『My Dream TAKARAZUKA』こあらった目線のまっつまっつ、続き……というか、『My Dream TAKARAZUKA』におけるまっつの立ち位置考。
 個人的な目線です、ええ。


 まず、まっつという人は、雪組3番手でありながら、特殊な立場にある。
 2番手より上級生で、劇団がこれ以上扱いを上げる気がない。人気も各種売り上げも「3番手」として遜色ない人であったとしても、劇団は彼を「路線スター」と認める気がない。
 かといって、不景気な昨今、貴重な稼ぎ手なので、主要メンバーから落として売り上げを放棄するわけにもいかない。
 てな、「理想と現実」のギャップ。理想は、まっつなんかとっとと落として、劇団が売りたいスターを華々しく3番手にしたい。が、現実は、その劇団が売りたい人は、実力も売り上げも、まっつに届かない。
 という事情により、「名目上は3番手。しかし、ガチな3番手として扱うのはまずい」という、なんともびみょーなことになった。それが、雪組でのまっつ。
 だもんでまっつは、「1公演の中で、『理想と現実』のバランスを取る」処置を行われる。
 つまり、「半分だけ3番手扱い」をされるんだな。
 芝居で3番手扱いされた場合は、ショーで4番手以下の扱いにする。全ツの場合だと、芝居で2番手扱いなら、ショーでは3番手以下にする。顕著なのが、『仮面の男/ROYAL STRAIGHT FLUSH!!』、『黒い瞳/ロック・オン!』『若き日の唄は忘れじ/ナルシス・ノアールII』。
 反対に、芝居で4番手以下の扱いをされた場合は、ショーでがっつり3番手として扱う。『Shall we ダンス?/CONGRATULATIONS 宝塚!!』。
 『ベルばら』でも、役替わりで扱いを落とすことを忘れない。
 とにかくとても気を遣って、「特殊な3番手なんだぜ」と示す。すげー細心のバランス取り。
 劇団はほんと、ゆみこ退団以来、番手付きジェンヌの扱いに気を遣っている。

 そんなめんどくさい(笑)「取扱注意」シールの貼られた3番手まっつ。
 まっつが芝居もショーもガチに3番手扱いされたのは、ふつーの3番手として扱われたのは、キムシン・中村Bという、まっつ贔屓の演出家による『ドン・カルロス/Shining Rhythm!』のときだけだ。

 でもって、まっつの退団公演でもあるこの最後のショーが、よりによってまっつに優しい中村B。
 『一夢庵風流記 前田慶次』は3番手役なのかどうかよくわかんないけど、とりあえず『My Dream TAKARAZUKA』では、まっつはガチに3番手扱いされている。ありがたや。

 で、こんなややこしい状況の人だということと、このショーにおいてまっつは3番手である、という前提を述べた上で語る。


 『My Dream TAKARAZUKA』で、えりたんに単独で絡むのは相手役のあゆっちをのぞけば、ちぎくんだけなのね。
 ありがとうソングで退団者がピックアップされているけれど、「退団者」というひとくくりだったり、あるいは単品で、なんだよね。
 トップさんと単独で絡むことはない。
 まっつとえりたんのこれまでのヅカ人生を思えば、ふたりを絡めるのはもっとも手っとり早い「感動的な退団演出」だと思う。いくら中村Bが退団作品を作り慣れてないとはいえ、それくらいはわかると思う。
 まっつとえりたんの長いつきあいを知らない、はじめてタカラヅカを演出する人だとしても、「この作品でこのカンパニーを去る、トップと3番手」なら、ふたりを絡めることは考えつくだろう。単に「上から順」に組み合わせただけでも。
 そんな、いちばん簡単な方法を、あえて無視して退団ショーを作る。
 てのはやっぱ、人事的な配慮かなと思う。

 退団するトップスターと絡んでいいのは、次期トップスターのみ。
 劇団がこの公演で終了するわけでない以上、「これから」のことも考えなくてはならない。次の時代につなげなければならない。
 単純に「トップと3番手」というだけでもだし、ましてや、それまでの歴史もあるふたりを「退団仕様」で絡めたりしたら、印象が大きくなりすぎる。
 劇団が印象付けたいのは「えり→ちぎ」であり、「えりまつ」ではない。
 まっつが劇団の「理想と現実」ギャップのない人なら、彼がクローズアップされる演出も歓迎されたかもしれないが、なにしろ「儲けを出して欲しいが、売れたら困る」という、ややこしい立ち位置の人だ。取り扱い注意、劇団が売りたい商品の邪魔になる扱いをしてはならない。

 それゆえに、たとえ同じ場面に出ていても、まっつとえりたんは絡むことなく、えりたんの横や斜め後ろで互いに正面を向いて踊る、という場面のみをえんえん作り続けるしかなかった。
 ありがとうソングでえりまつのハイタッチがあるが、あれはアドリブであって演出ではない(まっつの中の人・談「やりたいからやった」)。
 つまり、演出でのえりまつは皆無。
 また、まっつはえりたんセンター場面にしか出られない縛りのある人だから、余計に大変。えりまつをコンビで使えない、でも、まっつはえりたんと一緒にしか出せない……演出家としては「どうしろと」とアタマ抱えるよなー。

 そんな事情ゆえに、中詰めのえりたんセンター少人数場面は、このおかしな立ち位置のダンスになったのかなと思った。
 なにをするでもなくまっつが、えりたんの斜め後ろで踊る、という。
 苦肉の策やなあ、と。

 それでも、まっつにスパン衣装を着せて、一歩前で踊らせてくれたところに、中村Bの愛情があると思う。
 本来ならまっつは、みんなと同じ衣装で、おなじ列に入れられただろうから。

 この4年間ずーっと「まっつのショーでの取り扱い」を観てきた者としては、これが精一杯の扱いだったんだろうなとは思う。
 願わくば、最後にえりまつが見たかったな。
 えりたんとがっつり組んで踊るまっつ。
 歌でもいい。
 男同士でデュエットダンスでもいいし、仲良くアドリブしまくる系の絡みでもいい。サヨナラショー得意の稲葉くんならやってくれたかなあ。

 タカラヅカはジェンヌ同士の「関係性」も商品の付加価値として売る劇団なので、退団発表があるとファンは「退団する誰々と誰々の絡む場面があるに違いない」と想像する。
 それがヅカの常だから。劇団が売りにし、かつ、ファンが求めるものだから。
 ……でも、まっつに関しては期待できないだろうなあ、と思っていた。まっつのショーにおける立ち位置って、けっこう難しいからさー。
 中村Bはまっつと縁のある、まっつに優しい先生だということにのみ、一縷の望みを持っていたのだけど、やっぱり無理だったか。
 残念。

 あ、全部わたしの個人的見解ですよ、念のため。妄想過多、ただの偏った想像であり、事実無根ですよ、念のため。
 こんな状況もコレで最後だもの。記しておく。

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