自分に打ち勝てと言い聞かせるかのような。@激情/Apasionado!!III
2016年3月26日 タカラヅカ たまきちは主演に見えた。
月組全国ツアー公演『激情』『Apasionado!!III』において。
「トップスター」に見えたのではなく、この芝居、この公演の主演に見えた。
この芝居にも公演自体にも、彼を脅かすほどの技術や華を持った人はいなかった。いや、技術でなら彼以上の人もいるかもしれない。だが、それは真ん中でスポットライトを浴びている人を凌駕するほどの圧倒的な差ではなかった。
ならば、芝居の主役で、ショーでいちばん豪華な衣装を着ている人が「主演」に見える。
至極当然のこと。
そして、この公演の主演として、たまきちはなんの問題もない。
問題ないから、たまきちでいいんだと思う。
トップスターの仕事である全国ツアー主演を務めるたまきちは、まさにトップの器、今現在彼がトップスターでないことが不思議なほどだった……と思うわけでは、ごめん、まったくない。
や、彼がそんなに華々しい人なら、今まで大劇場公演でもっと説得力のある成果を上げていると思う。
本公演ではトップさんや上級生スターさんに遠慮して本来の力を出せないんです、てなわけでもないだろう。いつも全力でやって、あの舞台だったわけでしょ?
全ツ主演したからって、突然化けるわけナイ。
もっとお祭りムードのある公演なら、華々しく見えたのかもしれない。
でも今回は、そんな空気じゃなかった。
ゆえに、その空気に引きずられて、そう見えた、というのも、あるかもしれない。
全ツ主演のたまきちは、いつものたまきちだった。
だからといって、出来が悪いということもなく。
これがバウでもDCでも、たまきちはこうして一定クオリティの舞台を作ってきただろうし、それが今回全ツというだけで、ただの「別箱主演」というだけなら、なんの問題もない。
問題があるとしたら、次の本公演が終了した翌日から、たまきちが月組トップなのだということ、だけだな。
別箱主演を破綻なく務める、だけなら、他に出来る人は何人もいるだろうに、それでもあえてたまきちである、という理由が、特に見つからない。
この全ツで、見つけられたらいいな、と思ったんだけど。
特にないな~~。
だがしかし。
こんな状況で、それでも破綻なく全ツ主演を務められるメンタル含めた頑強さは、頼もしい才能だと思う。
なんというかね、舞台と客席に漂う緊張感がすごいのよ。
全ツなんて祭り公演というか、作品だって再演とか本公演からの使い回しが多いし、けっこうゆるい雰囲気あるじゃん? 多少アレでも全ツだから許される、という前提ありきの。無茶な下級生抜擢とかも、全ツならいいじゃん、クオリティなんか気にすんな、「タカラヅカ」とトップスターの看板さえあれば地方の客なんかどうにでもなる的な。
その全ツならではのゆるさがなくて、みんな緊張してるのよ。
全国ツアーといっても、梅田スタートだ。観客は圧倒的にタカラヅカファンが占めている。
つまり、「別格上級生を超えることが出来ずに何年も番手誤魔化しをした挙句、これという決め手もないまま2番手にぽっと出たかと思うとなんの準備も前ふりもないまま突然半年後にトップスターになると決まった」という舞台外のストーリーを知っている人たちがほとんどだということ。
そんな観客たちを、納得させる舞台を見せなくてはならない。
こーれーはー、……重圧だろう。
原作至上主義ファンで埋まった客席で初のミュージカル化舞台を披露する的な緊張? 最初からラインを決められていて、それ以上で当然、1mmでも届かなかったらフルボッコ前提、みたいな?
悪意のある観客ばかりだとは思わないが、天海祐希以来の逸材と煽られれば、「どんなもんだろう?」と興味を持つのが普通。
そんな、類を見ない空気の中で、幕は開き、舞台は進んだ。
とくに破綻もなく、かといって空気を塗り替えるほどの熱狂も称賛もなく。
粛々と舞台は進み、幕が下りた。
幕が下りてなお、たまきちにゆるみは感じなかった。
ほっとはしているようだけれど、まだ手放しではない。第一関門クリアとか、そんな感じ。彼の戦いはまだはじまったばかりだ的な?
修行僧のようだ。
それも、ただのお坊さんじゃなくて、もっと肉体派の僧兵。僧兵が、技と精神を磨くためにあえて苦行に打ち込んでいる感じ。
この全ツって苦行とか試練なのかな?
「全ツ初主演おめでとー!」な感じがまったくしない。はしゃいではダメ、頭を垂れて厳粛に打ち込まなければ不謹慎、てな感じ?
