ取り立ててナニもしていない「自称革命家」を、なんも知らないし考えてなかったけど、たまたま偶然なりゆきで見つけたからやっつける、正義のヒーロー戦隊。
 ……って、かっこいいか? 盛り上がるか?
 せっかく2時間尺があるのに、1時間は人物紹介、残り1時間で「陰謀未満」の計画予定を「たまたま偶然なりゆき」で潰すって、そりゃあっという間だよね、ナニも起こらないし出来ないよね。

 ほんっと、イケコってストーリー作るのヘタだなあ。
 『るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-』の加納さん@だいもんについて、もう一度書くと内容が重複するので、第2章に書いた分を貼り付けてみる。
 (第2章ではSSありきの文章なので、そのあたりだけ加筆)

 加納さんが残念なところ。

・恋愛ひとり相撲 ←「朱音太夫に裏切られた」ってアンタ、最初から相手にされてなかったやん……。
・友だちいない、ぼっち体質 ←いろんな人に「仲間になれ」と口説いて即拒否られる。仲間にも簡単に裏切られる。どんだけ人望ナイんや……。
・美的感覚変 ←たぬき顔の垢抜けない女子高生を「妖艶な絶世の美女」と認識する感覚はいかがなものか。どう考えても朱音太夫=薫殿はナイやろ。
・なにがしたいのかわからない ←突っ込むのも面倒なくらい、すべてにおいてわけわかんない。

 いちばんの問題は、加納の物語に、薫を無理に絡めたことだと思う。
 朱音太夫@桃ひながタイプってことは、かわいい系ではなく美人系(影アリ)が好みなんでしょ? 加納の美意識からいって、たぬき少女はまったくのテリトリー外だと思う。
 や、薫殿@みゆちゃんかわいいけど。きれいだと思うけど。きれいの質がチガウ。チガウからこそ、剣心@ちぎくんは薫に惹かれたわけで。でも加納はそうじゃないだろ。

 加納の言動はぶれぶれで意味わかんない。
 一から書き直すのがいちばんだけど、そうではなく、今あるままぶれまくる言動を、今あるストーリーの中で補正する方法、それは。

 加納の執着相手を、剣心のみにする。

 そしたらまだ、残念度が下がる。
 今のなにがしたいのかわからない、ぶれぶれ言動に、「剣心」という軸が出来るから。

 てことで、加納の視界に薫は一切入ってないとすれば、ほーら、きれいに展開するわ~~。

 プチ・ガルニエにて、加納がパリ万博の話を薫にするのは、剣心をやきもきさせるため。加納が薫に絡むのはそこだけ。
 剣心とふたりだけで話す場面のあと、加納は剣心に朱音太夫の打掛を見せるの。
 薫に対して話した台詞を全部剣心に話す。
 芥子の花の打掛が似合うのは、剣心しかいないっしょ?
 健康優良剣道女子高生ではなく、「人斬り」と冠される宿命の美剣士にこそ、イメージを重ねるべきよね? 赤い花に赤い髪をイメージするよね?
 蜘蛛の巣入りのワインが効いて気を失った剣心を抱きかかえ、加納が不敵に笑うのよ。

 で、他の場面はそのまま、剣心抜きで進む。剣心いなくても問題ないよね。左之助たちが蜘蛛の巣探ししてて、来賓のみなさんがアヘンであははうふふしてて、観柳がガトガトガト歌って。

 クライマックスだけ変更。
 打掛を着て磔になった剣心と、その剣心に絡みつく加納。
 加納さん美声披露よろしく。歌いながらエロエロ全開に。

 そこへ剣心救出に現れるのが薫殿。
 人斬り抜刀斎に戻れと言う加納と、るろうに剣心であれと言う薫の、「彼の愛は私のモノ☆歌バトル」はそのまま。
 磔剣心はそこから離れて、打掛引きずったまま影とか巴とかと戯れたり戦ったり。あら美しい。

 さらに、乱入してくる蒼紫+お庭番衆。
 剣心に執着しているのは加納だけじゃない、「最強」を求める蒼紫@れいこもそうだ。
 左之助@大ちゃんたちも登場。

 もっとも派手な祭りは、クライマックスでやろう。

 蒼紫や斎藤@咲ちゃんたちの見せ場が「前座」ての、つまんないもん。
 クライマックスにどーんとやる。

 影を倒し、過去の自分に打ち勝った剣心はその足で蒼紫に勝利。
 そっから加納との一騎打ちへ。
 
 あとは同じ。蒼紫たちは警官が駆けつけるタイミングで消える。


 薫を無理に「ふたりの男に争われるヒロイン」にする必要ない。ヒロインってのは、主人公に愛されている、彼の心が向かっている、という事実だけで十分ヒロインたり得る。
 加納に口説かせるヒマがあったら、剣心と薫のラヴい場面をひとつでも描いておけっつー話だ。

 剣心争奪戦でいいじゃん。薫じゃなくて。


 加納さんが残念過ぎて。
 そして、そのわけわかんない残念な人を、だいもんが力尽くで持ち上げ踏みとどまらせ、厚みを持たせている様が、愛しくて(笑)。
 がんばれー(笑)。
 『るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-』キャスト感想。

 ちぎくんは妖精だな!!

 と、またしても思う(笑)。

 剣心という役の、ハマりっぷりは素晴らしい。……ということだけではなくて。
 マンガだろうとオリジナルの『星逢一夜』だろうと、ちぎくんが演じることで虚構でありながらそこに影が出来る感じ。それを、リアル妖精だと思う。
 影……光を遮るものがあるから、出来るモノ。
 虚構だから実体はない。幕が下りれば消え、公演が終了すれば跡形もなく消えてしまうモノ。
 なのにそこに、影が出来る。
 なにかしら確実に、光を遮るものがある。

 ちぎくんは、そういう舞台人なのだと思う。

 ただ小器用に造形を真似ているのではなくて。
 かといって、リアルに生々しく存在しているのではなくて。

 実体を持たないのに、影が出来る。
 これが妖精の仕業でなくて、なんだというの。

 不思議な魅力と能力を持つ人だ。

 剣心というマンガのキャラクタを、絵柄だけではなく空気感まで写し取って演じながらも、きちんと「タカラヅカ」であり、かつ「早霧せいな」である、ということに、心から感動した。
 すごいよな。

 『るろ剣』のタカラヅカ舞台化は、ほんとうにちぎくんあってのものだし、今の雪組はちぎくんあってのものだと思う。
 面白いよね。今の雪組も、そしてちぎくんも。
 面白いから人が集まり、求められるんだ。ちぎくんを真ん中にすることで、今までにないタカラヅカと雪組が出来上がっている。


 薫@みゆちゃんは、ハマり役。

 ぶっちゃけ原作の薫って、ヤな女だよね?(笑) 「女の子」というイキモノの、嫌な部分、醜い部分をこれでもかと持っている。
 またそれを、正当化したり被害者ぶったりして押し付けてくるところがちょームカつく。ほんとうざいわこの女。お荷物とご都合主義の権化め。……てのが、原作の薫観。や、わたしの、個人的な。

 ヅカの薫もちゃんと薫っぽくて、ひとりよがりで、ナチュラルにマウントにパワハラ、女の武器使用とパーフェクトにひどい言動を取り、その上しっかり拉致られてお荷物、と抜かりない(笑)。
 気にくわないことがあると「嫌なら出ていけ」とか、人として「ソレ言っちゃおしまいよ」てなことを感情のままにわめき散らす。
 腹が立つと見境なく相手を傷つける、というのは致命的な欠陥だと思うんだが。しかも、相手が絶対に逆らえないことを楯にとって、極刑を言い渡すって、「乙女心は繊細なの」では言い訳にならないわ。二言目には「口答えする者は全員退学だ!」とか「全員クビだ!」と言う悪役校長とか経営者と同じじゃん。

 薫がほんとひどくて、「ああ、すごく薫っぽいわー」と感心した。

 で、みゆちゃんのナニがすごいかって、薫はちゃんと原作っぽい嫌な言動を取っているのに、それでもみゆちゃんが演じていると、「かわいい」ってこと。

 ソレ言っちゃいますか、とドン引きする台詞も、「あー、つい言っちゃったんだねえ、仕方ないねえ」と思わせてくれる。

 たぶん、原作の薫もこうなんだろうな。
 いろいろ無神経だし、ただのお荷物でしかないんだけど、それも全部まるっと許せちゃう存在なんだろう。
 剣心にとってのやすらぎ、光であるんだろう……と、原作はがんばって想像して読んでたなあ。構成上位置づけはわかるけど、どうにも苛つくキャラだ、と思いながら(笑)。

 その、共感出来ないけど、こう受けるべきなんだろうと努力して想像していた部分を、実際に体現して見せてくれたのよ、みゆちゃん。

 薫って、こうなのか! と。

 ひどいけど、かわいいわー。
 そして、ひどいことを言っていることについて、薫自身もちゃんと筋が通っているというか、その言動になる道筋が見える感じ。
 薫に感情移入できるから、彼女のおかしな言動がいじらしいものになるの。

 いやあ、この薫殿かわいいわー。好きだわー。

 しかしみゆちゃん、声が相当やばい。ヒステリックに怒鳴りまくる役だからなあ……(薫のそーゆーとこが嫌)、タカラヅカの娘役にはあまりない役割りだよね……。そりゃ喉の負担大きいわ。
 銀橋ソロの歌い上げ部分が、メロディ変更して乗り切るようになってしまった。あの高音好きだったから残念。
 『るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-』のキャスト感想をぽつぽつと。

 加納@だいもんはひどい役なんだが……とりあえず、美しい。

 わたし、だいもんはハンサムだと思っているけど、これだけストレートに「美形!」ってやってるのを見るのは久しぶりだと思う。『愛と革命の詩』の侯爵以来?
 「はじめてだいもんを美形だと思った」とか、失礼な感想を友人がつぶやいていたりするし(はじめて、ってどういうことよ、だいもんは昔からずーーっと美形だってば・笑)、ファンの欲目抜きにビジュアル成功しているんだと思う。

 やっぱ「加納惣三郎」という「世に名高い美少年」役だからかなー。美しく出てなんぼよねー。
 脚本酷すぎて、わけわからん人だけどさ(笑)。

 そんでもって加納さんってけっこう歌ってるのね。
 リピートしてようやく気づいた。
 初日は「だいもんに歌わせないとか、意味わかんないっ」とか思ってたんだけど(笑)、なんでこう印象が違ったんだろう?

