我が家の今日の事件は、猫の毛並みについてだ。

 ことのはじまりは、昨夜。
 オレンジと電話していたわたしは、猫が目の前を横切っていくのをなにげなく見ていた。
 そのときに、気づいたんだ。

「色、白い」

 色というのは、猫の毛の色のことだ。

「あれ? なんか、色が白いっていうか、薄い。あれ? なんで??」

 電話口で、本能のままに叫んだ。

 うちの猫は、一見アメショーである。
 正確には、アメショーとチンチラのハーフである。
 顔と体格がチンチラで、毛の柄はアメショー。ショートヘア、というにはちょっと長い毛並み。

 つまりアレだ、ホワイトタイガー。
 白いカラダに、黒いシマ。

 なのにふと、気づいたんだ。
 たしかにあったはずの黒いシマが……なくなっている。

 あれえぇぇえ??

 この発見を、今日他の家族に話した。

「ほんとだ、たしかにシマがなくなってる」
「いつから?」
「背骨に沿って黒い線があったよね? アタマからしっぽまでつながる長い長い線。消えてるよ??」
「毛の模様って消えるもんなの?」

 背骨の上を走る縦のトラジマはほぼ消えている。
 それに垂直に左右に連なる横のトラジマは、薄くなっている。ほぼグレーだ。
 毎日見ているだけに、変化に気づかなかった。

「なんか、だまされたみたい……。ボーダー模様のシャツを買ってきたのに、1回洗濯したら模様が全部消えちゃった、みたいな」
「この子がうちにきた最初は、模様がすごくはっきりしてたよねえ。おなかの両脇にある目玉みたいな模様とか」
「アメショーの証、みたいな目玉模様。ほんとに虎みたいにシマがくっきりしてたのに」

 黒かったはずのシマがグレーになってしまった今。

「使い古しのぞうきんみたい……」

 弟の表現が、いちばん的を射ていた。

 そう。
 美しさを誇ったはずのうちの猫は、気が付いたらぞうきん色の毛並みの猫に成り果てていた……!

 白とグレーの混ざり具合がもー、まさに「汚れたぞうきん」!!
 シマだったのに! トラジマだったのに! こんなまだら模様じゃなかったのに!!
 何年か前、大劇場の売店で「ホワイトタイガー」のぬいぐるみを「うちの猫に似てる」って理由で買ってしまうくらい、きれーなシマが自慢の猫だったのに!

「見た目がいいのだけが取り柄の猫だったのにな」

 我が家の歴代の猫たちの中で、今の猫がもっとも美しかったのだ。
 ただし、外見の美しさと反比例して、歴代の猫たちの中で「もっともバカ」なのだが。
 のーたりんでも、きれいだからゆるされていたのに!!

 今じゃ、ぞうきん猫……。

 何故だ?
 あの美しいトラジマはもう返らないのか?!

 

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