寝てばっかいると、ろくなこと思い出さない……。
2003年5月20日 オタク話いろいろ。 ライバルはあの女たちだ。
そのときわたしは、そう思った。
あれはわたしが18か19のころ。
友人たちと、あるクイズ番組の予選に参加した。
たしか『MR.ロンリー』とかいう名前の番組だった。
クイズに答えるのはひとりの男性で、3人ひと組で参加している女性グループが彼を応援し、彼の成否によって得られる賞金が変わってくる、という内容だったと思う。
……実はわたし、その番組見たことなかったんだわ。でも、友人のヤマダさんから、予選に出る資格を得たから一緒に出る仲間を捜していると持ちかけられ、一も二もなく承諾した。たんに、おもしろそうだったから。
ヤマダさんと光田さんとわたしの3人で、いざ予選へ。なんとか勝ち残って、テレビ出演するんだ!!
当時某テレビ局でサクラのバイトをしていたが、「客」としてテレビ局へ行くのははじめてだったので、とても神妙な気分だったのをおぼえている。バイト先とはちがう局だったしな。
会議室のよーなところに集められた大勢の女たち。千差万別。
そこからランダムに分けられたグループによって、予選が行われたわけだ。
10組ぐらいがひとつの部屋に集められた。
選考課題は3つ。自己PRと、男性への激励の言葉を言うこと、問題文の朗読。
わたしは喋ることは大好きだし、朗読は子どものころからいちばんの得意分野だった。男性への激励とやらも、照れを廃して情感たっぷりに言うだけの覚悟を決めていた。
1組ずつ代表ひとりがみんなの前で喋らされるのだが、わたしの目には取るに足らない人々に見えた。
だってみんな、おもしろくないんだもん。なんてふつーなの。彼女たちの話には、ユーモアも自己主張もなにもない。新しいクラスになったときの自己紹介みたい。名前と以前のクラスをぼそぼそ言うだけで席に着いてしまうような。
聞いているだけであきてしまう。
そんななか、1組だけ個性を持ったグループがいた。
その人たちは、ひとめで「変」だと思えた。
どこから見ても完璧に「おばさん」なのだが、格好が妙なのだ。
マンガの絵のついたトレーナーを着ている。ディズニーとかじゃなくて、ロボットアニメのキャラクターとかだ。子ども向きじゃなく、いわゆる「美形キャラ」ってやつ。かまっていない髪型に、眼鏡。小太り。
他のひとたちはみんな、テレビ出演の予選である、ということを意識してきれいな格好で来ているのに、そのグループだけはどっから見ても普段着だった。
会場に入ったときから「なんか変な人たちがいる」と思ってはいたが。
いざ予選になると、その変なおばさんたちは、ものすごいアピール力を発揮した!!
喋る喋る。
プロデューサーだかなんだか役職は忘れたが、試験官の男性を笑わせまくる。
強敵だ。
てきとーにきれいで、てきとーに澄ましているふつーの人たちとは、明らかにチガウ。
ライバルはあの女たちだ。
そのときわたしは、そう思った。
さて、わたしたちの番が来た。
わたしはグループの代表として、立ち上がってグループの紹介をする。女子大生であること、同じクラブに入っていること。
そして。
ここからが本番だ。
いかに笑いを取るか。
わたしは自分が「ぶさいく」であることを知っていた。
だから、ネタには最適だった。
わたしは自分の顔をネタにして、一気に笑いの世界へ突入した!!
笑わせてやる! わたしの言葉のひとつひとつで、ひとの気分を操ってやる!!
かかってきな!
