晴興と源太は、親友であるべきじゃね? という観点で語る、『星逢一夜』へのツッコミ、前日欄からの続き。

 晴興@ちぎと源太@だいもんは「ただの知り合い」であって、親友じゃない。
 これを変だと思い、なんとかしたいと思う。現状の作品のまま、最低限の変化で、作品自体を変更する、いつものアタマの体操、

 必要なのは「幼なじみの親友」である設定。つまり、晴興と源太が「親友」になるのは子ども時代。ゆえに最初の仕掛けは、子ども時代に必要。

 子ども時代はいい加減長いし、これ以上エピソードを入れられない。が、わずかな加筆で、ふたりの関係を深められる!

 紀之介(晴興)と源太が最初に出会ったとき、櫓の上でふたりきりになる。その場面で、ふたりに「泉」以外の会話をさせる。

 紀之介と源太が見た目だけ「親友」っぽく過ごすのは、この短いシーンのみ。
 でも、ここで話しているのは泉のこと。
 源太は紀之介が傷つかないように、と気を遣ってその場に残ったのに、紀之介はそんな源太に興味がなく、泉@みゆちゃんのことしか考えてない。
 源太も泉を思いやる紀之介に同調、自分が無視されていることには気づいてない。紀之介に無視されても平気なくらい、紀之介自身には興味がない。
 ふたりにとって大事なのは、泉だけ。互いは、眼中にない。

 ここなー。ひどいよなー。
 ただ物理的に「ふたりでいる」「ふたりで話している」ってだけで、「親友」エピソード……だとしたら、ひどいカンチガイぶりっすよ。
 物理的に近くにいても、心がそこになければ意味はない。

「お前が悲しかったら可哀想じゃと思ったんじゃ」
「悲しかったんは、あいつのほうやろ」
 という会話に、ただひとこと、
「ありがとな」
 と、源太の気遣いを紀之介がねぎらう台詞を入れる。
 自分のために、泉を追いかけずに残ってくれた源太……そのやさしさに、ちゃんと紀之介が気づく。城ではいつもみそっかす、無視されて育った紀之介なら、あたりまえと受け取られるような、ささやかな優しさにだって、ちゃんと気づくはず。その価値を知っているはず。
 紀之介に面と向かって礼を言われ、照れる源太。
 源太が気遣い出来るのもやさしいのも「あたりまえ」のことで、泉にしろ村の仲間たちにしろ、いちいち礼を言ったりしない。泉なんかいつも源太に無茶振りしてるし。
 真正面から礼を言われ、村の誰ともチガウ紀之介に、源太の興味と好意が向く。
 紀之介と源太は、互いを認め合う。

 礼の言葉ひとつと、それに対するリアクションだけ、ですよ?
 それだけで、ふたりの出会いと立ち位置がまーーったく変わってくる。


 そして、星逢祭りでの再会部分は、晴興と源太が、互いを「親友だと思っている」ようにする。
 前振りとして、蛍村の人々と話す源太に含みを持たせる。藩主様が帰ってきた、という話題で、源太は紀之介が偉くなったことに触れるよね。その言い方を少し変えるだけでいい。台詞は全員そのまま。
 紀之介……晴興が帰って来たことはうれしい、出世したこともうれしい、だけどちょっと寂しい……的な。
 今のままだとほんと、「昔の知り合いが出世した(自分とは無関係)」ってだけなんだもの……。や、実際農民にとって藩主様は雲の上過ぎて無関係、想像も付かないだろうけどさあ。「親友」ならいろいろ思うことあるだろうに。
 源太側に軽く細工して、あとは晴興側。秋定@翔くんとの銀橋で、源太のことを話題にする。名前は出さなくてもいいから、村の話をする体で大切な友の話をする。(泉については、源太よりも複雑な思いがあるため、世間話ついでに触れることはない)
 台詞何行か増やすだけ、時間にして1分あるかないか。調節可能だよね?
 晴興と源太、共に心が相手に向かっていること、忘れていないこと。それだけ伝わればいい。