 単独の銀橋ソロは1曲だけでも、2番手なんてそんなもんだし、出番自体は多くないけど、クライマックスは歌いまくりだし……なにゆえに「歌少ない」と思ったのか。
 初日の不満は、「だいもんの歌不足」という点も大きかった。少ないと思ったんだもん。これならまだ『ファンシー・ガイ!』の方がマシ?的な比べ方をした。
 『ファンシー・ガイ!』のだいもんは、やたらと歌っていたけれど、あまり意味のない使われ方をしていたというか、「え、そこで歌う? べつにだいもん歌わなくてもよくね?」なとこまで歌っていたというか、演出家の「望海に歌わせときゃいいんだろ」的やっつけ感があまりありがたくなかった。
 だからといって、一本モノで歌極少とかは、さらにやだなー、と。

 クライマックスで歌っているのに、それはもちろん観ていたからわかっていたのだけど、どうも印象が薄かった。
 印象的な曲でもないし、加納さんの情けなさ全開でかっこ悪いばかりだし、どうしろと。

 本編がトホホでも、フィナーレの歌手がある、そこでどかーんと美声を披露してくれ! と望みをかけていたのに、衣装酷すぎでまたしても轟沈。
 フィナーレ自体には歌ないし。

 役が酷くて歌少なくて、酷い衣装のフィナーレってナニ?! やだー、楽しむ気満々で来たのに、不完全燃焼ーー!

 ……てのが、初日印象。

 初日の数日後は、「あれ、初日より声出てる」と思った。クライマックスの歌の応酬が。みゆちゃんも、このときはまだ喉潰してなかったし。

 歌、良くはなってるけど、このクライマックス盛り上がらないなー、つまんないなー、って、それでもまだこのあたりは「歌少なくて残念」と思ってたの。

 でもさ。
 わたしに、ちょっとしたことがありまして。

 前にもちょろりと話題にした「タカラヅカで『るろ剣』やるなら観てみたい」という、ヅカファンではない知人にチケット譲った件。
 ヅカファンでない人に押し売りしても仕方ないから、出演者について一切なんの解説もしなかった。どうせジェンヌの見分け付かないだろうし。タカラヅカ云々よりまず『るろ剣』を楽しんでくれればそれで良し。
 チケット取り過ぎちゃった分を彼女に譲り、わたしは梅芸で『Ernest in Love』を観ていたりしたわけなんだけど。

 その人が終演後、「チケット譲ってくれてありがとう、『るろ剣』楽しかった」とメールをくれた。
 その短い「お礼メール」の中に唯一出て来た名前が「望海さん」。

「望海さん、歌うまいねえ! 歌聴いたあと『惚れてまうやろ!』と思いました」てな意味のことが、顔文字と共に書かれていた。

 正直、意外すぎて。
 何故そこ?!
 原作目当てで行って、何故原作にいないオリキャラを演じただいもんに食いつく?
 ベネディクトとか源太ならわからんでもないけど、今回だいもん、特に良くもないよね?? そりゃ今回望海さんマジ美形だけど。でもそんなん、剣心@ちぎくんはじめ、原作キャラの人たちだってめっちゃきれいじゃん。
 歌だって、大して歌ってないし。

 とまあ、自分的に納得がいかなかったので、次の観劇時に、懐疑心ばりばりに注目して観たんですわ。
 だいもん、そんなにいいか? と。

 そしたら。

 良かった。

 あ、あれえ?
 思ってたよりぜんぜん歌ってるし、歌、いいじゃん。
 響いてるじゃん。
 クライマックスの掛け合い、ドラマチックじゃん。
 フィナーレの銀橋、豊かな声が劇場中に満ちてるじゃん。

 あ……たしかに、これは、美声だわ……これなら初心者が「惚れてまうやろ」なのもわかるわ……。

 って。

 なんなのコレ。
 あたしいちおー、だいもんファンじゃん? いちばんのご贔屓じゃなくても、ずーっとだいもんスキーできてるじゃん?
 なのになんで、人から言われて気づくの?

 ……なんつーか。
 わたしってだいもんへの欲が強いのね。自分で勝手にこうと決めて、そこに至らなかったときに不満を持つ。
 ご贔屓相手だと、なんでもいい方へ持って行こうとするから、ストレートな不満にはならないのだけど(その分ねじれてややこしかったりもするが・笑)、だいもんには「所詮ファンでしかない」という油断があって、より欲望に忠実だったりする。
 あ、わたしにとって「ご贔屓」はただひとりの推しジェンヌ、「ファン」は不特定多数の「~~も、好き」認識なので。気軽に「**ファン」という使い方をするのよ。

 そうか……だいもん、歌うまいわ。わかりやすく、ひとりだけどーんとしてるわ。
 クライマックスはだいもんの歌を中心に、動かないみゆちゃんとの歌バトル、ちぎくんはひとこと殺陣ダンス……すげえ適材適所。

 と、いうことで、遅まきながら開眼。

 この演出すごくね? 『るろ剣』なかなかいいんじゃね?

 ……本気で遅い。
 しかも、人に言われて、人から影響されて、って。
 どんだけ心と頭弱いの?

 おかげで今ではだいもんの役も、『るろ剣』自体も楽しく観劇出来ている。
 わたしがだいもんに欲を持っているのは、「面白い舞台が観たい」からであり、「だいもんがだいもんらしく活躍すると、舞台が面白くなる」と思っているためだ。彼には舞台人としての期待と信頼がある。
 だもんで、「だいもんいいじゃん」と思った時点から、舞台自体もたのしくなるんだなこれが。
 単純だわ。


 しかしだいもん、初心者ウケがいい、と言われているのを、目の当たりにしたわ。
 「歌える」ということは、今の時代のライト客層に手っ取り早く訴えかけられるのかもしれない。
 だいもんに限らず、劇団が歌ウマに焦点を当てだしたのは正しいことなんだと思う。
 『るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-』はせっかくの祭り作品なのに、音楽が弱い気がする。

 何度もリピートしちゃった今だから、パレード曲の「微笑みを交わして」とかいい曲だなと思えるし、耳にも残っているけれど。
 初見時は印象的な曲がなくて残念だった。

 『太王四神記』を観たときと同じ。
 画面は派手にいろいろやってて「大作!!」って感じなのに、盛り上がる曲がない。
 リピートするといい曲もあるとわかるけれど、作品の持つ「大作!!」「活劇!!」「祭りだ!!」というイメージからはほど遠い地味さ。

 作曲の太田せんせが大作向きじゃないんだよなあ。
 そしてイケコも、厨二に徹した詞は作れない人だし。

 イケコはミュージカルの人で、アニメやヒーロー特撮の人ではナイんだなあ、としみじみ。
 今はじめて(ええ、はじめて。買うだけ買ってプログラム読んでない)プログラムの歌のページをチラ見したんだけど、ほんと「主題歌」ってのがないよね。
 物語の中の一部を切り取って歌にしたモノばかり。

 テレビアニメのオープニングで毎週流れる主題歌に相当する曲がない。

 サイトーにしろスズキケイにしろ、アニメ・ゲーム系作劇出来る人って、まず主題歌ぶちかますよね。
 「エル・アルコン」とか「戦国BASARA」とか、タイトル連呼して、アニメのオープニングをまんま舞台で表現してみました系。

 ミュージカルである前に、マンガ原作であること。アニメ的手法が適していること。
 ファンの最大の関心事であるビジュアルと世界観を、「この通りだ!!」と真っ先に差し出して、「よっしゃあ、これならイケる!!」とテンションを上げさせる。
 本編がはじまるのはそのあと。

 でもイケコはふつーにミュージカルとして、本編からスタートする。ビジュアルや世界観が合っているかどうかは、おいおいわかる仕組み。

 わたしがイケコオリジナルの原作モノに、初見で肩すかしされるのは、いつもソコだ。
 原作とミュージカルの融合が、半端だ。

 ただ、リピートすればアニメ的な構成より、ミュージカルの方が肌に合うので、「こういうもん」と楽しみ方を見つけられるのだけど。

 本編はミュージカルでいいから、オープニングとエンディングを、派手にアニメアニメしてくんないかなあ。
 とりあえず作曲家別の人にして。
 や、中の曲は太田せんせでもいいから、主題歌は派手な曲を作れる人にお願いしてさー。


 主題歌を使ったオープニングがないから、最初に出会う「歌」が剣心@ちぎくんの歌う「人斬り抜刀斎」なのよ……いきなりド演歌調なのよ……これ、相当びびるわ……。
 演歌でもいいんだけど、その前に派手な主題歌入れて欲しかったよ……そうすれば、舞台のイメージがかなり変わるのに。

 いきなり演歌のちぎくんも大変だなと思ったけど、イケコの「ヲタク理解度の低さ」でもっとも割を食ったのが斎藤@咲ちゃんだと思う。

 2幕で突然「悪・即・斬」と銀橋で歌わされる咲ちゃん。
 斎藤のポリシーを歌にすること自体はいい。つか、キャッチーなフレーズだから、使うべきだと思う。
 問題は、使い方だ。

 この「悪・即・斬」っていう曲、「♪悪・即・斬(歌いながら踊る斎藤)」「♪悪・即・斬~~AH~~♪(コーラス)」という、さびの部分だけ取り出すと、愉快ソングのように思える。
 でも、そうじゃない。
 さびで突然「♪悪・即・斬」と言い出す前は、「これまでのあらすじ解説ソング」だったの!

 地名からはじまるのよ?
 今までの出来事を5W1Hで語られて、「はあ? ナニこの人? そんなの、ここにいるすべての人が知ってる情報ですが??」てな、どーでもいいことを大真面目に銀橋でひとり歌うの。

 んで、そこまで解説をだらだら語ったあとで、突然「♪悪・即・斬」。

 ぽかーん。

 初日の客席の困惑ぶりったら。

 だって、聴いていて、どう展開して、どこへ着地する曲なのか、さっぱりわからないのよ?!

 あらすじからキャッチフレーズ連呼になるとか、思わないし。
 背景には「♪悪・即・斬」の文字が出てるし、女声コーラスが「AH~~♪」とか言ってるし。
 カオス。

 あのさ。
 前半のあらすじ、いらない。
 マジいらない。
 なんであらすじ語り出したの。書くことナイからとりあえず原稿用紙埋めるためにあらすじ書き写しました、って、宿題の読書感想文かよ!!