……てなもんで。
場内を笑いの渦に落としました。
いやあ、一世一代の喋りでしたよ。自画自賛。……自分のぶさいくぶりがネタってのが、かなしーですが。
自分の役割を全部果たし、着席したわたしのあとに、愛想のいいぽっちゃり美人のヤマダさんが問題文の朗読をする。彼女にはなんの問題もない。
最後に問題文を読む光田さん。この子は完璧に美人でプロポーションも抜群なのだが、人間嫌いの男嫌い。このときも眉間にシワを刻み、世の中すべてを呪っているよーな不機嫌な顔で立ち上がった。
……ここはひとつ、ネタを仕込むか。
不機嫌に問題文を朗読する光田さんの背中を、指でいたずらした。
彼女は背中がウイークポイント。背中を触られると、ミステリドラマの被害者のような悲鳴をあげてうずくまるのだ。
このときも、見事な金切り声をあげてうずくまった。
おかげでまた、場内爆笑。
光田さんには涙をためた目でにらまれたが、わたしゃ知らん顔。
「背中が弱いんです」
と光田さんはわたしにいたずらされたことを試験官に訴え、さらに周囲にウケられていた。真面目だからこそ、おかしい姿だったのよね。彼女が完璧な美人なだけに。
わたしはそのとき、勝利を確信した。
人好きのする美人とクール系美人(背中が弱点)と、お笑い担当のブスのトリオだ。キャラが立っていていいじゃん? しかも現役女子大生だ。
マンガ絵のトレーナーを着た変なおばさんたちになんか、負けるもんかっ。
さて、結果は。
勝利も敗北もありませんでした。
番組が、打ち切りになったのです。
ははははは。
もしあのまま番組がつづいていたら、出演できたんじゃないかなあ、と、捕らぬタヌキは皮算用。勝手にうぬぼれております。
いや、笑いを取れればそれでOKな番組だったかどうかは知りませんが。なんせわたし、ついに一度も番組を見ることがなかったもんで(をい)。
そして。
あのときはわからなかったけれど、わたしが勝手にライバル視していたおばさんたちは、いわゆる「オタク」だったのだと思います。
たぶん、今のわたしと同じくらいの年齢でしょう。18のわたしの目にはものすげーおばさんに見えたけど。
でもな。
当時のわたしは、30過ぎた「オタク」がいるなんて知らなかったのよ。
オタクってのは、大人になったら卒業するものだと思ってたの。
だからあの「どっから見てもコミケでカートを引きずっていそうなおばさん」を見ても、オタクだと思わなかったの。
…………幼かったわ、あのころのわたしって。
まさか自分が、あのとき辟易した「オタクなおばさん」になるとは思わずにな。
ああ、人を呪わば穴二つ。
厨房笑うな来た道だ、オバ厨笑うな行く道だ。
……いや、少なくとも見た目だけは、「終わっている」おばさんになりたくないんだが。くうぅ。
昨日に引き続き、体調悪し。
寝たきりで陽が暮れる。
ベッドでえんえん本を読んで過ごしたもんで。
そっからの連想で、昔の記憶が蘇ってきたのよ。そうそう、こんなことがあったっけ、と。
そのときわたしは、そう思った。
あれはわたしが18か19のころ。
友人たちと、あるクイズ番組の予選に参加した。
たしか『MR.ロンリー』とかいう名前の番組だった。
クイズに答えるのはひとりの男性で、3人ひと組で参加している女性グループが彼を応援し、彼の成否によって得られる賞金が変わってくる、という内容だったと思う。
……実はわたし、その番組見たことなかったんだわ。でも、友人のヤマダさんから、予選に出る資格を得たから一緒に出る仲間を捜していると持ちかけられ、一も二もなく承諾した。たんに、おもしろそうだったから。
ヤマダさんと光田さんとわたしの3人で、いざ予選へ。なんとか勝ち残って、テレビ出演するんだ!!
当時某テレビ局でサクラのバイトをしていたが、「客」としてテレビ局へ行くのははじめてだったので、とても神妙な気分だったのをおぼえている。バイト先とはちがう局だったしな。
会議室のよーなところに集められた大勢の女たち。千差万別。
そこからランダムに分けられたグループによって、予選が行われたわけだ。
10組ぐらいがひとつの部屋に集められた。
選考課題は3つ。自己PRと、男性への激励の言葉を言うこと、問題文の朗読。
わたしは喋ることは大好きだし、朗読は子どものころからいちばんの得意分野だった。男性への激励とやらも、照れを廃して情感たっぷりに言うだけの覚悟を決めていた。
1組ずつ代表ひとりがみんなの前で喋らされるのだが、わたしの目には取るに足らない人々に見えた。
だってみんな、おもしろくないんだもん。なんてふつーなの。彼女たちの話には、ユーモアも自己主張もなにもない。新しいクラスになったときの自己紹介みたい。名前と以前のクラスをぼそぼそ言うだけで席に着いてしまうような。
聞いているだけであきてしまう。
そんななか、1組だけ個性を持ったグループがいた。
その人たちは、ひとめで「変」だと思えた。
どこから見ても完璧に「おばさん」なのだが、格好が妙なのだ。
マンガの絵のついたトレーナーを着ている。ディズニーとかじゃなくて、ロボットアニメのキャラクターとかだ。子ども向きじゃなく、いわゆる「美形キャラ」ってやつ。かまっていない髪型に、眼鏡。小太り。
他のひとたちはみんな、テレビ出演の予選である、ということを意識してきれいな格好で来ているのに、そのグループだけはどっから見ても普段着だった。
会場に入ったときから「なんか変な人たちがいる」と思ってはいたが。
いざ予選になると、その変なおばさんたちは、ものすごいアピール力を発揮した!!
