えー、『ドン・ジュアン』話をとりとめもなく続けておりましたが、ここで突然月組新人公演『NOBUNAGA<信長> -下天の夢-』の話。

 新公配役が発表になったとき、わたしの周囲のごく狭いところでポイントとされていた、「森蘭丸役の有無」。
主な配役新人公演
妻木(帰蝶の家臣)朝美 絢/海乃 美月
森蘭丸(織田信長の小姓)朝美 絢/  *  

 わざわざ森蘭丸役の欄が * になっている。発表されてないけど、実は出るんだよ、などという意味ではなく、ガチに削除されているんだよ、この役は新公では存在しないんだよ、という意味での * だ。

 どうして?
 一本モノでもないのに。

 んでもって、実際本公演の幕が上がってみると、森蘭丸役は超ちょい役で、いてもいなくてもかまわないよーな役だった。
 これならたしかに、削られても問題はないかも……って、そんな、削ってもいいような役をなんで出すかな。わざわざ配役表に書いて発表するかな。
 「主な配役」に記載されない役だって、実際の公演にはいくらでもあるんだもの。ルドルフ@『エリザベート』役だって、公演によってはモブ役でアルバイトをしていたが、「主な配役」にはアルバイトまでは記載されなかった。

 おかしな話。

 で、新人公演にて。

 森蘭丸役は、本当になくなっていた。

 蘭丸の台詞は、別の人に振られてた。それでなんの問題もなかった。
 てゆーか、突然出て来た「誰?」という蘭丸より、それまでずっと従ってきた毛利良勝の台詞の方が納得だし、信長に心酔していたただひとりの家臣・弥助の比重が上がる方が正しいわ。

 ほんとに、本公演の森蘭丸は、いらない役なんやなー。

 じゃあどうして、こんないらない役をわざわざ作ったのか。

 ひとえに、男役スター朝美絢のためでしょう。

 公演初日の蘭丸の扱いを見たとき、舌を巻いたもの。
 あーさ、大事にされてんだなあ、と。

 タカラヅカの華は男役、ファンは男役を観に来る。
 美形男役スターの女装をファンは喜ぶけれど、それはあくまでも「男役の女装」であること、ほんとうに女役に転向することは望まない。
 それと同じで、公演通して女役だけだと、せっかく得た人気を失う危険性がある。かっこいい男役を見たいのに、ふつーに女になって娘役と同じことをしていたんじゃ、意味がないもの。
 「娘役にだってファンはいる! 娘役軽視するな!」というツッコミはなしね、わたしがどうこうではなく、「タカラヅカ」がそうやって100年続いてきた劇団だという話。

 妻木@あーさはいい役だ。
 男役でモブに毛の生えたよーな「武将のひとり/初見ライト観客からは個別認識されず」よりも、トップスターとエロい絡みのある美形くのいち役の方がいい役に決まっている。
 でも、いくらいい役だからといって、女役だけだと、本当の意味で「いい役」ではないんだ。
 ファンは女役を求めているわけじゃないから。

 だから、わざわざ男役もさせる。
 いなくてもいいような、どーでもいい役を無理矢理作って、しかも「森蘭丸」という超有名美少年役で。
 「男役として美しい朝美絢」を見せつけられる役を、わざわざ、あーさのためだけに、作ったんだね、大野くん。

 森蘭丸がどーでもいいような役だからこそ、震撼したわ。
 こんな無理矢理なことするほど、配慮されてるのかと。
 劇団主導なのか、大野くんの趣味なのかはわかんないけども。

 新人公演で「蘭丸がいない」方が、作品として正しいことを見せつけられると、より一層嘆息する。

 あーさ、いいなああ。
 こんなに気を遣ってもらって。
 大切にしてもらって。


 ええ。
 『NOBUNAGA<信長>』初日に思ったもの。

 あーさにとってつけたような男役させるなら、『虞美人』の桃娘@だいもんにも、3分でいいから男役をやらせる配慮が欲しかった。
 一本モノで女役のみだったんだよ……アルバイトもナシだよ……「未来のある男役スター」と考えるなら、「男役としてかっこいい場」を用意すべきだったのに……そんな配慮はしてもらえなかったさ……はは、は……遠い目。

 ということで、結局はだいもん(笑)。

 まともな月新公の話は7月16日欄にて。

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