 「♪悪・即・斬」をやりたいなら、最初から「斎藤一テーマソング」と銘打ってやれ。
 今の時代、メインキャラクタはキャラソン持ちが当然、ひとりずつCD発売されるもんなんだから、ヅカの斎藤もテーマソング持っててもふつう!
 斎藤の「♪悪・即・斬」なのに、なんで前半「加納惣三郎を解説しよう」になってるの?
 イベントで「斎藤一のテーマソングを歌います」でいきなり地名からスタートして加納がどうしたこうした、それで今はこうなってて、って解説されても観客ぽかーんだよ。テーマソングっていうのは、別のステージでそれだけ歌っても世界観が成立するモノでしょうが。

 サイトーくんなら間違いなく、斎藤一テーマソング作ってる!!
 派手な音楽を作れる作曲家と組んで、「斎藤一とはこういう男だ!」とその1曲だけでわかる曲。
 斎藤がひとり銀橋に出て来た段階で、「斎藤のターンキターー!」「テーマソングキターー!」と観客が待ち構える前奏と歌い出しになっているはず。
 『JIN-仁-』の坂本龍馬テーマソングみたいに。ストーリーと関係なく、いきなり龍馬の見せ場来たよね、1曲歌ったよね。

 イケコは「♪悪・即・斬」さえやれば、サイトーくんやスズキケイがやってウケた「アニメ的ウケ狙い曲」になると思ったんだろうけど。
 根幹からチガウ。

 イケコがやってるのは、ミュージカル手法。ストーリーの中で、台詞が歌になった、ってやつ。
 サイトーくんが得意なアニメ手法は、ストーリー関係なく、その場の流れとも関係ない、「そのキャラクタの見せ場」でしかない歌とシーンを、ストーリーを中断してぶっ込むこと。

 台詞が歌になった、というミュージカル手法のため、斎藤さんは気の毒なことに「日常の中でいきなりあらすじをだらだら語ったあと、突然、悪・即・斬、と繰り返す変な人」になってしまった……。
 アニメ手法なら、どんだけキザだったり恥ずかしかったりする内容を歌っても、「テーマソングなんで、ストーリーともキャラクタ本人とも別次元です(キリッ)」で済むのに。歌い終わってから、何食わぬ顔でストーリーに戻れるのに。

 咲ちゃん、大変だなあ。
 ひとりだけ半端なことさせられて。

 でも、とりあえず咲ちゃんかっこいいっす。
 最近とみに声が良くなってるし。
 演出がサイトーくんなら良かったのにね……きっとすごくかっこいい場面になったろうに。
2016年 公演ラインアップ【宝塚バウホール】<9月・花組『アイラブアインシュタイン』>
2016/03/08
3月8日(火)、2016年宝塚歌劇公演ラインアップにつきまして、【宝塚バウホール】公演の上演作品が決定いたしましたのでお知らせいたします。   
花組
■主演・・・瀬戸 かずや

◆宝塚バウホール:2016年9月15日(木)~9月25日(日)
一般前売:2016年8月6日(土)
座席料金:全席5,300円

サイエンス・フィクションラブ・ストーリー
『アイラブアインシュタイン』

作・演出/谷 貴矢

20世紀中盤、天才科学者アルバートが開発したアンドロイドは、人々の生活になくてはならないものになっていた。世俗の喧騒を逃れ隠遁生活を送るアルバートのもとに、ある日、エルザというアンドロイドが助けを求めにやって来る。働き口を奪われた人間達による反アンドロイドの機運が高まる中、人間と平和に共存する道を模索する為、自分たちにも感情を与えて欲しいというのだ。エルザに亡き妻ミレーヴァの面影を見たアルバートは、科学者仲間であるトーマスの力も借りつつ、エルザに感情を与えようと奮闘する。ひたむきで純粋なエルザに次第に惹かれていくアルバートだったが、エルザはどうしても「愛」の感情だけは理解することが出来なかった。愛とは何かと問われたアルバートは、ミレーヴァをどんな風に愛していたのか、どんな感情だったのかを伝えようとするが、何故かどうしても思い出せないのだった…。
果たして、「AI」は、「愛」の感情と「I(自我)」を持つ事が出来るのか。瀬戸かずや主演でお届けする、サイエンス・フィクションラブ・ストーリー。なお、この作品は、演出・谷貴矢の宝塚バウホールデビュー作となります。  

 あきら主演キターー!!

 ひょっとして来るかな、と期待半分でいたけれど……ほんとに来た!!

 うれしいうれしいうれしい!

 絶対行く、絶対観る! ……って、なんか解説読むとけっこうやばそうだけど……このテの話がヅカで成功した例しがナイ……地雷ジャンル……でもなんでもいい、とにかくあきら主演ならなんでもイイ。
 フジイくんの「そうか、マーク兄ちゃんはサイボーグになったんだ!」以上のトンデモ作品はナイと信じてるし! アレ以下なんて、ふつーの神経してたら作れっこないし! なんでもどーんと来い!

 救いは、まったくノーマークの新人作家さんだってことっすね。
 演出家がフジイくんとか谷正純とか中村Aでこのあらすじ書かれてたら、「オーマイガッ!!」と頭を抱えてました(笑)。
 若い人ならまだ、なんとかしてくれる、かもしれない……。

 しかし劇団には「演出家名字枠」があるのかしら。「ウエダ」「ナカムラ」「タニ」はデビューに有利、とか。これから「シバタ」「マサツカ」「イシダ」とかも出て来るのかなー。

 あきらは雰囲気美形スターで、その兄貴的な立ち位置と外見に反して、意外なほどうまくない。
 や、ふつーは路線外なのに組4番手とかにいる人って、実力がきっちりあったりするんだけど、あきらはいろいろびみょー。
 真ん中育ちでないために、足りていないことがたくさんある。
 だけど、かっこいい。
 とりあえず、イケメンだ。
 顔面だけでなく、身長、スタイル、すべて合わせて。
 せっかくこんだけかっこいいんだから、うまくなってほしい。
 なんで新公主演出来たのかわかんないくらい、劇団から放置されていた人だけに、若いときに得た経験値が少ない。
 取り損ねてきたスキルやアイテムを、これから取りに行こう。路線育ちではないけれど、真ん中経験しに行こう。
 それによって、欠けていたモノが突然どどんと開花するかもしれない。
 そういうことも含めて、あきら主演がうれしい。

 問題は、チケットを取れるかだわ。
 100周年以降、バウのチケットが取れない……。
 昔はバウなんて、一部の人気スター以外売り切れないのはあたりまえだったのにな。
 ただ、売れない公演ってのは大抵劇団推しで主演連発の実力微妙な御曹司の主演公演で、劇団推しのない微妙路線の主演公演は大抵チケ難だったので、経験に基づく予想だと、あきら主演も間違いなくチケ難だニャ。
 や、実際そうだと思うし。わたしの周囲はみんな「あきら主演!!」で目を輝かせてるし。
 そのうえ、なにしろ100周年バブル……。

 あうー。定価で観られるといいなあ。
 あきら主演!! ……というだけで脳がストップしており、友人のつぶやきでようやく知りました……そっか、バウが発表になったってコトは、全ツも発表になってるよな……そりゃそうだ。
 ていうか、『カメロマ』?!
2016年 公演ラインアップ【全国ツアー】<9月・花組『仮面のロマネスク』『Melodia -熱く美しき旋律-』>
2016/03/08
3月8日(火)、2016年宝塚歌劇公演ラインアップにつきまして、【全国ツアー】公演の上演作品が決定いたしましたのでお知らせいたします。   
花組
■主演・・・明日海 りお、花乃 まりあ
◆全国ツアー:2016年9月2日(金)~9月22日(木)

ミュージカル
『仮面のロマネスク』

~ラクロ作「危険な関係」より~
脚本/柴田 侑宏 演出/中村 暁

近代フランス心理小説の傑作でありながらも、そのスキャンダラスな題材ゆえに世間から長く異端視されたラクロの「危険な関係」を原作としたラブ・ストーリー。1997年に高嶺ふぶき、花總まりにより初演、2012年には大空祐飛、野々すみ花により再演され、絶賛を博した名作ミュージカルに、明日海りおと花乃まりあが挑みます。
動乱に揺れる1830年のフランス宮廷を舞台に、美貌の青年貴族ヴァルモンと若き未亡人メルトゥイユ侯爵夫人の冷徹で官能的な大人の恋の駆け引きを、重厚かつ華麗に描き出します。

グランド・レビュー
『Melodia -熱く美しき旋律-』

作・演出/中村 一徳

メロディア-熱くそして美しいメロディと心躍らせるリズムで奏でる数々の音楽。愛、夢、希望、情熱、哀愁、身体に漲る限りない思いと果てしないエネルギーを熱く美しい旋律に。華やかで若さ溢れる明日海りお率いる花組の魅力を、躍動的な歌と踊りで綴るレビュー。2016年全国ツアー公演として、新たなメロディをお届け致します。 

 何故みりお氏で『仮面のロマネスク』?!

 い、いや、『仮面のロマネスク』の主人公ヴァルモンは美貌の青年役、美貌のみりお様に相応しくないはずもない。
 だが。
 ヴァルモンって、プレイボーイなんだよ……エロエロスターなんだよ……百戦錬磨の大人の男なんだよ……何故みりお様……?
 い、いや、絶世の美青年でプレイボーイでエロエロスターで百戦錬磨の大人の男、光源氏を演じきったみりお様だもの、相応しくない、はず、も……ない……。

 うーん。
 外側だけ見れば確かに、合ってると言えんこともないよな。
 絶世の美青年役だもの。タカラヅカ一の美貌の君が演じるべきでしょうさ。
 でもなんなんだろう、この違和感。

 でもわたし、みりおくんよりかのちゃんに強い違和感持つわ。

 メルトゥイユ夫人@かのちゃんは、チガウやろ。

 メルトゥイユってヅカのヒロインの中でも最高級クラスの難役だと思う。
 加えて、大人の女だ。
 最低限、円熟期の大人の娘役が演じるべき。小娘がやっていい役じゃない。

 かのちゃんは美人だけど、若すぎる。
 実年齢や就任年数だけでなく、芸風が。
 もっと経験を積んでからならいいけど……今のところ、チガウとしか。

 それでもまあ、決まったからには楽しみにするし、観に行くけれども。

 しかし劇団はどうしてこう、本人の持ち味無視して演目決めるかな。
 ……って、みりおくんに似合う役と作品ってなんだろう。
 『Ernest in Love』『ME AND MY GIRL』と続いたから、その路線はパス、それ以外の……真逆がいいな、ダークだったり大人っぽかったりするの……って、ああそれで『カメロマ』になっちゃったのか。
 だから『Ernest in Love』『ME AND MY GIRL』と続け様にやるから、反動が大きすぎて次の作品まで選択肢減っちゃったんじゃん……花組のプロデュースって変……。

 あれ。
 全ツが『カメロマ』で、バウがあきら主演ってことは、必然的にキキくんは全ツ、つまり、ダンスニー@キキくん?
 う・わ……。
 ダンスニーって、男役でトップスターの次に出番のある役だけど、はっきりいって2番手の演じる役じゃない。ふつうの作品なら3番手相応の比重しかない。『カメロマ』は女性キャラが多い代わりに、男役がおいしくないんだ。

 キキくん……。
 『Ernest in Love』『ME AND MY GIRL』と、半分しか2番手役出来ず、次の全ツでも比重軽い役か……。
 劇団は彼を育てる気あるのか??