バウとかドラマシティとか、「初主演公演です!」とか「初のドラマシティ主演です!」とか、おめでとームードで盛り上がるのが初日なのにな。
このムードが、今のたまきちの現状なんだろう。
そのなかで、たまきちは破綻なく舞台を務め上げた。
その肝の据わり方はいい。
彼に足りないモノは経験値だけなのだから、それはこれから身に付ければいい。
『激情』のホセ@たまきちは、最初にイメージした通り、とても似合っていた。
朴訥さに嘘がなく、言動と展開に違和感がナイ。
このホセならばそうだろうし、こうなるだろう、と思わせる。
問題は、似合いすぎていて、ファンタジー感に欠けるところ、かな。
タカラヅカは現実とは異なるからいいのであって、現実にありそうなモノだけを差し出されると首をかしげる。
ホセは男臭い男でいいのだけど、もう少しキラキラした部分も欲しいなあ。野郎系だけど現実離れしたイケメンであるとか。
画面が青年誌まんまではなく、もうちょい女性向きに寄ってくれたらいいなと思う。
ショー『Apasionado!!III』は、とにかく「がんばってた」ことしか印象に残っていない。
どこが良かったとか悪かった以前に、とにかくがんばってた。むちゃくちゃがんばってた。ナニこの試練、苦悶に耐えるアスリートみたいな人。走り続けた先に栄光のゴールがあるのだ、金メダル目指して努力し続けろ、自分の敵は自分自身だ自分に打ち勝て! 標語の書かれた額縁と必勝ハチマキが見えるようだ。
タカラヅカって、エンタメって、そういうもんではないと思うんだけど、今はもうこれでいいや。つか、こんだけ血管浮かせてがんばってる人に、なにも言えない。
ショーの真ん中務めるのは大変なことで、順当に育った路線スターさんだって手こずるもんなんだから、ショートカットで4番手からトップスターに躍り出た人がふつーの人の4倍大変なのは想像出来る。
ふつうに主演に見えた。
トップスター、という華々しさは感じなかったとしても。
今はまだトップじゃないからいいし。
わたしは、たまきちトップも楽しみだ。これからも、月組を観に行くよ。
……男臭い作品がいい、と思ってたけど、それだけだとやばいから、ロマン系がいいかな。たまきちが土臭くなりすぎない役がいい。
月組全国ツアー公演『激情』『Apasionado!!III』において。
「トップスター」に見えたのではなく、この芝居、この公演の主演に見えた。
この芝居にも公演自体にも、彼を脅かすほどの技術や華を持った人はいなかった。いや、技術でなら彼以上の人もいるかもしれない。だが、それは真ん中でスポットライトを浴びている人を凌駕するほどの圧倒的な差ではなかった。
ならば、芝居の主役で、ショーでいちばん豪華な衣装を着ている人が「主演」に見える。
至極当然のこと。
そして、この公演の主演として、たまきちはなんの問題もない。
問題ないから、たまきちでいいんだと思う。
トップスターの仕事である全国ツアー主演を務めるたまきちは、まさにトップの器、今現在彼がトップスターでないことが不思議なほどだった……と思うわけでは、ごめん、まったくない。
や、彼がそんなに華々しい人なら、今まで大劇場公演でもっと説得力のある成果を上げていると思う。
本公演ではトップさんや上級生スターさんに遠慮して本来の力を出せないんです、てなわけでもないだろう。いつも全力でやって、あの舞台だったわけでしょ?
