踊る母。

2003年5月31日 家族
 ちょうどそのとき、母がわたしの部屋の隣にある、風呂を使っていました。

 そのとき、ってのは、夜9時ぐらい。
 わたしは『ぼくの魔法使い』を見るために、テレビをつけていました。
 画面に映っているのは、ナイターです。阪神×巨人戦。こん畜生が終わらない限り、ドラマははじまりません。
 まだ8回裏だよ、いつになったら終わるんだ……。

 わたしは野球が嫌いです。
 野球というスポーツに含むところはありません。ナイター中継を憎んでいるだけです。
 いや、放送延長さえなければ、ゆるします。はじめから中継枠を3時間とか4時間とか取っておいて、それより早く終わったら、過去の名場面とかをえんえん流していればいいのよ。そうしたら、他人に迷惑をかけないのに。
 わたしが野球を嫌いなのは、わたしに迷惑をかけるからです。
 迷惑なモノを嫌いなのは、中庸な人間としてふつーのことだと思っています。

 とまあ、大嫌いな野球中継を、苦々しくかけていたわけさ。パソコンの方の画面で他のビデオを見たり、DVDのダビングをしたりしながらな。
 そしたら、叫び声とともに母が現れたのよ。

「阪神はどうなってるっ?!」

 まだ2対4で負けてるよ。でもまだノーアウトだな。あれ、満塁になった。あれ、抜けたよ、ヒットだ、てことは1点入ったじゃん?

「ちがうわっ、ランナーいるから、同点よっ!!」

 母、吠える。
 ほんとだ、4対4になった。
 母はひとりで次のバッターの解説をしている。知らねーよ、んなもん。
 あ、打った。

「やったーっ、逆転だーーーっっ!!」

 母、踊る。
 わわわ、やめてよ、部屋が揺れる。本棚がぎしぎしスイングしてるよー。ひー。

 てゆーか、ママ。
 ぱんつ、はいてください。

 すっぽんぽんで娘の部屋に着て、ナイター見て踊らないでよ……。

「だって、こんないいところでテレビから目を離せないわっ」

 母は虎キチです。
 タイガースと共に生きてます。
 ああ、うざい……。

 野球はこーやって、わたしに迷惑をかけるのです……。

 

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