 『仮面のロマネスク』は、好きな作品です。
 初演厨ですとも! お花様の代表作!
 だからまた観られるのはうれしい。

 …………今のタカラヅカで、いちばんヴァルモン役が観たいのは誰か、考えちゃったわ。
 考えるまでもなく、即浮かんだわ。

 ヴァルモン@まぁ様が観たい。

 絶対かっこいいぞ……まぁくんの黒い部分が観られるぞ。
 メルトゥイユ夫人@みりおんだって、タイプは違うけど、現時点のかのちゃんよりうまくこなせるはず。
 ダンスニー@マカゼ……あ、駄目だ、想像しただけで、顔が弛む。そんなん、絶対絶対かわいいっ、かわいすぎ。
 トゥールベル夫人@うらら様……うわー。得意分野キター。歌はカット、台詞のみに変更ヨロシク。言わずもがな、ビジュアル無敵。
 セシル@まどか。ハマり過ぎ……。

 ちょ、現宙組完璧ハマるじゃん。番手にあてはめるだけで違和感なし。
 『エリザベート』なんかやってる場合じゃない! ってくらい、ハマってるわ……。

 や、すまん、花組でみりお様がやるって言ってるのにね。決まっているのに、妄想配役は不毛過ぎ。

 好きだから、いろいろ考えちゃう。
 『るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-』観劇7回目にしてようやく、剣心@ちぎくんを観た。

 いや、もちろん初見時から観ている。主役なんだからそりゃ観てるよ。
 そうではなくて……なんだろう、原作の剣心でもこの脚本の剣心でもなく……「ちぎくんの剣心」に会えたというのかな。
 それはもちろん、ちぎくんの問題ではなく、わたしの問題な。千秋楽近くなってはじめてようやく、「わたしが」ちぎくんをちゃんと観た……観ることが出来たんだと思う。

 いつもの上手タケノコでの観劇だったわけなんだけど、ここだと「不殺の誓い」を歌いながら銀橋を歩いてくるちぎくんの顔が、真正面に近い角度で見えるのね。

 「不殺の誓い」と言えば本舞台の抜刀斎@ひとこや巴@あんりちゃん関連の芝居を観ることに気を取られていたり、「♪生き残った者には義務(つとめ)がある」のくだりで「そうだ、よく聞け、晴興!!」と思ったりで、忙しい。
 務めを投げ出して逃げた晴興@『星逢一夜』はやっぱひでーよなー。生き残った晴興は、歯を食いしばって闘い続けるべきでしょうに。晴興ならそうするでしょうに。あの選択は晴興らしくないし、ただの作者の都合っぽくて、ほんと納得出来んわー。

 いつまで『星逢一夜』引きずってんだ、とは思うが、やっぱ剣心の方が主人公としては正しい生き方だと思うから、つい。
 そしてここにいる剣心は、「逃げなかった男」なんだ。なおも闘い続け、時代が変わったのちも別のカタチで闘い続けている男なんだ。そう気づく。
 逃げた男を知っているからこそ、剣心の生き方に胸を突かれる。
 そしてそれは、ちぎくん自身にも関係している。ちぎくん本人がどうこうは知らない、あくまでもわたしの話。ちぎくんを観るわたしが、過去にちぎくんが演じた役を観てきた上で、思うことがある。
 剣心を演じるちぎくんを、晴興を演じたちぎくんである、という事実が重なる。晴興を経て、今の剣心がある。

 なんだろ、晴興を演じた人が、剣心を演じている、そのことが、とても大きいと思ったんだ、わたし。
 ちぎくんの顔自体はひとつなんだから、剣心の顔は晴興の顔でもある。同じ顔で別の人、ちゃんと別の人に見えている、別人だということはわかっている……だけど、同じ人である感動。
 うまく言えないし、整理出来てもいない。
 わたしは舞台上にしか興味がなく、役と役者を混同することはナイ。役者に対しての好意や苦手感で印象が左右されることはあるが、だからといって役を見失うことはナイ。物語スキーなので、そんなことで物語を味わうことを放棄したくない。
 その上で、ちぎくん演じる剣心に、「かつて晴興だった人」を見る。見て、そして。
 一瞬でそれは消える。霧散する。彼方に。
 ぎゅいんと遠く、ぱつんと消える。

 そして、「剣心」がいる。

 剣心って、こんな顔をしているんだ。

 はじめて、思った。
 「不殺の誓い」を歌いながら、剣心がわたしの方へ歩いてくる。
 強い照明が横から照らし、顔の半分が影になる。他の位置からは見えない、剣心の顔。

 こわい、かお。

 漢字では、強い、と書く。

 苦悩ではなく歪みでもなく、端正に美しい、強い貌。
 歌声の現在形の悲痛さとは別に、その貌はすでに苦悩を突っ切り、過去のものにしている。

 ああこれが、「緋村剣心」だ。
 ちぎくんの、剣心なんだ。

 そう思った途端、涙が出た。
 わき上がるのは、愛しさだ。

 愛しい。
 この剣心が愛しい。

 この男を、抱きしめたい。癒したい。守ってあげたい。
 心から、そう思った。
 わき上がった。

 強い人だとわかるから。わたしの手など必要としない人だとわかる、それと同じ強さと速さで思ったもの、手を差し伸べたいと。
 剣心を愛した女たちも、きっと同じ思いでいたんだろう。
 傷を刻むことはなくても。


 いやあ、ちぎくんの剣心好きだな。
 もともと好きだけど、今となっては引き返せない感じに好きよ。

 こういう剣心を救うのは、巴ではなく薫@みゆちゃんなんだということも、よくわかる。

 蜘蛛の巣の幻影で、巴と薫がそれぞれ出て来るじゃないですか。
 阿片の精が妖しく踊っている場面。

 あの場面の薫の美しさが好き。

 剣心のイメージの中では、薫は剣道着なのね。剣道着を着ている薫のことがいちばん好きなんだもんね。
 だけどその剣道着の薫は、いつものにぎやかな表情はなく、人形のように虚ろだ。
 表情の消えた薫は、しんと美しい。笑っていつもの表情を浮かべている薫よりも、いっそ美しい。

 阿片が見せた悪夢とはいえ、種がなければ花開くことはないわけで。

 剣心の中の薫は、あんなに美しいんだな。
 だけど、美しい薫より、いつもの元気なかわいい薫の方が、剣心は好きなんだな。

 美しさよりも薫らしさを望む、って、ほんとに薫を好きなんだと思えてぐっとくる。

 みゆちゃんはいろんな表情を出せる役者さんだし。
 みゆちゃん演じる薫はほんと、いじらしくてかわいいからなー。

 この剣心と薫は大好きだ。
 『るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-』にて、えらいことになってます。
 わたしのなかの、「翼くんスキー度」が上がりすぎて、えーらいこっちゃ!になってるんです(笑)。

 もともと翼くんスキーなので、雪組公演観劇時は彼のことをよく見ています。
 なんで好きなんだろね? 間違いなく顔は好みじゃない(笑)。でも好き。
 初日からごく自然に、日課として、舞台で翼くんを探す。
 ああ、翼くん新選組なんだ。と、わかったからといって、彼だけを見て他を一切見なくなる、わけじゃない。ふつーに全体を見ているし、主役のちぎくんを見ている。他の隊士たちの点呼もするし。
 所詮彼はモブだから、同じ羽織を着た隊士たちの乱戦の最中、見失ってしまう。見失ったら見失ったで別にいいや、今はちゃんとストーリー追って、余裕が出来たらまた探そう……程度。
 大人数の殺陣はめまぐるしいから、全体を眺めることが多いかな。

 2回か3回目あたりかな、剣心@ちぎに斬られて死ぬ新選組隊士のひとりが気になった。斬りかかるところは後ろ姿だけだし、斬られたあとは正面向くけど、ライト当たってないから肉眼では顔まで見えないし。
 でも、斬られて死ぬ、……斬られたあと、倒れるまでの芝居に引きつけられた。
 え、今の子すごくない? 斬られたあとのリアクション……絶命から崩れ落ちるまでがすごい説得力。
 シルエットだから誰かわかんない……けど、立ち位置的に翼くんのような気もする。次はちゃんと確認しよう、真ん中で斬られて死ぬあの子は誰?

 それで、意志を持って殺陣を見た。抜刀斎時代の剣心の強さを表す場面だから、新選組がわんさか出て次々ぶった斬られるのを、ひとりずつ確認する。この子じゃない、この位置じゃない、そうここ、ここで斬られて死ぬ子、……翼くん!!
 顔を確認した瞬間、翼くんは斬られていた。

 剣心の腕は凄まじく、一刀で致命に至る。
 一撃で彼は絶命するが、身体はまだ立ったままだ。慣性で動いてはいるが、やがてがくんと崩れ落ちる。
 ……ってことが、暗い中わかる、って、どんだけ。

 ぶっちゃけ、誰も見てないでしょ。たくさんいるモブ敵のひとり。顔のないショッカーの雑魚みたいなもん。出て来て、斬られて、倒れる。
 それだけの仕事。
 なのに、この演技。
 斬られたあとはライトも当たらないから、どんな風に倒れてどんな風に死ぬかなんて、オペラでガン見しなきゃわかんないのに。映像ならさらに真っ暗で映ることすらないだろうに。
 それでも、ここまでやるか。

 感動した。
 胸がじんと熱くなって、涙出た。

 あの生々しい倒れ方を習得するまでに、どんだけお稽古したんだろうね。
 斬られる側・倒れる側がうまければうまいほど、主役がかっこよく見える。個別認識されなくても、ライトも当たらないシルエットだけだとしても、棒演技で倒れるよりも主役を引き立てることになるはず……日本物と殺陣に慣れた雪っこたちは、みんなきっと真剣にお稽古している。
 前にキムくんが話してた、最下級生たちもが、斬られて死ぬ芝居をえんえん鏡の前でやっているのを見て、雪組の矜持を感じた的なことを。
 翼くんだけではない、他の名もなきモブの子たちもみんなやってはいるんだろうけど。

 けど、わたしは翼くんの芝居に惹きつけられた。
 翼くんだから、ではなく、惹きつけられた芝居をする子が、翼くんだった。
 つか、翼くんだとわかって、ああ、そっか、と思った。
 もともと好きってのは、波長が合うんだろう。
 わたしは、翼くんのモブ芝居が好きなんだ。

 斬られて死んだはずの翼くんは、幕末血風録でも登場、新選組として踊っている。
 そして、最終的には幕府の敗北に号泣している。

 ……ほんとにもう、いつもいつも、感心するくらい端っこでさ。ライト当たらないしさ。見えねえっつの。追いかけるの大変だっつの。

 膝を付いて叫ぶ翼くんを見るために必死にオペラグラスにかじりつき……なんか目の端に障害物があるな、と思ってオペラを下げたら、加納さん@だいもんが去って行くところで……だいもんの銀橋見逃した!!と、盛大に凹んだりもしました……。
 どうせ翼くんは、どこの席からでも見にくいのよ。どの席から見たって同じなのよ。なのになのに、上手タケノコに坐ったときに何故、下手舞台奥の翼くん見るのに必死になるかな。それで上手側の銀橋に出て来るだいもん見逃すとか……だいもんがすぐ目の前に立っている貴重な時間だったのに……あたしのバカバカバカーー!!

