『双頭の鷲』2幕最初。
 そらくんの客席登場があった。
 彼は解説をしつつ、客いじりをする。話しかける。「マドモアゼル」と呼びかける。
 特に、ひとりの客をつかまえて、デートの誘いをかける。パリジャンらしく、粋に。
 タカラヅカの男役冥利に尽きる役。現実の男がやったらサムイを通り越してアタマがおかしいと思われるレベルのキザ台詞の洪水。タカラヅカだからこそ成立するお遊び。

 それを、そらくんがやっている、というのが感慨深い。
 そらくんって、子犬キャラというか三枚目キャラというか弟キャラというか、「いわゆる、美形スター」という認識がなかったためだ。や、世間は知らん、わたしが。
 優等生でなんでもできるけどいじられキャラで踏まれてきゃんきゃん言ってる感じ……って、まぁくんのブリドリがかわいすぎたせいで、そっからイメージ止まってるのよ。
 それが最近かっこよく見えてドキドキ、というのが現在のわたしの立ち位置。

 そんな気になる彼が、客席登場して客いじりしてる。とことんキザに口説いてる……きゃあああ。
 とまあ。そのときはテンション上がった。
 わざとかっこつけてるそらくんを観るのは楽しかった。

 だが終演後、冷静になって考えると。
 べつに、うらやましくはないなあ。そらくんに「マドモアゼル」と一本釣りされている誰かのこと。

 いやその。
 まっつが客席降りして客いじりしてたら、うらやましかったと思うのね。目の前で立ち止まって顔覗き込まれてデートに誘われる人が。いいなあ、うらやましいなあ。あの席のチケット欲しいな、なんとかならないかしら、と強く思うだろう。
 でも、そらくんだとぺつに、そうは思わないなあ。あらあらいいわね、楽しいわね、と遠く眺めて拍手するだけ。

 そうか。まだ、ポストまっつは空席なんだなあ、と思う。
 この場合、そらくんだからうらやましくない、のではなくて。
 わたしの問題だ。
 そらくん大好きで、宙組観るときの観測ポイントのひとつなのにね。

 それとも。

 そらくんに「マドモアゼル」ってやられたら、一気に恋に落ちるかしら……。先日、レイラくんに顔のぞきこまれてドッキドキにときめいた単純おばさんだからなー。
 ご贔屓ではないけれど、各組にいる「かなり好き」な色男さんたち……そういうあたりの人から「君の瞳に乾杯☆」的な口説き文句を目を見て言われたら、こあらさん一気に落ちるかしら……。
 わたしがそらくんの「マドモアゼル」だったら? 次の瞬間から「そらくん追いかける、とりあえず今出てる彼のブロマイド全買いして、そらくんグッズ作って持ち歩く!」とか、痛ファン生活に目覚めたりするかしら……。
 や、わたしが彼のマドモアゼルになれるチャンスはもうナイので、考えるだけ無駄だけど。

 そんな夢を見られるくらい、そらくんはステキな役をやってました。
 ちくしょー。
 なんか、ちくしょー。……言葉悪いわね。

 もっともっとステキになってね、そらくん。
 もっともっとステキになるよね。

日記内を検索