さて、『一夢庵風流記 前田慶次』のまっつまっつ語り、ついにラストです。

 家康様@ヒロさんに斬られちゃった、死んじゃった、だからもう出て来ない、出番終わり、しょぼーん。
 と思いきや、何故かまた登場する雪丸様@まっつ。

 ずーっとこだわっていただろう相手・慶次@えりたんに「手前ばかりは許さん」と憎まれ、のちの天下人・家康に「天下を揺るがす大罪人」と評されたんだから、雪丸的にはわりと納得出来る最期だったのかもしれない。わたしは出来てないけどな、大野くん!(笑)
 家康に斬られる瞬間、慶次には完スルー(!)されてるけど、それでもまあ、印象に残る相手だったのかもしれない。
 で、エピローグの全員集合に、雪丸も登場する。


 このエピローグの描き方が独特だと思う。
 ただの全員集合ではなく、死者と生者とは線引きされており、一緒に現れたとしても、現在の生死によって立ち位置が変わる。
 また、たしかにその「役」……人物での登場なのに、慶次が知る人格ではない者もいる。

 まあ、あれから2年経っているわけだし、加奈@せしこが自害したことを知った慶次が、まつ@あゆっちに事の次第を聞いた、というのはあるかもしれない。
 雪丸が奥村家乗っ取りを企み、露見して加奈に顔を斬りつけられたあの一件を、まつは知っているはず。加奈はまつに、雪丸の助命を願ったそうなので。
 加奈の恋を、まつは知っていた? 加奈と雪丸がラブラブカップルだった頃を、知っていた?
 そしてそれを、慶次に話した。あんなことになってしまったけれど、どこかでなにか掛け違えてしまったけれど、本当は心底愛し合った、ごくふつうの男と女だったのだと。

 てことで、ラストシーンの雪丸と加奈はあーんなことになっているのかも、しれない。

 それとも単に、「死ねばみな仏」ってことで、穏やかに愛に満ちた姿になっているのかもしれない。
 本来の姿になっているのかも、しれない。

 なんにせよ、雪丸様が、微笑んでます。

 初日はまだ、「穏やかな表情」止まりだった。
 加奈の手を取ったりしているから、いちゃいちゃ、と表したけれど。
 穏やかに、自分の女の手を取り、エスコートする……それだけで十分「きゃーーっ!!」な出来事だった。わたしには。

 それが、日を重ねるごとに雪丸様、デレ表面化。

 「穏やか」じゃないっす、それ通り越して「微笑んで」ます。

 加奈の肩を抱いて、顔見合わせてにこにこっと笑い、しかも「おでここっつん」的に顔寄せて(1回、マジでおでここっつんした?!てな日もあった)、加奈は加奈で、自分を抱く雪丸の手に手を重ねたりして……な、なんかグレードアップしてまっつ!!

 ふつーにしあわせそうで、にっこにこ。
 慶次の「楽しゅうござるのう!」では、歯、見せて笑ってます、雪丸様!!

 ぽかーん……。

 初日近辺は、フェリペ二世@まっつがイサベル王妃@あゆみちゃんを思い出した。寄り添って目を合わす、ぐらいだったから。
 でもでも、どんどんフェリペ二世を引き離したよ、ヤツよりはるかにラヴくなったよ!!

 本編の雪丸と別人過ぎて、ぽかーん……。

 まあ、本編の雪丸も、ラストの人格崩壊とか、わけわかんないキャラだから、ここだけ「おかしい!」と言っても意味ナイけどさ。
 変わった演出するなあ、大野くん……。

 変だなー、と思う。
 思うけど。

 このラストシーンの雪丸が、好きだ。

 台の上で加奈の肩抱いておでここっつん、にこにこ雪丸様も、イイ。
 でもでも、わたしがいちばん好きなのは。

 加奈の手を取って歩く姿!!

 台の上から歩き出すとき、雪丸は先に階段を降りて振り返り、加奈に手を差し伸べる。
 加奈は自分で階段を降りかけていて、差し出された手にちょっと驚いて、次の瞬間うれしそうに手を預ける。
 加奈の手を握った雪丸は、自分が先に立って歩き出す。並んで歩くのではなく、あくまでも雪丸が先、加奈は後ろについてくるカタチ。

 このときの、雪丸が。

 すごく、しあわせそう。

 笑顔じゃなくて、「満足そう」な顔してる。

 「俺の女」の手を取り、歩く男。
 「俺の女」を守る男。

 「俺の女」を愛し、その手で守ることを、喜びとする、誇りとする……そんな男。
 それは慶次の「惚れたから抱いたんだ。男が女を抱くのに、他に理由があるか」の台詞まんまかもしれない。
 慶次の言葉を黙って……うちに濁りを秘めて聞いていた雪丸は、すべてから解き放たれたあと、その言葉通りの男になっている。
 「愛すること」を誇りにする。そんな男に。

 肩を抱いて歩くとか、手を握って並んで歩くとかじゃなく、あくまでも「前を歩く」のが、「男の誇り」なの。
 男尊女卑ではなく、進む道を決めるのは男で、女はそのあとに従う、という姿勢。男は矢面に立ち、女を守ることに喜びを感じるし、女はそんな男に従い、後ろから支えることに喜びを感じる。支配でも依存でもなく、個々が自立しているゆえに秤が釣り合い、成立する関係。
 慶次とまつがそうだったよね。「覚悟を決めた」という、あれ。いざとなれば、後ろで手を引かれていた女の方が、男の尻を叩くことも、する。

 加奈の手を取って歩く雪丸が、うれしそうで。満足そうで。
 そっかあ、ほんとは君、こうしたかったんだね。
 惚れた女を守って、そのことに喜びを感じて、生きたかったんだね。

 現世では、女を騙し、泣かせていたのにね。

 雪丸の真の望みと、現世での生き方の差が、切ない。


 雪丸と加奈がどんなつきあいだったのか、描かれていないからわからないけれど。
 加奈だってバカ女ってわけでもないんだから、やっぱ騙されても仕方ないものはあったんだろう。
 つまりほんとうに、良い関係があったんだろう。
 このラストシーンみたいな、つきあいだったのかも?
 いかにもプライドの高そうな、出世欲ありますな若きエリート雪丸が、「お前を守るのは俺だ」と照れと喜びを頬に滲ませて前を歩く……そんな姿を見せられたら、そりゃ、きゅーん!となるよ!
 この人についていきたい! そう思うよ。

 この作品で、いちばん泣けるのがここだなあ。
 雪丸様のうれしそうな顔見たら、どばーっと泣ける。

 良かったねえ。
 そう思う。


 最後に見るまっつが、楽しそうに幸せそうに笑っている。愛する人と共に在る。

 そのことに、救われる。

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