 えー、新選組隊士は所詮アルバイト、翼くんの本役は、唯一台詞のある「警官2」でしょうね。
 斎藤@咲ちゃんに怒られるだけの、まぬけな警官。
 とっても翼くんらしい役。
 へこへこした下っ端三枚目は、翼くんの得意の役よね……。情けない、とか、まぬけ、とか、得意よね……。つくづく、翼くんの芸風って……。
 警官役は、実はわりとどうでもいい感じで見ている。いかにもなマンガ的キャラクタ。やることが決まっているので、何度見てもあまり発見はない。

 赤べこのモブはかわいい。
 ここも弱々しい、いつもの翼くん。罪なく故もなく、いつもの自分のニュートラルキャラでやってる感じ? にっこにこの笑顔と、丸い帽子がかわいいの。赤べこの人形(置物?)持ってるのもまたかわいー。
 あとは比留間組だの左之助@大ちゃんだのに、驚いたりびびったり、遠巻きに見物しているだけ。ほんっとに、いつもの翼くんだ。

 気になったのは、プチ・ガルニエにて。

 文字数足りないので、続く。
 『るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-』の翼くん語り、その2。

 気になったのは、プチ・ガルニエにて。翼くんの役名は「客の男」。……はい、安定のモブです。
 ……なんだけど、この客の男って、警官2と同一人物?
 斎藤他、関係者に挨拶してるのね、すごく恐縮した様子で。
 プチ・ガルニエに招待されるからには、なにかしら地位や財産のある人のはずなのに、みょーにへこへこして下っ端感漂わせてるのは、そのせいか!
 警官だからどさくさにまぎれて招待状GETしたのね。ひょっとして、斎藤から「俺はいらん、オマエ行け」って突きつけられたのかも。斎藤さんは自ら警備を買って出て。こういう場は妻帯者の方がいいってのもあるだろうし。
 でもって警官2の奥さんはひーこかよ! 美人の嫁もらいやがって(笑)。
 翼くんとひーこのカップルがかわいいんだ。翼くんはいつもの情けない顔、ひーこは八の字眉毛で、おっかなびっくり踊ってて。

 途中出てこないなと思ったら、従僕役で登場。
 イケコのモブのキャスティングは変わってる。客の男たちに従僕もやらせてるんだもの。従僕は戦闘シーンがあるから人数必要、というなら、単独で登場する従僕だけは客の男とかぶらせないようにすればいいのに、変なとこで学年順。
 おかげで翼くん大忙し。
 さっきまで客の男でへこへこおどおどしていたのに、クールな従僕になって出て来てチャンバラして、さっきまで斎藤相手にチャンバラしていたからと思ったら、斎藤の部下の警官として登場するし。
 どっちやねん。

 それでも、へこへこ翼くん以外を見られるから、従僕役はありがたい(笑)。
 加納さんが指示する従僕は、中堅の出番確保のため(ミもフタもない……)毎回別の人が出て来るんだけど、翼くんは女性案内用かな。たぶん、加納さんちの従僕でいちばん線が細いからだな……とか考えたり。おーじくんとか、小さくても強そうだもんな……。

 最後の乱闘では、上手で斎藤さんと闘ってる。牙突で「うわーーっ」てやられてるうちのひとり。
 しかし斎藤さんの牙突、も少しなんとかならんかったんか……(笑)。壇上から、足もと気をつけながらだだっと走る、だけって。映画みたいにワイヤーで飛ぶわけにはいかんけど、あの「段差注意」な様子はどうにも……。足もと気にせずに走れるよう、平らなとこでやらせてやればまだマシだったんじゃ……? 最初牙突だと気づかなかったよ……。

 客の男=警官2説を唱える私は、加納あぼーん後に登場する警官2は、客として奥さんと一緒に来た警官2が、慣れないダンスでへとへとになりつつ帰宅した途端、招集かけられたんだと想像。
「えっ、今からプチ・ガルニエ……? 今そこから帰って来たのに……」でもタジィ先輩にどやしつけられて、あわてて着替えて。


 フィナーレの大階段ダンスは、下手のいちばん上。……ほんとに、いつもいつも、笑えるくらいご丁寧に端っこだよな、もう中堅学年なのに。
 いちばん上ってさ、B席だと見切れるよね。顔から上、見えないよね。

 なのにさ。
 そのすみっこでさ。

 ばちこーん☆って、2階席へ向かってウインク飛ばすよね。

 いやも、のけぞったよ、2階で見てたとき!(笑)
 あんな端っこで、2階席の半分からは見えないような位置で、それでも気合いたっぷりにウインク飛ばしやがる!!

 はー。
 好きやわー……。

 あのくしゃっとした笑顔がかわいい。癒される。
 美形ではないけれど、鼻スキーのわたしからすると好みからはずれてすぎているんだけど、横顔とかペコちゃん系だけど……それでも、かわいいからいいんだっ。
 あんな顔と芸風で、ウインク魔なのもいいじゃないか。

 翼くんのおかげで、わたしにとっての『るろ剣』テンションMAXがオープニングの剣心VS新選組になってたりして、心臓に悪い。
 翼くんの死に芝居にきゅーん☆として、胸がどきどき、涙じわ~~、で、いやお芝居これからだから、まだなんにもはじまってないから! とセルフツッコミ忙しい。

 翼くんの死に芝居ね、たまにやりすぎというか、「あ、今日のあざとい」って思うこともあったわ。
 力入ってる、この死に芝居に命懸けてるのはわかるんだけど、それが表に出すぎてしまうと、あざとく見える。
 斬られたあとがくんって倒れるの、今絶対大袈裟にやりすぎたよねー、って。すでに絶命してるんですよ、そのあと重力で身体が崩れるんですよ、ってことを、観客にアピールするみたいに見えて、オペラでガン見しつつ「翼くんやりすぎ」とか、内心ツッコミ入れたりな。

 慟哭芝居は派手でいい。心が折れて、身体が折れる。それを見るのが好き。
 ……おかげでざんばら髪のだいもんさんをあまり見られなくなった……最大ニアミス席で見られなかったのは痛恨だったけど、それ以外でもな……や、だいもん見たいから、だいもんの声がしたらあわてて上手へオペラ向けるんだけど、銀橋短いんだもん……。
 でもまあ、だいもんさんはテレビカメラが映してくれるからね……つばさくんは、ナマで見てても暗くてろくに見えないしね……。


 そんなこんなで、なんか今すっげー翼くんブームです。
 つか、翼くんだけでこんなに文字数書いてるよ。1日欄で終わるつもりだったのに、入らないよ! 2日分に分けるはめになったよ!(笑)

 翼くんのモブ芝居が好きなわけですが、いちいちモブと銘打っているのは、役としての芝居をちゃんと見たことがナイからです。そりゃまあ、新公や別箱などでなら名前と台詞のある役はやってるけど、芝居の好き嫌いを語れるほどの役じゃないというか、それだけだとわたしにはわかんないというか。
 翼くんには、長くいて欲しいです。
 学年が上がれば、別箱でストーリーに関係ある通し役とか、来るかもしんないし。一度彼のマジな芝居を見てみたいっす。心から。
 なんだかんだいって、楽しんでます、『るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-』

 でも、本当の意味で楽しくなったのは、だいもんがだいもん全開になってからだと思う。

 わたしにとっては。
 ひとさまがどうだかは、知りません。

 加納惣三郎@だいもんって、ひどい役じゃないですか。
 ぶっちゃけいらないし、意味わかんないし、バカだし、かっこ悪いし。
 べらべら喋るけど、ナニ言ってんのかマジわかんないし。論理破綻しまくってるし。

 たぶん、だいもんも役のアレはさわかってるんだと思う。や、ふつーのアタマがあれば、「おかしい」ってわかるだろうし。
 どんなにおかしな脚本でも、生徒は先生に「おかしい」とは言えないんだろうな。過去の公演を見ていてもわかる。
 この役はおかしい。それはもう、変えられない現実。ならば、そのおかしい役を、「おかしいと感づかれないように演じる」しかない。過去のありとあらゆる公演で、多くのスターたちがそうしてきたように。
 舞台は役者のもの。アホ脚本を佳作に押し上げるのは、役者だ。

 だいもんが、アクセル踏んだ。

 わたしは大体週1~2回の割合で、バランス良く観てきたつもりなんだけど。
 公演中盤辺りから、だいもんが変わった。

 加納さんの熱量がすごい。
 脚本の粗を、自分が高速回転して発光して発熱して、押し隠すつもりだ。なかったことにするつもりだ。
 加納は脚本の破綻を全部押し付けられている。彼の言動がおかしいからすべての事件が起こる。だから、その元凶である加納さんが「自分のしていることは破綻してない、筋が通っている」と力尽くで主張し、舞台全体の色を決めることで、舞台が変わる。

 すごい。

 ただもう、息を飲んだ。

 力技キターー!

