ちぎくんを、天使だと思った。

 『星逢一夜』新人公演の感想です。
 新公感想なのに、ちぎくん。

 タカラヅカは、なにしろタカラヅカなのだから、なにがなんでもまず、美しくなければならない。
 そして、タカラジェンヌはみな、「容姿端麗」が条件となった音楽学校を経て入団しているのだから、美しい人たちである。これ前提。
 その前提の中でも、特に美人だと言われる人たちがいる。
 ちぎくんも、新公でちぎくんの役を演じるかなとくんも、その特別美しい人たち。
 タイプは違うけど、美しい。素顔も舞台の上も、超美形様。
 なのに……。

 『星逢一夜』新公のかなとくんは、ビジュアルが微妙だった……。

 かなとくんは日本物の新公主演が2回目だ。ここ30年のヅカ史上、日本物で2回新公主演をしたスターはほんのわずかだ。加えて、日本物公演の経験値が同世代のスターに比べて、かなとくんはダントツに高い。
 つまり、「経験不足」は原因じゃない。
 『一夢庵風流記 前田慶次』の新公も、『星逢一夜』本公演も、かなとくんは実に美しい青年姿を披露している。
 もともと美しくて経験もあり、過去の実績もあるのに。

 何故だ。

 冒頭から、首をかしげた。
 オープニングの青く美しいダンスシーン。ポスターまんまの姿で現れる晴興@かなとくん……。
 ヅラ……似合わねええぇ……。

 ポスターにもなっているあの前髪ありの若衆カツラが、相当難しいシロモノ、人を選ぶ高難度ヅラなのだということを知る。

 美貌のかなとくんがかぶっても微妙になってしまう、って、どんだけ難易度高いヅラなんや……。

 このヅラが難しすぎるだけかと思ったら、次の試練。

 子役。

 子ども役はふつー、役者が若い方が成立しやすい。だから大抵下級生がやるわけで。本人の若さ=子どもらしさってことで。
 そう考えれば、研15で実年齢**歳のちぎくんより、研7でちぎくんより8歳だか9歳だか若いかなとくんの方が、なにもしなくても子どもに見えるはず。(ジェンヌはフェアリーです、年齢などありません)

 なのに。
 かなとくん、子どもに見えねええぇぇ!!

 子どものコスプレした痛い大人に見える……。

 身長が高い分難しいってのはあるだろうけど、それにしたってその「無理です、ごめんなさい」なビジュアルは、いったい……。

 相手役の泉@みちるちゃんが幼い少女に見える分、犯罪感パネェ。

 子役に見えなくて、青年ヅラが似合わなくて、公演の半分以上を「どうしよう……」なビジュアルで過ごした主役に対し、もう祈るような思いで「早く、少しも早く月代を……!」と切望した。
 壮年時代になり、つるつる青天マゲ姿になり、よーーっやく、これぞ月城かなと!!と、胸をなで下ろした。
 あああ、月代武士姿は美しい……知ってる、本公演ソレだもん……あああ、それって新公の意味は……ううう。

 不器用な人だな、れいこちゃん。なんてイメージ通りなのかしら。(勝手なイメージです)


 かなとくんの華麗なる自爆っぷりはともかく。
 ここで語りたいのは、ちぎくんのこと。(かなとくん語りは別項で!)

 誰もが認める美貌のかなとくんをしても、今回の役と姿は難しいのだ。
 幼い子どもからはじまって、元服して城勤めしてるはずなのに前髪ありの若衆姿で三角関係やって、月代裃着こなさなきゃならなくて。
 この3点全部で合格ラインのビジュアル作れる人が、世界に何人いる? ヅカを超えて、「世界」で語っちゃうよ(笑)。まず、現実の男性には無理だしな!

 もう、つくづく、心の底から、ちぎくんすげえええ!! と思ったのですよ。

 どの場面もはずさず、必ず、「美しい」ということ。
 これってすごい。
 美形が前提のタカラヅカでも、ここまでちゃんと美しいってのは、才能。そして、技術。

 もって生まれただけじゃ無理だし、技術だけでも無理。
 美貌に生まれ、その上技術を磨いて得た「実力」。

 タカラヅカという、舞台という、「架空の世界」を作る力。
 なんかしみじみと、感動しました。そして、誇らしかったっす。

 でもって、ビジュアル以上に感心したこと。

 ちぎくんは美しいだけでなく、異世界感がある。

 かなとくんを観て驚いたのは、彼の演じる紀之介&晴興が、人間臭いこと。
 なんだろ、みょーな泥臭さがある。
 そうだよな、人間だもんな、こうなるよな。

 それを観てはじめて、気がつくのですよ。
 ちぎくんのファンタジーさに。

 美貌だからというだけではなくて。
 晴興なんて苦悩しまくる、人間らしい役じゃないですか。実際ちぎくんはアツく人間らしく演じてるじゃないですか。ホットな持ち味の人だから、そりゃあもおアツく、血の通ったキャラクタを演じてくれてるわけですよ。
 人間らしい温度と湿度を持つ人なのに。

 やっぱり彼はどこか、浮き世離れしている。
 わたしたちの生きる泥臭い世界ではなく、美しい異世界に住んでいる。

 「タカラヅカ」だ。
 なんて、途方もなく、「タカラヅカ」。

 『星逢一夜』は美しいけれど、かなりハードな物語。
 この物語が「タカラヅカ」として成立しているのは、作者のウエクミの美意識もあるだろうけど、ちぎくんが真ん中で「揺らがずに、タカラヅカ」であり続けていることが、大きいんだ。

 そのことを、思い知った。

 ゆえに、痛感したんだ。

 ちぎくん、マジ天使。

 背中に羽が見えるレベル。
 ちぎくんで良かった。
 雪組トップが彼で、彼の雪組で『星逢一夜』が観られて。

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