 そのあとで、実際に源太と再会する。
 再会時の台詞は同じでいい。
「達者だったか」
 と晴興が声を発するだけで、舞い上がった源太が勝手にぺらぺら喋る。立場上、源太がそうなってしまうのは仕方ない。
 ただ、そのあとが問題。
 どう話していいかわからない源太が、間が持たなくて勝手にべらべら喋って、その喋りすら途切れて。
 ふたりが、沈黙する。
 ここまで、同じ。
 その次の瞬間、ふたりの心は歩み寄る。心は変わっていない、親友だと思っている……それを表す沈黙。会えたよろこび、変わっていないと互いにわかった、そのよろこび。
 ふたりは実際に、思わず歩み寄るのだけど、……そこに秋定が現れる。

 秋定が晴興に声をかける、タイミングを変えるだけ。

 立派な様子の侍が晴興に声をかけたことで、源太は現実に引き戻される。
 立場の違い、身分の違いを知り、心をひるがえす。
 それで、「この場から離れるために」に、「泉を探しに行くんで失礼する」と言い出す。
 泉を探していたことも、心配していることも事実、なにも嘘はついてない。
 だけど、それを方便に、源太は晴興から逃げ出す。

 晴興もまた、源太の心持ちと自分の立場を思い、それ以上引き留めない。苦く現実を受け止める。親友に会えたよろこびと、まともに会話も出来ない現実と、複雑な心情を、ちぎくんなら表現してくれるはず。

 台詞は一言一句変えず、そのままでいいのよ?
 源太が「晴興に興味ナイ、それより泉が大事!」とやるんじゃなく、秋定という「藩主様の連れ」が登場することで、ふたりの時間が強引に終わってしまうの。
 これ、自然な展開じゃない?

 源太が泉を言い訳にこの場を去った、とわかるし、秋定がすでに横にいるから、晴興が「泉」というワードに反応しなくてもおかしくない。
 現状だと、「運命の恋人」のはずの泉の名前を聞いても、しかも「泉の様子が変だった」と源太があわてていても、晴興はなんの興味も持ってないない。
 源太だけでなく、泉のことも、どーでもよかったんや……。

 実際晴興は、蛍村のことなんか忘れていたのかもしれないし、江戸でのやりがいある仕事に夢中、政略結婚をいいとも悪いとも思わないくらい、恋愛にも女にも興味はなかったのかもしれない。
 それが、成長して美しい娘になった泉と再会したことで、一気に恋愛脳になっただけ、「仕事一途」が一転して「宿命の恋」になる姿こそを、作者は描きたかったのかもしれない。

 だったら子役場面はえんえんいらない、江戸から話をはじめて回想シーンで子ども場面やる程度でよくね?
 子ども時代あってこその、成長してからの恋よね?

 バランス悪いんだよなあ。

 それらが全部、秋定のタイミングを変えるだけで解決するのになー。

 そのあとの晴興と泉の再会、源太土下座、もそのままでよし。

 後半の壮年になってからのやりとりも、そのままで。
 一揆と一騎打ちを「ただの知り合い」同士、「女を取った・取られた」だけの私怨めいた私闘、にしないために、それまでのふたりの関係を「幼なじみの親友」にする。
 それがこのツッコミの目的なので、後半は変更なし。

 「幼なじみの親友」にすれば、冒頭の晴興のナレーション、「私たちがはじめて出会ったのは星逢の夜だった。あの娘と、あの少年と、私がはじめて出会ったのは……」も、正しくつながる。
 「ただの知り合い」レベルの相手を掴まえて、この仰々しいナレーション、おかしいって!!
 ……はっ。
 これが老年の晴興さんの昔語りだとしたら、すっかり物忘れの酷くなった晴興じいさんの脳内で「俺たちは無二の親友だった……」てな風に変換されてるのかもしれない。自分に都合良く。過去は美しく見えるもんだから。
 ウエクミ、そこまで計算して書いたの?! ……なんてな。

 源太をちゃんと「親友」にする。
 それから、ほんとなら一揆前に銀橋ソロ一本入れる。たかが4分くらいのもんじゃん、星逢祭りのオープニング焼き直しダンスを短縮すれば入るわ。
 泉にも銀橋ソロで、彼女自身の「想い」を歌わせる。

 それだけで、ずいぶん変わるはず。

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