 クライマックスの剣心@ちぎくんVS加納の場面の、あの気合いと覚悟。
 持ってく気だ。
 この作品の闇を全部、ひとりで集約し、ひとりで背負っている。
 主役のちぎくんには背負わせない。ちぎくんはきれいなまま、公演の看板として頂点に立ってくれていればいい。だいもんが発する熱量に、ただ沿ってくれればいい。それが主役の仕事、トップスターの責務。
 駄作に足を取られて、倒れてはいけない。
 悪いのは全部加納。剣心は剣心でありつづける。
 役の役割りとリンクしている。

 だいもんが高速回転している。「だいもん力」を全開で放出している。ほら、『アル・カポネ』の裁判シーンとかで放出する、とんでもない力……「だいもん力」としか言いようのないパワー。
 うおー、ここで「だいもん力」放出しますか、主演舞台以外でここまでやるのって、『BUND/NEON 上海』以来? いや、『BUND/NEON 上海』は本人無意識でしょ、ブレーキの存在を知らなかった幼さゆえの事故みたいなもん。だいもんが全開すぎてまぁくんファンが苦い顔してたっけ。全部持ってくからなー。
 大人になった今は、意識した上でアクセル踏んでいると思う。そこにあるのは2番手としての責任感、そしてちぎくんへの信頼感?
 全開のだいもんに巻き込まれず、ちぎくんは自分のスタンスを貫いている。トップの貫禄。そうよ、巻き込まれちゃいけない、だいもんは良くも悪くも周りを巻き添えにするから。
 ちぎくんなら大丈夫、そう思えるからこそのアクセル全開。

 いやー……涙出た。

 だいもんの「だいもん力」全開ぶりに。
 この人、ここまでやるんだ、と。
 こんなひどい作品なのに……いや、ひどい作品だからこそ、全部背負って走るんだ。
 『BUND/NEON 上海』のときみたいに憑依してるんじゃなくて、あくまでも自分の意志の力であそこまで持って行くことに、胸が痛くなった。

 だいもんは『アル・カポネ』をやったことで、「駄作の背負い方」をおぼえたんだと思う。
 今までどんだけ駄作に出演していても、大きな役をもらってなかったから、背負いようがなかった。
 雪組にやってきてからは、作品に恵まれていたから、そこまでする必要がなかった。
 でも、『アル・カポネ』で「駄作で真ん中を張る」経験をして。どんだけ間違っている脚本でも破綻したキャラクタでも、自分の力で吹っ飛ばせることを体感した。
 その経験が、活きてるんだなぁ。しみじみ。
 「駄作を力技で佳作に変える」のはトップスターの仕事。どんだけ美貌でも技術があっても、このスキルを持たない人は、タカラヅカのトップスターには不向き。
 だいもんはまたひとつ、スキルを取得したんだなあ。

 トップスターが熱量全開にして吠えて暴れて、駄作を力技でねじ伏せる、のが常のタカラヅカ。
 でも今回は、その仕事をだいもんがやっていた。
 ちぎくんにそれが出来ないからだいもんがやった、わけじゃない。
 今回は原作の縛りがあり、剣心役のちぎくんにはその役割りを振れなかったんだ。剣心がそんなにあくせくハイテンションじゃおかしいもの。
 オリキャラで原作の縛りのない加納が、その役を担った。
 そうやって高熱に発光している加納を倒すことで、剣心の大きさも示せる。
 双方に舞台力があり、信頼関係があってこその役割分担だと思う。

 まあ、だいもんが勝手に暴走してるだけかもしんないけど。
 それでもゆるがないちぎくんはオトコマエだ。


 わたしはだいもんがだいもんであると、感動する人なので。
 初日付近の役と作品にとまどっている、手探りっぽいあたりは楽しめなかった。
 覚悟を決めてアクセル踏んでからだ。
 楽しくてたまらないのは。

 いやあ、もお、好きだわ……。
 だいもんのこういうとこ、大好きだわ。

 空気を動かす力。
 それを持っている、ということにも感動するし、それを体感することに快楽をおぼえる。
 でも、それ以上に。
 「空気を動かす」という覚悟を持ち、現に実行している事実、に感動する。
 強い、意志の力。
 ひとを、空気を動かす、……動かすと決めた、力。

 それを持っている人に、感動するんだ。
 泣くんだ。


 はー。
 駄作もいいもんだね。舞台人の底力を見られて。


 ……駄作ではなく、作品も役者も両思いゆえに奇跡を生む、そんな舞台が観たいけどな。
 そしてついに、『るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-』千秋楽だ。
 なんかすっげーひさしぶりに、チケット入手にばたばたしなかった千秋楽。友だちが友会で当ててくれたチケットなので、並んで観劇。キャッホウ!
 ……『星逢一夜』なんて、幕が上がる数時間前までチケット手に入ってなかったからなー。

 1公演眺めて来て、今回の雪組の変化……調子に乗りっぷりが、とても楽しかった。
 公演の勢いって大切だね。連日満員のお客様、やたら反応のいい、常とはチガウ雰囲気の客席など、質実剛健な雪っこたちが、日に日にちょーしにのっていくの。自分たちのパフォーマンスでたくさんの人が喜ぶ、生の舞台の醍醐味、舞台人の喜びを実感しているんだろう。
 『星逢一夜』のときの「名作を創り上げている自信と誇り」に日に日に満ちていく様子もすごく愛しかったけど、今回の「祭りにちょーしこいてる」感じもまた、愛しい。
 雪組さん、真面目だから。なかなかちょーしこかないのね。おっかなびっくり探り探り周囲の顔色伺って、「はしゃいでいいのかな?」「かな?」とさんざん探りを入れたあと、「完全に大丈夫」とわかるまで制限速度内でしか走らないんだもの。や、ここまで慎重な組は、雪組ならではだよなあ(笑)。
 そんな子たちが、「これはいける」「オレたちすげえ」と思い出してから、どんどん調子に乗っていく様子が微笑ましいやら愛しいやら。
 うんうん、君たちすごいよー。もっともっと、調子に乗っていいんだよー。ついていくよー。
 や、前半は休演者続きでずっと緊張感あったしね。それによる張りつめたギリギリ感がまた、「オレたちすげー」に拍車をかけたと思うよ。

 祭り公演ってのは、必要なんだなと思った。
 全部が全部こんなじゃ嫌だけど、たまには空気を入れ換えて、生徒さんたちに「ライヴ感」を実感してもらうのもいいのかもな。
 や、舞台はすべてナマだし、どんな公演だって客席はナマの反応をしているけれど。
 今回の『るろ剣』は、いろいろと違ってたからなー。
 雪組の真面目でおとなしい舞台を粛々と創っているときとは、違うチャンネルを体験出来て、今後のパフォーマンスの枠が広がったのではないかと思う。
 長年雪組を眺めて来て、なんつーんだ、「ぷはーっ」て息をつく感覚を味わった。ずっとずっと、水中を泳いできて、水の中はきれいだし静かだし息を止めてストイックに泳ぎ続けるのもいいけれど、たまに水面に顔を出して、大きく息をつくのも、気持ちいいよな、必要だよな、って。
 そしてまた、こんどはもっと深くもぐってみたり、速く泳いでみたり、いろんなことができるんじゃないかな、って、そんな風に思った。

 観柳@翔くんのはじけっぷりは気持ちよかったし、毎回アドリブ楽しかった。ジェラール@だいもんといいコンビだよね(笑)。
 観柳のガトガト場面はリピート観劇のお楽しみ、ナニをしてくれるかわくわくしてた。

 雪に来てからのだいもんはアドリブがんばってる人なイメージ(笑)。
 今回も翔くんと一緒になって、楽しそうに、それでもがんばってたなあ。
 最後の「ありガト~~!」は狙いすぎな気も。

 はー。観柳×ジェラール読みてえ。(心の声がつい漏れる)

 そしてなんつっても、蒼紫@れいこ。
 成長したねえええ!! ってナニその上から目線発言。でもでも初日の余裕のないびくびく蒼紫からスタートして、かっこつけつつも申し訳なさそうな感じがしていたあのれいこが、公演を重ねるごとにドヤりだしてね……! 感無量ですわよ。
 この公演でいちばん収穫を得たのってれいこじゃないかな。苦手分野に真っ向から取り組みました感。

 退団者の見せ場には、とびきりあたたかい拍手が送られる。
 あああ、きんぐ……。
 ショーのない公演で退団するなんてなあ。前方席に坐ってきんぐに釣ってもらうのを毎公演楽しみにしてたのにー。
 わたしの癒やし系。わたしの思い出ジェンヌ。きんぐとの別れが、ひたすら寂しい。

 贔屓組の上級生には、それぞれ自分自身の思い出がある。時の流れとタカラヅカはリンクするからだ。
 『黒い瞳』『ロック・オン!』でのタジィ、まだ新公学年なのに副官イヴァン中尉がかっこよすぎて注目した、ショーの客席降りで真横で踊ってくれた、はにかんだ笑顔が「あ、下級生なんだ」と初々しくてこっちもつられて照れた。
 しあわせだった記憶。
 とびきり美形だけど実力がアレな男役、せしるは仲間うちではちょっとネタジェンヌ的に愛でられていた。「あのチャモロ」とか、「せしるがみつる!」とか、役も絡めてよくいじられていたな。それが娘役に転向して、素晴らしい美貌の女役になって。なにしろ美貌だから、組んだ男役の格を上げてくれて。
 しあわせだった記憶。
 かわいい人、と言わしめたきんぐ。ぐたぐたのアフタートーク、いじられてることにすら気づかない天然さ。『仮面の男』『ドン・カルロス』『インフィニティ』『フットルース』……いつもいつも、愛しい光景には、同じフレームの中にきんぐがいた。
 しあわせだった記憶。

 またひとつ、わたしは思い出を失うんだな。
 還る場所を失うんだ。
 そんな気がして、切ない。

 だけど、タカラヅカは続いていく。
 人生が続くように。

 ミトさんが雪組の今後のスケジュールを説明する。

「煌羽レオ以下16名の『Bow Singing Workshop』……」

 …………は?

 いいいいいま、きらはれおって言った??

 全組通して公演される、歌バウこと、『Bow Singing Workshop』。
 その出演者はすでに発表されている。主演はなく、全員横並びの公演、名前はチガウけど早い話が『エンカレッジ・コンサート』。
 主演はいないから、紹介するとき長の生徒名を言うことになる、という理屈はわかる。
 わかるけど、予測してなかったから、めっちゃびびった。

 煌羽レオ以下、って、まるで、レオ様主演みたいだ!
 な、なんかすっげーどきどきする!!
 歌バウというとわたし的には翼くんの歌が聴ける!!ということがいちばん大きかったんだけど、ここでさらに、レオ様が長! レオ様が率いちゃうんだ!!ということが、加わった。
 長ってことは、初日と千秋楽は挨拶しちゃうんだわ。「雪組の煌羽レオです」とか、舞台のセンターで言っちゃうんだわ。わわわ。なにソレなにソレ、感動!
 レオ様新公主演してないし、新公の長の学年のときだって席次的に挨拶ポジションにないから、挨拶してるとこなんて観たことナイし、観ることナイままいつか袴姿を観ることになるのかと漠然と思ってた。
 それが、主演みたく真ん中に立つ舞台がある……。
 わわわ、わわわ、どうしよう、めっちゃドキドキしてきたっ。

 タカラヅカは続く。
 時が流れ、失い、変わっていく。
 時が流れ、出会い、増していく。

 消えない花火はない、終わらない祭りはない。
 それでも、花はまた咲く。
 本公演千秋楽の翌日って、人事発表ある確率高いね。
月組 次期トップスターについて
2016/03/15
この度、月組次期トップスターに月組の珠城 りょうが決定しましたのでお知らせいたします。 

なお、新トップスターとしてのお披露目公演は、2016年10月14日に初日を迎える月組文京シビックホール公演『アーサー王伝説』となります。

 たまきちが次代月組トップスター!!