喋る喋る。
プロデューサーだかなんだか役職は忘れたが、試験官の男性を笑わせまくる。
強敵だ。
てきとーにきれいで、てきとーに澄ましているふつーの人たちとは、明らかにチガウ。
ライバルはあの女たちだ。
そのときわたしは、そう思った。
さて、わたしたちの番が来た。
わたしはグループの代表として、立ち上がってグループの紹介をする。女子大生であること、同じクラブに入っていること。
そして。
ここからが本番だ。
いかに笑いを取るか。
わたしは自分が「ぶさいく」であることを知っていた。
だから、ネタには最適だった。
わたしは自分の顔をネタにして、一気に笑いの世界へ突入した!!
笑わせてやる! わたしの言葉のひとつひとつで、ひとの気分を操ってやる!!
かかってきな!
……てなもんで。
場内を笑いの渦に落としました。
いやあ、一世一代の喋りでしたよ。自画自賛。……自分のぶさいくぶりがネタってのが、かなしーですが。
自分の役割を全部果たし、着席したわたしのあとに、愛想のいいぽっちゃり美人のヤマダさんが問題文の朗読をする。彼女にはなんの問題もない。
最後に問題文を読む光田さん。この子は完璧に美人でプロポーションも抜群なのだが、人間嫌いの男嫌い。このときも眉間にシワを刻み、世の中すべてを呪っているよーな不機嫌な顔で立ち上がった。
……ここはひとつ、ネタを仕込むか。
不機嫌に問題文を朗読する光田さんの背中を、指でいたずらした。
彼女は背中がウイークポイント。背中を触られると、ミステリドラマの被害者のような悲鳴をあげてうずくまるのだ。
このときも、見事な金切り声をあげてうずくまった。
おかげでまた、場内爆笑。
光田さんには涙をためた目でにらまれたが、わたしゃ知らん顔。
「背中が弱いんです」
と光田さんはわたしにいたずらされたことを試験官に訴え、さらに周囲にウケられていた。真面目だからこそ、おかしい姿だったのよね。彼女が完璧な美人なだけに。
わたしはそのとき、勝利を確信した。
人好きのする美人とクール系美人(背中が弱点)と、お笑い担当のブスのトリオだ。キャラが立っていていいじゃん? しかも現役女子大生だ。
マンガ絵のトレーナーを着た変なおばさんたちになんか、負けるもんかっ。
さて、結果は。
勝利も敗北もありませんでした。
番組が、打ち切りになったのです。
ははははは。
もしあのまま番組がつづいていたら、出演できたんじゃないかなあ、と、捕らぬタヌキは皮算用。勝手にうぬぼれております。
いや、笑いを取れればそれでOKな番組だったかどうかは知りませんが。なんせわたし、ついに一度も番組を見ることがなかったもんで(をい)。
そして。
あのときはわからなかったけれど、わたしが勝手にライバル視していたおばさんたちは、いわゆる「オタク」だったのだと思います。
たぶん、今のわたしと同じくらいの年齢でしょう。18のわたしの目にはものすげーおばさんに見えたけど。
でもな。
当時のわたしは、30過ぎた「オタク」がいるなんて知らなかったのよ。
オタクってのは、大人になったら卒業するものだと思ってたの。
だからあの「どっから見てもコミケでカートを引きずっていそうなおばさん」を見ても、オタクだと思わなかったの。
…………幼かったわ、あのころのわたしって。
まさか自分が、あのとき辟易した「オタクなおばさん」になるとは思わずにな。
ああ、人を呪わば穴二つ。
厨房笑うな来た道だ、オバ厨笑うな行く道だ。
……いや、少なくとも見た目だけは、「終わっている」おばさんになりたくないんだが。くうぅ。
昨日に引き続き、体調悪し。
寝たきりで陽が暮れる。
ベッドでえんえん本を読んで過ごしたもんで。
そっからの連想で、昔の記憶が蘇ってきたのよ。そうそう、こんなことがあったっけ、と。