『相続人の肖像』、ヒロインはイザベル@まどかちゃん。

 主人公チャーリーのことばかりあーだこーだ書いてきたが、ヒロインのイザベルもひどい。

 最初から、なんか変な子ではあったけど……。

「喪も明けていないのに、パーティなんて!」とその恥知らずさをヴァネッサにさんざん嘆かせておいて。
 ヴァネッサの娘で、母に似た「やさしいいい子」として描くつもりだったろう、イザベルが、父の喪中だけど白いドレスを張り切って着ちゃいました、だってダンス踊りたいんだもん!!って……えええ?

 あかん……この子も、無神経や……。

 若い娘さんだから、ドレスやパーティにものすごーく強いあこがれを持っていたにしろ。
 はじめて会うハンサムな義兄チャーリーに惹かれていて、理屈を付けてダンスを踊りたかったにしろ。

 父の喪中にしていいことやないやろ。

 いや別に、してもいいとは思うよ。
 そこは考え方の違い、喪服を着続けることだけが「死者を悼む」ことじゃない。華やかに振る舞いつつ、心の中で悲しみに暮れている場合だってある、「喪中に不謹慎な!」と単純に揚げ足を取りたいわけじゃない。

 そうじゃなくて、彼女の場合、母のヴァネッサが「喪中にパーティなんて!」と強い拒絶を示している。
 母の悲しみを理解している娘なら、自分が継父の死をどう思っているかだけでなく、母の気持ちを慮らないか?
 母を傷つけることになる、と想像しないのか?
 母を傷つけても平気なんだ、とは思わない。そんな子じゃないのはわかる。でも、結果そんな行為を易々としてしまうのだから、想像できなかった、ということだろう。
 …………おバカさん?

 で、この最低主人公とヒロイン、ダンス1曲踊っただけで心変わりするし。
 いがみ合ってたのに、惹かれ合うよーになる。

 ひでーなー。

 チャーリーに比べればよっぽどマシだけどさ。
 ハロルドを振るんだけど、イザベルは最初からずーーっとハロルドの求愛には「迷惑・困惑」という態度だったから。
 カネのためにベアトリスの心を弄んで捨てたチャーリーとは、根本からチガウ。

 にしても、無神経なツンツンキャラは、観客の感情移入を得ることが難しい。
 性格の難をフォローするには、よほどの美貌か演技力か……天性の愛嬌が必要。

 ……なんでこんな難しい役を、研2のお子さまにやらせるかな。

 まどかちゃんは研2のキャリア不足新人にしては、十分よくやっている。よくやってはいるけど……不利だなあ。

 ヒロインをやることだけで手一杯、脚本の粗を補填できるだけの地力がない。

 新人公演『王家に捧ぐ歌』のアイーダは、大任ゆえの必死さが、そのまま役に結びついたと思う。お手本もあったし。
 しかし今回の作品と役は、ただ必死にやっているだけだと、愛らしさが出ないんだよなあ。

 たぶちくんも、まどかちゃんの少女っぽさに着目して「妹キャラ」を振ったのだと思うけど。
 かわいい系にも生意気系にもメーターの振り切れていない、中途半端な妹キャラに、どう萌えればいいのか、正直とまどった。
 てゆーか恋愛部分、雑すぎるやろ……。「1曲デュエットすれば恋に落ちる」って、ヅカの演出家はお約束に頼りすぎてるわ。

 せっかくの若いロリっ娘的新進スターだもの、いっそ思い切り萌えキャラを演じるところを観てみたいわー。
 アイーダのときより太った? って感じの健康的なほっぺを見ながら、どんな役が合うのかしら、と考えた……。
 まあともかく、これ以上丸くならないでほしいなー。


 ヴァネッサ@せーこは、この作品の良心。彼女だけがまとも。
 うまいよねー。ありがたいよねー。
 せーこちゃんって、ずんちゃんとお芝居のカラーが合っていると思うの。
 重みとか陰影とか。
 だから、もっとまともな芝居でずんちゃんと絡んでほしかった……。


 おばーさま@まりんは、なまじうまい人だからか、偽善者を演じると憎らしさ半端ないな。
 ブラックネル夫人@『Ernest in Love』は良かったんだけど、その前のマックス@『エリザベート』がひどかったからさ……その記憶が鮮烈すぎて、「うわ、マックス系再び!」と震撼した。
 自分しか愛していないシシィパパはこわかったわ……そりゃこんな男の血を引き、この男にあこがれている娘の人格と人生、さもありなん、つーか。
 冷血パパを演じたこわい人……その記憶を思い起こさせるような、まりんさんの人でなしぶりがこわかったっす。

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