 よかった……。
 心から、よかった……。

 イレギュラーすぎて月組はもうよくわかんない。
 前例からいけば、来年のスターカレンダーに載ってないたまきちがトップになるとかありえない。
 スターカレンダーは対ファンだけでなく、阪急が企業として取引先に配る「劇団の広告ツール」だ。現にわたしの部屋に飾ってあるスターカレンダーは、一番下に阪急系列の社名入りで、もらいものだもん。そんな企業広告に「トップスター」が未掲載なんて、取引先に失礼じゃん。
 なにかよほど、イレギュラーなことが起こり、結果やむなくこういう人事になっているのだと思う。
 やむなく、ったって、「本来なら存在しない人事」ではなく、「予定が前倒しになった」だけだと思うけどな。
 いずれこうするつもりだったが、急な変更があり、いろいろと準備が間に合わなかった、と。

 どんな事情があったのか知りようもないが、とりあえず組内順当昇格はめでたい。
 ……たまきちが2番手になったのがつい先日からで、それまでの長い長い番手ごまかしと、それゆえに発生している混乱その他に決着がついているのかどうかはひとまず置いておいて。
 表面にあるのは、組の2番手が次代のトップスターと発表された、ということ。

 それは、めでたいことだよね。

 というか、落下傘人事がなくてよかったよ。ないとは思ってたけど、ひそかにおびえてたから(笑)。
 それぞれの組が、それぞれのまま、これからも楽しめるんだね。

 たまきちに関しては、「早すぎる」ということ以外は問題ないスターさんなので、彼のこれからの舞台も楽しみだ。

 てゆーか『アーサー王』!
 よくもまあ、たまきちに合いそうなとこを突いてくるな!(笑)
 たまきちって王様とか英雄とか似合うよね。
 イシダせんせのオリジナルだと不安しかないけど、海外ミュージカルなら安心だ。

 新体制が発表になったわけだけど、組替え発表はないので、月組はこのまま行くってことよね。
 わたしの個人的な感想としては「大丈夫か?」てな思いもあるけど、代替わりが弾みになって、良い方向へ回っていく、と期待されているってことよね。
 
 や、でもほんと、他組はみんなうまく回っているので、月組の代替わりが他組に影響を及ぼすものでなくてよかったよ……。
 まさおは、織田信長っぽい。ハマる。
 まさおの破天荒なキャラクタと、キラキラっぷりは、戦国時代きってのスーパースターのイメージに合う。

 まさおと月組で、「ロックミュージカル『NOBUNAGA<信長> -下天の夢-』」を作るならば。
 わたしならまず、史実の信長のビジュアルは無視する。
 脳天ちょんまげにスケベヒゲのおっさんってやつね。
 乙女ゲーのような、ロン毛ヒゲなし美青年にする。
 衣装は基本洋服。一部分だけ和のテイストを入れるけど、イメージ的にはロングジャケット系の軍服。
 信長だけでなく、世界全体が和テイスト有の洋服。編み上げブーツ。ただし、武器は日本刀。
 ロングジャケット軍服に、日本刀。このコントラストは必須。ジャケットをマントのようにひるがし、チャンバラするのよ。間違っても袴ははいちゃ駄目、ダサくなるから。

 まさおにみやちゃんにカチャ。ヒゲのいかついおっさんが似合わない、キラキラ少女マンガ画面の主要キャラを使うんだから、ヒゲダルマ基本の日本の戦国時代風俗は徹底無視。

 キラキラ少女マンガ勢と一線を引くのが、ヒゲオヤジ任せろ!なたまきち。
 こちらはレット・バトラー系ダンディで勝負。
 『PUCK』の過ち再びだけは勘弁。キラキラ若者はみやカチャ、大人の男はたまきち。
 棲み分け大事。

 ちゃぴは和服ドレス。娘役は和服寄りでもイイ。こちらも史実・文化無視で和服にボンデージ風アイテムプラスして、髪も盛りまくって。……『ロミジュリ』のキャピュレットの女たちの和テイストバージョンみたいな。
 ハードに、かっこいいテイストで。

 誰がなんの役になるにしろ、史実も年齢も無視。年代が進むごとに年年老わなくてイイし、「みんな同世代?」って感じでいい。
 信長の醍醐味は天下統一目前の破滅、栄華と灰燼だから、当然本能寺の変まで書くだろうし、それじゃ信長がおっさん過ぎてつまらんし、他の主要人物との年の差で萎える。
 みんな若くて美形。年齢不詳。それでいい。

 史実再現ドラマなんか、タカラヅカとまさおに求めてない。

 というのが、ラインアップ発表を見たときのわたしのイメージ、わたしの期待です。
 「歴史ロマン『織田信長』」ではなく、「ロックミュージカル『NOBUNAGA』」なんだもの。
 ポスターは『シャングリラ-水之城-』みたいな感じ。


 たまきちトップ発表で、思い出した。
 2月15日……ちょうど1ヶ月前に『NOBUNAGA<信長> -下天の夢-』の制作発表があったわけよね。
 ポスターが出て、主な配役が出て。

 いやあ……なにかと衝撃でした。

 わたしは、ポスターのみで「ぎゃふん」な気持ちになり、製作発表会の動画には長らく手を出せずにいました。

 だって……わたしのフェアリーまさおが、最後のポスターなのに、いちばん似合わないことをやらされてる……。
 いかにもな劇画チックな信長像に、顔だけお目々キラキラの女の子……。
 歴史ファンの一般男性に観てほしいと思う舞台ではないが、せめて歴女とか乙女ゲー好きとか、ヲタ属性の人にはアピール性のあるモノをと、期待していたのよ、わたし。『シャングリラ-水之城-』とか、チラシをコミケで配れ!!とか思ったし(笑)。
 なのにこれ、ヲタすら引く造形やわ。タカラヅカを知らない人が「タカラヅカってこんなもんだろ」と笑いながらアイコラしたみたいな世界観……。コーエーの『信長の野望』の劇画パッケージに少女マンガの顔だけ貼り付けました、的な。ケンシロウの顔だけ速水真澄みたいな……。

 帰蝶@ちゃぴの変なレッグウエアがすっげー気になる……「昭和時代に夢想された21世紀の服」みたいなの穿いてるー。

 つか、たまきちの役、ロルテス(ローマ出身の騎士)て、ナナメ上過ぎ……。

 どうしよう。

 不安感しかない(笑)。

 大野せんせというと、地味だけど悪趣味ではない画面作りをする人だという印象だったんだ。
 きれいよねー、地味だけど。
 いいわよねー、地味だけど。
 そんな会話になる舞台作り。
 それでも最近は、大野くん比で派手になってきてたのにな。

 これが、大野せんせの「ロック」イメージ……?

 派手にすると、悪趣味になるの? 一方が上がればもう一方が下がるシーソー才能?

 てゆーか、大野せんせはクリエイターではあっても、プロデューサーとしての才能はあまりないんじゃないかな?
 『NOBUNAGA』ポスターは、どこを狙って作ったのかわからん。せっかく「織田信長」という日本人が大好きな有名キャラクタを使うのに、「一般人お断り、ヅカヲタ専用」なポスター作っちゃうとか、おかしくないか? まさおがヅカヲタだけで大劇場を毎日満員に出来る人気スターなら、ファン以外引くようなポスターでもいいけど。……『舞音-MANON-』の客席を見る限り、元々のヲタ以外にも興味を持たせるプロデュースをするべきじゃ……?

 それともこのポスター、一般人が狂喜乱舞して劇場へ押しかけてくるような出来なの……?


 まさおさんは、独特の個性を持ったスターだ。
 織田信長は、まさおの個性を昇華出来る題材なのにな。
 もっともっと、たくさんの人にまさおを味わってほしいのにな。

 しかし、お目々キラキラ信長とか、まさおらしいというか、まさおでしかありえない感じが、一周回って楽しみではある(笑)。

 わたしは大野くんの日本物ファンでもある。
 どうか、舞台クオリティも見送るファンも両思いになる、良い作品になりますようにと、祈らずにはいられない。
 制作発表会つながり。
 『ローマの休日』製作発表会の動画を見た。

 ちぎくんのスーツ!!

 なんか久しぶりに見た気がする……いや、気がする、じゃない、ほんとに久しぶりだ。
 雪組、スーツ物の芝居どんだけやってないんや……。
 そりゃショーでスーツは着るけど、芝居とは違うからな 近年でスーツ物って『アル・カポネ』以外やってないから……ちぎくんのスーツ見るの何年振り?
 『るろ剣』(日本物)、『哀しみのコルドバ』(スペイン・コスプレ)、『星逢一夜』(日本物)、『星影の人』(日本物)、『ルパン三世』(フランス・コスプレ)、『伯爵令嬢』(アメリカ・コスプレ)、『一夢庵風流記』(日本物)、『ベルばら』(コスプレ)、『Shall we ダンス?』は女役だったからチガウし、『若き日の唄は忘れじ』(日本物)、『ベルばら』(コスプレ)、『JIN-仁-』(日本物)、……『双曲線上のカルテ』?
 4年前まで遡るのか!
 てゆーか日本物多すぎ。
 『伯爵令嬢』がまだいちばんスーツ系だったけど、フロックコートだからなー。スーツというよりコスチュームもの。女の子はドレスだし。

 ほんっとにちぎくんのスーツ見るの久しぶりなんだ。
 そりゃ目に新鮮、心に染み渡るわ。
 『双曲線上のカルテ』は変なカツラに変な役だったもの、今回の地髪ちぎくんの美しさ半端ナイ。

 雪組の演目選びのセンスはとてもいい。ちぎみゆで『ローマの休日』なんて、わくわくする。キムくん時代がこれくらい恵まれていたらなあ……。言っても仕方ないことだけど、キムくんは劇団の人事失敗のツケを一身に背負わされたよなあ。

 ちぎみゆで『ローマの休日』!というとわくわくするけど、他の役を思い出せずにいる。
 映画を見たのは大昔だからなあ。
 トップコンビはいいけど、それ以外に男役に役がないと、タカラヅカ向きじゃない。……だからこそ、今まで上演されなかったし、翔くんとかなとくんの役替わりなんだろうけど。オイシイ役がたくさんあれば、役替わりする必要ないもんね。

 楽しみだし、複数回行くつもり満々だけど、演出家にはちょっと不安感。

 あと……みゆちゃん、なんか丸いぞ?(笑) 映像に弱いだけで、舞台ではちゃんとかわいくなってるのよね?
 タカラヅカはすごいところだなと。

 星組公演『こうもり』『THE ENTERTAINER!』初日観劇。

 『こうもり』を観ながら感心したんだ。
 つい数日前まで『るろうに剣心』やってた劇場で、コレやってるんだものな。
 別物ぶりというかジャンルの乖離っぷりがものすごかったです。
 この両作品を、ひとつの劇団があったりまえにやってるんだなと。

 なんというか、クラシカル。
 ザ・タカラヅカ。
 時代とセンスが昭和時代から引き継がれた「タカラヅカ」らしい古臭さ。
 うん、そうそう、タカラヅカってお笑い物もやるよね。シリアス悲劇だけじゃなく。昭和時代だってやってたもんね。だからとてもなつかしいテイスト。
 同じコスチューム物のコメディでも、『めぐり会いは再び』とセンスが違い過ぎる……。あれは良くも悪くも現代だった。

 あまりの古臭さにびびったけれど、すぐに慣れた(笑)。

 たしかに古い。
 だが、それがいい。

 とってもこってりタカラヅカ。
 タカラヅカ成分濃い目。
 そういうタカラヅカも必要です。

 大人数わいわい場面も多いので、組ファンは点呼するだけでも楽しいのでは?

