新人公演『私立探偵ケイレブ・ハント』観劇。

 いやはや、なんというか。

 マサツカ芝居は大変だね!

 コスプレ物とか植田歌舞伎とかの方が、「型」がある分、器用なイマドキの若者たちはなんとかしちゃう。
 マサツカ芝居はスーツ物でナチュラルな台詞回しになるからなあ。ナチュラルったって、現実ともテレビ芝居とも違う、独特のテンポ感があって。
 マサツカのときはどの組どの面子も、新人公演がえーらいこっちゃになるのはデフォルト。

 そんななか、主演のひとこはよくやっていると思う。
 今までの主演経験は伊達じゃない。このやりにくい主役を、やりにくい台詞回しを、それでもなんとか成立させていた。
 マサツカ芝居独特の、棒読みっぽいテイストが、ひとこだとより強調されるのは気になった。
 棒読みテイストだけど、棒読みにしない声の制御が難しい。

 にしても、ひとこくんでスーツ物、ふつーのお芝居が見られるのはうれしい。
 なにしろ彼の主演作品と来たら、『ルパン三世』に『るろうに剣心』だもの。このふたつしか主演歴にないとか、プロフィールがタカラヅカじゃなくて、どっかの2.5次元俳優みたいだわ(笑)。

 でもって今回、ひとこがどうとか、うまいとかへただとか、それ以前に。

 ヒロインがすごすぎて、それどころじゃない。
 というのがね(笑)。

 イヴォンヌ@のぞみちゃんが、すごかった。
 アントワネット@『ルパン三世』のときは、ここまで思わなかったので、やっぱりマンガコスプレドタバタ物と、ハリーのスーツ物だと求められるモノが違うってことだろう。

 ほんっとへたやな!!(笑)

 へたのレベルが違うっちゅーか、何故ヒロインやってるかわからないっちゅーか、そもそも脇でも一声発するだけで二度見するレベルなんだから、そりゃさもありなん。

 役者として成り立ってない子をヒロインにする、劇団に対する疑問だけで終わってしまった。
 や、ときどきあるのよー。「そもそもこの子、この職業向いてない」って子を、脇の美人さん枠で愛でるのではなく、わざわざヒロインにして作品自体をぶっつぶすことが。
 これがはじめてではないので、ああ、って感じ。

 タカラヅカだから美貌は重要。美貌さえあれば技術なんかどうでもいい。
 という考え方があるのはわかる。
 どんなに実力があっても、不細工おでぶさんをヒロインで見たくないのと同じで。

 だからあとはバランスの問題。
 これだけ実力がない場合、どれだけ美しければ観客を納得させることが出来るか。
 これだけ不細工な場合、どれだけ実力があれば観客を納得させることが出来るか。

 残念ながらわたしの目には、のぞみちゃんの美貌は、実力のなさを不問にできるほどではなかったんだ……。
 つか、きれいだけど地味だよなあ。大輪の薔薇ではなく、小さな花に見える。

 でもって、ヅカヲタとしてすっかりスレてしまっているわたしは、今のところべつにのぞみちゃんが嫌なわけじゃない。
 え、ここまでひどいこと書いておいてナニ言うか、かもしんないけど。
 昨今めずらしいほど本気でへただとは思ってるけど、それはただそう思っているというだけで、好悪とは別。
 本公演ののぞみちゃんがごっつーかわいいことに底上げされいることもあるが(笑)、今この時点でこのポジションでへたでも、あんまし気にならない。

 というのも、前述の通り、こういうことは、今までにだってあったんだ、何度も。
 そして、ほんっとーに、とことんまでへたっぴで舞台クラッシャーなままの子は、どんだけ早期抜擢してもヒロインやらせても、トップ娘役にはしないんだ。劇団は。
 せめて「声を発するだけで作品を叩き壊す」レベルではなく、「出来る役をやる分にはなんとか格好が付く」レベルになった子じゃないと、トップにはしない。
 そのへんは、信頼している。劇団だって、仕事でやっているんだから、最低限のクオリティは気にしているようだ。

 だから今、この時点でのぞみちゃんがどんだけものすごい実力の持ち主でも、気にならない。
 このまま成長しなければトップにはならないだろうし、うまくなってくれれば、きれいでうまいスターさんは大歓迎なので問題ない。
 ヒロイン経験は無駄にはならないのだから、このまま脇の美人さん枠に落ち着くにしたって、きっとスキルアップにつながる。

 と、スレている(笑)がゆえに、鷹揚に構えているわけだ。

 また、真彩ちゃん組替えの報を得ていることも大きいな。
 もしも、組替えが発表されてなくて、2番手の相手役+新公ヒロインだったら、「このレベルの子はトップにならないはず」という前例による安心感も揺らいだと思う。
 いやあ、真彩ちゃん組替えがわかったあとでよかった。ただわたしの心の平安のために(笑)。

 くりかえすが、のぞみちゃんを否定しているのではなく、「現時点の実力」についての感想だ。だいもん云々でもない。
 どの組、どのトップスターとその相手役においても、「声を発するだけで作品を叩き壊す」レベルでない人に、その地位について欲しいと思っているだけだ。

 そして、アテ書きの妙を感じている。
 本公演のレイラ@のぞみちゃんは、ほんとかわいい。すげーかわいい。
 あんなにかわいいレイラを演じている子がやっているのに、新公のイヴォンヌはせっかくの美貌も愛嬌も感じられず、魅力が伝わらない。やっぱアテ書きってすげえな、オリジナル作品ってのはそこがいいんだよな、と思う。

 のぞみちゃんはこれでいいんだけど。
 ひとこくんには心から「乙!」と思う。
 この大根相手に棒台詞になりがちなマサツカ作品で芝居しなきゃなんないとか、どんだけ大きなハードル。
 がんばれ。心からがんばれ。
 まぁ様だってその昔、稀代の大根ヒロイン相手に主演をやり遂げたんだ。キミにだって出来る出来る!

 新人公演は面白いやね。

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