トド様のことはともかくとして。
 『The Lost Glory―美しき幻影― 』って、どうよ?

 えー、きれいでした。
 景子先生の新作ですから。
 問題なくキレイです。期待した通り、キレイです。

 そして。

 薄い、です。
 なにもかもが。

 いやあ、とっても植田景子。いつもの「本公演の」景子たんです。

 トド様にエンジンかかってきたら、またちがうのかもしんない。
 わたしが観たのは初日なので、まだきちんと出来上がってなかったのかもしれない。
 にしても、痛切に、いちばんに感じたのは、あらすじばっかで、本編がどこかよくわかんない。……だった。

 これは、トップスターがいるのに、トップ専科様降臨作品である、という縛りゆえに起こったことだろうか。

 星組トップスター柚希礼音様が、えんえん銀橋で、あらすじを解説している。
 1場面、他の人の話がありました。すると次に、イヴァーノ@れおんくんが出てきて、長々と解説をはじめる。
 んでまた1場面、他の人の話がありました。すると次にまた、イヴァーノが出てきて、説明をはじめる。
 この、繰り返し。
 イヴァーノさんがもー、喋る喋る。なにをどうしてどうなって、これからどうなるのか、とにかく全部台詞で喋る。歌で喋る。
 いやその、解説いらないから、芝居を見せてよ。君が台詞で説明していることを、芝居にして見せてよ。
 あらすじ解説はもういいから、いつ本編がはじまるの??

 えーと。
 イヴァーノの解説部分、ぶっちゃけ、いらなくね?

 オットー@トドたちの、ふつーにドラマやってる部分だけで、イヴァーノはそこに脇役として加わっているだけで、十分じゃん?
 んで、最後の種明かしのときにはじめて、「実はすべて俺のたくらみだったのだー!」とジャーンとやれば済むことなんじゃ?

 なくても話は進むのに、場面切り替えごとにイヴァーノが出てきて、余分な解説をえんえんえんえんはじめるから、作品全体が「まだストーリー開始以前のあらすじ解説? いつ本編はじまるの??」という印象になっちゃった気がする。
 また、本編を演じているトド様より、あらすじ担当のれおんくんの存在感がダンチに強いもんだから、あらすじしか印象に残らないのだ、という気もする。

 ほら、この間の植爺『ベルばら』で、オスカル@かなめ様がまだ登場してないうちに、ジャルジェ将軍@汝鳥サマがえんえんえんえんえんカーテン前であらすじ解説してたじゃないですか。ちょろっと他の人たちが出てきて会話して、また汝鳥サマがあらすじ語って……あーゆー感じっす。
 で、いつ本編はじまるのよーっ、あらすじいらないから、本編見せろ~~!

 星組トップのれおんくんに気を遣いすぎたせい? 彼に出番と台詞を!と思ったら、あらすじ担当になっちゃった?>景子たん

 トド様降臨でなく、「主役と準主役が同じ位の出番と比重」という縛りがなかったら、どんな作品になっていたんだろう。
 イヴァーノがあそこまでしゅっちゅー出てきてあらすじを語るハメにはならなかった、気がする。

 で。
 もひとつ敗因というか、あらすじ感が強かった理由は。

 イヴァーノの目的が、見えなかった。

 オットーを失脚させるため、彼から会社その他を奪うため、イヴァーノがいろいろ画策しているのはわかる。なにしろ自分で全部解説してるから。
 でも、そんだけ喋りまくってるくせに、なんのためにそうしているのかが、わからない。
 オットーを恨んでる? 社長になれると思ってたのに、選んでもらえなかったから? えっと、それだけ?
 イヴァーノがナニを思ってなんでこんなことをしているのか、さっぱりわからないまま80分とか経過するわけですよ。長いっすよ。
 だから彼はただのあらすじマシーン。話を進めるための都合のいい人。

 ラスト10分ぐらいになってようやく、「信じてたのに裏切られた! ラブアンチなめんな!」というオチが語られる。

 えっ、トド様目的だったの?? 愛されてたと思ってたのに、そうじゃなかった、愛してくれないなら滅んでしまえ!てな気持ちだったの??
 ごめん、ぜんぜん、わかんなかった。

 わたしは男同士の愛憎が大好物なので、そうだったらいいなあ、と思って、そっちに妄想したくてうずうずしながら観ていたのに、それでもまったく伝わってこなかった。
 だから、イヴァーノがなにをしたくてこんなにダダをこねているのか、ちっともわかんなかった。
 目的がわかんないまま「次にこんな悪だくみしました」「次はこんなことしちゃうぞ、ふふふ」を語られ続けても、出来事羅列はただのあらすじ、気持ちが見えないと退屈なだけ。
 えええ、れおん様は愛飢え男だったの? 好きの裏返しで復讐してたの?

 それならそれで、早く言ってよーー。

 どーでもいいあらすじ語る暇があったら、「トド様ラブ! 俺を見てくれないトド様が憎い憎い、愛されないなら憎まれた方がマシだ~~、どん底に突き落として俺を一生忘れられなくしてやる~~!!」てな愛の絶唱なりダンスなり、やってくれりゃーいいのに。(役名で言いましょう)

 イヴァーノがオットーを愛していたから、というのは、景子たん的に秘密、クライマックスのどんでん返しのつもりなんでしょう。
 悪役だと思っていた彼が、悲しい愛飢え男だとわかった……そうか彼は根っからの悪人じゃなかったんだ……! てのが、どんでん返しその1だったのね。
 や、それをどんでん返しにするなら、あそこまでイヴァーノをあらすじ専科にしないでよ、長すぎるよ!
 今のイヴァーノの出番と台詞量なら、最初から「トド様が憎い、愛しすぎてて憎い」(だから役名で……)と言わせて、苦悩させまくってくれよ。
 なにがしたいのか、目的をわざと伏せた状態で、あんだけ解説ばっかさせたら作品バランス狂うっての。

 トド様を愛しすぎてコワレちゃったれおんくんとか、それだけですげー食いつきのイイ設定だと思うんですが。
 どうしてそれを「最後までナイショ」にし、「ナニを考えているのかわからない、クールな悪役」にこだわっちゃったのか。

 いろいろともったいないというか、この設定と配役とストーリーで、わたしならこうする、がてんこ盛りっす。
 ああ、じれったい。もったいない。


 とりあえず、次に観劇するときは、「イヴァーノの本心」を念頭に置いて観るよ。
 そうしたら、違って見えるかな。彼があらすじマシーンじゃなくなるかな。てゆーか、2回観ないとわかんない作りにしないでほしいっす。……2回観たら、わかるのよね? 余計フラストレーションたまったりしないよね?

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