 良くも悪くも谷先生作品だな、というのが第一印象。
 谷せんせのいいところも出ているが、悪いところもめーーっちゃ出ている(笑)。
 そして、谷せんせとみっちゃんは相性悪いなと再度思った。や、実はわたし、『THE MERRY WIDOW』でそう思ったクチなので。
 ま、そのへんはまたいずれ語る。


 ショー『THE ENTERTAINER!』は、野口先生。『A-EN』が楽しかったので期待していたのだけど……うーん。

 作品はともかく、とにかく。

 みっちゃんを観ながら震撼した。

 タカラヅカこわいな、って。

 こんなすごいスキルの持ち主が、今後日本ミュージカル界へ出ていくわけですよ。
 タカラヅカ、を温床に育ったものすげー才能。こんな人を生み出しちゃうんだから、やっぱタカラヅカってすごいわと。

 タカラヅカ出身者が全員神才能の持ち主だとは、ごめん、思ってないし、タカラヅカで花開く才能と、外部芸能界で必要とされる才能とがイコールだとも思っていない。
 外部で売れっ子になることがタカラヅカで人気者になることより素晴らしいとも、思ってない。
 タカラヅカと外部って、歌とか芝居とかミュージカルとか、やっていることは同じでも、確実に「ジャンルが違う」と思っている。
 別ジャンルで、今までと同じ実力や魅力を出すのは難しいんだと思う。
 だけど、ジャンル違いというハードルを、軽々越えるだろう、と思わせてくれる桁違いの「実力」を、見せつけてくれる人が、稀にいる。
 みっちゃんがそうだ。

 彼女は「ジャンル:タカラヅカ」じゃないわ。
 越えてるわ。
 超えてるわ。

 このものすごい人が、タカラヅカを出ていくんだ。近い将来。

 すげえな。
 すごいよなタカラヅカ。こんな人をも、生み出してしまうんだ。

 そう思ったよ。

 『THE ENTERTAINER!』はサヨナラ公演みたいな作りで、ここでも「ああ、みっちゃん好き勝手やってるなあ」と思った。
 劇団が、みっちゃんにそれを許しているんだな。双方両思いでやっていることなら、いいじゃないか。みっちゃんはこのまま突っ走ればいい。

 わたしはやっぱりみっちゃんは苦手で、芝居もショーもわたしの苦手とする「みっちゃん」てんこ盛りだった。ということはこれがほんとに、みっちゃんらしさで、彼女のやりたいことなんだろう。
 わー、すげーみっちゃんだー、苦手だーー……と思いながらも、そう思っている人間をも、「みちこ、すげー!!」と感動させる、力。

 ほんとに、すごいスターになったなあ、ほっくん……。
 最近しみじみと、昔のほくしょーさんのことを思い出すよ。「ほっくんにないのは美貌だけだ」と思っていた、新公時代のこととか。「頼む、きれいになってくれ」と願い続けたなあ。
 まさか、ずーーっと同じことを思い続け、トップになってなお、その点の感想が変わらないとか(笑)。
 変わらないまま、それでもここまで来た、そのことにも強い感慨がある。
 頑ななスタイルは、スターの証だ。
 月組が、次の時代へと動き出している。
 全国ツアー『激情』『Apasionado!!III』がスタートした。

 主演として全国を回るのはたまきち。次期トップスター。現トップ娘役のちゃぴとコンビを組んで。
 まさおの退団発表のあと、ちゃぴの発表もあるのかとおびえたけれど、ここまでなかったのだから続投、たまちゃぴコンビになるってことだろう。下級生すぎるたまきちを支えるには、ベテランの相手役が必要だものね。

 たまきちの次期発表があってよかったと思う。
「アンタ誰?」「なんでトップでもなんでもない、ただの下級生が主演で全国を回るの?」の宙ぶらりん状態での全ツにならなくて。

 全国ツアーでトップスターの代わりを務める男役スターは、次のトップスターである。……これが、美しいカタチだと思う。わたしだけでなく、劇団もそう思っているからこそ、全ツ前に発表したんだろう。
(だから、本来なら宙組まぁくんも次期発表したかったはずで、星組ベニーに至っては次期であるべきだったんだろう。……これらのことから、みっちゃんの星組トップ就任が、なにかしらイレギュラーな事態であったと推察される)

 正しい、美しいカタチだとは思うが、心穏やかでもない。

 あのカチャが、たまきちの下に甘んじている。
 2009年の『エリザベート』で、新公主演さえしていない無名の下級生男役であったのに、縁もゆかりもない組に「特別出演」してタイトルロールのヒロイン役を本公演でシングルで演じた。トップスターより2番手より長身の男役が、わざわざヒロイン役。
 舞台成果より育成ルールより優先すべき、なにかしらの事情があった、としか思えない珍妙さ。
 夢華さんの研1ヒロインと並ぶ、タカラヅカ100年の黒歴史事項。
 そこまでさせたカチャが、下級生の脇に回っている。

 わたしがたまきちを個別認識したのが、その2009年の『エリザベート』の新人公演だったなあ。
 あのときの本公演タイトルロール役者が、本公演でモブ、新公でようやくジュラだったたまきちの、脇を務めているのか。

 その上。

 エスカミリオ@暁くんだもん……。

 初演で、宙組3番手ワタルのやった役。
 つまり、この全ツの座組は、トップスターたまきち、2番手カチャ、3番手暁くん。

 暁くんが名実伴ったスターならばともかく、まだやっと研4で、学年相応の実力しかなく、これまでにえんえん実力不問で大役を与え続けてきた「晩成予定(現時点ではあくまでも予定、予定は未定にして確定にあらず)の大器」が、ここですでに3番手、という現実は、なかなかにヘヴィだ。
 エスカミリオがベビーフェイスの少年キャラだというならともかく、セクシーな大人の男、花形スターの役だ。
 暁くんの持ち味でない役なのに、それでも番手計算のみで彼にやらせて、持ち味にない役をねじ伏せる技術も経験値もない現状を晒す結果になる、というのは当の暁くんのために心配った結果とも思えないあたりがさらに、わだかまりを作る。

 ルール無視の超特急次期トップスターのたまきち、不可思議なエリザベートだったカチャ2番手、かつてのカチャのように特別扱い爆上げ中の暁くん3番手、って。

 なんというか、すごいっす。
 「タカラヅカ」の闇が集約されていそうで(笑)。

 とまあ、人事面でのもやもやは、ヅカヲタである以上誰もが多かれ少なかれ抱いていると思う。
 それくらい、月組はいびつなことになっている。

 が、それとジェンヌさんたちは切り離して考える。
 人事を行っているのは、渦中でゲームの駒のように動かされているジェンヌたちじゃない。

 魅力のあるジェンヌたちを、どうしてもっとうまく売り出せないのか、プロデュースしないのか、ほんっとにもどかしい。
 月組の集客の苦戦っぷりは、劇団のプロデュース失敗のあおりをモロにくらっている面が大きい。
 2番手切りから夢華さん騒動などで低迷した雪組人気が、番手を明確にし組を安定させて各ジェンヌの実力と個性に合った役と作品をプロデュースすることで上向きになったように。
 人事=劇団への不満、って、客足に響くんだよねえ。

 どんな事情であれ、人事であれ、当のジェンヌたちは真摯に舞台を務めている。自分の役割を果たそうとしている。

 順当昇格のはずなのに、波乱とか逆風とかという言葉を浮かべてしまう船出。
 この状況での全ツ初日、たまきちはアナウンスでも挨拶でも、がんとして無冠のままだった。
 「珠城りょう」としか紹介されず、「珠城りょう」としか名乗らない。
 次期トップと発表済みであることには、一切触れない。
 どんだけのプレッシャーだろうなと。
 順当であるはず、歓喜とエールの空気に包まれるはずのトップ発表後の全ツ初主演で、初日の幕が無事に下りてなお緊張感のまとわりついた空気なんて。

 この状況で、次の月組を背負って立つ覚悟を決めたたまきちと。
 この状況で、たまきちを支えることを選んだカチャと。
 この状況で、揺るがずにトップ娘役であり続けるちゃぴと。

 どうか、彼らの新しい旅が、豊かで喜び多いものになりますように。
 願ってやまない。
 星組初日の日に、こんなニュースも発表になってた。
月組 赤坂ACTシアター/シアター・ドラマシティ公演『Voice』お客様参加型コーナー について
2016/03/18
月組 赤坂ACTシアター/シアター・ドラマシティ公演『Voice』第2幕ではお客様参加コーナーがあり、龍 真咲、光月るう、響れおなの他に、振付をお教えする先生役で下記のメンバーが日替わりで出演いたします。
(以下省略)

 …………。
 …………。
 …………。

 またやるのか。

 どんだけ連続……。


 えー、何度も書いてますが、わたしは客席参加不要論者です(笑)。踊りたい人は外部でどうぞ、タカラヅカは客席に坐って「観劇」するジャンルです。と思ってる。
 はじめて観る人も幕間にお弁当食べるためにやってきた団体さんも、コアでディープなヲタも、等しく楽しめるのがタカラヅカだと思っているクチ。
 ヲタとリピーター以外お断りの客席参加などいらぬ!


 ただ、今回は本公演じゃない、個人スターの公演だから、一概に「いらぬ!」とは思っていない。
 タカラヅカがなんたるものか知らないような団体さんは来ない公演だから。ヲタ前提の興行だから。
 それなら、客席参加もありでしょ。
 あるだろうなと覚悟してたけど。
 やっぱりあるのか。
 世の中の多数が求めてるのかなあ。そういう時代なのかなあ。生きにくい世の中だなあ。

 まさお個人を好きで、まさおのコンサートに行くわけだから、一緒に盛り上がりたいとは思う。

 それはともかく。

 日替わりって……。
 チケット買う前に発表してくれよぉ。

 みやちゃんかあーさの日に行きたかったニャ……。ぜんぜん関係ない日しか持ってないニャ……。しょぼん。

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