全ツ主演したからって、突然化けるわけナイ。
もっとお祭りムードのある公演なら、華々しく見えたのかもしれない。
でも今回は、そんな空気じゃなかった。
ゆえに、その空気に引きずられて、そう見えた、というのも、あるかもしれない。
全ツ主演のたまきちは、いつものたまきちだった。
だからといって、出来が悪いということもなく。
これがバウでもDCでも、たまきちはこうして一定クオリティの舞台を作ってきただろうし、それが今回全ツというだけで、ただの「別箱主演」というだけなら、なんの問題もない。
問題があるとしたら、次の本公演が終了した翌日から、たまきちが月組トップなのだということ、だけだな。
別箱主演を破綻なく務める、だけなら、他に出来る人は何人もいるだろうに、それでもあえてたまきちである、という理由が、特に見つからない。
この全ツで、見つけられたらいいな、と思ったんだけど。
特にないな~~。
だがしかし。
こんな状況で、それでも破綻なく全ツ主演を務められるメンタル含めた頑強さは、頼もしい才能だと思う。
なんというかね、舞台と客席に漂う緊張感がすごいのよ。
全ツなんて祭り公演というか、作品だって再演とか本公演からの使い回しが多いし、けっこうゆるい雰囲気あるじゃん? 多少アレでも全ツだから許される、という前提ありきの。無茶な下級生抜擢とかも、全ツならいいじゃん、クオリティなんか気にすんな、「タカラヅカ」とトップスターの看板さえあれば地方の客なんかどうにでもなる的な。
その全ツならではのゆるさがなくて、みんな緊張してるのよ。
全国ツアーといっても、梅田スタートだ。観客は圧倒的にタカラヅカファンが占めている。
つまり、「別格上級生を超えることが出来ずに何年も番手誤魔化しをした挙句、これという決め手もないまま2番手にぽっと出たかと思うとなんの準備も前ふりもないまま突然半年後にトップスターになると決まった」という舞台外のストーリーを知っている人たちがほとんどだということ。
そんな観客たちを、納得させる舞台を見せなくてはならない。
こーれーはー、……重圧だろう。
原作至上主義ファンで埋まった客席で初のミュージカル化舞台を披露する的な緊張? 最初からラインを決められていて、それ以上で当然、1mmでも届かなかったらフルボッコ前提、みたいな?
悪意のある観客ばかりだとは思わないが、天海祐希以来の逸材と煽られれば、「どんなもんだろう?」と興味を持つのが普通。
そんな、類を見ない空気の中で、幕は開き、舞台は進んだ。
とくに破綻もなく、かといって空気を塗り替えるほどの熱狂も称賛もなく。
粛々と舞台は進み、幕が下りた。
幕が下りてなお、たまきちにゆるみは感じなかった。
ほっとはしているようだけれど、まだ手放しではない。第一関門クリアとか、そんな感じ。彼の戦いはまだはじまったばかりだ的な?
修行僧のようだ。
それも、ただのお坊さんじゃなくて、もっと肉体派の僧兵。僧兵が、技と精神を磨くためにあえて苦行に打ち込んでいる感じ。
この全ツって苦行とか試練なのかな?
「全ツ初主演おめでとー!」な感じがまったくしない。はしゃいではダメ、頭を垂れて厳粛に打ち込まなければ不謹慎、てな感じ?
バウとかドラマシティとか、「初主演公演です!」とか「初のドラマシティ主演です!」とか、おめでとームードで盛り上がるのが初日なのにな。
このムードが、今のたまきちの現状なんだろう。
そのなかで、たまきちは破綻なく舞台を務め上げた。
その肝の据わり方はいい。
彼に足りないモノは経験値だけなのだから、それはこれから身に付ければいい。
『激情』のホセ@たまきちは、最初にイメージした通り、とても似合っていた。
朴訥さに嘘がなく、言動と展開に違和感がナイ。
このホセならばそうだろうし、こうなるだろう、と思わせる。
問題は、似合いすぎていて、ファンタジー感に欠けるところ、かな。
タカラヅカは現実とは異なるからいいのであって、現実にありそうなモノだけを差し出されると首をかしげる。
ホセは男臭い男でいいのだけど、もう少しキラキラした部分も欲しいなあ。野郎系だけど現実離れしたイケメンであるとか。
画面が青年誌まんまではなく、もうちょい女性向きに寄ってくれたらいいなと思う。
ショー『Apasionado!!III』は、とにかく「がんばってた」ことしか印象に残っていない。
どこが良かったとか悪かった以前に、とにかくがんばってた。むちゃくちゃがんばってた。ナニこの試練、苦悶に耐えるアスリートみたいな人。走り続けた先に栄光のゴールがあるのだ、金メダル目指して努力し続けろ、自分の敵は自分自身だ自分に打ち勝て! 標語の書かれた額縁と必勝ハチマキが見えるようだ。
タカラヅカって、エンタメって、そういうもんではないと思うんだけど、今はもうこれでいいや。つか、こんだけ血管浮かせてがんばってる人に、なにも言えない。
ショーの真ん中務めるのは大変なことで、順当に育った路線スターさんだって手こずるもんなんだから、ショートカットで4番手からトップスターに躍り出た人がふつーの人の4倍大変なのは想像出来る。
ふつうに主演に見えた。
トップスター、という華々しさは感じなかったとしても。
今はまだトップじゃないからいいし。
わたしは、たまきちトップも楽しみだ。これからも、月組を観に行くよ。
……男臭い作品がいい、と思ってたけど、それだけだとやばいから、ロマン系がいいかな。たまきちが土臭くなりすぎない役がいい。